2018年6月16日土曜日

シアトル・タイムズ【研究論文】#ハンフォード 作業員6名の住宅で微量の放射性汚染物質




【研究論文】ハンフォード作業員6名の住宅で微量の放射性汚染物質が見つかる

2018614

リッチモンド近郊のハンフォード核保留区で、プルトニウム・ウラニウム抽出施設(右)が、放射性廃棄物を収納し、土砂で被覆された鉄道トンネルに隣り合っている。 (Nicholas K. Geranios/AP)

レベルは低いが、作業員またはその家族が微粒子のいくらかを吸引または摂取すれば、放射性の塵芥が「内部放射線被曝の潜在的な原因物質」になると、論文の著者は書く。

ハル・バーントン Hal Bernton 
Twitter ID: @hbernton
シアトル・タイムズ専属記者


今月、環境工学科学ジャーナルで公開された研究によれば、ハンフォード核施設の作業員6名の自宅で採取された塵芥に微量の放射能汚染物質が含まれていた。

レベルは低いが、作業員またはその家族が微粒子のいくらかを吸引または摂取すれば、放射性の塵芥が「内部放射線被曝の潜在的な原因物質」になると、土木工学専門家、マルコ・カルトフェンは書いており、彼の査読済み該当論文によれば、ニューメキシコ州のロス・アラモス国立研究所、コロラド州の元ロッキー・フラッツ施設に近い核関連作業員の住宅で採取された塵芥試料からも放射性粒子が見つかっている。

その粒子は、核関連作業員らの住宅および近隣住民の住宅で数年にわたり収集された試料から見つかった。ウラニウム、トリウム、プルトニウム、アメリシウムを含む粒子を吸引すれば、癌のリスクが増大しかねない。

カルトフェンは、ハンフォードの住宅の数軒では、塵芥が示す公衆衛生リスク・レベルが国際放射線防護委員会の定める許容レベル基準を上回っていたとシアトル・タイムズに語った。

マサチューセッツ州のウースター工科大学に在籍するカルトフェンは、「これら放射性粒子は細かくて、数インチも離れようものなら、見分けるのが難しくなります。ですが、体内に入ると、わたしたちの人体組織からの距離は実質的にゼロです」と述べた。

カルトフェンは、彼の調査の結果、他の住宅の何軒かでも低レベルの放射能で汚染されていることが類推されるといい、さらなる検査を推奨した。

タイムズは今週の12日、ワシントン州政府保健省・放射能空中放出部門のジョン・マーテル主査に論文を提示し、コメントを求めた。

マーテルは一読したあと、当該研究で見つかったレベルは低いようであり、「当局にとって、公衆衛生リスクというほど、大袈裟なものではありません」といった。それでも彼は、研究で報告されている数値は、彼の見慣れているフォーマットの数値とは別物であり、いまも彼のスタッフが検証しているとして、次のように付言した――

「肝心なのは、万事OKと確信できるようにしたいということです。わたしたちは公衆衛生を真剣に考えています」

カルトフェンは、極めて低レベルの放射性粒子を検出できる電子顕微鏡法と特殊なX線分析の両方が介在する独自の技術を用いた。

塵芥が集中的に試験された6軒の住宅は、トリシティとハンフォードに近い地域に所在し、試料を提供した住宅36軒の大グループの一部だった。小グループは、初回検査の結果、放射性粒子の存在が疑われるものとして選別された。

「特殊な人たち」

カルトフェンは、リッチランド近郊、562平方マイル〔1,456 km2〕の連邦所有地における、数十年にわたる原子爆弾用のプルトニウム生産の連邦による除染にまつわる説明責任を求めて活動するシアトルの団体、ハンフォード・チャレンジとの長年の共同作業によって、試料の多くを入手した。

ハンフォード・チャレンジのトム・カーペンターは、「家に入れてくれるなら、誰彼かまわず、試料を採取しました」といい、雑巾と掃除機の助けを借りて、塵を集めたともいった。

放射性粒子のある種の特質的なパターンを割り出すために、ハンフォード施設内でも塵芥試料を採取し、住宅内の発見物と比較できるようにした。

カーペンターによれば、粒子は、作業員の車、または衣服を介在して、あるいは暴風によって、さらにはハンフォードで燃えあがった野火で舞い上がって、施設の外部に拡散したのかもしれない。

