2017年11月2日木曜日

フォーブス誌【Tech】#フクシマ☢惨事:福島市のニホンザルに異変


20171030
福島市の猿における放射線による3形態の変異

ジェフ・マクマホン、寄稿
Jeff McMahon, CONTRIBUTOR

わたしは、自分のカレッジが放射性廃棄物をゴミ箱に捨てていると気づいた1985年以来、エネルギーと環境に関する特ダネ記事を書いてきた。その事件の記事はアリゾナ・リパブリックに掲載され、わたしはそれ以来、アリゾナとカリフォルニアの日刊紙、ニュータイムズ、ニューシティなどのオルタナティブ週刊誌、ウエザーチャンネルの地球予測プロジェクト、ニューヨーク・タイムズ社のライフワイアー・シンディケート、True/Slant――生まれ変わったフォーブスの原型――などのオンライン革新サイトのために、エレクトロンと汚染物質を追跡してきた。わたしは遠隔の現場を徘徊し、ニカラグアの反革命戦争、サンフランシスコのワールド・シリーズ地震、コペンハーゲンおよびパリの国連気候変動会議を報道してきた。わたしはまたここ数年来、シカゴ大学でジャーナリズムと討論術を教えている。Email me here: jeffmcmahon.com/contact-jeff-mcmahon/


福島県のニホンザルは、福島第一原子力発電所のメルトダウンに由来する放射線の影響を示している。(Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images)

今年になって、福島県の避難住民は自宅に戻りはじめ、暮らしを再開しているが、そこにずっと生きてきた猿たちはその人たちに――医療記録の形の――警告を提示している。

2008年以来、ニホンザル個体群を調査してきた野生動物の獣医学専門家によれば、ニホンザル――とりわけ福島第一原子力発電所の20113月メルトダウン事故以降に誕生した若年個体――が放射線被曝に伴う影響を示している。

羽山伸一博士がシカゴ大学において1028日土曜日、1942年に同大学サッカー競技場の下で実現し、原子力と核兵器の技術をもたらすことになった最初の人為的な制御下の核反応75周年を記念する同大学の式典の一環として、博士の知見の詳細を述べた。

[訳注]観客席下部のスカッシュコートで極秘裏に建造された反応炉シカゴ・パイル1号がマンハッタン・プロジェクトに組み込まれて、1942122日に初臨界。出処:ウィキペディア

羽山は、炉心メルトダウン事故による放射性降下物の野生生物に対する影響を探求する年次シリーズのドキュメンタリーで彼の研究を紹介した映画作家、岩崎雅典とともに登壇した。その放射性廃棄物は、日本政府が原発周辺および北西方向に延びる高レベルに汚染された地域から住民を避難させることを余儀なくさせた。プルームは太平洋を渡り、合州国一帯の多くの地点に希薄なレベルの放射性降下物を残しており、この事象はこのリンク先ページで詳述されている。

羽山は2008年からこのかた、農産物を守るために猿の生息数を抑制する福島市の事業で殺された猿の遺骸を調査してきた(日本で年間約20,000頭の猿が「間引き」されている)。彼は以前から猿を研究していたことから、放射線被曝の影響による変化に気づくのに理想的な立場にあった。

彼は1028日、シカゴ大学のノーマ・フィールド教授の通訳によれば、シカゴで次のように語った――

「わたしは放射線専門家ではありませんが、2008年以来、データを集めており――核惨事が2011年に勃発したことを想起すれば――これは非常に重要な研究であることが明らかであるとわたしには思えます。そこで、わたしは放射線専門家たちにこの研究に着目するように頼みましたが、人間のほうがずっと重要なので、余分な資金も暇もないといって、これを取り上げてくれる意思のある専門家はいませんでした。

「だから、わたしは放射線の専門家ではないとしても、これを自分で引き受ける以外には選択肢はないと結論せざるをえませんでした。わたしたちが記録を残さなければ、証拠はないことになり、まるで何事もなかったかのようになります。それこそ、わたしがこの研究を続け、記録を作成したいと望んでいる理由です」

福島市は福島第一原発から80キロ北西に位置しており、原発により近い、今は解除されたが、立ち入りが規制されていた地域よりも放射線レベルが低い。羽山は最高レベルの汚染区域の猿を検査することはできなかったが、原発から80キロ離れていても、放射線に関連して猿が受けた作用を記録することができた。彼はその知見を、2011年より前の同地域における猿たち、並びに800キロ北方の下北半島に生息する猿たちの対照区集団と比較した。

羽山の研究結果は、ネイチャーが公開する査読済み論文誌サイト、サイエンティフィック・リポーツで公表されている(タグ:"Shin-ichiHayama")。羽山の研究結果を、いくつか紹介すると――

身体矮化:福島メルトダウンによる放射性降下物の進路内で生まれたニホンザルは、20113月の惨事より前に同地域で生まれた猿に比べて、身長の割に体重が軽いと羽山はいい、次のようにつづけた――

「被曝した母体から生まれた猿は身長と比較して体重が軽いので、小さくなっていることが見てとれます」

Nature: Scientific Reports
赤い丸は、フクシマ核惨事後に生まれた猿の体重と頭殿長(CRL:頭から臀部までの長さ)。青い三角は、それ以前に生まれた猿。

頭部と脳の矮化:被曝した猿は全般的に身体が小さく、頭部と脳がさらに矮化している。羽山は、次のようにいう――

「ヒロシマとナガサキの例から、子宮内で胚と胎児が被爆すると、出生時体重が軽くなるとともに、脳が正常に発達しなくて、頭のサイズが小さくなる小頭症になるとわかっていますので、わたしたちは福島の猿でも同じことが起こるかどうか確かめようとしています」

