2012年8月29日水曜日

【海外論調】カール・グロスマン「フクシマをおおう死の沈黙」



カール・グロスマン「フクシマをおおう死の沈黙」
Karl Grossman: The Deadly Silence Over Fukushima
Written By: Website Administrator 2012-08-28 Categorized in: Fukushima
KARL GROSSMAN l CounterPunch  2012-08-27
福島原発惨事の隠蔽工作のさなかにあって、キムバリー・ロバーソンKimberly Robersonの『強いられた沈黙、フクシマの死の灰…ある母親の反応(仮題)Silence Deafening, FukushimaFallout…A Mother’s Response』という本は、とても不都合な真実の警鐘を鳴らす。 
同書は69ページとかなり短いものながら、破局的状況の核心――2011年に福島第一原子力発電所で相次いだメルトダウン、果てしなく続く放射能漏出――そしてメディアと官僚の沈黙を突いている。
AF(フクシマ後状況)において、地震、メルトダウンと津波の後の沈黙は、ほんとうに耳をふさがれたかのようであり、わたしがこれまでに経験したどんなものとも違っている。超現実的な“トワイライト・ゾーン”との比較すら、避けがたいほどである」と彼女は書く。「わたしが知ったことを知りながら、そういう事実がメディアや選良たちに完全に無視されているのを見ていると、ある種の悪夢の質を帯びてくる」
「福島第一原発事故の真実な重大さを理解するには、1986年のチェルノブイリ核メルトダウンの影響がいまだに理解への途上にあるのと正しく同じように、これから何十年もかかるかもしれない」と彼女はつづける。「本書は、わたしが真実を学び、さらにこれについて、わたしなりのささやかな方法でなにかをしようとする試みの物語である」
ヴィジョントークVisionTalkによって出版された同書は、非常に私的な内容のものであり、ひとりの母親の視点から書かれている。またロバーソンは核テクノロジーの恐怖についてよく学んでもいる。
彼女は1986年にワシントンDCのグリーンピースで働いていて、「チェルノブイリ核惨事現場の近くから、はなはだしく奇形になった家畜の写真を郵送してきた農民の手紙」を開封したことから、事情の関連付けに心得がある。「それらの画像が後にタイムやニューズウィークといった雑誌に掲載され、この史上最大の核災害に対して世界の眼を開く役に立った」
彼女は、放射能とその他の原因による汚染の主要な帰結――癌――について、またどれほど「それが蔓延的な割合に達しているか」について書く。
チェルノブイリ原発災害に関して彼女は、事故の25年後にニューヨーク科学アカデミーによって刊行された――恐ろしい影響の目録を備えた――画期的な書籍『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』の英語版Chernobyl:Consequences of the Catastrophe for People and the Environmentに言及している。ロシアのアレクセイ・ヤブロコフ博士Dr. Alexey Yablokovを中心とするヨーロッパの科学者グループによって書かれた同書は、入手可能な医療データにもとづき、チェルノブイリからの死の灰の結果として、世界中の100万人近くが死亡したと結論付けている。
Kimberly Roberson
ロバーソンは次のように書く。「チェルノブイリでは、ひとつの原子炉がかかわっていた」が、それにひきかえ「福島では、4つの原子炉であり、311日にはじまった災害から1年近くたった本書執筆時になっても、作業員たちはいまだに放射能を封じこめるために苦闘している」

同書には、「彼らは先ず、あなたを笑い者にする。次に、無視する。そして、あなたに敵対する。すると、あなたが勝つ」といったガンジーのことばなど、引用句の小休止が散りばめられている。だが、原子力に勝つのは、いまだにはるか先のことだ。ロバーソンは、2011年春、「時おりのインターネット爆弾発言は別にして」…いかに「福島をめぐってメディアの耳を塞ぐような沈黙が圧倒していた」かを書く。
それでも、彼女は行動に打って出てきたし――それについて書いている。請願署名運動をおこなったし、彼女の居住するカリフォルニア州で放射能が検知されるにおよんで、フクシマ放射性降下物認識ネットワークFukushima Fallout Awareness NetworkSILENCE DEAFENING)が発足した。
「幼い子どもたち、年配の人たち、免疫不全の人たちがとりわけ危険にさらされているが、福島第一は、チェルノブイリと同じように全地球規模でこれからの幾世代にもわたり、わたしたちに影響をおよぼすだろう」とロバーソンは書く。「わたしたちがはっきり知っていることのひとつは、わたしたちが原子力の分かれ道に立っているということである」
ロバーソンの本は、方向を決めるのに、つまり死のテクノロジーから遠ざかるのに役に立つ。
[筆者]
ニューヨーク州立大学ニューヨーク校のジャーナリズム科教授、カール・グロスマンKarl Grossmanは、書籍The WrongStuff: The Space’s Program’s Nuclear Threat to Our Planetの著者。グロスマンは、メディア監視グループ「報道の公正さと正確さFairness and Accuracy in Reporting (FAIR)」の共同世話人。「絶望:バラク・オバマと幻想の政治Hopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion」寄稿者。.

0 件のコメント:

コメントを投稿