2014年11月30日日曜日

【海外報道】英文版から「性奴隷」表現を撤回 政権与党に忠勤ぶりを示す讀賣新聞



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日本の新聞、戦時報道から「性奴隷」表現を撤回
東京:ジャスティン・マッカリー Justin McCurry
ガーディアン The Guardian 20141128
強制されて売春慰安所で働かされた女性たちを自主的な売春婦と表現する企ては、主流の歴史認識に逆行する
第二次世界大戦中に日本の売春慰安所で強制的に働かされた女性たちの肖像を掲げる支援者たち。
Photograph: Toru Yamanaka/AFP/Getty Images
第二次世界大戦の戦前と戦中に日本軍の売春慰安所で強制的に働かされた何万人もの女性を書き表すのに「性奴隷」という言葉を過去に使っていたとして、販売部数が日本最大の新聞が謝罪した。
1日あたり1000万分以上の販売部数がある保守系フルサイズ紙、讀賣新聞の動きは、日本の戦争中の歴史を書き換え、アジア大陸における行動を好都合な色付けをして描くという政府主導のキャンペーンに、日本のメディア界が同調しているという懸念を掻きたてた。
女性たちを民間の仲買人に雇われた自主的な売春婦として描こうとする修正主義者らの企てのために、多くの犠牲者を出した韓国と日本政府の関係が難しくなった。日本の安倍晋三首相は就任以来、韓国側の朴槿恵大統領との二国間首脳会談をまだ開催していない。
讀賣新聞は日本語版英語版の両方に掲載された謝罪文で、「いわゆる慰安婦」の語句を使いつづけると言っており、評論家たちは、これがさらに曖昧な言い回しであり、女性たちの苦境を軽視しているという。
主流の歴史家たちや海外メディアは、1945年の日本敗戦まで前線の売春慰安所で強制的に働かされた――大半が朝鮮半島出身の――20万人もの女性たちを叙述するのに「性奴隷」を使っている。
讀賣は、英字紙「デイリー・ヨミウリ」、現ジャパン・ニューズが2013年まで、10年以上も「不適切な」表現を何度も繰り返し使っていたといった。同紙は、編集方針の変更は外部からの圧力によるものでないという(訳注:この一文は英語版のみ)
リベラル派の朝日新聞が9月、1990年代に掲載した戦時性奴隷に関する記事数本を撤回したとき、日本の歴史修正主義者たちは大いに追い風を受けた。
その報道は、元兵士の吉田清治氏が韓国の南の済州島で女性たちが軍の売春慰安所で強制的に働かせるために連行されるのを見たという虚偽証言にもとづいていた。2000年に死去した吉田氏は、学界や新聞他社による独自調査によって信用性を疑われていた。
朝日新聞は幹部が辞職し、その編集方針の信頼性をめぐって、讀賣などの保守派ライバル紙による止むことのない攻撃の的になった。
讀賣は、軍隊が女性たちを強制した証拠がないという指導的な保守政治家たちの主張と歩調を合わせて、以前の言い回しは、性奴隷化が公的な戦時政策だったという間違った印象を与えたといった。
讀賣は28日付けジャパン・ニューズに掲載した謝罪文で、「読売新聞は、誤解を招く表現を使ってきたことをおわびし、記事データベースでも該当の全記事に、表現が不適切だったことを付記する措置をとります」と述べた。
同紙は、1992年から2013年にかけて、「性奴隷」など「不適切な表現」が書かれた計97本の記事をあげた。
政権与党、自民党の忠実なサポーターである讀賣は、日本語の本紙には「性奴隷」が使われたことはないという。
「関連知識のない外国人読者には『慰安婦』(comfort women)という表現が理解困難だった。そのため、外国通信社の記事を参考に『性奴隷となることを強制された慰安婦』などと、読売本紙にはない説明を、誤った認識に基づき加えていた」と同紙はいう。
安倍氏は、朝日新聞が――そして、朝日の虚偽報道にもとづいているとされる海外メディアの性奴隷問題報道が――日本の国際評価を損なっていると非難してきた、指折りの保守政治家である。しかし、彼は女性たちに謝罪した1993年の政府談話を改訂することを思いとどまった。
しかしながら、主流の歴史家たちは、朝日が最近になって記事を撤回したからといって、日本の戦時内閣と軍部が女性たちに対する強制に関与していたという彼らの論点が無に帰するわけではないと指摘している。