リッチランドのエネルギー省広報官がカルトフェンの研究に対するコメントを求める要請をワシントンDCの本省に伝達した。本省は返信メールで、「第三者が実施した研究」に対して、コメントしないと書いて寄こした

エネルギー省はハンフォードで、空気、水、土壌、魚類および野生生物における放射性核種の蓄積を測定する環境モニタリングを担っている。エネルギー省の文書によれば、この業務は「ハンフォードの汚染物質の線量とリスクが十分に把握されていることを一般市民に理解していただくため」のものである。

カルトフェンは研究の過程で、ハンフォード作業員らの住宅3軒の塵芥から最高レベルのトリウム放射能を3件見つけた。これら塵芥試料のうちの2点は、1940年代にハンフォード作業員のためにリッチランドで建築された古い住宅から収集されていた。

3軒目は、トリシティ地域の外部の新しい郊外住宅であり、放射性・化学廃棄物を保管するタンク群で働くハンフォード従業員の持ち家だった。

カルトフェンは、上記3軒の住宅の所有者らに判明した事実を告げたといった。彼は、こういう――

「わたしたちは、非常に特殊な人たち――ハンフォードで働いていた人びと――を相手にしています。その人たちは仕事に何らかのリスクがあると理解していると思いますが、例の物が帰宅する彼らに付いてくると理解するのは面白くないでしょう」

保留にされた解体爆破

カルトフェンの研究で扱われた試料はすべて、プルトニウム最終工程棟解体爆破のさい、放射能汚染が拡散しかねないので、施設外への汚染拡散を懸念する声が高まり、作業が保留に追いこまれた年、2017年より前に採取された。

エネルギー省は昨年、数百人の作業員らを対象にバイオアッセイ――物質の効果の蓄積度を測定する生物学的検定――を実施し、42名の作業員らが非常に少量の放射性汚染物質を摂取・吸引していたと報告した。エネルギー省の担当官が今年に公表された声明で、その量は、健康に悪影響をおよぼすと考えられるレベルより低く設定された規制限度の1パーセント以下であると述べた。

201712月のこと、何らかの汚染が作業員の車で検出された。連邦政府エネルギー省によれば、6軒以上の住宅で検査が実施されたが、汚染の兆候は検出されなかった。

州政府の保健省もまた、モニタリングに参画していた。

米国エネルギー省担当官に宛てて送付された、州政府保健省の書記官補、クラーク・ハルヴォーソンの130日付け書簡によれば、空気試料捕集による「上昇結果」は検出されなかった。

州政府の当局者らにとって、際だった懸念対象はアルファ放射性物質汚染であり、これは先立つ年月にカルトフェンの研究のために収集された塵芥でも検出されていた。

ハルヴォーソンは、この汚染は検出が困難であり、粒子が人間の体内に入りこめば、「生涯の内部汚染」になる可能性があると記していた。


【クレジット】


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救援連絡センター【郡山通信】#フクシマ☢惨事:台湾ダイソーの不正輸入



国家権力による弾圧に対しては、 犠牲者の思想的信条、 政治的見解の如何を問わず、 これを救援する。



郡山通信
台湾ダイソーの不正輸入

メディア報道が森友・加計問題などの安倍政権スキャンダル、日大アメフト騒動、米朝会談などでもちきりのなか、五月二四日付け毎日新聞の第三面に掲載された短信記事の見出し「『台湾ダイソー』の輸出入資格停止」が目を引いた。筆者も貧困層の例にもれず、一〇〇円ショップの雑貨をよく利用しているせいかもしれない。

記事によれば、大創産業の現地法人「台湾大創百貨」が貿易法違反により二年間にわたる輸出入資格の廃止処分と約一億五三〇〇万円の罰金を課せられたという。

台湾ダイソーは、台湾政府が輸入を規制しているフクシマ核惨事・被災五県(福島、茨城、栃木、群馬、千葉)から輸入した食品を他県産のラベルを偽って販売、二〇一五年に六か月間にわたる輸入禁止処分を受けていたが、その間も輸入申請書類に処分前の契約日付を偽って記入し、輸入を続けていたというのだ。

