2015年10月17日土曜日

英紙テレグラフ「眠り病がカザフの村を陥れた白昼の悪夢~近隣にウラニウム鉱山跡」



The Telegraph






眠り病がカザフの村を陥れた白昼の悪夢

科学者たちが、何百人もの人びとを数時間の昏睡に陥れてきた謎の病気に頭を悩ませている

謎の病気を患った若い患者たちを手当する看護師。YouTubeから。

【モスクワ発】ロランド・オリファント Roland Oliphant
2015326

カザフの小さな村、カラチの住民たちは2年間にわたり――文字どおり――悪夢を生きてきた。

この中央アジア大草原の辺鄙な人里の住民は、なにをやっていても、だれであっても、どんな時でも、あるいはどんな日でも突発的に眠りこんでしまう――その後、数日間は意識を失ってしまう――とわかっていながら、暮らしている。

少なくとも8回は謎めいた「眠り病」発作に襲われたとロシア国営ヴィスチンTVで語ったリュボフ・ビルコワは、「ある瞬間、話していると、次の瞬間、眠っているのです」といった。「時には眠っていませんが、酔っているように見えるのです。

2年前の20133月、厄介な倦怠感発作がはじまってから、カラチの人口600人の4人に1人近くが「眠って」しまっていた。

症状として、虚弱感、発語障害、長時間の記憶喪失が現れ、発作は熟睡から重く怠惰な眠気まで、さまざまな強度の違いがある。

説明のつかない「病気」は――仕事していたり、ベッドにいたり、あるいは通を歩いている時でも――どの瞬間にも発症しうるし、患者は終日から1週間近くまで、さまざまな期間、眠りつづけることがある。

この病気は、年齢、性別、健康状態の区別なく、だれにでもかかりうるし、動物種の違いさえも区別しない。

9月のある日、1時間以内にクラスの生徒たちのうち、8人が眠りこけてしまった。

村の女性が1月にロシア人ジャーナリストたちに語ったところでは、朝の早い時間、猫でさえ途方もなく突発的な活動過多になって、犬に襲いかかり、飼い主を噛んだあと、この病気にかかり、眠りこんだとのことである。

医者たちは病気に困惑しているが、村人たちは、発作にいくつか共通の要素があるという。症状は波になって現れる傾向があり、地表が凍りつくころより、融雪期に現れやすく、一部の人たちは、風向きと相互関係があるという。

地区行政府のアマンベク・カルザノフ主席は3月初め、男性と女性の各1名が症状を訴え、入院したことから、第9波の到来を発表した。

カルザノフ氏が、地区保健所は症状に対処できるだけの装備を整えているとロシアとカザフの報道陣に語ったものの、病院にできることは、昏睡のあいだ、患者の看護をする以外、なにもない。

カザフ、ロシア、さらに遠くからやってきた医者たちや科学者たちは、発作の明確な原因を見つけられなかったといっている。

ウイルスと細菌の検査の結果、同様な症状のあるアフリカ睡眠病のような既知の病気は除外された。

だが、他にも、ソヴィエトの核産業の遺産を指摘する向きもある。

カラチは、かつてソ連の核兵器計画向けのウラニウム鉱石の生産で賑わった鉱山の町、クラスノゴルスクに隣接している。

ウラニウム鉱山は1980年代末に閉鎖されたが、多くの地元住民と一部の科学者たちは、放棄された事業が破滅的な遺産を置き土産にしたのではと疑っている。

「特定の場所におけるラドンの濃度は、通常レベルの4倍から5倍になっています。その近くにウラニウム鉱石があります。たぶん、(問題は)そこから来るのでしょう」と、カザフスタン国立核センター・放射線安全研究所のアルツオン・グリゴリエフ研究部長は語った。

しかし、何十回も現地調査が実施されたものの、放射性ガスと反復性昏睡発作の正確な関連はまだ証明されていない。

なんらかの原因が特定されるまで、住民にできることはほとんどなく、外出するさいに、悪夢めいた状況をやり過ごすのに役立つように旅行かばんの荷造りをするだけである。

「みなが怖がっています。みなが眠るのを怖がっているのです」と、ビルコワ夫人がいった。

【クレジット】

The Telegraph, “Sleeping sickness traps Kazakh town in waking nightmare” by Roland Oliphant; http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/kazakhstan/11497382/Sleeping-sickness-traps-Kazakh-town-in-waking-nightmare.html
本稿は、公益・教育目的・非営利の日本語訳。

【関連記事】

20151019

ぼく、集会から家に帰ったの。ぐらついて、倒れたの。アンドレイが助け起こしてくれた。ティムルさんとエフゲニーさんが車に乗せて、連れて帰ってくれた。

20151018

カザフスタン、カラチの村民10人のうち、1人は白昼から不意に眠りに落ちた――その一部は数日間も目覚めることができなかった――ことがあった。この説明のつかない失調の原因を探ろうと何度も試みられたものの、スリーピー・ホロウの謎は未解明のままである。

0 件のコメント:

コメントを投稿