2017年1月24日火曜日

ネーション誌【評論】ホワイトハウス報道官のオーウェル風記者会見






The Nation > POLITICS  MEDIA  DONALD TRUMP

トランプ大統領在職3日目
ホワイトハウスから飛び出す見え透いた嘘

トランプの側近が嘘で固めているので、ホワイトハウス報道官、ショーン・スパイサーは彼の立場で「真っ赤」な嘘を吐いている。

ジョン・ニコルス John Nichols @NicholsUprising
2017123

ホワイトハウス報道官、ショーン・スパイサーは、2017121日、ワシントンDCの記者会見で話し、怒りの評言を連発している。 (Rex Features via AP Images)

凡例:(原注)、[訳注]。当ブログでは、”the United States”を字義通りに「合州国」と訳す。

将来においてジョージ・オーウェルの『1984年』が研究されるさい、ドナルド・トランプ大統領の初フルタイム執務日の終わりにおこなわれた、ホワイトハウス報道官、ショーン・スパイサーの異例な説明が間違いなく言及されるだろう。

トランプはその前日、信任なしの――というのも、一般投票の54パーセントが支持しなかった候補にすぎず、筆頭対立候補に300万票に迫る差で負けていた――最高司令官として、宣誓をしていた。僭称大統領は、パッとしない群衆に向けて16分間の盛りあがりに欠ける就任演説をし、有権者の96パーセントが彼を拒否し、彼の就任に向けた熱狂のほどの証拠が「穏当」という用語に新しい意味を与えた首都の街路をパレードした。

翌日の朝、同じ首都の街路は、とりわけ女性、そして人道一般に向けた新政権の政策に異を唱えに来たアメリカ人の群衆――控えめに見積もって50万人あまり――で埋め尽くされた。彼らアメリカ人は、この大統領に対する異議の全米的な(そして世界的な)噴出の一環として、行進し、集会を開き、英紙ガーディアンが「ワシントンの女性マーチがトランプのフルタイム執務初日に影を落とす」というヘッドラインで報道するほど劇的に盛り上がった。

これは、反対派が「少数派大統領」となじる人物の新任報道官にとって悪夢のシナリオだった。スパイサーが練達の広報担当であれば、幾通りもの方向から状況を取り上げることもできただろう。あるいは、パーティで疲れ切ったトランプのスタッフが談話になにか付け加えるなどとだれも期待していなかった土曜日の夜、スパイシーは単純になにも言わなくてもよかった。

しかし、トランプとその補佐人らは彼の大統領職務の正統性が問われていることをじゅうぶん認識している。彼らはまた、彼の支持者らが2016年選挙戦における自分たちの選択の見識を疑いだしていることを腹の底から恐れている。(トランプは大統領選挙当日に46パーセントの得票率だったものの、リアルクリア・ポリティクスthe RealClear Politics:政治情報サイト]平均値は就任式の前日の彼の支持率をほんの41.8パーセントとしている――そして、一部の調査は支持率を32パーセントとしている)

そこでスパイサーは――誤用されることの多い"Orwellian"[オーウェル風]ということばの使用を利するような罵倒を振りまいて――しゃべった。

トランプの部下は、「昨日、わが国と世界が権力の平和な移行を目撃し、大統領が権力の交替と均衡はワシントンから合州国市民に移ったと語ったとき、メディア人士の一部は意図的な虚偽報道にふけっておりました」と宣った

つまり、新政権が注意深く組み立てた談話に疑問をはさむようなニュース報道を信じるなというわけ。

スパイサーはくどくどと、「就任式の写真類は、ある特定のツィートでは、ナショナル・モール[連邦議会議事堂とリンカーン記念館の間の国立公園]に詰めかけた膨大な支持者の群衆を極小化して見える具合にわざと構成されていました。モールの草を保護するために敷物が使われたのは、わが国の歴史で初めてのことです。その効果として、人びとの立っていない区域が目立つ結果になりましたが、過去の場合、草がこれを見えなくしていたのです。フェンスと磁気計数機もまた初めてモールのはるか後方に設置されておりましたので、数十万の人びとが過去の就任式ほど素早く近づくのを邪魔していました」と言い張った。