現地の英字紙、台北タイムズによれば、台湾政界の第三勢力「時代力量」党主席、黄国昌氏が四月、大創の不正輸入を暴露し、行政院経済部が見て見ぬふりをしていると糾弾した結果、今回の厳しい処分に追い込まれたようだ。

台湾の核開発

台湾でこれまでに稼働した発電炉は、台湾北端の核電(原発)一号、三号の計四基と南端の核電二号の二基。起工時期は一九七二年から七九年にわたり、いずれも国民党政権の戒厳令による開発独裁のもと、民意を無視して建設と稼働が強行されたことになる。

台湾電力は一九八二年、太平洋の海洋少数民族タオの島、蘭嶼(らんしょ)に低レベル核廃棄物貯蔵施設を「缶詰工場」と偽って建設した。

一九九〇年代には、第二原発の周辺海域で大量の奇形魚が発見され、また台北市内で集合住宅の建材用鉄筋に含まれたコバルト六〇による住民の被曝健康被害が露見し、大騒ぎになった。

民主化と脱原発

一九九九年には、台湾北端で核電四号の二基が相次いで着工されたが、時すでに遅し…第二次世界大戦の終結後、台湾に進駐してきた蒋介石の国民党政府は、四七年の二・二八白色テロを経て、長きにわたり戒厳令による恐怖政治と開発独裁を続けてきたが、死を賭した民主化闘争の結果、戒厳令は八七年に解除され、着工時には、すでに民主化が進展して久しかった。

そして二〇一一年の三・一一東日本大震災とフクシマ核惨事。台湾の人びとは世界最高額の義援金を寄せていただいたと聞くが、民衆、とりわけ若年層が受けた衝撃も大きかった。なにしろ台湾は九州ほどの小さな島である。放射能放出事故となれば、逃げ場もない。

二〇一四年、長年の民主化運動闘士によるハンストをきっかけに、「核電四号廃止」を要求する現地・街頭行動が大きく膨れあがり、当局は「一号機の稼働は見合わせ、二号機は工事停止する」と表明するまでに追いこまれた。そして一六年、民進党の蔡英文政権は脱原発政策に踏み切ることを表明した。

汲むべき教訓

今回の台湾ダイソー処分のきっかけを作った新興政党「時代力量」(日本語にすれば「時代の力」)は、二〇一四年に国民党・馬英九政権下の立法院で審議中だった台湾・中国間のサービス分野の市場開放を目指す「サービス貿易協定」の批准に反対する学生と市民が立法院を占拠し、国民党の選挙戦敗北を実現した「ひまわり学生運動」を結成母体としている。

台湾政府がフクシマ核惨事被災五県産の食品の輸入を禁止し、人びとがその政策を支持している理由は言うまでもないだろう。一国の首相が福島県産の果物や魚を食って見せ、強制ワイセツを問われたメンバーを切り捨てたTOKIOに対して、核惨事現地の県知事が「風評被害払拭」キャンペーン継続をお願いする、この国との落差は途方もなく大きい。

台湾大創百貨は五月二七日、台北市内で記者会見を開き、副社長が「ご迷惑をお掛けした」と謝罪した。大創産業、そして私たちが今回の不祥事から汲むべき教訓は大きい。


(井上利男。原発いらない金曜日!郡山駅前フリートーク集会・世話人。ブログ「原子力発電・原爆の子」、ツイッター<@yuima21c>)

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中華民国経済部は523日、日本のディスカウント系列店舗を展開する大創産業が、輸入許可を得るために取引の日付を偽っていたとして、あらゆる商品の台湾への輸入を2年間にわたり禁止する措置を課せられたと発表した。