International New York Times
ニューヨーク・タイムズ国際版

日本の新聞 「性奴隷」表記を謝罪
ジョナサン・ソーブル JONATHAN SOBLE 20141128
【東京】日本で発行部数が最大の日刊紙、讀賣新聞は、歴史家の多くが第二次世界大戦中、日本軍に管理されていた大規模な売春慰安所ネットワークで強制的に働かされていたという女性たちに対して「性奴隷」という用語を使っていたと謝罪した。
讀賣新聞は歴史家たちや韓国と中国の両政府が掲げる見解に挑んで、この表現が――婉曲的に慰安婦と表現される多国籍の――女性たちが自分の意志に反して連れてこられたと思わせるので「不適切」だったという。同紙は「政府・軍による強制を客観的事実であるかのように」記述したのは不適当だったともいう。
讀賣新聞が28日付け記事で、その英語版紙が20年以上にわたり「性奴隷」表記を使っていたことを謝罪したのは、日本の戦争中の行動に関し、同紙から見て過剰に否定的な表現を訂正する紙上キャンペーンの一環である。
讀賣新聞はここ数か月、日本軍による第二次世界大戦中の性的虐待に関する朝日新聞の誤報道をめぐって、このリベラルなライバル紙を攻撃してきた。朝日新聞は1980年代から1990年代にかけて、戦争中、朝鮮の女性たちを誘拐し、日本軍の売春慰安所に強制連行したという男性の記事を掲載していた。その男がウソをついていたことが判明し、朝日新聞が8月に関連記事を撤回すると、讀賣新聞はこの機に乗じて、これは日本の国際社会での評判を損なう「極めて重大な」間違いであると攻撃した。
日本の戦時期歴史をめぐる論争は、2012年に政権を奪還した文化的に保守派の首相、安倍晋三氏の登場とともに熾烈になった。安倍氏は、過去の誇りある日本を取り戻すことを政治生命をかけた中心課題とし、その前途に立ち塞がると信じる報道機関に介入する意欲を露わにしてきた。彼は朝日新聞の売春慰安所報道を公然と批判し、日本の国営放送、NHKの経営委員会に人を送りこんだ。
讀賣新聞の渡辺恒雄会長は安倍氏の緊密な盟友であり、同紙は首相の忠実な後ろ盾になっている。謝罪とはいっても、保守の風潮を曲げることがないのは、その力を煽るのと同様である。批評家たちは、罪の告白を装った政治声明を感じ取っている。
東京、上智大学の政治学者、中野晃一氏はツイッターで、「読売記事は、安倍政権の意向を反映していると見て間違いない」と発言した。
謝罪記事は讀賣本紙の日本語版、それにかつて「デイリー・ヨミウリ」と称し、いまは「ジャパン・ニュース」と呼ばれる英字紙に掲載された。それには、「ジャパン・ニュースは、誤解を招く表現を使ってきたことをおわびし、記事データベースでも該当の全記事に、表現が不適切だったことを付記する措置をとります」と書かれている。
讀賣新聞は、日本語の記事では「性奴隷」や他の類似表現を使ったことがなく、単純に慰安婦と表記しているが、「『慰安婦』(comfort women)という表現が関連知識のない外国人読者には理解困難だった」ため、英語版記事にこうした説明を加えたという。
(この記事の紙面版は20141129日付けニューヨーク発行版A7ページに“Newspaper Is Sorry for ‘Sex Slave’ References”のタイトルで掲載)
【関連ツイート】
従軍慰安婦報道で『非国民』とか『売国』などと朝日新聞を激しく攻撃していた読売新聞社ですが、読売本社の記事を英訳して発行している英字紙「デイリー・ヨミウリ」(現ジャパン・ニューズ)が20年以上(19922013年)も『性奴隷』(sex slave)と報道していたことが発覚。読売新聞はこっそり28日付け朝刊に謝罪・訂正記事を小さく掲載した。
ところが、何故か日本のメディアは一切報じない。
安倍晋三が主導したらしい、摩訶不思議なこの従軍慰安婦(sex slave)での『朝日バッシング』の被害者である朝日新聞社さえ一行も報じない徹底振りである。
読売新聞社の28日付け社会面の『お詫び記事』反応したのは日本国内のメディアでは無く、外国の新聞社であった。 


