2014年8月17日日曜日

カウンターパンチ【海外論調】フクシマの健康危機~新たな研究が必要とされる理由

HP: http://www.counterpunch.org/
201481日~3日週末版
フクシマの健康危機新たな研究が必要とされる理由
by JOSEPH MANGANO and JANETTE SHERMAN
フクシマ核惨事から3年以上たったが、日本人がこうむる危害に関して、健康研究は実質的に実施されたり、発表されたりしていない。国連委員会が4月に公表した報告は、災害による有害な影響は「考えにくい」として、問題をひたすら闇に葬り去ろうとした。
国連委員会は、この史上最悪(またはチェルノブイリ以降で最悪の核惨事について、非常に幅広く仮定を設け――あえて、この事前研究を実施したのだ。だが、現地の健康調査は警鐘を打ち鳴らしている。福島県立医科大学によれば、現地の子どもたちの46%に前癌症状的な結節または嚢胞(のうほう)が認められ、甲状腺癌は3人の発症予測数に対して、130人(訳注)が発症していることがわかっている。信じられないことに、大学はメルトダウンがこれらの高い数値になんの寄与もしていないと断言して、科学を歪めている。
(訳注)これまでに福島県の県民健康調査検討委員会が公表した子どもの甲状腺癌のデータは次のとおり――
悪性ないし悪性疑い 90
(手術 51 人:良性結節 1 人、乳頭癌 49 人、低分化癌疑い 1 人)
出典: http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/65174.pdf
だが、日本の研究は子どもの甲状腺疾患の枠を超えて、もっと広範な分野で実施されなければならない。メルトダウンによるフォールアウトは北半球の全域にわたって拡散したので、日本だけが研究現場であるとは限らない。
われわれは2011年に、放射性降下物レベルが最高だったフクシマ事故後14週間におけるアメリカの死亡数を――1986年のチェルノブイリ事故後の数値とほぼ同じ――13,983人と予測した。われわれは当時、入手可能な死亡試料だけを用いたのであり、その死亡の原因がすべてフォールアウトであると結論しないようにと但し書きを付しておいた。
今週、確定数値が入手可能になった。2010年から2011年にかけての死亡数変化は、フクシマ事故後4か月間が+2.63%であり、それに対し、その他の期間が+1.54%だった。この差分は9,158人の過剰死亡数に該当する。これは予測値の13,983人ほどではないが、それでも大変な突出である。
今回もまた、フクシマ事故だけがこれらの死の原因であるとは断定しないが、いくつかの興味深い傾向が浮かび上がる。太平洋・西海岸の5州は、フクシマ事故由来のフォールアウトが全米で最高レベルであり、過剰死亡数がとりわけ多い。その隣の5州(アリゾナ州、アイダホ州、モンタナ州、ネヴァダ州、ユタ州)はその次に高いレベルのフォールアウトに見舞われ、やはり過剰死亡数が多い。
2011年春季における死亡数増加の大多数は、80歳以上の人たちの分だった。彼ら年配者の多くは体調がすぐれず、ひとつの可能性として、放射性毒物による被曝の追加分が死に至る過程を加速したのかもしれない。
フクシマ事故由来放射能は、自然界に存在しない100種の化学物質を放出する原爆の爆発によるフォールアウトと同じである。放射性化学物質は、食物連鎖に入り込んで蓄積した結果として、体に入る。これらの粒子が体内にはいると細胞を損傷したり、殺したりし、病気または死を招く。
かつて懐疑的だった防疫当局者らが、いまでは低線量といえども放射線は有害であると認めている。研究によって、妊娠中の女性の腹部にエックス線を照射すると、子どもの癌死亡リスクが高まることが示され、このような診断は実施されなくなった。ネヴァダ核実験場からのフォールアウトは212000人に達するアメリカ人の甲状腺癌の原因になった。核兵器工場労働者は、多数の癌にかかるリスクが高い。
調査にもとづかない仮定を根拠とする国連委員会のやりかたではなく、日本人の疾病および死亡率に関する医療調査が――いまや、日本全国で――必要とされている。韓国、中国、ロシア東部、アメリカといった国ぐにでも同様な研究を実施すべきである。フクシマの健康被害を知らないままでは、そのような災害が将来に繰り返されるだけである。
【筆者】
ジョセフ・マンガノ(Joseph Mangano)は、放射線公衆衛生プロジェクトの事務局長。
ジャネット・D・シャーマン(Janette D. Sherman)医学博士は、内科医、毒物学者、”Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment”(『チェルノブイリ~人間と環境に対する惨事の影響』)の編集者。

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