2012年5月7日月曜日

Peace Philosophy Centre: 福島県甲状腺検査、35%が「5ミリ以下の結節、20ミリ以下の嚢胞」-ゴメリ以上の甲状腺異常の可能性


当ブログ52日付け記事朝日の【大本営発表】子の甲状腺「安心できる」 福島、問題なしが99.5を補う内容の428日付け記事が Peace Philosophy Centre サイトに掲載されていました。注記に「転載、リンク自由です。転載の場合は全文でお願いします」とありますので、ここに転載させていただきます。なお、末尾のコメント欄にも新聞報道、山下俊一氏論文リンクなどの重要な情報が含まれていますので、これもそのまま転載させていただきます。
【出所リンク】http://peacephilosophy.blogspot.jp/2012/04/blog-post_28.html
【ポイント】
本文に引用されている北海道深川市立病院内科の松崎道幸医師によるコメントの重要ポイントをあげるとすれば――
  1. 福島では、被ばくから1年経った時点で、チェルノブイリ・ゴメリ地方の被ばくから510年経った時点と同じ甲状腺腫瘍の発生率
  2. クロアチアよりも福島のこどもたちに甲状腺異常が多発している懸念
これら2点でしょうか。
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(追記 5月2日「福島甲状腺検査 その2」も併せてお読みください。)





東京電力福島第一原発事故を受けた県の甲状腺検査で、3月末までに検査を終えた3万8114人のうち、「直ちに2次検査を要する」と判定された県民はいなかった。26日、県が福島市で開いた県民健康管理調査検討委員会で示した
警戒区域などに指定された13市町村の18歳以下を対象に検査しており、受診率は79.8%。直径5.1ミリ以上のしこりなどが確認され、2次検査の対象となったのは186人だったが、検査している福島医大は「おおむね良性。通常の診療では想定内」とした。
県は県外避難者が検査を受けられるよう、本県を除く46都道府県に検査実施機関を設ける。県内は福島医大以外にも検査拠点を整える。
平成24年度は放射線量が比較的高かった12市町村の15万4894人を対象に検査する。  対象市町村は次の通り。  福島、二本松、本宮、大玉、桑折、天栄、国見、白河、西郷、泉崎、郡山、三春 (2012/04/27 09:54)

「おおむね良性」という不審な表現が気になり、探したら、福島県のHPにこのような書類が出ていた――「第6回福島県「県民健康管理調査」検討委員会  次第
これに今回の甲状腺検査の手続き、結果が出ている。下記は14ページの結果の表を転載した。これを見ると現実には上の報道が与える印象とずいぶん異なることがわかる。

平成23年度 甲状腺検査の結果概要(平成24年3月末日現在)
検査実施総数                                     38,114
判定結果 判定内容                                人数(人)     割合(%)
A判定
A1)結節や嚢胞を認めなかったもの                24,468   64.2%
A2)5.0㎜以下の結節や20.0㎜以下の嚢胞を認めたもの   13,460   35.3%   
99.5%                                                                                           

B判定
 5.1㎜以上の結節や20.1㎜以上の嚢胞を認めたもの          186     0.5%
C判定
甲状腺の状態等から判断して、直ちに二次検査を要するもの    0人    0.0%
〔判定結果の説明〕
・ A1、A2判定は次回(平成26年度以降)の検査まで経過観察
・ B、C判定は二次検査(二次検査対象者に対しては、二次検査日時、場所を改めて通知して実施)
A2判定であっても、甲状腺の状態等から二次検査を要すると判断した方については、B判定としています
(参考)
判定結果                       人数(人)  割合(%)   
結節を認めたもの  5.1㎜以上     184人     0.48%              
                  5.0㎜以下     202人     0.53%      386(1.0%)
嚢胞を認めたもの 20.1㎜以上        1人     0.003%
                 20.0㎜以下   13,379人    35.10%      13,380(35.1%)
 結節、嚢胞両方の所見に該当しているケースも存在
- 14 -
報道されていないのが、検査を受けた38,114人のうち12,460人(35.3%)が、「5.0mm以下の結節や20.0mm以下の嚢胞を認めた」とされることである。「5.1mm以上の結節や20.1mm以上の嚢胞」は186人、二次検査を要するとされている。
北海道深川市立病院内科の松崎道幸医師より以下コメントをいただきました。
1.甲状腺の「結節」には充実性の腫瘍だけを指す場合と、腫瘍とのう胞の両方を指す場合があります。論文によって、定義はいろいろです。
2.今回の福島県調査(事故後12か月まで)では、「結節」と「のう胞」を分けて記述してありますので、「結節」の頻度=充実性腫瘍の頻度とみなすことができます。
3.今回の福島調査の結果を次のようにまとめることができます。:事故から1年後までの検診(18歳以下)甲状腺結節1.0% のう胞35.1
4.過去の諸外国の未成年を対象とした甲状腺検診の結果と対比してこのデータを検討してみますと、
(1)チェルノブイリ・ゴメリ地方(福島市かそれ以上の汚染地域)における山下氏の検診成績 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/bunka5/siryo5/siryo42.htm
1991年5月から1996年4月までの5年間で現地周辺12万人の調査解析を終了。つまりチェルノ事故の5年後から10年後までのデータを見ると、ゴメリ地域のこどもの甲状腺結節検出率は1.74%だった。
ということで、この「甲状腺結節」の頻度が「のう腫」を含む頻度だったなら、福島はチェルノブイリ・ゴメリ地方の36倍も高率に甲状腺の形態異常が発生しているということになります。他方「のう胞」を含まない頻度だったならば、福島県調査とほぼ同じレベルの甲状腺結節出現頻度であると考えられます。ただし、福島調査が放射線被ばくの1年以内のデータである一方、チェルノブイリデータは被ばく後510年経った時点でのデータであるので、「福島では、被ばくから1年経った時点で、チェルノブイリ・ゴメリ地方の被ばくから510年経った時点と同じ甲状腺腫瘍の発生率となっている」と言うことができます。放射線被ばくから年数がたつにつれて、甲状腺がんが増えるわけですから、未だガンかどうかの鑑別が付かないにしても、甲状腺の中に「しこり」が発生することは、将来の甲状腺がんの発生の恐れを示している可能性があるわけで、注意深く追跡する必要があると思います。
(2)慢性ヨード不足地域であるクロアチアの約5500名の1118歳児の甲状腺検診
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1029709/pdf/archdisch00562-0027.pdf
甲状腺結節(結節にはのう胞を含む)検出率は0.055%(アロカ社の超音波装置で検査)でした。これは、福島調査の「結節」+「のう胞」検出率36%の70分の1という超低率です。百歩譲って「のう胞を含まない結節だけ」の頻度=1.0%と比べても、20分の1という低率です。10数年前の調査とはいえ、超音波診断技術にそれほど差があるとは考えにくいわけで、クロアチアよりも福島のこどもたちに甲状腺異常が多発している懸念を払拭できません。
以上の検討から、日本人の「平時」のこどものデータがないために、断定的なことは言えませんが、科学的な手法による福島のこどもたちの甲状腺のモニタリングをしっかり続けることが何よりも必要であると考えます。
松崎道幸