経済部は同社に対して輸入許可を取り消し、罰金4164万台湾ドル(15200万円)を課したと、台北の立法院で国際貿易局の李冠志副局長が述べた。

2018年6月13日水曜日

アジア太平洋ジャーナル【評論】トランプの「核の傘」に頼り、沖縄☢兵器再配備を容認する安倍政権

 アジア太平洋ジャーナル/ジャパン・フォーカス
アジア太平洋と世界を形成する諸勢力の分析

2018521
Volume 16 | Issue 11 | Number 1

日本と沖縄における米国の核態勢の強化を要求する日本政府の核兵器タカ派たち

【記事】グレゴリー・カラキ
【コメント】スティーヴ・ラブソン

グレゴリー・カラキは、憂慮する科学者同盟の中国プロジェクト主幹、上席アナリスト。米中間の異文化交流を中心に中華人民共和国に関して執筆。

スティーヴ・ラブソンは、ブラウン大学東アジア研究名誉教授。著書に、Okinawa:Two Postwar Novellas (Institute of East Asian Studies, University of California, Berkeley, 1989, reprinted 1996), RighteousCause or Tragic Folly: Changing Views of War in Modern Japanese Poetry (Center for Japanese Studies, University of Michigan, 1998), Southern Exposure: Modern Japanese Literature from Okinawa, co-edited with Michael Molasky (University of Hawaii Press, 2000), TheOkinawan Diaspora in Japan: Crossing the Borders Within (University of Hawaii Press, 2012), Islands of Resistance: Japanese Literature from Okinawa, co-edited with Davinder Bhowmik (University of Hawaii Press, 2016)。翻訳書に、Okinawa’s GI Brides:Their Lives in America by Etsuko Takushi Crissey (University of Hawaii Press, 2017)1967年から68年にかけて、辺野古の第137武器補給部隊所属、米陸軍招集兵として沖縄に駐留しており、アジア太平洋ジャーナル寄稿・編集者。

米日安全保障会談で着席する前に、米国のレックス・ティラーソン国務長官、ジェームス・マティス国防長官と握手する日本の小野寺五典防衛大臣、河野太郎外務大臣。

米国の核態勢を増強するドナルド・トランプの意向は、ますます右翼化する日本政府の熱烈な支持を得た。河野太郎外務大臣はトランプ政権が2月はじめに核態勢の見直し(NPR)を公表してからほどなく、非核兵器の脅威に米国と日本が対抗するために頼ることのできる低出力核兵器の選択肢を強調するなど、米国核兵器政策の新たな方針を「高く評価します」と表明した(米国の「核態勢の見直し」の公表について:外務大臣談話)。

河野がトランプのNPRを支持したことは、日本の軍事力の規模と役割の拡大を許容するように日本の平和憲法を改定するなど、安倍首相の地政学的な野望を抑制できる穏健派として河野を見ていた向きにとって、驚きだった(27日付け朝日新聞社説「核戦略と日本/これが被爆国の談話か」)。

米国が核兵器の役割をさらに増して強調することに対して、安倍の自由民主党の保守的指導層の内部で支持することは、目新しいものではない。9年前のこと、自民党に忠実な外務省職員らが米国議会の委員会で証言し、米国の核政策に関してオバマ政権に助言していた。彼らの証言は、トランプのNPRのうち、最も物議をかもす項目の一部――とりわけ、他国による核兵器の使用を戦略的に抑止するためではなく、むしろ核武装国および非核武装国に対して限定的核戦争を遂行するための選択肢とされるので、戦術核兵器と呼ばれている低出力核兵器を重視する項目――の下書きであるかのように読める。

安倍首相は最近、2009年の委員会で証言した役人らのひとり、秋葉剛男〔あきば・たけお〕を日本の外務省で官僚トップの地位にとりたてた。秋葉氏は、それに自民党の核武装論者たちは望んだことを成就するまで長く待たなければならなかったかもしれないが、米国の核兵器の役割に関する彼らの見解は、まさしく米国政府の公式政策になろうとしている。


当時と現在

憂慮する科学者同盟(UCS)は、秋葉氏が2009225日の議会委員会で陳述した発言の記録文書を、質疑に対する応答の――委員会職員による――手書きノートと併せて入手した。その「米国の拡張抑止に関する日本の視点」と標題された陳述書は、次の2点の基本的な要請を表明している――

  • 「核抑止を日米安全保障体制の中核」に据える米国大統領声明
  • 米国の核兵器能力を、(a)弾力性、(b)信頼性、(c)即時対応性、(d)識別性と選択性、(e)隠密性/顕示性を備え、(f)他の諸国が自方の核兵器能力を拡張したり近代化したりするのを思いとどまらせるのに十分なレベルに維持すること

