At #Chernobyl and #Fukushima, #radioactivity has seriously harmed #wildlife . The Ecologist https://t.co/hRDO2cGRDF pic.twitter.com/UHj9NHa5xP— The Ecologist (@the_ecologist) 2016年4月27日
チェルノブイリとフクシマ
放射能が野生生物に深刻な悪影響
チェルノブイリ近くの路上に群がるコウノトリ。チェルノブイリの多くの場所で、放射線レベルが低くなっており、動植物の逃げ場になっている。だが、その他の場所の放射能の毒は依然として強烈である。特に鳥類は放射線の影響に対して感受性が高い傾向がある。Photo: Tim Mousseau.
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サウスカロライナ大学
ティモシー・ムソー
Timothy
A. Mousseau,
University of South Carolina
2016年4月27日
ティモシー・A・ムソー氏は、現地調査の結果、チェルノブイリとフクシマの核災害によって放出された強烈な放射能が――動植物の健全性と個体数におよぼす影響はゼロまたはほとんどないという理論的研究の結果とはまったく違って――野生生物を深刻かつ不可逆的に痛めつけていると書く。
放射能レベルが最高の汚染地域では、繁殖期の鳥類の場合、生殖器官に精子がなかったり、いくつかの死んだ精子があるだけだったりして、完全に生殖能力を喪失した雄鳥が40%に達している。
史上最大規模の核災害が、30年前、当時のソヴィエト連邦のチェルノブイリ核発電所で勃発した。
メルトダウンと爆発、10日間にわたり燃えつづけた核火災によって、膨大な量の放射能が放出され、ヨーロッパとユーラシアの広大な地域が汚染された。
今日になっても、一部の食品からチェルノブイリに由来する放射性セシウムが検出されている。またヨーロッパ中部、東部、北部の各地において、多くの動物、植物、キノコにあまりにも多くの放射能が含まれており、人間の食用としては安全ではない。
70年以上前、ニューメキシコ州のアラモゴードで最初の原子爆弾が炸裂した。それ以降、2,000発あまりの原子爆弾が実験され、大気中に放射性物質を放出した。また、事故が大小取り混ぜて200件あまり、核施設で発生している。だが、専門家たちと擁護団体がいまだに、放射能が健康と環境にもたらす影響について激しく論争しているありさまである。
しかしながら、個体群生物学者はこれまでの10年間にわたり、放射能が植物、動物、微生物にもたらす影響の様態を記録することで、有意義な前進を果たしている。わたしの研究仲間とわたしは、チェルノブイリとフクシマ、また地球上の天然放射能地域におけるこうした影響を分析してきた。
われわれの研究は、複数世代にわたる慢性的な低線量電離放射線被曝の影響について、新たで基本的な洞察を提示している。最も重要なことに、生物個体が多様な形で放射線によって傷つけられることをわれわれは突き止めた。こうした損傷の累積効果が働く結果、高レベル放射能汚染地域では、個体数が縮小し、生物多様性が損なわれる。
チェルノブイリにおける広範な影響
チェルノブイリ地域において、放射線被曝が遺伝子損傷の原因になり、多くの生物種の突然変異発現率を引き上げる。われわれはこれまでのところ、生物の多くが進化して、放射線耐性を高めることを確実に示す証拠をほとんど見つけていない。
生物進化の歴史が、放射能に対する脆弱性の程度を決めるのに大きな役割をしているのかもしれない。われわれの研究では、ツバメ(Hirundo
rustica)、キイロウタイムシクイ(Hippolais icterina)、ズグロムシクイ(Sylvia
atricapilla)といった、歴史的に高い突然変異発現率を示す鳥類種が、チェルノブイリにおいて個体数の減少を示している可能性が最も高い部類に含まれている。
われわれの仮説では、DNA修復能力が種ごとに違っており、このことがDNA置換率とチェルノブイリに由来する放射能に対する感受性の両方に影響している。
放射線療法を受けている癌患者の一部と同じように、鳥類の多くに奇形の精子が認められる。放射能レベルが最高の汚染地域では、繁殖期の鳥類の場合、生殖器官に精子がなかったり、いくつかの死んだ精子があるだけだったりして、完全に生殖能力を喪失した雄鳥が40%に達している。
減少する野生生物の個体数
遺伝子損傷と個体の傷害を示す圧倒的な証拠を考えると、高レベル汚染地域における多くの生物種の個体数が減少しているのは驚くことではない。
われわれがチェルノブイリで調査した主要動物集団のすべてにおいて、地域の放射線量が高いほど、個体数が少なかった。これには、鳥類、蝶類、トンボ類、ハチ類、バッタ類、クモ類、大小の哺乳類動物が含まれている。
