2016年2月21日日曜日

☢#フクシマ5周年☢【海外論調】ヴォイス・オブ・アメリカ「問題山積のフクシマ」



News / Asia
問題山積のフクシマ
2016210日、福島県大熊町にて、津波で損壊した東京電力福島第一核発電所にて、地面を均す防護服・マスク姿の労働者。
スティーヴ・ハーマン Steve Herman
2016217

【東京発】大地震で解き放たれた津波が、この島国の核反応炉をメルトダウンさせてから5年たって、日本の核エネルギー問題はさらに悪化していると専門家たちは言っている。

福島県内いたるところ、土を主体とする900万立法メートルの放射性廃棄物が野外で保管されており、数万人の住民たちの帰還を妨げている。

そして、問題は改善される前に悪化しようとしている。

さらに推定1300万立方メートルの毒性土壌を集めなければならず、技術者たちは福島第一核発電所構内の汚染問題を解決しなければならない。政府と東京電力の関係者らは――損壊した反応炉の解体を含め――すべてを浄化するのに、少なくともさらに40年間の時間と2500億ドルのコストがかかると認識している。

そして、このタイムラインとコストの想定は――業界専門家の一部からも、過剰に楽観的であると考えられており――不都合な重大事態がなにも起こらないことを前提にしている。

    フクシマの位置

核施設の小野明所長は、もう一度、大地震が襲来し、その結果、津波が発生すると、大幅に後退するだろうと認めている。

数千人の労働者が施設内にある6基の反応炉を制御下に留めるために献身しており、その6基のうち、4基はメルトダウンしたり苛酷に損傷したりしている。

日本は、フクシマほどの損傷を受けていない核反応炉ですら、1基たりとも解体した経験がない。

この国は、適切な浄化プランの策定のために支援しようという海外企業の申し出に抵抗してきた。

地震襲来時に国務省の日本担当主任だった米国の元外交官、ケヴィン・メア氏は、「実効的な計画を策定し、実施するためには、長期的な観点に立った決定が欠かせませんが、残念なことに、その能力を欠いているので、浄化作業はもたついたままです」と語った。

     2016217日、日本外国特派員協会の記者会見で話す福島県南相馬市の桜井勝延市長。 (S. Herman/VOA)

メア氏は、浄化計画は、汚染した瓦礫、燃料、水の最終処分を見据えて策定されるべきだと主張している。

ワシントンDCNMVコンサルティングの上級顧問、マー氏は、「それなのに、東京電力株式会社はそのような決定をもっぱら先延ばししており、どうしていいのかわからないものだから、保管された水がどんどん貯まる一方であるのを目にするありさまです」といった。

避難区域に家がある福島県民が帰還を許されるとしても、県内の何千もの放射性土砂の袋が彼らの足を止めさせるかもしれない。

災害勃発時の人口が71,000人であった南相馬市の桜井勝延市長によれば、「市内から逃れた若い人びとに、放射線に対する恐れが今も残っています」とのことである。

桜井市長の街に約57,000人の市民が帰還したが、子どもたちや労働年齢の人たちはほとんど戻っていない。(南相馬市の住民1,000人あまりが、地震と津波のために死亡しており、それに加えて、強制的な避難による混乱に起因する死者も出ている)

桜井市長は、[核施設に]近接する諸集落に76,000人が住んでいたが、広範囲にばらつく放射線レベルを恐れるあまり、戻ってきた住民は約5,000人だけであると指摘した。

放射性土砂の黒い袋は――いま福島県内各地115,000か所に分散して保管されているが――やがて、核発電所に隣接する二町にまたがる16平方キロメートルの土地にこれから建造される暫定施設に移されることになっている。

    【資料写真】損壊した反応炉建屋群の周囲に地下凍結壁を構築するために地中に掘削パイプを設置する労働者たち。

汚染物質は暫定保管所に30年を超えて置かれることはないと当局者らは言っており、その後、いまだに指名もされていない別の県で処理されることになっている。

だが、観測筋によれば、地主が土地を売らなかったり、所有権者が不明だったりして、暫定保管所の建造に必要な土地の取得に難航しており、すべての障害を解消するまで何年もかかりそうであるという。

フクシマが適正に除染されるのか否かという問題も、明るみに浮上している。

日本の環境大臣は、政府の除染目標に関する発言の撤回を余儀なくされた。

丸川珠代大臣は19日の金曜日、政府は福島第一核発電所の近辺の放射線レベルを年間1ミリシーベルト以下に引き下げることを目標に定めているが、これにはなんの科学的根拠もないとした発言について謝罪した。(科学者らによれば、天然の放射線源に由来する世界の平均年間個人被曝線量は、この数値の3倍以上だという)

この除染目標は、日本民主党主体の前政権が福島県の要請に応じて策定したものである。

南相馬市の桜井市長は17日の水曜日、東京の日本外国特派員協会の記者会見で、2011年の災害勃発からこのかた、政策の優先順位が間違ってきたとして、安倍晋三首相の政府を非難した。

市長は、春日咳の政府は「経済、経済、経済」と呪文のように唱えていると断言した。だが、前例のない核除染事業の渦中にあって、窮地にありながら、再生と再建に集中しているフクシマの地方自治体の政治家として、「わたしたちはみずからの手に市民の命を預かっているのです」と、桜井市長は述べた。

2011年の地震とそれに伴う津波によって、18,000人あまりの死者と行方不明者が出たと確認されている。


【記者】

熟練ジャーナリスト、スティーヴ・ハーマンは、バンコク駐在のVOA東南アジア支局長であり、通信員を兼ねる。

【クレジット】

Voice of America, “Problems Keep Piling Up in Fukushima,” by Steve Herman, posted on February 17, 2016 at;

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