2018年6月16日土曜日

シアトル・タイムズ【研究論文】#ハンフォード 作業員6名の住宅で微量の放射性汚染物質




【研究論文】ハンフォード作業員6名の住宅で微量の放射性汚染物質が見つかる

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リッチモンド近郊のハンフォード核保留区で、プルトニウム・ウラニウム抽出施設(右)が、放射性廃棄物を収納し、土砂で被覆された鉄道トンネルに隣り合っている。 (Nicholas K. Geranios/AP)

レベルは低いが、作業員またはその家族が微粒子のいくらかを吸引または摂取すれば、放射性の塵芥が「内部放射線被曝の潜在的な原因物質」になると、論文の著者は書く。

ハル・バーントン Hal Bernton 
Twitter ID: @hbernton
シアトル・タイムズ専属記者


今月、環境工学科学ジャーナルで公開された研究によれば、ハンフォード核施設の作業員6名の自宅で採取された塵芥に微量の放射能汚染物質が含まれていた。

レベルは低いが、作業員またはその家族が微粒子のいくらかを吸引または摂取すれば、放射性の塵芥が「内部放射線被曝の潜在的な原因物質」になると、土木工学専門家、マルコ・カルトフェンは書いており、彼の査読済み該当論文によれば、ニューメキシコ州のロス・アラモス国立研究所、コロラド州の元ロッキー・フラッツ施設に近い核関連作業員の住宅で採取された塵芥試料からも放射性粒子が見つかっている。

その粒子は、核関連作業員らの住宅および近隣住民の住宅で数年にわたり収集された試料から見つかった。ウラニウム、トリウム、プルトニウム、アメリシウムを含む粒子を吸引すれば、癌のリスクが増大しかねない。

カルトフェンは、ハンフォードの住宅の数軒では、塵芥が示す公衆衛生リスク・レベルが国際放射線防護委員会の定める許容レベル基準を上回っていたとシアトル・タイムズに語った。

マサチューセッツ州のウースター工科大学に在籍するカルトフェンは、「これら放射性粒子は細かくて、数インチも離れようものなら、見分けるのが難しくなります。ですが、体内に入ると、わたしたちの人体組織からの距離は実質的にゼロです」と述べた。

カルトフェンは、彼の調査の結果、他の住宅の何軒かでも低レベルの放射能で汚染されていることが類推されるといい、さらなる検査を推奨した。

タイムズは今週の12日、ワシントン州政府保健省・放射能空中放出部門のジョン・マーテル主査に論文を提示し、コメントを求めた。

マーテルは一読したあと、当該研究で見つかったレベルは低いようであり、「当局にとって、公衆衛生リスクというほど、大袈裟なものではありません」といった。それでも彼は、研究で報告されている数値は、彼の見慣れているフォーマットの数値とは別物であり、いまも彼のスタッフが検証しているとして、次のように付言した――

「肝心なのは、万事OKと確信できるようにしたいということです。わたしたちは公衆衛生を真剣に考えています」

カルトフェンは、極めて低レベルの放射性粒子を検出できる電子顕微鏡法と特殊なX線分析の両方が介在する独自の技術を用いた。

塵芥が集中的に試験された6軒の住宅は、トリシティとハンフォードに近い地域に所在し、試料を提供した住宅36軒の大グループの一部だった。小グループは、初回検査の結果、放射性粒子の存在が疑われるものとして選別された。

「特殊な人たち」

カルトフェンは、リッチランド近郊、562平方マイル〔1,456 km2〕の連邦所有地における、数十年にわたる原子爆弾用のプルトニウム生産の連邦による除染にまつわる説明責任を求めて活動するシアトルの団体、ハンフォード・チャレンジとの長年の共同作業によって、試料の多くを入手した。

ハンフォード・チャレンジのトム・カーペンターは、「家に入れてくれるなら、誰彼かまわず、試料を採取しました」といい、雑巾と掃除機の助けを借りて、塵を集めたともいった。

放射性粒子のある種の特質的なパターンを割り出すために、ハンフォード施設内でも塵芥試料を採取し、住宅内の発見物と比較できるようにした。

カーペンターによれば、粒子は、作業員の車、または衣服を介在して、あるいは暴風によって、さらにはハンフォードで燃えあがった野火で舞い上がって、施設の外部に拡散したのかもしれない。

リッチランドのエネルギー省広報官がカルトフェンの研究に対するコメントを求める要請をワシントンDCの本省に伝達した。本省は返信メールで、「第三者が実施した研究」に対して、コメントしないと書いて寄こした

エネルギー省はハンフォードで、空気、水、土壌、魚類および野生生物における放射性核種の蓄積を測定する環境モニタリングを担っている。エネルギー省の文書によれば、この業務は「ハンフォードの汚染物質の線量とリスクが十分に把握されていることを一般市民に理解していただくため」のものである。

カルトフェンは研究の過程で、ハンフォード作業員らの住宅3軒の塵芥から最高レベルのトリウム放射能を3件見つけた。これら塵芥試料のうちの2点は、1940年代にハンフォード作業員のためにリッチランドで建築された古い住宅から収集されていた。

3軒目は、トリシティ地域の外部の新しい郊外住宅であり、放射性・化学廃棄物を保管するタンク群で働くハンフォード従業員の持ち家だった。

カルトフェンは、上記3軒の住宅の所有者らに判明した事実を告げたといった。彼は、こういう――

「わたしたちは、非常に特殊な人たち――ハンフォードで働いていた人びと――を相手にしています。その人たちは仕事に何らかのリスクがあると理解していると思いますが、例の物が帰宅する彼らに付いてくると理解するのは面白くないでしょう」

保留にされた解体爆破

カルトフェンの研究で扱われた試料はすべて、プルトニウム最終工程棟解体爆破のさい、放射能汚染が拡散しかねないので、施設外への汚染拡散を懸念する声が高まり、作業が保留に追いこまれた年、2017年より前に採取された。

エネルギー省は昨年、数百人の作業員らを対象にバイオアッセイ――物質の効果の蓄積度を測定する生物学的検定――を実施し、42名の作業員らが非常に少量の放射性汚染物質を摂取・吸引していたと報告した。エネルギー省の担当官が今年に公表された声明で、その量は、健康に悪影響をおよぼすと考えられるレベルより低く設定された規制限度の1パーセント以下であると述べた。

201712月のこと、何らかの汚染が作業員の車で検出された。連邦政府エネルギー省によれば、6軒以上の住宅で検査が実施されたが、汚染の兆候は検出されなかった。

州政府の保健省もまた、モニタリングに参画していた。

米国エネルギー省担当官に宛てて送付された、州政府保健省の書記官補、クラーク・ハルヴォーソンの130日付け書簡によれば、空気試料捕集による「上昇結果」は検出されなかった。

州政府の当局者らにとって、際だった懸念対象はアルファ放射性物質汚染であり、これは先立つ年月にカルトフェンの研究のために収集された塵芥でも検出されていた。

ハルヴォーソンは、この汚染は検出が困難であり、粒子が人間の体内に入りこめば、「生涯の内部汚染」になる可能性があると記していた。


【クレジット】


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