2015年12月11日金曜日

【世界の潮流】パリ気候サミットのハイジャックを画策する核産業



パリ気候サミットのハイジャックを画策する核産業

ノエル・ウォーホープ Noel Wauchope 2015126

(Image via abc.net.au.)
新たに設立されたBreakthroughEnergy Coalition[ブレイクスルー・エネルギー連合]はビル・ゲイツなどの億万長者たちに後押しされ、国際核ロビーに支援されており、COP21気候会議をハイジャックしていると、ノエル・ウォーホ―プは書いている。

パリ気候会議で、国際核ロビーの活躍が目にあまる。

今日の国際核ロビー活動の主役になっているのが、ビル・ゲイツが主導し、会議の開催に合わせて公表されたブレイクスルー・エネルギー連合である。

ビル・ゲイツは、リチャード・ブランソン、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾスなど、他の24人の社会貢献を謳う億万長者たちの事業を束ねるブレイクスルー・エネルギー連合が炭素を生成しないエネルギーの研究に出資すると発表した。

ホワイトハウスはこの動きの支援に乗り気であると伝えられており――ゲイツはパリでバラク・オバマ米国大統領と同席していた。米国、その他のメディアが次々と繰りだす記事は、このグループの目的について、再生可能エネルギーの刷新、あるいはむしろ、「クリーン」エネルギーの刷新を強調している。核エネルギーは言及されていないが、あの曖昧模糊としたことば「クリーン」にそれとなく包まれている。

核心エネルギー連合については、後述する。だが、COP21のパリで、他にどんなことが起こっているのだろうか?

おやまあ、核ロビーが大活躍しており、さまざまなメディアに登場し、会合のさなかに顔を出して、核推進のプロパガンダ本“Climate Gamble[『気候ギャンブル』]を何千冊も配りまくっている。

筆者はパリの活動家から次のようなことを伝えられた――

核推進派とその広報顧問らは、COP21の議題に核――第三世界のための核と新規核施設を防護する警備体制の強化――を挙げようとしている。NGOと圧力団体はCOP21で脇役にされている。必死になった資本家たちが周辺に出没している。

大勢の人たちが放送時間をたっぷり使って、核の利点について長広舌をふるい、反核派は脇役に追いやられている。企業に雇われた警備会社やソーシャルメディア会社による破滅キャンペーンもおこなわれているように思う。

彼らは、のっぴきならない証拠を突きつけられても、放射線による甲状腺癌を言いたてる人たちを激烈に攻撃する。

大金が主張を押し通すために使われている。


筆者の手元にいま、この活動家のことばを独自に裏付ける証拠はない。それでも、連日のように目にする、核こそが気候変動の収束策という核推進記事から判断して、これは本当のことだと考える。

最近の報道記事の見出しから、例をいくつか挙げてみよう――

  • デイリー・コーラー「地球温暖化のゴッドファーザー、オバマを非難、核を地球の救世主と推奨」

  • NPR[全米公共ラジオ]「世界の首脳、国連気候変動サミットで核の役割を議論」

  • ガーディアン「核エネルギーが気候変動問題で前進する唯一の道

  • フォーブス「『新型』核発電が惑星を救う道筋~規制機関がゴーサインを出しさえすれば」

  • RFI[ラジオ・フランス・アンテルナショナル]英語版「気候変動:EUロビーによれば、核は解決策の一方法であり、問題ではない」

  • ワイントン・エキザミナー「核エネルギーの輝きのもとに共和党と民主党が一致」

  • リッチモンド・タイムズ・ディスパッチ「社説:気候変動の緩和に、核推進」

  • ネーション「核という解決策」

  • オースティン・アメリカン・ステーツマン「核エネルギーとテキサスの未来」

ブレイクスルー・エネルギー連合について、記事がもっとたくさんあるが、筆者は、このグループに留保をつけている記事を探すのに苦労した。

ジョー・ロムはクライメイト・プログレスに投稿し、この連合によって研究に使われることになっている数十億ドルの金は、既存の再生可能エネルギー技術の活用に使われるほうが有益であると指摘している。

