2016年4月16日土曜日

英紙ガーディアン【海外報道】フクシマのトリチウム汚染水を海洋投棄しても安全なのか?


フクシマの廃水を海洋投棄しても安全なのか?

日本は福島第一核発電所の数十万トンもの放射能汚染水の太平洋放出を目論んでいる。カール・マチーセンがその潜在的な影響を検証する。

福島第一核発電所にて、放射性汚染水の貯蔵タンクの前に佇む廃炉作業員。Photograph: Toru Hanai/AP

カール・マチーセン KarlMathiesen; @karlmathiesen, email
2016413日水曜日

福島第一核発電所の内陸側に、放射能汚染水が溢れるほどに蓄えられたタンクが1,000基あまり立ち並んでいる。フクシマの損壊した複数の反応炉を低温に保つため、連日300トンの水がポンプで注ぎこまれている。水が施設内を流れるさい、大量の放射性粒子を取りこんでしまう。

施設のオーナー企業――東京電力株式会社――は、濾過装置を設置しており、それを通る水から非常に危険な同位体、ストロンチウムとセシウムを除去している。

それでも、タンクに保管される水は、中性子2個を持つ水素の同位体、トリチウムを含有している。トリチウムは主要な核反応生成物であり、それを水から除去するのは困難であり、費用が高くつく。

日本の原子力規制庁(NRA)は目下、800,000トンに達する汚染水を太平洋に投棄しても安全であり、これが責任ある措置であると、疑い深い目を向ける世界に納得してもらうためにキャンペーンを打ち出している。

NRAの田中俊一委員長は東京電力に、放出に取り組むように公的な指示を出した。昨年のこと、国際原子力機関(IAEA)もまた東京電力に対し、放出を検討し、その潜在的な影響に関するアセスメントを実施するように求める提案を発表した。東京電力側としては、目下のところ、水の放出案は計画にないと述べている。だが、同社役員らが選択の余地がないかもしれないと非公式に口にしているとAP記事が伝えた。

田中委員長によれば、トリチウムは「放射能がとても弱く、プラスチック包装すら貫通しない」そうである。この物質を摂取すれば、有害になりうる。APによれば、田中委員長は記者団を前にして、青色の液体が半分入った小瓶を掲げて見せ、フクシマに立ち並ぶタンク全体に存在しているトリチウムの量――総量57ミリリットル――がかなりちっぽけなものであることを実演してみせたという。

トリチウムの量に関して、もっと有益な尺度は放射能量であり、ベクレル数で測られる。NRAによれば、フクシマのタンク群の汚染水に3.4ペタベクレル[3400兆ベクレル]のトリチウムが含有されている。

この数値に付くゼロの数(14個のゼロ)は確かに多いが、これは大きな数値ではないと、ウッズホール海洋研究所のケン・ビューセラー上席科学者はいう。

背景を説明すれば、地球上の天然トリチウムの蓄積量は比較的少なく、2,200ペタベクレルである。この同位体は半減期が12.3年であり、宇宙線と地球の大気とのあいだで稀に起こる反応で自然に生成される。われわれの環境において、抜群に最大のトリチウム発生源は前世紀に挙行された一連の核兵器実験であり、このため総計186,000ペタベクレルのトリチウムが世界の海洋に放出された。時間が経過するにつれ、これがざっと8,000ペタベクレルまで減衰した。もうひとつの重要なトリチウム発生源は核発電所であり、長きにわたってトリチウム汚染水が海洋に投棄された。

「わたしであれば、これまでに日本で放出されたものより大量のトリチウムが(英国のセラフィールド施設から)アイリッシュ海に放出されたと思います」とビューセラーは述べた。目下のところ、フクシマ核惨事によって、0.1ないし0.5ペタベクレルのトリチウムが太平洋に漏出または放出されたと目されている。

汚染水の全量が海洋に放出されるとしても、希釈され、およそ4年後に米国西岸に到達するまでに検出されるほどのトリチウムは残っていないと、サザンプトン大学の海洋学者、サイモン・ボクソールはいい、次のようにつづけた――

「ものごとを大きな尺度で見れば、その物質を太平洋に投入することで片づけても、海盆の規模からして、最小限の影響しかないでしょう。理想的な世界であれば、このような状況はないでしょう。だが、問うべきは、最も安全な前向きの方法はなにかということです。これが多くの意味で、最善の解決策です」

ボクソールは、そうは言っても、汚染水の希釈に時間がかかるので、局地的な影響――とりわけ、すでに打撃を受けている漁業に対する影響――はあるかもしれないと述べた。

国際海事法は、廃棄物を沖合に搬送するためのパイプラインの建設を禁じている。したがって、いかなる放出であっても、緩慢なペースでおこなう必要がある。東京電力は、国際原子力機関に求められた環境影響調査に関する質問に応えなかった。

ビューセラーは、フクシマで保管された3.4ペタベクレルのトリチウムに関して、明確な不安はほとんど念頭に浮かばないものの、津波後の廃炉作業に大いにつきまとっている透明性の欠如のため、どのような措置であっても、とことん信頼するのは不可能になっていると語った。彼はこういう――

「具体的なデータがなければ、案件の可否を決めるのは厄介事です。わたしなら、タンクひとつひとつごとの内容物、同位体の種類、東京電力が放出したいという日量について、個別の確認を示してほしいです。『ご心配無用。弊社をご信頼ください』と聞かされるばかりです」

ビューセラーは、すべての漏出が止まったという東京電力の公的発表と、非常に低レベルのセシウムとストロンチウムが今でも施設から海に流入しているという彼自身の観測とのあいだに、大した違いはないという。彼は、次のように付言した――

「だれも進行している事態を独自に検証していない場合、陰謀説を安易に抱いてしまいます」

放出を求める動きはまた、トリチウム除去技術をフクシマ問題の課題に適合できる規模に拡大できることを実証するとして、日本政府の助成金1000万ドル11億円)を勝ち取った米国の新興企業、キュリオン(Kurion)、ならびにその新しい親会社、ヴェオリア(Veolia)の希望にとって、打撃にもなる。その計画によって、90,000トンの水素ガスが生産され、それが車両の動力源になるとキュリオン社は請け合った。

東京電力にしても、キュリオン社にしても、この技術を現場に適用するさいのコスト見積もりの請求に応じていない。キュリオン社のウェブサイトは「採算性がよい」と謳っており、実証装置を18か月以内に稼働できると告げている

どれほどコストがかさむにしても、それはフクシマの長引く混乱を完全に一掃するための費用を払う意志を日本が持ち合わせていないことの代価なので、このコストは放射性物質放出の可否を問うさいの基本的な項目である。



Topics: Fukushima Nuclear waste Waste Energy Japan More…

【クレジット】

The Guardian, “Is it safe to dump Fukushima waste into the sea?” by Karl Mathiesen, posted on Wednesday 13 April 2016 at;

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2016414日木曜日


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