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しんぶん赤旗:読売の「性奴隷」撤回記事に批判 各国メディア「政府に加担」

読売新聞11月28日付が、同社の英字紙「デイリー・ヨミウリ」(現ジャパン・ニューズ)がこれまでに掲載してきた「慰安婦」問題に関する記事で、「性奴隷」という表現を使用したことを「不適切」だと謝罪しました。これを、世界各国のメディアは、安倍政権・自民党の策動と軌を一にしたもので、「政府主導キャンペーンへの加担」と厳しく指摘しています。

 英紙ガーディアン(電子版)28日付は、「売春宿で働くよう強制された女性たちを、望んで売春婦になったと描く企ては、歴史に関する主流の見解とは相いれない」との副見出しを付けて報道…

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讀賣新聞:本社英字紙で不適切な表現…慰安婦報道でおわび

いわゆる従軍慰安婦問題の報道で、読売新聞発行の英字紙「デイリー・ヨミウリ」(以下DY、現ジャパン・ニューズ)が1992年2月から2013年1月にかけて、「性奴隷」(sex slaveservitude)など不適切な表現を計97本の記事で使用していたことが社内調査で明らかになりました。

 読売新聞は、誤解を招く表現を使ってきたことをおわびし、記事データベースでも該当の全記事に、表現が不適切だったことを付記する措置をとります。本日付ジャパン・ニューズにもおわびを掲載し、ウェブサイトで対象記事のリストを公表しています。

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Apology for inappropriate expressions used in comfort women articles

The Japan News

An in-house review has found that The Daily Yomiuri (hereafter referred to as the DY, and now The Japan News) used “sex slave” and other inappropriate expressions in a total of 97 articles from February 1992 to January 2013 in its reporting on the issue of so-called comfort women.

The Japan News apologizes for having used these misleading expressions and will add a note stating that they were inappropriate to all the articles in question in our database. We also have a list of the articles on our website (the-japan-news.com).

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英紙ガーディアン【評論】世界の #核兵器 を廃絶しなければならないわけ

The Guardian


世界の核兵器を廃絶しなければならないわけ
Why we must rid the world of nuclear weapons
歴史に核のニアミス事故が散在している。イランの核保有を容認すると、世界平和とイラン国民を共に脅かすことになる。
エリック・シュローサー Eric Schlosser