すべての生物種が同じ減少傾向を示しているわけではない。オオカミなど、放射線が生息個体密度に影響をおよぼしていない種も多い。いくつかの鳥類種の場合、地域の放射線レベルが高いほど、個体数が多いようである。どちらの場合でも、数値の高さは、高レベル放射能汚染地域において、競合種や捕食者が少ないという事実を反映しているのかもしれない。
さらにまた、チェルノブイリ立入禁止地帯の広大な地域が、現在の汚染度合いがひどいわけではなく、多くの種にとって、逃げ場になっているようである。2015年に公表された1本の報告が、イノシシやエルクといった狩猟動物がチェルノブイリの生態系のなかで繁栄している様子を描写していた。だが、チェルノブイリとフクシマにおける放射線の影響に関する記録のほぼすべてが、放射線に被曝した生物個体が深刻な害を受けていることを認めている。
例外はあるかもしれない。たとえば、抗酸化物質という薬物は、電離放射線による、DNA、蛋白質、脂質の損傷を防ぐことができる。個体が体内で利用できる抗酸化物質のレベルが、放射線による損傷を減らすうえで、重要な役割を担っているのかもしれない。いくつかの鳥類が、体内の抗酸化物質の使いかたを変えることによって、放射線に適応している可能性を示す証拠がある。
フクシマにおける類似性
われわれは最近、われわれのチェルノブイリ調査の妥当性を試験するために、日本のフクシマで同様な調査を実施した。フクシマにおける電源喪失と核反応炉3基のメルトダウンの結果、チェルノブイリ核惨事の分の約10分の1の量の放射性物質が放出された。
一部の種は他の種に比べて放射線感受性が高いものの、全般的に見て、鳥類の個体数と多様性に同じような減少傾向が認められた。また、蝶類など、一部の虫類に個体数の減少が認められたが、これは複数の世代にわたる有害な突然変異の蓄積を反映しているのかもしれない。
われわれのフクシマにおける最新研究は、動物が受けた放射線量を解析するのに、より先端性が進んだ手法を用いた利点を活かしている。われわれの最新論文の場合、放射線生態学者たちとチームを組んで、約7,000羽の鳥が受けた線量を再現した。われわれが認めたチェルノブイリとフクシマの類似性は、われわれが両地で観察した影響の根っこにある原因が放射線であることを示す有力な証拠になる。
現地調査VS理論モデル
放射線規制行政界にかかわる面々の一部は、核事故が野生生物を傷つけてきた様相を認めるのに、遅きに失しっている感がある。たとえば、国連主催のチェルノブイリ・フォーラムは、立入禁止地帯において、人間活動の不在によって、事故が生息生物にプラスの影響を与えたという考えを煽り立てた。
国連の原子放射線の影響に関する科学委員会の最近の報告は、福島県土における動植物がこうむる影響は最小限に留まると予測している。残念なことに、これら公式アセスメントは、これらの領域に生息している動植物の直接な現地観察ではなく、理論モデルに大きく則っている。
われわれの調査にもとづき、また他の人たちの研究にもとづき、自然のありとあらゆるストレスにさらされて生きている動物が、今まで信じられてきたよりも、放射線の作用に対する感受性がはるかに高いことは、今では周知になっている。
野生生物を用いて、「自然」環境における放射線の影響を記録することをわれわれが重要視することによって、多くの発見が得られたのであり、これらの知見は、われわれが今後の核事故や核のテロ行為に備えるさいに有益になるだろう。われわれが、人間のためだけではなく、この惑星上のあらゆる生物を支えている、生命有機体と生態系の役割を守るために環境を保全するとすれば、この情報は間違いなく必要である。
目下、世界各地で400基あまりの核反応炉が稼働しており、65基の新規反応炉が建造中、さらに165基が発注済み、または計画されている。稼働中の核発電所はすべて、今後の数千年間は保管する必要がある大量の核廃棄物を発生させている。
このことに鑑み、また将来の事故や核のテロの可能性に鑑み、将来の事故の影響を緩和するためにも、証拠にもとづくリスク評価とエネルギー政策方針を策定するためにも、これら環境中の汚染物質の影響について、科学者たちができるかぎり多く学ぶことが重要である。
Timothy A. Mousseau
ティモシー・A・ムソーは、サウスカロライナ大学生物学部の教授。
【クレジット】
The
Ecologist, “At Chernobyl and Fukushima, radioactivity has seriously harmed
wildlife,” by Timothy A. Mousseau, posted on 27th April 2016 at;
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