2015年7月9日木曜日

アルジャジーラ「ガザで生まれ育って~ パレスティナの10代女性 @Farah_Gazan の青春」

 ALJAZEELA

ガザで生まれ育って~パレスティナ10代女性の物語

17歳のファラ・バケルは、三度の戦争を生き延び、それでもパレスティナ人の権利を求めて戦うためにガザに残りたいと願う。

ファトマ・ナイブFatma Naib 201577

「友だちに会えば、ぶらついたり、映画を観たり、海辺を散歩したりします」。[Farah Baker/Al Jazeera]

 

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「今でも爆弾の音を憶えています」と、ファラ・バケルはささやくようにいう。

この名前に聞き覚えがあるなら、このガザ地区の17歳の女性が昨年夏、イスラエル軍の攻撃によってもたらされた地区の惨状を記録するのに貢献したからなのかもしれない。

当時、16歳だった学校生徒はツイッターで“Guess what”を名乗り、彼女が目撃した死と破壊の光景を――一回140文字の制限付きで――世界に伝えていた。

彼女のツィートは急速に拡散された。

[メッセージ「わたしはファラ・バケル、16歳のガザの少女です。生まれてから三度の戦争を生き延び、もうたくさんだと思います」]

彼女は50日戦争が勃発してから1年後のいま、こういう――

「わたしのツィートに圧倒的に肯定的なレスをいただいたものだから、びっくりしました。ほんの数週間でフォロワー数が800から200,000に跳ねあがりました。

「みなさんも真実を知りたいのでわたしをフォローしてくださるのだと気づきました。

「政治は話題にしませんでした。わたしの戦争中の暮らしについて書いただけです」と、彼女は説明する。

暮らしを語ることは、絶えることのない死の恐怖とともに生きることがどのような感じがするか、生身のまま伝えることだった。

「民間人が標的にされ、わたしたちみなは、いつ死んでもおかしくないと感じていました。

「爆発と鳴り響く救急車のサイレン…いまでも憶えています。なにもかも憶えているのです」 

 今夜、わたしは死ぬかもしれない

「わたしたちは攻撃されていました…ガザで起こっていることを世界に知ってもらいたかったのです」


バケルは、欧米メディアがイスラエル側についており、2,200人以上のパレスティナ人を殺し、50万人以上に避難を余儀なくさせた戦争中のできごとについて、「不公正な」描写を伝えていると信じていた。

そこで彼女はツイッター・アカウントを取得し、自宅の発電機を活用した。

ほぼ絶え間ない停電のため、ガザ住民が外部世界と通信する手段を奪われていたので、バケルはこの通信を途絶えさせない使命をみずからに課した。

彼女は戦況が推移するさなか、絶え間ない爆撃音がわが身を襲う様相をツィートし、彼女の居住地周辺の絶え間ない爆撃のようすを撮影したビデオを投稿した。

彼女は最も鮮明な印象が残るツィートのひとつに、「これはわたしの地域。泣くしかない。今夜、わたしは死ぬかもしれない」と書いた。


 [メッセージ「3:00am、まだ暗いはずだが、ご覧のように照明弾が暗闇を明るくしている」]

そして、このツィートのために彼女がイスラエルの注目の的になったとバケルはいう。ツイッターで何人かのイスラエル人に何度も脅されたのである。「俺たちはお前を見つけ、爆弾を落とす。お前のやっていることをやめるんだ(と、連中はいったのです)」と、彼女は説明する。
だが、彼女がいうには、脅迫は彼女の――あるいは彼女の両親の――勇気をくじかなった。外科医である父親と医師である母親は危険であっても、自分たちの娘を支えた。

最も恐ろしい一日

最近、ガザのカトリック学校を卒業し、いつの日か、法律家になりたいと願っている、この10代の女性は、三度の戦争を生き延びてきた。だが、なんといっても最近の戦争が「最も恐ろしかった」と、彼女はいう。

そして彼女は、その最も恐ろしい戦争の最も恐ろしい一日を、まるで昨日のできごとのように憶えている。

それは728日のできごとであり、ガザのバケル家に近接したシーファ病院周辺の砲撃は情け容赦のないものだった。

「砲撃が止みませんでした。家が崩れるかと思いました。

「あの日、きっとわたしは死ぬのだと思いました。朝、目が覚めたとき、生きていたので、びっくりしました」

2,000人近くの人びとが身を寄せていたシーファ病院に対する728日の攻撃は、国際医療団体「国境なき医師団」(MSF)の糾弾の的になった。緊急治療施設が失われた。

バケルは自分たちの現実を世界にツィートするだけでなく、幼い年少者2人を慰め、安心させる仕事があった。

[メッセージ「まだ6歳の妹は三度の戦争を目撃!」]

