2013年12月12日木曜日

オープン・ソサエティ財団声明「日本の国家秘密法、公的説明責任を危うくする」



オープン・ソサエティ財団
OPEN SOCIETY FOUNDATION




2013126日 オープン・ソサエティ・ジャスティス・イニシャティヴ
December 6, 2013   Open Society Justice Initiative
プレス・リリース PRESS RELEASES
日本の国家秘密法、公的説明責任を危うくする
Japan's New State Secrecy Law Threatens Public Accountability
【ニューヨーク発】オープン・ソサエティ・ジャスティス・イニシアティヴ(開かれた社会・正義唱導)は、金曜日に日本の議会で採択された新たな国家秘密法の条項について深い懸念を表明した。法務上席担当のサンドラ・コリヴァーは、この新法が、国家安全保障および国防問題について国民の知る権利に対して厳格な制限を設定することにおいて、国際標準から大幅に下回っていると指摘した。
ジャスティス・イニシャティヴにおいて知る権利の問題について先導するコリヴァーは、「この法律は、日本の一歩後退を象徴します。適正な公的説明責任を脅かすレベルの秘密を提示するものです」という。
オープン・ソサエティ財団の上席顧問、モートン・ハルパリンは3代にわたる米政権の内部で国家安全保障にかかわる要職を務めた人であるが、次のようにいう――「この法律は21世紀の民主主義国家が考えだした最悪のものに匹敵します。同じ程度に懸念されることに、これが制定された拙速さであり、十分な公聴会も開かれていないし、市民社会と世界の識者らの意見も聞いていません」。
表現の自由に関する国連特別報告者、フランク・ラ=ルーは、この法案が「広範で曖昧な秘密の根拠を定めようとしているようであるだけでなく、内部告発者やさらには秘密を報じようとするジャーナリストらに対してさえ深刻な脅威となる条項を含んでいる」と懸念を表明した。
この新法は、次のような条項を含む――
  • 2001年法(自衛隊法)に定められた現行の「我が国の防衛上特に秘匿することが必要である」情報を防衛秘密に指定する防衛大臣の権限を抜本的に拡大するだろう。この新たな法案は、この権限を、国防、外交、「特定有害活動」、テロ防止など、曖昧で広範に過ぎる範疇に拡大する。
  • 秘密情報を指定する権限を付与される政府機関は、防衛大臣だけでなく、閣僚全員および主だった政府機関の長に拡大される。
  • 秘密指定情報の暴露にかかわる最高刑は、2001年法の5年の懲役刑から10年の懲役刑に拡大する。
行政機関から完全に独立した管理機関による秘密指定の見直しを定める条項がない。おまけに――
  • 情報が有する公益が、その開示によってありうる弊害に優っている場合、開示を可能にする「公益優先」条項は定められていない。
  • 公益擁護条項が定められていない。この条項があれば、情報開示による公益が、開示による実際の弊害より大きい場合、公益性の高い情報の漏洩者が刑事罰の対象にならなくてすむだろう。
この法律は上記のすべてにおいて、ジャスティス・イニシャティヴが起草に関わったツワネ原則(日弁連によるTshwane Principles全文日本語訳)に定める国家安全保障と情報への権利に関する国際原則の集成にまとめられた国際基準および最良の慣例にはるかに遠く届かないものである。
ツワネ原則は、国際法と国内法、基準と良き慣例にもとづいており、現代の民主主義諸国の法律や裁判所の決定に反映されている。原則の各条項は世界から参集した22団体・学術組織が起草し、安全保障部門、諜報・外交経験者など、識者たち500人と相談して策定された。この原則は、欧州議会、関連する国連特別報告者ら、知る権利または表現の自由に関する汎アメリカおよび汎アフリカ人権組織の特別報告者らに支持されている。
ツワネ原則は、情報を特定しうる弊害から守るために秘密指定が必要であり、定期的に見直すことを条件に、政府が微妙な情報を一定期間公衆から秘匿することを是認している。日本の法案はこの基準を満たしていない。
安倍晋三首相は、アメリカの先例にもとづく国家安全保障会議を創設する彼の計画に、もっと厳格な秘密保全法が不可欠であると繰り返し断言してきた。日本の新聞各紙は、米国高官が日本に秘密体制を強化するようにと迫ってきたと報道してきた。
だが、米国と緊密な同盟関係にある数か国では、秘密指定を決定するさいの公益に関する考慮の余地を残し、指定情報の無断公開に対する最高刑が5年またはそれ以下であり、国家秘密指定を許される閣僚の数が限られており、秘密指定に対して裁判所および/または他の独立機関において異議を申し立てる手続きを定めている。
サンドラ・コリヴァーは、次のように付言した――「米国式選定の先例は、他国にとても押し付けるべきでない代物です。米国政府が指定した情報の量が多すぎて、真正な秘密情報を守ることが事実上不可能になっているほどです。国家の安全は、国家安全保障のために実施されるものを含め、国家の活動について、国民が情報をじゅうぶん与えられてはじめて最高度に保障されます」
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【参照リンク】
朝日新聞デジタル:
特定秘密保護法の全文

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