2017年4月7日金曜日

フランス紙リベラシオン「#フクシマ☢惨事――放射能汚染地への帰還強制」






JAPON
フクシマ惨事――
放射能汚染地への帰還強制

リベラシオン日本特派員:アルノー・ヴォレラン 2017331
Par Arnaud Vaulerin,correspondant au Japon — 31 mars 2017 à 20:06

ウィキペディア――
リベラシオン (: Libération, 愛称: Libé) はフランスの日刊紙。ジャン=ポール・サルトルとベニ・レヴィ、セルジュ・ジュリにより、19685月の反体制運動に続いて、1973年パリにて設立された。おおまかには、現在のリベラシオンの編集見解は、中道左派である。

凡例:本稿は原文のフランス語をGoogle翻訳で英語に転換したうえ、日本語に重訳。

福島県富岡町。513日までギャラリー247(パリXVIII)にて写真展『フクシマ立入禁止区域』。Photo Carlos Ayesta et Guillaume Bression. Hans Lucas

フクシマ核惨事から6年たって、日本政府は核発電所周辺の4町村の避難命令を解除した。この撤廃は財政援助を打ち切って、いまだに汚染されている場所への再定住を促しかねない措置である。

外見上では、これは正常化である。日本政府は、20113月の最悪の核危機にさいし、福島第一核発電所周辺の4町村の住民に課せられた避難命令を――331日金曜日に3町村で、41日土曜日に残る1町で――解除した。だが、この決定は無難や純然たる形式性からほど遠く、強制の雰囲気、脅迫の気配さえも醸しだしている。その結果、2011年まで、富岡町、浪江町、飯舘村、川俣町に住んでいた、ざっと32,000人の人びとにとって、疎開費を含め、助成金と財政支援が打ち切られることになる。それに、いまだ放射能汚染レベルが高いままであり、健康不安を招く地域に、彼ら住民が帰還するように促すことになりそうだ。国際放射線防護委員会は年間1ミリシーベルト(mSv)の最大被曝量を勧告しているが、日本政府はこの住民向け閾値を20 mSvに引き上げた。これは放射能作業従事者の限度値である。

圧力

日本の4NGOが安倍晋三政権の選択を非常に深刻だとみなし、数名の国連特別報告者に訴えた。グリーンピース・ジャパン、グリーン・アクション、ヒューマン・ライツ・ナウは217日付け書簡で特別報告者たちに対し、「いまだ人間の居住に適していない地域への強制移住」と思える事態が迫っており、緊急措置を取るように要請した。グリーンピース・ジャパンは避難命令の撤回の前日、330日木曜日に再度、具体的に説明して訴えた。同NGOは、「安倍首相の復興政策による人権侵害は、計算されたものであり、意図的なものです」と書き、賠償金の抜本的な削減によって帰還を強制された住民に対する「圧力」、「誤解を与える情報」、「経済的な強制」を報告した。

問題の核心を査定するためには、福島県の地図を検証すべきである。放射能排出によって汚染された県土は20113月のあと、汚染レベルを考慮して3区分の区域に分類された。外部被曝量が年間20 mSv未満であるA区域では、富岡町、浪江町、飯舘村、川俣町のそれぞれ一部のように、先週末に帰還を許された。B区域では、被曝線量レベルが20ないし50 mSvであり、今回は再定住が可能でなかったが、線量率を下げるために除染作業が実施されている。20113月まで、これら両区域に約55,000人が居住しており、災害以降、一人あたり月額100,000円(837ユーロ)を支給されてきた。日本政府はこの支援金を20183月で打ち切ることになっている。

残りのC区域では、被曝線量が50 mSvより大きく、帰還が不可能でないとしても、中期的には困難である。この区域(双葉町、大熊町の全域、および富岡町、浪江町、葛尾村、南相馬市のそれぞれ一部)には、ざっと23,000人が居住していた。彼らはそれぞれ、施設を管理する電力事業者、東京電力が負担した1450万円(121,000ユーロ)を支給された。「安倍政権は、フクシマ問題の決着を図り、2020年東京オリンピック大会の開催のまえ、2018年までに、核破局事故のページをめくることができるとアピールするために画策しています」と、日本のNGO、ヒューマン・ライツ・ナウのクリストファー・ケイド・モズレー判事はいう。

これは、国が決着と出費削減を急いでいる兆候であり、国はまた、強制避難区域に指定されなかった各地の放射性降下物から逃げることを2011年の春に選んだ27,000人に提供している住宅支援を打ち切る意向である。放射能のために避難を余儀なくされ、関係当局が言い張るような「自主避難者」のレッテル貼りを拒んでいる人びとは、もはや地方自治体当局による仮の支援に頼れなくなる。

松本典子さんも、そのひとりである。彼女は2011年、下痢と出血の症状を抱えた娘を連れて、放射能から逃げるために郡山市を離れた。「日本国は財政支援を打ち切り、汚染された土地に住民が帰還することを余儀なくさせており、犯罪的なふるまいをしています」と、彼女は3月初め、東京の記者会見で語った。東京を拠点にする復興庁の国際広報担当参事官、藤田伸也氏は、「いくつかの集落で、住民がすでに再定住しております。明らかなことに、わたしどもは誰にも帰るように強制しておりません」と述べた。