マーク・ロゴウスキはフォーブスで同様な指摘をしている。彼は、ソーラー発電がすでに急速に発達し、安価になっているというのに、ビル・ゲイツの新型核技術を含む「斬新な技術を語りつくす」姿勢に疑問を呈している。

筆者はやがて、クリーン・テクニカに掲載されたティナ・キャセイの記事に辿りついた。これは、ブレイクスルー・エネルギー連合が核産業を中心に投資するものであると気付かせ、核エネルギーを「クリーン・エネルギー」とみなすことを問題にするものとして最初の記事である。

キャセイはまた、ブレイクスルー・エネルギー連合が、税金を使って「クリーン」なエネルギーの研究開発計画に投資するミッション・イノヴェイションと協力関係にあると指摘する。彼女はそれに、ビル・ゲイツが革新的核エネルギー企業、テラパワー社の共同創業者であり、会長であることを教えてくれている。

 ブレイクスルー・エネルギー連合に参画している唯一の大学がカリフォルニア大学であり、この大学は――核エネルギー研究開発施設として知られる――ローレンス・バークリー国立研究所を運営している。

さて、わが国、オーストラリアでも核を熱愛する人たちが時流に乗っている。最近の――そして、筆者のお気に入りの――ものは、ギャレス・エヴァンスの記事だ。エヴァンスは久しく核産業の代弁者であってきたが、同時にオーストラリアを代表する核軍縮論者である。彼は核反応炉と核兵器の関連をまったく見ていない。

オーストラリアン紙といえば、いつも核産業を宣伝しているが、'Nuclear waste dump a no-brainer'[「核廃棄物処分は朝飯前」]という見出しでエヴァンスを引用している。

2015123日に開催されたサウス・オーストラリア州核燃料連鎖王立委員会におけるエヴァンスの発言が、オーストラリアが世界の放射能ゴミを輸入する考えに夢中になっているものとして、次のように引用されている――

「オーストラリアは、輸出ウラニウムから作られた廃棄物を受け入れ、他国の廃棄物を貯蔵することによって、国際社会で非常に抜きん出た地位を獲得するであろう。ヨーロッパ諸国が2011年のフクシマ核事故で怖気づいているのには、当惑させられる」

エヴァンス教授はまた、核エネルギー批判派に対する核ロビーの悪評高い論法を開陳した。彼の発言は次のとおり――
「わたしにとって、理性に対する感情の勝利だと思える」

核エネルギーを「クリーン」だとし、地球温暖化の解決策だとする最近の虚偽宣伝はすべて、何度も反論されている。長期にわたって有毒でありつづける放射性廃棄物の生産は、核エネルギーがクリーンでないことを間違いなく示している。

核エネルギーが本当に気候変動の解決策であるならば、数千基の反応炉をとても早急に建造し、起動する必要があるだろうが、その時間はない。ビル・ゲイツのお好みのミニ反応炉となれば、それこそ非常に夥しい数が必要になるだろう。極めて高額になるコストを別にしても、途方もない人数の警備員と保安システムが――反応炉1基につき一通り――必要になる。そのうえなお、有毒で永続的な廃棄物を残して終わるのだ。しかも、核燃料連鎖は非常に憂慮すべき温室効果ガスの排出と無縁ではない。

ビル・ゲイツご本人は、商魂と併せて、高邁な目的と理想を求める夢想家めいたところのある御仁なのかもしれない。彼のブレイクスルー・エネルギー連合は、Breakthrough Institute[ブレイクスルー研究所]と同じく胡散臭いようであり、後者には化石燃料からの排出ガスに対する無策の策を推奨してきた長い歴史があり、まだ青写真として存在しているだけのほとんど魔法のような新型核反応炉について、目を欺く約束を掲げている。

Read more by Noel Wauchope at antinuclear.net and nuclear-news.net. You can follow Noel on Twitter @ChristinaMac1. 

【クレジット】

Independent Australia, “The nuclear industry is trying to hijack the Paris Climate Summit,” by Noel Wauchope; https://independentaustralia.net/politics/politics-display/the-nuclear-industry-is-trying-to-hijack-the-paris-climate-summit,8458.


お断り:煩雑さを避けるため、原文に数多く貼られているサイバーリンクのほとんどを割愛しましたので、必要な方は原文サイトを参照してください。
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