The Guardian  20141127
危険なゲーム:1954年、ビキニ環礁で実施されたアメリカの核実験。Photograph: Corbis
イランを相手の核交渉について、多くのことが書かれてきた。外交が大きく注目されているが、些末事のなかに見失われていることがあまりにも多い重要な問がある――なぜ、イランは爆弾を持ってはならないのか? 筆者の意見では、答はとても簡単だ。核兵器を装備したイランは、世界平和だけでなく、イラン国民にとっても脅威になる。
核兵器が民間の標的に対して使われた最後のできごと、長崎の破壊から70年たった。冷戦は相互核攻撃なしに終結し、核テロの危険は今のところ、推測の域を出ない。1945年以来、核の破局が起こらなかったという事実は、起こらなかったので、起こらないだろうという信念を助長してくれる。あるいはいっそのこと、起こりえないのだ。影響力のあるアメリカ人学究、ケネス・ウォルツは、核兵器の拡散はいいことだ、核兵器を獲得する国が増えれば増えるほど、よくなると考えた。「平和を愛好する人たちは核兵器を大好きになるべきだ。発明されたもののなかで、決定的に使用そのものを封じこめる唯一の兵器なのだ」と彼は論じた。
核兵器は保有諸国間の交戦を思いとどまらせ、国際関係を安定させ、世界の指導者たちにもっと注意深くなるように促すというウォルツの論点に、いま賛同する学者は多い。この論議はじっさい、核兵器保有諸国の現代外交史を正確に叙述している。だが、それでも未来については、なにも明らかにしていない。これは真実だ――が、それも真実でなくなる、ある日までのこと。
核兵器を所有する国はすべて、それに内在する問題に対処しなければならない。それは今までに発明されたもののなかで最も危険な機械であり、技術と行政の両面の理由で、極めて管理が困難である。また、核兵器を管理する人間にも同じことがいえる。米国はこの技術を考案して、完成し、他の国ぐによりも多くの経験を積んできたが――それでもなお、アメリカの核兵器でアメリカの都市を破壊する偶発事故の寸前にまでなったことが夥しくある。半分近くの核保有諸国における不安定な政情が、危機の潜在的な根源になってきた。ほんの一瞬の政策決定が、一度ならず世界を核戦争の間際に追い込み、辛うじて事なきを得た。
ペンタゴンは、アメリカの核兵器関連の重大な事故は32件だけだと久しく主張してきた。だが、筆者が情報公開法によって入手した公文書には、1950年から1968年までのあいだだけで、米軍の核兵器関連の事故が千件以上もリストアップされている。事故の多くは瑣末なものだった。その他のものは、公式リスト記載の事故のいくつかよりも、本格的な核爆発にいたる可能性が高かった。
見た目には些細なことが、惨事につながりうる。B52爆撃機の機体内でビスから脱落した小さな金属ナットが新たな電子回路を形成して、それが安全スイッチを迂回路になり、4発の水素爆弾を完全発射待機状態に入らせた。ミサイル・サイロで不具合のある侵入者警報機を点検していた保守技術兵が、ドライバーで間違ったヒューズを抜き取って、ショートを起こし、ミサイルから弾頭を吹き飛ばした。B52のコックピット内で、うかつにも排熱通気口の近くに収納されていた4枚のゴム製シート・クッションが発火して、それが機体に燃え移り、乗員たちを真夜中の脱出を余儀なくさせ、米軍指折りの重要極秘軍事施設で水爆を爆発させかねなかった。
他の核保有諸国は安全性が大幅に劣る設計の核兵器を製造した。サダム・フセインが核兵器を造っていたなら、彼の敵よりもバグダッドにとって脅威になっていただろう。ある国連査察官はイラクの兵器設計について、「ライフル弾が命中すれば、破裂しかねませんでした。それがこのデスクの端から落っこちるとしたら、わたしはその周辺にいたいと思いません」と語った。