オバマのNPR2010年版は、その発言を提示した日本の当局者たちを疑う余地なく失望させた。オバマは地域安全保障における米国核兵器の役割の縮小を強調した――

「合州国は冷戦が終結したとき、海軍水上艦および汎用潜水艦から核兵器を除去するなど、前方展開核兵器を太平洋地域から撤収させた。合州国はそれ以来、中央戦略部隊、および危機にさいして東アジアに核兵器システムを再配備する能力を頼りとしてきた。

「核兵器は同盟諸国および提携諸国に対する米国の安全保障における基幹要素であることは実証されてはいるが、合州国は地域安全保障構造を強化するために、在来型米軍駐留戦力の前方展開と戦域弾道ミサイル防衛を含め、非核兵器要素に頼る度合いを高めている。合州国の国家安全保障戦略において、核兵器の役割が縮小されるとともに、これら非核兵器要素は抑止負担に果たす役割は大きくなるだろう」

トランプ大統領のNPRは、秋葉氏が2009年の議会委員会で提示した発言で表明された好みにオバマのNPRよりもずっと合致したアジアにおける米国の核選択肢の役割を論じている。トランプのNPRは次のように述べる――

「現時点で核兵器にまつわる米国の選択肢の柔軟性を拡大し、低出力核兵器の選択肢を含めることは、地域的な武力侵攻に対して信頼しうる抑止力を保全するうえで重要である……合州国はNPR2010年版において、とりわけアジアにおいて数十年にわたり抑止と同盟諸国の安全保障に貢献してきた核武装SLCM(海洋発射巡航ミサイル)の撤収を表明した。われわれは直ちにこの能力の回復を図る施策に着手するだろう…」

米国議会委員会における秋葉氏の証言は、オバマ大統領が撤収したSLCMについて、それが「選択肢の柔軟性を備えている(すなわち、低出力、海洋配備〔隠密性〕、スタンド・オフ〔敵側の射程外から発射、つまり残存可能〕であり、徘徊可能)」なので、保持することが好ましいと提言していた。そのSLCMとは、核装備トマホーク対地攻撃ミサイル、TLAM/Nのことである。

このタイプの「柔軟性のある」核兵器の選択肢がトランプのNPRに目立って登場する。日本人の陳述は、核の柔軟性を「危機における敵の脅威の広範な多様性に対処しうる」兵器を保持することと定義していた。敵の脅威には、「深部・強化地下施設、移動可能な標的、サイバー攻撃、対衛星攻撃、対接近/地域拒否能力」が含まれていた。この場合、日本人の陳述で使われていた「対接近/地域拒否能力」とは、中国の従来型軍事能力に言及したものである。

トランプのNPRは、サイバー攻撃のような「新しい形の敵対行動」など、非核攻撃に対処するのに、合州国は核兵器を使用するであろうという明確な宣言で裏打ちしているように、日本の核兵器容認派たちに対して、彼らが2009年に要求した「柔軟性」のすべてを保証している。新NPRは同時に、新たな米国の核兵器によって、宇宙、サイバー能力を含め、中国の従来型軍事能力を無力化する戦略を裏書きしている。トランプ政権が中国の非核兵器軍事能力に対抗するために、核兵器を使用する意図は、同政権の国家防衛戦略にもやはり書き込まれている。

沖縄を再び核の島に?

2009年の日本側発言に関する手書きノートによれば、委員会の共同委員長のひとり、ジェームズ・シュレシンジャー元国防長官が、沖縄に米国の核兵器を再配備することに備えて、日本が国内政策を調整することは可能かと質問した。秋葉氏は、日本は非核三原則を保持しており、その1967年の初発表以来、1971年の国会採決もそうだが、その後も日本政府のさまざまな人士によって再確認され、いまだに国内の強い支持があるとシュレシンジャーに警告して応じた。その三原則は、日本は国内において、核兵器を保有せず、製造せず、持ち込みを許さないと宣言している。

