2015年10月15日木曜日

英紙ガーディアン「南京大虐殺の世界記憶遺産登録~ 日本がUNESCO分担金支払い停止の脅し」



南京大虐殺の世界記憶遺産登録~
日本がUNESCO分担金支払い停止の脅し

日本政府が抗議したにもかかわらず、国連機関UNESCOが論争の渦中にある南京大虐殺に関する中国側の記録文書を世界記憶遺産に登録した

南京市内の侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館。中国の歴史家たちは日本軍が1937年の6週間にわたる暴虐行為で300,000人以上を殺害したと主張しているが、日本の歴史家たちはもっと少ないと主張している。Photograph: STR/AFP/Getty Images

【東京発】ジャスティン・マッカリー Justin McCurry
20151013

日本政府は、日本政府が抗議したにもかかわらず、国連機関UNESCOが論争の渦中にある南京大虐殺に関する中国側の記録文書を世界記憶遺産に登録したことで、UNESCO分担金の支払いを停止すると脅しをかけている。

この口論は、尖閣諸島の領有権をめぐっても紛争が膠着(こうちゃく)している日本と中国の関係を悪化させてきた戦争中の歴史をめぐる、いくつかの論争のひとつである。

日本政府の菅義偉官房長官は、文書を登録する決定は、中国側の歪曲された歴史観を反映していると述べた。「日本と中国では、考えかたが大きく食い違っており、一方的な見解を反映した決定は、ことを政治問題にする」と、彼は記者団に語った。

UNESCOに対して「わが国の資金拠出を停止することも含め、あらゆる手段を検討している」と、菅長官はいった。

菅長官はこう付け加えた――「決定過程が不透明だ。政府として中国側の文書を見ることもできない」。

日本は昨年分として、UNESCO予算の約10%にあたる372000万円のUNESCO分担金を拠出している。UNESCOは、日本が敗戦と占領のあと、国際社会に貢献する道を求めて、1951年に初めて加盟した国連機関である。

UNESCOのイリナ・ボコヴァは先週の9日、アブダビにて、公文書管理官と司書で構成される14人委員会による推薦を受けて、南京の記録を承認した。

日本の外務省は、「日本政府が、これらの基本的な考え方について随時申入れを行ってきたにもかかわらず、当該案件が記憶遺産として登録されたことは、中立・公平であるべき国際機関として問題であり、極めて遺憾です」と表明した。

しかしながら、UNESCOは、日本による戦時性奴隷の使用に関連する写真、その他の文書を記憶遺産に含めてほしいという中国側の要請を却下した。

南京文書は、日本軍部隊が膨大な数の人びとを殺害し、レイプした、中国南東部の都市に対する日本の血なまぐさい侵攻に関連している。中国側の歴史家たちは、日本帝国軍部隊が300,000人以上の兵士たちと民間人を殺害したと主張しているが、日本側の歴史家たちは、その人数は数万人から200,000人のあいだであると主張している。

日本の公的な立場は、「非戦闘員の大量殺害、略奪、その他の行為が勃発した」が、犠牲者の正しい数を「認定するのは困難である」というもの。

日本政府当局者らは、UNESCOの中立性が問われているといい、中国政府が国際的に文化を競う場を政治目標の追求のために利用していると非難した。

中国が提出した記録には、南京の人びとを虐殺しているものと主張されている写真類、米国人宣教師が撮影した映画フィルムと併せて、日本の指導者数名を戦争犯罪につき有罪と認定した国際極東軍事裁判の法定記録が含まれている。

しかし、日本側は文書類の信憑性に疑問を提示し、その正確さを確認するために中国側の専門家と協力したいと申し入れたが、中国政府に拒否されたと付け加えた。

日本の外務省は、登録が「中立・公平であるべき国際機関として問題」であると表明し、当該文書は「真正性に問題があることは明らかである」と付け加えている。

中国外交部の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は南京大虐殺を「重大な犯罪」であり、「国際的に認められた歴史的事実である」と表現し、日本側の抗議を一蹴した。

華報道官は、「事実は否定できない。歴史が捏造されてはならない。日本側が発言したこと、やっていることは、間違っていた歴史に正面から向き合うのを嫌っている態度をまともや露わにしている」と談話で述べた。

日本の新聞はUNESCOの決定を糾弾することで団結している。保守派の読売新聞は、「文化財保護の制度を反日宣伝に政治利用し、独善的な歴史認識を国際社会に定着させようとする中国の姿勢は容認できない」と社説に書いた。

リベラル派の朝日新聞は、死者数が300,000人以上の達するという中国政府の主張を疑う中国の歴史学者たちがいると指摘した。「死者数を裏付ける手がかりは乏しく、中国でも多くの歴史学者が疑う数字だ。だが、それを公然と論じる自由な空気はない」と、同紙は書いた。

UNESCOは、日本が申請した2案件、シベリア労働収容所に抑留されていた元日本軍兵士たちの手記と描画、そして仏教寺院で伝承されてきた、8世紀にまで遡る夥しい数の文書を認定した。

世界記憶遺産事業は1990年代に発足して以来、『アンネ・フランクの日記』、カール・マルクスの『資本論』の注釈付き版など、数十件の申請案件を登録してきた。

【クレジット】

The Guardian, “Japan threatens to halt Unesco funding over Nanjing massacre listing,” by Justin McCurry;
本稿は、公益・教育目的・非営利の日本語訳。

【ジャスティン・マッカリー記事】

ガーディアン&オブザーヴァー、クリスチャン・サイエンス・モニター、ランセット、フランス24TV契約、日本・韓国通信員。日本外国特派員協会代表。狼&クリケット・ファン。
Tokyo


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