イランは5年前、大規模なデモで緊張していた。デモクラシーを求める「グリーン運動」は手荒く抑圧された。政情不安と核兵器は両立しない。フランス国防省の元職員で核拡散の専門家、ブルーノ・テルトレによれば、目下の核保有9か国のうち、4か国は「何らかの形で核安全保障および/または核使用規制に影響する政情不安を経験したことで知られている」。
テルトレと元ペンタゴン職員のヘンリー・ソコルスキが編集した最近の書籍“Nuclear Weapons Security Crises”(『核兵器安全保障の危機』)は、「1961年春、ド・ゴール大統領に対するクーデターを企んでいたフランス軍将官たちが、フランスがアルジェリア砂漠で実験しようとしていた核爆発装置の奪取を試みた経緯を描写している。「あなたのちっぽけな爆弾を爆発させるのは、ご遠慮いただきたい。われわれのために残しておくのですな。いつでもそれは役に立ちますので」と将軍のひとりが実験任務にあたっていた司令官に説いた。ド・ゴールは予定よりも早く装置を爆発させるように命令し、クーデターは不首尾に終わった。
中国の文化革命のおり、紅衛兵の一団が人の居住する区域の上空の航空路に向けて――極めて危険なことに、たぶん公式指令のないまま独断で――核弾頭ミサイルを発射した。1991年夏の数日間、ソ連の核兵器を統制する手持ち型の小さな装置3セットの全部が、権力掌握とミハイル・ゴルバチョフ大統領打倒を図る軍将校たちの手中にあった。また、世界最速で成長する核兵器を保有する国家、パキスタンでは、1960年代末以降、クーデターが3度勃発し、1980年代末以降、4人の首相が権力の座から追放され、イスラム主義叛徒たちが政府打倒を誓っている。
極上の善意と真摯な思いで核戦争を避けたいと願っても、兵器システムの複雑さ、通信システムの信頼性欠陥、人間の過ちやすさが惨事を招きかねない。キューバのミサイル危機のさい、ジョン・F・ケネディとソ連指導者のニキータ・フルシチョフは衝突回避に全力を尽くした。それでも、彼らの識見と統制を超えた事象――誤ってソ連領空内に迷い込んだアメリカのU2スパイ機、ケネディによる認可のない米軍弾道ミサイルの発射試験、核兵器使用権限の在キューバ・ソ連軍司令官たちとソ連軍潜水艦・艦長たちへの移譲――が、どちらの指導者も望まない戦争を十中八、九、勃発させそうになった。キューバの沖合で19621027日、米軍がソ連軍潜水艦に浮上を強いるために演習爆雷を投下したとき、潜水艦の責任を預かる士官3名のうち、2名が核兵器発射で応戦する方に賛成した。彼らは潜水艦が攻撃されていると誤認したのである。副司令官、ヴァシリ・アルキポフは核兵器使用権限の付与を拒否し、決定は全員一致でなければならなかった。アルキポフの拒否が世界初の核戦争を阻止したのである。
イランの技術、政治、統率力の課題を考えると、核兵器の追求は、惨事への招待状に思える。おまけに、イランは1970年に核拡散防止条約に署名している。核爆弾の獲得は条約の侵犯になり、他の国ぐにの条約侵犯を促し、イスラエルの核施設に対する国際査察の受け入れを思いとどまらせることになる。中東における核軍拡競争は、地域のすべての国ぐにを危険にさらす。核爆発の影響は国境線にかかわりなく広がる。また核兵器保有によって、イランは他の核保有諸国の標的になる。
来月の初め、150か国の当局者らがウィーンに集まり、人道に対する核兵器の影響と核兵器禁止条約に関して議論する。20世紀の世界は、幸運にも核のアルマゲドンを回避した。21世紀になって、核兵器は民間人を殺害したり脅迫したりするのに役立つだけであるという、新しい国際世論が浮上しつつある。核兵器の数は、いつの日か、ゼロに達するという目標を掲げて、削減しなければならない。新たな核軍拡競争、新たな核保有諸国、核拡散防止体制の崩壊は、この目標に対するアンチテーゼ(反定立、逆行)になる。
他にも理由は多くあるが、これが、イランが核爆弾を保有してはならないわけである。


