2015年10月23日金曜日

国際癌研究機関【プレス・リリース】低線量電離放射線が固形癌による死亡のリスクを増大させる






プレス・リリース
No. 238
20151021

低線量電離放射線が固形癌による死亡のリスクを増大させる

フランス、リオン発【20151021日】世界保健機関の癌研究機関である国際癌研究機関(IARC)が調整した研究の新たな結果が、低線量電離放射線による持続的な被曝が固形癌による死亡のリスクを増加させることを示した。本日、BMJ[英国医学会会報]で公開された結果は1、現時点で最も有力な研究にもとづいており、低線量電離放射線による持続的な被曝に関する直接的な証拠を提示している。

論文の共著者であるIARC研究員、アウスレル・ケスミニエン博士は、「今回の研究は、放射線量の増加と全固形癌の有意な関連を実証しています。人が持続的な低線量で持続的に被曝しても、高線量で急激に被曝しても、観察される線量と固形癌リスクの関連は、放射線量の単位あたりに均せば同じです」という。

国際提携研究機関の共同研究2、「国際核労働者研究」(INWORKS)は、1943年から2005年までの期間にわたる、フランス、英国、米国の核関連労働者の被曝量を評価した。

研究対象の労働者の結腸における平均放射線量は21 mGyだった。結腸線量は、放射線と癌の関連に関する知見の大半をもたらした日本の原子爆弾被爆者など、光線量で急激に被曝した人びとを対象にした先行研究の結果と比較することができるので、放射線研究で伝統的に用いられてきている。

結果は、固形癌による死亡のリスクがささやかなものであり、100 mGyあたりごとに5%増えることを示した。コホート全体で、調査された(白血病を除く)癌による死亡の100事例のうち、1事例が職場における放射線被曝を原因とすることができた。少なくとも5 mGyの放射線量を職場で被曝したコホート構成集団において、かかる癌による死亡の100事例のうち、2.4事例が職場被曝によるものと推測される。

この研究は、固形癌と低線量電離放射線被曝との因果関係の証拠を強化する。

論文の共著者であるIARC研究員、イザベル・ティエリー・シェフ博士は、「この知見は、核労働者が職場で被爆する線量レベルは、多列検出器コンピューター断層撮影(CT)スキャン、または画像下治療で繰り返し被爆する患者の線量に比べて同じ程度ですので、核産業で働く労働者たちの防護のためだけでなく、医療スタッフと一般人にとっても重要です。このことは、そのような医療用撮像法のリスクと便益のバランスを見極めることの重要性を浮き彫りにします」という。

研究対象の労働者の平均年齢は58歳であり、これは多くの疾患の発症率が上昇する年齢である。

IARC運営評議会座長、クリストファー・ワイルド博士は、「コホートの継続調査が、この研究にとって決定的に重要です。健康に対する放射線の影響に関して、疑問点が数多く残っています。このコホートを今後も引き続き観察することが、癌と放射線の関連に関する理解を促進するうえで、決定的に重要な役割を担うことになるでしょう」という。

【脚注】
1 Richardson DB, Cardis E, Daniels RD, Gillies M, O’Hagan JA, Hamra GB, Haylock R, Laurier D, Leuraud K, Moissonnier M, Schubauer-Berigan MK, Thierry-Chef I, Kesminiene A. 電離放射線被曝による癌のリスク:フランス、英国、米国の労働者を対象者とする遡及的コホート研究(INWORKS)。BMJ(英国医学会会報)。

2 編集部宛ての覚え書きを参照のこと。

【編集部宛ての覚え書き】

INWARKSは、フランス国フォントネー=オー=ローズの放射線防護・原子力安全研究所、米国ノースカロライナ州チャペルヒルのノースカロライナ大学・疫学部、スペイン国バルセロナの環境疫学研究所、スペイン国バルセロナのポンペウ・ファブラ大学、スペイン国マドリードのCIBER研究所・疫学・公衆衛生部、米国オハイオ州シンシナティの国立労働安全衛生研究所、英国チルトンの放射線・化学・環境災害に関する公衆衛生イングランド・センターを含む研究提携機関による国際共同研究である。

【詳細情報の問い合わせ先】

Véronique Terrasse, Communications Group, at +33 (0)4 72 73 83 66 or terrassev@iarc.fr
or Dr Nicolas Gaudin, IARC Communications, at com@iarc.fr

国際癌研究機関(IARC)は、世界保健機関の一部門です。その使命は、人の癌の原因、発癌現象のメカニズムに関する研究を調整し、実施して、癌を抑制するための科学戦略を策定することです。この機関は、疫学と実験室の両面にわたる研究にたずさわるとともに、出版、会議、講座、交流を通して、科学情報の普及を図っています。あなたのお名前を当方のプレス・リリースEメール・リストから削除することをお望みの場合、com@iarc.frにご連絡ください。

【クレジット】

IARC: Press Release, “Low doses of ionizing radiation increase risk of death from solid cancers.” http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2015/pdfs/pr238_E.pdf

【該当論文】
 thebmj
Research


0 件のコメント:

コメントを投稿