 ★転載、リンク自由です。転載の場合は全文でお願いします。転載先に必ずこの投稿のURLを明記し info@peacephilosophy.com かこの投稿のコメント欄に転載先のURLをご報告ください。
投稿者 Peace Philosopher  時刻1:37 AM 

10 コメント:
ジャーナリスト木下黄太さんのブログに転載されました。
http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/efd6f2ebe6f200c600f47de8c7147290
記録のために報道を記しておきます。

読売新聞
甲状腺検査「おおむね安心な結果」福島途中経過
福島県が全県民を対象に実施している健康管理調査の検討委員会が26日、福島市内で開かれた。18歳以下が対象の甲状腺検査の途中経過が報告され、いずれも「おおむね安心できる結果」であることが報告された。
 甲状腺検査は、3月末までに、南相馬市や浪江町などの3万8114人に実施。うち3万7928人(99・5%)がしこりなどが見つからなかったり、問題ないほど微小だったりした「A判定」だった。小さなしこりが見つかった「B判定」は186人(0・5%)いたが、すぐに治療が必要なほどの異常がある「C判定」はゼロだった。B判定の人については現在、念のため二次検査が行われている。これまでのところ、甲状腺がんを疑われる人はいなかったという。
 県は県外の医療機関に協力を求め、5月以降、県外避難者も子の甲状腺調査、「問題ない」大半 福島県が中間報告現地で検査が受けられるようにする方針。

朝日新聞
子の甲状腺調査、「問題ない」大半 福島県が中間報告
福島県は25日、東京電力福島第一原発事故に関連して、福島県の子どもの甲状腺の超音波検査の途中経過を発表した。事故とは関係ないとみられるが、良性のしこりなどがあって、2次検査が必要な子どもは0.7%だった。 
 被曝(ひばく)が原因で甲状腺がんが発生するのは最低4年は経ってからとされており、今回の調査は、将来、異常が出た場合、事故の影響かどうか調べるためのデータとして活用する。 
 福島県立医大で検査した3765人。問題がない「A」が大半で、しこりなどがあるが、良性の可能性が高い「B」が0.7%にあたる26人、悪性が疑われる「C」判定はいなかった。B判定は、念のため再度の超音波や血液、尿の検査をする。
時事、朝日、読売の報道はいずれも、3人に1人にのう胞や結節が見られたことを、「良性」「微小」といった言葉でごまかして、隠しています。
日本の新聞はすぐにデッドリンクになるので
Web archiving
http://en.wikipedia.org/wiki/Web_archiving
 
の「オンデマンド」を活用すると良いと思います。
Anonymous said...
http://crisis.progoo.com/bbs/ に転載させて頂きました。
よろしくお願いいたします。
Unknown said...
山下俊一教授らのチームが調査した2000年初頭、長崎のデータがあります。7〜14歳の子ども250人中、結節0人、癌0人、のう胞2人、goiter(びまん性の腫大)4人というデータがあります。
山下氏自らが調査した、日本の子どもたちのデータがある事を、彼らは隠しているだけです。
公表すれば、福島のデータの異常さが、あまりにも明らかだからです。
Peace Philosopher said...
上記論文入手しました。
長崎とチェルノブイリ比較:子どもの尿中のヨウ素レベルと甲状腺の病気
Urinary Iodine Level and Thyroid Diseases in Children;
Comparison Between Nagasaki and Chernobyl
https://docs.google.com/file/d/0B6kP2w038jEAQklDRlpNdk5RN2s/edit
urasimadoctor said...
貴重な情報ありがとうございます。
http://blog.livedoor.jp/home_make-toaru/archives/6177881.html
に前文引用させていただきました。
nYo said...
nYoと申します。
記事を小生ブログにて転載させて頂きました。
何卒、宜しくお願い致します。
合掌
Anonymous said...
yahoo JAPAN!の hayのブログ に転載させていただきました。貴重な情報をありがとうございます。
この投稿へのリンク
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