だが、日本の世論に懸念があるものの、日本の島、沖縄に米国の核兵器を再配備する準備をすることは「わたしには、説得力があるように思える」と、秋葉はシュレシンジャーに語った。トランプのNPRがアジアに再配備することのできる新たな戦術核兵器を重視しており、安倍政権がトランプのNPRを明確に支持していることを考慮すると、沖縄の米軍武器弾薬貯蔵施設を格上げし、島内に米国の核兵器を保管することが可能になるようにすることで両者が合意している可能性を検証するだけの価値がある。

秋葉氏のように、アジアにおける米国の核兵器の役割拡大を支持する官僚らにとって、沖縄における米国の核兵器の再配備は道理にかなっていると思えるかもしれない理由がいくつかある。

その第一に、米軍が沖縄に米国の核兵器を再配備することを認める日米間の秘密合意の存在がある。その合意は1969年、沖縄の施政権を日本政府に変換するための法的手続きの一環として、ニクソン米国大統領と佐藤栄作・日本国首相によって署名された。合州国は第二次世界大戦の終結後、沖縄を占領し、広大な米軍基地の一群を築き、それが今日までその島に残っている。いくつかの基地に米国の核兵器が備蓄されていたが、1972年に日本政府の求めに応じて撤去された

その合意は数十年にわたり秘密を保たれており、両国は合意について、いまだに公然と論議することを拒んでいる。その細目の多くは、野党だった日本民主党(DPJ)が2009年から2012年まで短期間ながら政権を握っていたさい、日本の外務省が実施した公的調査によって、ついに公開された(外務省「いわゆる『密約』問題に関する調査結果」)。

秋葉氏なら説得力があると思っているかもしれない、沖縄に米国の核兵器を再配備するもうひとつの理由として、米国と日本の当局者らがニクソン・佐藤合意にもられた文言の両義性を利用することができるし、米国が沖縄を再び核の島にすると決定するなら、関連する二国間協議に関する情報の流布を厳重に統制することによって、その後の手続きを不透明にできる。

シュレシンジャーの問いかけと日本側の回答からうかがい知れるが、米国は日本政府に同意を求めるだろう。だが、その同意は、明文化されたり、公表されたりする必要もない。ニクソン・佐藤合意の文言は意図的に曖昧にされ、官僚機構のかなり低レベルにおける単純な告知で十分であると思われる。この類いの低レベル合意であれば、総理大臣ら、自民党政権関係者は、沖縄に核兵器を再配備していたことに関する佐藤・ニクソン合意についての議論を避けるのに50年以上も使っていたのと同じような否定論拠を与えられることになる。

米軍核兵器の存在の可能性は、米国政府が軍備について確認も否認もしない方針をとっているので、世界の目には、さらに不可視になるだろう。米国が質問に対して沈黙するなら、日本政府が再配備に同意するのが大きく容易になる。外部者の調査がおよばなければ、公に知られることも論議されることもなく、米軍核兵器は騒がれることなく沖縄に戻されるだろう。

沖縄が秋葉氏にとって説得力があると思える最終的な理由は、米国が沖縄の辺野古集落に新たな軍事基地を建設していることである。このプロジェクトには、新基地に近接し、かつて米軍核兵器が保管されていた武器弾薬貯蔵所の大幅な改修が含まれている。辺野古は1969年のニクソン・佐藤合意において、両国にとって日本における米国の核兵器を再配備するために両国にとって好ましい適地であると言及されている。

同じ穴のムジナ

日本の安倍晋三首相は、国際的に右に出るもののない忠実なドナルド・トランプ支持者に数えられる。安倍首相は政権交代準備期にトランプを訪問した最初の世界的な指導者であり、最近の選挙戦では米国大統領との緊密で個人的な友情を強調していた。

秋葉氏は、とりわけ拡張核抑止の問題について、安倍の筆頭外交助言担当〔外務事務次官〕である。秋葉氏は、米日拡張抑止対話(EDD)の第一次日本側代表団数名を選別し、組織して、引率し、米国の核兵器施設を歴訪した。米国の新たな核態勢の見直しの公表と安倍政権の臆することのない支持を考えると、登場人物3名の全員がアジアにおける米国の核兵器の役割拡大が必要なことで一致しているのが明らかなようだ。