「末の妹はまだ7歳ですが、三度の戦争を経験しているのです」と、バケルはいう。「砲撃が最悪だったとき、わたしたちは大丈夫、爆撃がおしまいになるから、楽しい夏休みになるわ、と妹に言いつづけていました」。

ガザに閉じ込められて

しかし、バケルと妹たちの楽しい夏休みを台無しにする戦争がないときでも、いまではお馴染みになっており、それでも戦いを挑むべき地区包囲攻撃がある。ハマスが立法評議会選挙で勝利したあとの2006年、イスラエルは領域封鎖に踏み切り、1年後にハマスがガザ支配権を固めると、封鎖を強化した。

住民が脱出する方途はひとつ、ラファ検問所を経由してエジプトに出ることだけだった。そして、2015年はじめ以降、エジプトがラファ陸上検問所を開いたのは、5日間だけだった。

すると、バケルにとって、夏休みはどのようなものになるだろうか?

「チケットを購入して、好きなときに旅行したいです」といって、彼女は思いを巡らせ、「アマゾンで本を注文できれば、と思います。夢はとてもたくさんあります」と言い添える。

だが、彼女が地区を離れることができたのは、これまでに一度だけだった。9歳の時だった。

「小さかったころ、エジプトとデュバイに旅行しました」と、彼女は回顧する。「はじめてエジプトで飛行機を見たとき、イスラエルの戦闘機だと思い、とても怖かったです」。

だが、恐れはまもなく、故郷の境界を超えた世界に対する畏敬の念に変わった。

「あのとき、停電がないという事実にびっくりしました。ガザでは、停電続きが標準なのです。


「驚きでした。行きたいところに旅行でき、好きなところに、どこでも行けるのです。それが、わたしの夢見た生きかたでした」

ファラはガザのカトリック学校を卒業し、いつの日か、法律家になりたいと願っている。 [Farah Baker/Al Jazeera]

だが、バケルは目下のところ、いついかなる時でも次の戦争が勃発するわけではないと知ることだけで、満足しているのだろう。

「次の戦争の可能性を常に恐れながら生きるのではなく、安全だと感じていたいのです」と、彼女はいう。

だが、いざ戦争が勃発すれば、世界中に彼女のオンライン家族がいて、彼女の無事を願い、投稿するごとに彼女を追跡してくれることを彼女は知っている。そのような友人たちが「(昨年夏の)戦争の最悪期」に彼女を支えてくれたのだ。
 [メッセージ「わたしは泣き喚き、爆撃音が我慢ならず、聴覚を失いそうだ」]

「最も恐ろしかった時期、戦闘が激しくて、怖く、悲しかったとき、みなさんはわたしを励まし、わたしの働きを褒めてくれ、続けるべきだといってくれました。

「いつの日か、みなさんにお礼をいい、わたしを支えてくれたのと同じように、みなさんを支えたいと願っています」と、バケルはいう。

『きっと、星のせいじゃない』

バケルは目下のところ、ソーシャル・メディアをご無沙汰しており、世界に向けて包囲下の暮らしをつぶやいていないが、勉強したり、音楽を聴いたり、ビデオ・ゲームで遊んだりして忙しい。

「わたしはテイラー・スウィフトとブルーノ・マーズを聴くのが好きです」と、彼女はいう。「友だちに会えば、ぶらついたり、映画を観たり、海辺を散歩したりします」。

封鎖が解除されたとしても、ガザが故郷なので、ファラは離れたいと思わない。[Farah Baker/Al Jazeera]

ここで彼女はクスクス笑い、映画の『アダルトボーイズ青春白書』と『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』が大好きだという。「もちろん、ガザでは検閲されています」と、彼女は付け加える。


『きっと、星のせいじゃない』も好きな映画である。彼女はその本を持っている。お母さんが、ラファ検問所が開かれた稀な機会に持ち帰ってくれたのである。彼女はたぶん今度の夏に読むだろう。

では、バケルは、ガザ地区を離れることができる日を確かに待ち望んでいるのだろうか? それほどでもない、と彼女はいう。

「わたしは、ここにいる友だちや家族と別れたくありません。なぜわたしが彼らをここで苦しませたまま残していく必要があるのですか?」と、彼女は問いかける。「わたしは彼らが好きなのです」。

「わたしたちは閉じ込められています。戦争が勃発すれば、だれも逃げられません。行く場所もなく、捕らわれているのです」

彼女は断固として忘れていないし、許していないが、未来を待ち望んでいる。

「わたしは初めての自由を経験したいのです」と、彼女はいう。「しきりに念頭をよぎる戦争の記憶に別れを告げたいのです」。

Source: Al Jazeera

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