卵と鶏

役人は、住民と社会に不安をもたらす放射線被曝量の閾値に関してコメントすることに慎重である。日本政府は、国際放射線防護委員会の勧告にもとづく1 mSvを達成することを自己目標に設定した。しかし、政府がこの正常復帰をめざす行動計画を提示するようなことは断じてなかったし、低線量被曝の確認されていない影響、つまり科学界をますます結集させている課題である長期的な慢性放射線被曝について、予防原則を掲げることもなかった。「みなさんは汚染を恐れていますが、わたしどもはみなさんに、たいがいの場合、被曝記録は年間234、あるいは5 mSv程度になると告げています。これは少量ですし、安全です。もちろん、安全だと感じるのは、結局、個人的な問題です」と、藤田参議官は述べた。

藤田真也氏は、住民が帰還すれば、「正常で、以前にも増して豊かで幸せな暮らしを享受できる」と確信している。彼は、水道、ガス供給、電力網、その他の社会基盤を回復する事業を並べてみせた。商業活動を増進するための新しい施設、支援計画を列挙し、「投資を願うビジネスマンにとって、非常に寛大な奨励策および支援になります」という。お話しは時おり、自己暗示流儀になるが、困難を隠すわけではない。この復興庁の高官は、「商業を再発足させなければならず、これは大変な課題です」という。彼は、「卵が先か、鶏が先かという辛い難問」にいつも向き合っていると告白し、「人びとが戻らなければ、商業活動を始められません。店舗がなければ、避難者は帰ってきません。住民は帰還しなければなりません。わたしどもは楽観的であらねばなりません」と述べた。

東北の津波に一掃された沿岸部から放射能汚染された山間部に広がる浪江町では、町役場によれば、今後、590名の住民が帰還しなければならない。これは、2011311日以前に住民登録していた21,434名に比べれば、ほんの一部である。彼らは、目下、12軒ある店で買物をし、町役場で手続きし、診療所に行き、2軒の銀行で金を引き出すことができる。だが、豹(ヒョウ)紋状に拡散したアイソトープのため、探知機がピッピッと鳴り、表示が振れ動く、この町では、町域の80%以上が80 mSvを超える「ホット・スポット」で酷く汚染されており、住民は迷い込まないように用心することになるだろう。「この地域を除染するのに、何年かかるか、わたしたちにはわかりません」と、浪江町役場の除染担当、中野隆幸課長補佐はいう。この仕事熱心なお役人は、現場会合の場であるにもかかわらず、実質的な商業活動の不足、限定的であったり、修理中であったりする社会基盤、放射性元素に対する不安など、住民を安心させる難しさについて、隠し立てするようなことをしない。

高齢者の場合

農民である岡洋子さんは、すぐには浪江町に戻らないつもりだ。彼女の家は数回にわたり除染されたが、B地域にあり、被曝線量レベルが20ないし50 mSvであり、帰宅するのは不可能になっている。「わたしは山から流れおりてくる汚染水を心配しています。わたしたちは米と野菜を生産していましたが、二度とできませんし、売ることもできません。もはや、収穫に喜びはありません。だが、わたしたちが自分の土地を世話しなければ、ほどなく荒れ地になるでしょう。ですから、時おり、わが家の水田を除草し、家周りをきれいにしています」と彼女はいう。だが、岡洋子さんは2人の女の子のことが心配であり、自宅の手入れを拒んでいる。

帰還が実現するにしても、それは基本的に年老いた人びとにかかわることであり、五月雨式におこなわれる。20159月に避難命令が解除された楢葉町では、2011年当時の住民7,400人のうち、201733日時点で818人だけが帰還している。そのうちの圧倒的な多数は、60歳以上である。この町はそれでも、核発電所からの放射性降下物の蓄積が比較的に軽微であり、迅速に除染されている。それなのに、楢葉町復興推進課の猪狩充弘課長は昨年、「ご両親たちは子どもたちの放射線料率を心配しています。みなさんに安心していただくのは、困難です」といった。あまりにも長い時が過ぎた。人びとは別の場所で暮らし方を変えた。一部は帰還し、最終的に去った。猪狩課長は今日、長期的な共同組合事業の起ち上げのために懸命に働き、診療所の開設と「公共社会基盤の修復」を喜んでいる。ある日、正常復帰が実現するにしても、前途は長く、歩みは遅々としているだろう。

【クレジット】

Libération, “Fukushima : un retour forcé en terre irradiée” by Arnaud Vaulerin correspondant au Japon, posted on March 31, 2017 at;

【関連書籍】

アルノー・ヴォレラン(著)神尾 賢二(翻訳)緑風出版 2016/11刊)
ISBN978-4-8461-1620-0 C0036

救助隊の出番は終わった。
今は清掃作業員、除染作業員の出番だ。彼らには顔もなければ言葉もない。彼らは話さないし、何も表現しない。存在していないのと変わらない。もう何週間も前から、友人であり通訳でもある龍介と私は、亡霊と化してしまった地域の奥に潜み、こちらを窺う「目に見えぬ敵」との日々について書くため、この名も無き人たちに会おうとしている……。

本書は、フランスの日刊紙『リベラシオン』の特派員が、福島第一原発事故の除染・廃炉作業に携わる労働者などフクシマの棄民たちから原子力村の面々までを独自の取材とインタビューでまとめた迫真のルポルタージュである。(2016.10

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