2015年10月12日月曜日

英紙テレグラフ【東京発】「一億総活躍社会」は戦時プロパガンダの反映と批判の槍玉に…

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安倍首相の新スローガンが戦時プロパガンダの反映と批判の槍玉に

「一億総員」が活躍する社会をめざすという安倍晋三首相の呼びかけが、戦時プロパガンダを改めて叫んでいるという苦情を掻きたてている。

日本の第二次世界大戦敗北70周年を記念して、東京の武道館で開催された追悼式典に出席した安倍晋三首相。Photo: Toru Hanai/Reuters
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日本の総理大臣が経済成長を宣伝するために採用した新しいスローガンが、戦争時代のプロパガンダを不気味に反映していると主張する人たちの批判を掻きたてている。

安倍晋三首相は先日、経済成長を刺激する幅広い目的の一環として、「一億総活躍社会」を築くという新しい目標を発表した。

安倍首相は――だれもが可能性を実現できる社会を明らかに指している――この将来展望を所管する新しい大臣職の設置を計画しており、7日の内閣改造のさいに発表される。

この一億を挙げたのは、現在の人口12600万人が、今後50年間で急速に縮小する見通しに歯止めをかけ、安定的に維持すべき人口規模として、政府が望んでいるレベルを指していると報じられている。

しかし、日本の未来に向けた安倍首相の光り輝く新しいスローガンは、社会メディアで即座に反感を招き、明らかに戦時プロパガンダを反映しているとして眉をひそめられている。
多数のブロガーや歴史家たちが、このスローガンは、第二次世界大戦の当時、植民地だった朝鮮と台湾にまで広がっていた「一億」国民総員に対して、国家が敗北を受け入れるよりも安んじて玉砕するように呼びかけるなど、指導者たちが用いた弁舌を思い起こさせると主張した。

ある人がインターネットのチャット掲示板で、「1937年の『国民精神総動員』の焼き直しですか、安倍ちゃん?」と一国の首相に親しげな呼び名を使って、また戦時宣伝スローガンになぞらえて問いかけた。

一方、名うての全国紙、朝日新聞の第一面コラム『天声人語』は、この新スローガンを「違和感」があると表現し、「(安倍首相のスローガンで)類似の言い方を思い出す人は多いだろう。敗戦直後の『一億総懺悔』(国民1億人全員が過去を悔いている)…」云々とつづけた。
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安倍氏は目下、来年7月の参議院選挙に先立って、有権者の歓心を買おうとして、新たな3本の「矢」――子育てと就業中の女性に対する支援から、今より安定した社会保障制度にわたる――経済政策を宣伝している。

しかし、彼の新スローガンに対して、さまざまに入り混じった反応は、幅広い国民の抗議にもかかわらず、最近、軍隊の海外戦闘を許し、異論の多い国防法制を成立させたことから、人気が落ち目になったことと符合している。

東京の上智大学で歴史を講義するスヴェン・サーラ准教授は、「彼がこのスローガンを意図的に選んだのか、あるいは、どこかおかしいとは考えない思考様式の結果として選んだのか、わたしにはわかりません。ですが、彼が本音で抱いている戦前・戦中の日本に対する共感に由来しています」とロイター通信に語った。


サーラ准教授は、「これは単なる戦前懐古趣味ではありません。選挙に向けて、説得力を磨きあげる必要があったのです。しかし、戦時プロパガンダに関連するなにかが浮上したことと、これが符合しているとは、わたしは考えていません」と付け加えた。

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