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1986年10月3日、それは起こった。バミューダ沖で火災を起こし沈んだ旧ソ連原潜事故の真相を、旧乗組員がついに明かす。米ソ間の緊張感が高まっていた矢先のその事故がもたらしたものは…


2014年11月29日土曜日

【米国ローカル報道】市民グループが原発周辺で放射線レベル急上昇を検出

教訓:①市民の監視が大事、②原発は事故でなくても放射能を放出する。

市民グループが原発周辺で放射線レベル急上昇を検出
TAURO: Radiation monitoring shows startling spikes
ジャネット・タウロ Janet Tauro 20141127
市民グループがニュージャージー州レーシーのオイスター・クリーク原子力発電所の周辺地点の空間放射線量をモニタリングしている。
ニュージャージー州レーシーのオイスター・クリーク原子力発電所から日常的に周辺地域に放出されるリアルタイムの放射能レベルについて、連邦当局者やオーナー企業が地域説明会を開いたり、公表したりした最後の日はいつだったのだろうか?
そんなこと、あったのか?
答えに窮する設問である。だからこそ、市民グループが今年3月、全米規模の放射線監視ネットワークに参加したのである。グループは原発から半マイルないし40マイルのさまざまな地点の空中放射線レベルを記録している。コンピュータに接続した放射線検出器を使って、データは全米データベースに転送され、スプレッドシートに入力される。
市民たちが個人献金とパタゴニア財団助成金を資金として維持されたプロジェクトの期間中にオイスター・クリーク周辺地域で記録した1分間放射線計測値データは100万件に迫ろうとしている。
データは驚くべきものだった。放射能放出量が突発的に急増したできごとが2度あった。7月に起こった計画外の高温停止、そして10月に実施された年に一度の燃料交換のあと、送電を再開したときである。
天然起源の放射線はどこにでもあり、1分毎の変動は普通のことである。背景放射線には、エックス線やCAT検査の放射性物質を使う医療検査施設から拾うものも含まれ、宇宙線もある。
しかし、すべての核施設から放出される放射能は、核分裂反応の副産物としてのみ存在する放射性同位元素の混合物なので、背景放射線とは違っている。このような放射性同位元素で被曝すると、体のDNAに影響がおよぶことがあり、癌、遺伝的欠陥、流産のリスクが高くなる。放射性の放出物は、匂いも、色も、味もなく、五感で検知できないので、世間はたいがい放出に気づかない。
オイスター・クリーク原発が稼働している限り、低レベル放射能は放出されつづける。プロジェクト期間中に記録された放出物の計測値が連邦規制限度を超えることはなかったが、1990年代末から続けられてきた米国科学アカデミーの画期的な研究の成果、一般にBIER VIIと呼ばれる報告書は、継続的な低レベル放射線被曝に安全といえる量がないと記している。
市民グループによる検出にはさまざまなタイプの放射線が含まれ、施設周辺の地域社会の典型的な背景放射線のパターンを読み取ることができる。原発から最も遠く離れ、しかも風上に設置された検出器はコントロール(統計比較対照区)計測に使える。その地点の検出値は最低だった。
7月の9日間のあいだ、原発が想定外の高温停止に陥り、同時にグループ参加者たちは一定期間持続して急上昇した検出値を記録した。原発から半マイルの地点の検出値は通常パターンより43パーセント跳ね上がった。燃料交換中の上昇率は30パーセントに達した。(急上昇[spike]とは、全米プロジェクトの定義によれば、10分間以上の平均放射線計測値が通常平均値よりも22パーセント以上上回ること)
8か月のあいだで、7月のできごとほどに計測値が大きく跳ね上がったことはない。興味深いことに、ニューヨーク州タリータウン、インディアン・ポイント原発の周辺の別な市民監視グループが今年の夏、その原発が計画外の高温停止に陥ったときに同じような急上昇を記録している。
急上昇を原発以外の原因のせいにできるだろうか? そうかもしれないが、どれほどの可能性があるのだろうか? ラドンや宇宙線は通常、時間の経過とともに少しは変動する。空中に漂う医療用エックス線だろうか? 誰にわかるというのだろう? 検出器の設置場所は何マイルも離れている。それぞれの検出器が同時一斉に急上昇を記録し、最高値は原発に最も近接した地点で記録された。40マイル離れたコントロール用検出器は急上昇を記録しなかった。
確かに言えることとして、連邦原子力規制委員会は原子力発電所からの放射性放出物のモニタリング・システムを独自に構築すべきであり、そのデータをリアルタイムで公開し、一般人が容易に知ることができるようにしなければならない。現在、企業が自社の放出をモニターしており、データを規制委に送って、検査を受けている。さまざまな州の市民たちが自分たちのこととして、みずからデータを集めているのも、不思議なことではない。
原発が稼働してきた45年間、相当な量の放射能が環境中に放出された場合があってきたが、原発事業者や連邦規制当局から中身のある通知や説明はとんとなかった。
一般市民は、容易に閲覧できるリアルタイムのデータ、腹蔵のない議論、献身的な選出公務員を享受するに値する。だが、これが実現する日を待つのではなく、市民がみずからの実力を磨き、気軽にデータを集め、いつの日か、わたしたちの命、そして子どもたちの命にとても大きな影響をおよぼす人物たちに、説明責任を今以上に果たしてもらわなければならない。
【筆者】
ジャネット・タウロJanet Tauroは、Clean Water Actionニュージャージー州代表、GRAMMES(エネルギーの安全を求める祖母、母、その他の人たち)の創立メンバー。



写真出処:
CLEAN WATER ACTION >

Series of Cover-Ups Undermines Faith in Exelon




オイスター・クリーク原子力発電所


インディアン・ポイント原子力発電所