安倍首相が核兵器に抱く見解はヒロシマでオバマ大統領に挨拶するイメージに象徴される最近の印象を得たアメリカ連邦議会議員の大方にとって、自民党がトランプの核大勢見直しを支持するのは驚きであるかもしれない。ワシントンの最近の会合で、議会の古参議員であり、抜群に事情通の国家安全保障専門家は、河野外務大臣がトランプの核態勢見直しを支持する声明を公表したと知らされて、安倍は河野の間違った声明を公式に訂正したのかとたずねた。

トランプの核態勢見直しに反対している米国人は気づくべきである。これからの日々、数週間か数か月か、核態勢見直しにまつわる論争が展開するだろうが、トランプの核態勢見直しに賛成を表明する自民党関係者らは、日本を防衛するために米国の核兵器の役割を拡大することに反対している日本国民とその選良たちの多数派を代表していない。だが、彼らは、トランプの核態勢見直しの背後で揺るぎなく整列している安倍首相の見解を代表している。

本稿の原本は憂慮する科学者同盟によって2018218日に公表された)

日本政府関係者らが米国に「核の傘」維持と核兵器の再度の沖縄持ち込みを要請
――スティーヴ・ラブソンによるコメント

憂慮する科学者同盟の中国プロジェクト主幹、グレゴリー・カラキは2018215日付け記事において、日本政府外務省の高官が2009年の米国議会の委員会で証言し、沖縄に核兵器を再度持ち込むことに賛意を表明したと伝えている。議会メモの記録によれば、秋葉剛男は、沖縄に核兵器を戻すために準備することは「わたしにとって、説得力があるように聞こえる」と陳述した。秋葉は20159月、外務省の行政職最高位、外務審議官にとりたてられた。クラキは東京で2018425日に催された記者会見で、日本が米国の「核の傘」に頼りつづけていることを、世界の核兵器の数を削減するための、いかなる努力にとっても、主たる障壁になっていると批判した。核武装制限を強化するための米中間対話を促すための憂慮する科学者同盟の取り組みにおいて、「わたしの仕事にとって、日本は無二最大の邪魔になっています」と、彼は述べた1

議論の核心に、米軍核兵器を配備する島としての沖縄の役割の可能性、沖縄住民の強固な反対にもかかわらず、辺野古に新たな基地を建設する計画に密接に関連した可能性がある。クラキは沖縄に核兵器を再び持ち込む可能性について、「沖縄が秋葉氏にとって説得力があると思える最終的な理由は、米国が沖縄の辺野古集落に新たな軍事基地を建設していることである。このプロジェクトには、新基地に近接し、かつて米軍核兵器が保管されていた武器弾薬貯蔵所の大幅な改修が含まれている」と書いている。クラキは、新たの航空基地が建設されると、貯蔵所に核兵器が備蓄されるかもしれないと沖縄住民に警告した2。彼は、基地計画地、辺野古の201633日抗議集会に参加し、沖縄住民に建設反対運動をつづけるように訴えた3

わたしは米陸軍招集兵として、19677月から686月にかけて、「戦術」核兵器が備蓄されていた辺野古の武器弾薬貯蔵施設に配属されていた。沖縄の丘の上や飛行場に、地対空(対航空機)核ミサイル(ナイキ・ハーキュリーズ)、砲撃ロケット(オネスト・ジョンおよびリトル・ジョン)、地雷(原子爆裂弾)が配備されていた。その当時、嘉手納航空基地にはまた、中国とソ連極東部の全域に到達する地対地核ミサイル(メイスB)が存在した。辺野古の基地では、陸軍第137武器科の配下で軍用犬連れの歩兵部隊が連日24時間の警備をしていた。それに加えて、近隣のキャンプ・シュワブの海兵分遣隊が基地を取り囲んで完全戦闘装備の演習をやっていた。基地のそばの道路には「停車禁止」標識が掲示されており、停車する者はだれでも、たとえパンクしたタイヤの交換のためでも、銃を突きつけられて逮捕され、独房に勾留されて、身体検査と尋問の羽目にあった。