つまり、自分の目で見ているものを信じるな。

スパイシーは続けてこう語った――「群衆の規模について正しくない数字もまた、ツィートされました。国立公園局がナショナル・モールを管理しているのですが、同局はなんら数値を公表していませんので、数値を把握している人はいませんでした。ところで、このことは、今日の抗議行動参加者を数えようとする、いかなる試みにも同じようにいえることです」。

つまり、「公的」情報源、つまりトランプのホワイトハウスの類いが与えたものではない、いかなる数値も受け入れるな。

スパイサーは次いで、トランプ就任式の間違った印象をかもすために意図的に選ばれた数値を伝え、「これは、かつて就任式を目の当たりにした最大規模の群衆でした……」と断言した。スパイシーは言いたいことで収めるために、問答無用の決め台詞を付け加えた――「以上!」。

ポリティファクトPolitiFact:政治情報サイト]は間髪をいれず、発言とデータを点検し、その報告に「ドナルド・トランプはこれまでで最大規模の就任式参列群衆を得たのか?計数値は違う」という見出しをつけた。この無党派の事実検証サイトは、新しいホワイトハウス報道官が口にした複数の虚偽事項を検証したあと、その報告を「われわれはスパイシーの主張をパンツに火評価する」という最終行で締めくくった。けだし、真っ赤なと同類である。

さらに格上のトランプ官僚、ケリーアン・コンウェイ大統領補佐官はその翌日の朝、NBC報道番組『ミート・ザ・プレス』の司会者、チャック・トッドに、「大統領がホワイトハウス報道官に、演壇の前に初めて登場して、嘘を言い立てるように頼んだのはなぜですか」と質問された

「あなたは、それは嘘だとおっしゃっています…そして、ショーン・スパイサー、わたしどもの報道官はそれに代替できる事実を申しました」と、コンウェイは応えた。トッドは、「代替できる事実は、事実ではありません。その類いは虚偽です」といって、真実で対抗した。

「代替できる事実」を売り歩く、ドナルド・トランプの代理人たちは、ただの熱心派党員ではない。ジョージ・オーウェルは、独裁主義者たちが「現実操作reality control」を熱望するディストピア[暗黒郷『1984』]の未来を想像した。お役人たちに求められているものは、「注意深く組み立てられた嘘を告げながら、完璧な真実性を意識している」能力なのだった。トランプと彼の政権スタッフは、オーウェルが警告した権威主義者なのだ。

【クレジット】

The Nation, “3 Days Into Trump’s Presidency, Blatant Lies Are Coming Out of the White House,” by John Nichols, posted on January 22, 2017 at;

【メディア報道】

毎日新聞


【ワシントン西田進一郎】スパイサー米大統領報道官は23日、トランプ政権発足後、初めてとなる定例記者会見を開いた。政権と主要報道機関は、20日の大統領就任式の参加者の数などを巡って対立が収まらない。スパイサー氏はAP通信など主要媒体から質問させる「慣例」に従わず、インターネット電話を使ってホワイトハウス外の記者も参加させる制度の導入も発表した。トランプ政権はメディアとの関係も大きく変えようとしている。
ニュースサイトでつづきを読む: 
http://mainichi.jp/articles/20170125/ddm/002/030/092000c#csidx3cf43a787d450b7ae1fd81649c33e41 
Copyright 毎日新聞


【関連記事】

トランプ大統領【布告】シリーズ:
【付録】



小説「1984」がアマゾン1位に、「もう一つの事実」で売り上げ急増

【1月26日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)新大統領をめぐって虚実入り乱れた論争が繰り広げられている米国で、英作家ジョージ・オーウェル(George Orwell)の小説「1984年(1984)」がベストセラーに浮上し、米通販最大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)の25日の売り上げランキングで1位となった。

0 件のコメント:

コメントを投稿