1959年のこと、那覇航空基地に配備されていたナイキ・ハーキュリーズの一発が事故で発火し、陸軍兵2名が死亡、1名が負傷した。弾頭が跳ねあがり、地上に転がったが、爆発はしなかった。第137武器科のわれわれはナイキ・ハーキュリーズの任務を憂慮しており、ソ連の航空機の翼を破壊することができたとしても、空中の核爆発は放射線を発散し、地上の沖縄住民とわれわれを危険にさらしていたことだろう。

1972年、沖縄の施政権が日本に返還された日の少し前、すべての米軍基地は無傷のまま、高度保安警備は消失し、陸軍の第137武器科は海兵隊キャンプ・シュワブ(第2ゲート)の一部になった。

キャンプ・シュワブ第2ゲート(2014年撮影)

日本政府が沖縄から核兵器を搬出する経費を負担したことを記録した明細書は、米国政府が核兵器の存在を認めた最初で唯一の機会を示している4。核兵器が除かれてから、海兵隊は基地を従来型(非核)兵器の貯蔵のために使っている。しかしながら、核兵器貯蔵区画は今日にいたるまで無傷のままであり、短く刈られた草と芝生で覆われ、鋼鉄ドアを備えたコンクリート製イグルー(ドーム)が残っている。

要塞化され、施政権返還の前に核兵器を格納していた地下イグルー2014年撮影)

貯蔵区画を高い金網で取り巻くフェンス(2014年撮影)

その一方、基地の後遺症はしつこく残る。1960年代に第137武器科で就役していた陸軍退役兵3名が放射線被曝に関連した形態の癌を発症したとして、米国政府に対する賠償請求訴訟を起こした。1名は黒色腫で片眼を失った。別の1名は2016年、彼の訴訟審理が開かれる数週間前に死亡した。おまけに、アメリカ人にとっても、沖縄住民にとっても、この辺野古の元核兵器貯蔵施設における深刻な環境災害が終わっていないという厄介な可能性が残っている。米国環境保護庁によれば、「現役施設と放棄施設の両者を含め、1,000か所を超える場所が放射能で汚染されている。その箇所のサイズは、研究室の小さな一角から大規模核兵器施設までさまざまである。汚染は、ビル内の装置と同じく、空中、水中、土壌中で見つかるかもしれない」5

ジョージ・HW・ブッシュ大統領は1991年末、米国外基地からすべての戦術核兵器を撤収するように命じた6。トランプ政権はいま、長年の政策をくつがえして、海洋発射ミサイルに「低出力」(かつての用語では「戦術」)核弾頭を装着するつもりである。オバマ大統領の軍縮・不拡散担当特別顧問だったジョン・ウオルフスタール(Jon Wolfsthal)は、この変更を「まったく不必要」という。それに彼は、低出力核兵器を弾道ミサイル潜水艦に搭載する場合、いざ発射となれば、艦の位置を明かしてしまうことになるので「極めて間抜け」という7。核兵器は日本を「防衛」せず、戦争が勃発すれば、配備国に攻撃を招く。沖縄に再び核兵器を持ち込む提案は、「ドクター・ストレンジラヴ」の着想である。

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Notes

1 Naotaka Fujita, “U.S. analyst: Japan’s nuke stance obstructs arms control,” The Asahi Shimbun, April 26, 2018.

Yukiyo Zaha, “Foreign Affairs Vice Minister Akiba denies making his 2009 statement” Ryukyu Shimpo,March 6, 2018.

"American scientist visits Henoko to support protesters," Ryukyu Shimpo, March 3, 2016. 

4 William M. Arkin and William Burr, “Where They Were,” Bulletin of the Atomic Scientists, Vol 55, No. 6. 

5 See article at EPA website: here.

6 Stephen Young, “25 Years Ago President Changed Nuclear Policy,” Union of Concerned Scientists,September 27, 2016.

7 Jonathon Freedland, “Trump is the real nuclear threat,” The Guardian, August 11, 2017.

【クレジット】

The Asia-Pacific Journal / Japan Focus, “Nuclear Hawks in Tokyo Call for Stronger US Nuclear Posture in Japan and Okinawa,” by Gregory Kulacki with a comment by Steve Rabson, posted on June 1, 2018 at https://apjjf.org/2018/11/Kulacki.html.