その結果は、次のとおり――

Nature: Scientific Reports
青い三角は、核惨事の前に生まれた猿の頭殿長(CRL:頭から臀部までの長さ)に相応した頭のサイズ。赤い丸は、核惨事後に生まれた猿。

貧血症:猿は血液成分――赤血球細胞、白血球細胞、ヘモグロビン――および血液成分を生産する骨髄内の細胞の減少を示している。羽山は、次のようにいう――

「福島の猿には血液成分の明白な減少が認められます。これらの猿たちには、白血球細胞の計数値と筋肉中の放射性セシウム濃度の相関関係が見てとれます。これは実際に、チェルノブイリの子どもたちについて報告されていることと比較することができます」

Nature: Scientific Reports
グラフの右側に向かって、猿の筋肉中の放射性セシウム濃度が高くなるのに伴い、白血球細胞の計数値が少なくなる。

羽山は、次のように述べた――

「わたしたちはこれらの検証を2012年から2017年まで実施しているのですが、計数値レベルは回復していません。だから、これは急性的な現象ではないと言わざるを得ません。これは慢性的になっており、放射線被曝がありうる原因であると考えなくてはならないでしょう」

岩崎雅典2011年時点で齢70歳であり、フクシマ核反応炉がメルトダウンしたとき、30年間にわたる野生生物ドキュメンタリー映画作家――最も有名なものとしてポートレート作品"Mozu: The Snow Monkey"がある経歴から引退しようとしていたが、羽山は彼のドキュメンタリー作品の数編に登場している。岩崎は、やはりノーマ・フィールドによる通訳を通して次のように述べた――

「わたしは70歳にもなって、もう十分やった、身を引いてもいいだろうと思いました。すると、原発事故が勃発しました。1年間にわたり、TVニュースショーを見つめ、新聞を読み、わたしにできることが残っているだろうかと自問しました。1年後の2012年になって、カメラマンと音響技師を加えて、わたしたち3人組は、いずれにしろ福島へ行って、何があるか見てみようと決心しました」

岩崎はその後、毎年1本、5本の映画を作制して、野生生物に対する放射線の影響を記録して、『福島:生きものの記録(Fukushima:A Record of Living Things)』のタイトルで一連の作品にした。エピソード2編が1028日のシカゴで上映され、これが合州国における初公開になった。

岩崎は先ず、核惨事を生き延び、生息数が減少したツバメの白斑と変形した尾を記録した。岩崎の2013年映画のナレーターは、次のようにいう――

「これはチェルノブイリと福島の他にはどこでも見かけないことなので、明らかに放射線と関連している。白い羽毛があることは、おそらく鳥を傷つけないかもしれないが、放射線被曝の指標になる。

「福島のツバメは、チェルノブイリで見かけたのと同類の反応をしている。幼鳥は生き延びていない。雛の巣立ちはうまくいっていない」

和牛にも白斑が現れた。ある種の海産巻き貝が消滅し、ついで徐々に復活した。モミの木の幹の成長が異常であり、一部のタンポポの花柄が密生して成長し、変形した。タンポポの茎はニホンザルが好む餌になるが、猿は明白な奇形を示していないので、岩崎は羽山が猿に対する放射線の影響の様相を解明してくれることを当てにしている。

岩崎が完成したばかりの2017年作品は、猿の霊長類近縁種、ヒトに対する影響、甲状腺癌を発症した子どもたちの常軌を逸した多さを検証するものとして、彼の最初の映画である。

By Jeff McMahon, based in Chicago. Follow Jeff McMahon on FacebookGooglePlusTwitter, or email him here.

【クレジット】

Forbes, “Three Ways Radiation Has Changed The Monkeys Of Fukushima,” by Jeff McMahon, posted on OCT 30, 2017 at;

【関連記事】…ジェフ・マクマホンが取材したシンポジウム

20171113日月曜日
日本獣医生命科学大学の羽山伸一教授は、いくつかのエピソードに登場する専門家です。彼が長年つづけたニホンザル研究、とりわけ人間の居住地に近接した生息域に関連した研究によって、この種族がこうむった放射線被曝の影響を研究する準備が思いがけなくも整っていました。岩崎監督がこの映画シリーズのタイトルを決めるにあたって、黒澤明の1955年作品『生きものの記録』に着想を得ており、この映画では、驚くほど若かった三船敏郎が、ヒロシマとナガサキの原爆投下のたかだか10年後のできごと、太平洋の核実験を恐れるあまり、嫌がる家族をブラジルに移住させようとする横暴な家長の役を演じていました。日本社会が東京2020年オリンピック大会に向けて突進するいま、この映画は65年の歳月を超えて、なにが狂気なのか、なにが正気なのか、問いかけているようです。


【関連サイト】

東京電力福島第一原発事故はチェルノブイリと同じ「レベル7」。拡散した大量の放射性物質――それは生態系へどんな異変をもたらすのか?20124月から警戒区域解除となった南相馬市小高区を皮切りに、浪江町の「希望の牧場」、川内村でのアカネズミ捕獲調査、警戒区域と富岡町の離れ牛などを追った記録映像です。



【関連論文】

2014731日木曜日
福島市の森林地域に生息する野生のニホンザルの血球数が、青森県のサルと比べて少ないことを報告する論文が掲載される。この結果は、ニホンザルの血球数の変化の一因が、福島第一原子力発電所事故後の放射性物質の被曝であった可能性を示唆しているが、正確な原因は証明されていない。

【関連報道】

2014727日日曜日
…この河川栄誉賞は、サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports )サイトに1年間かけた研究が掲載され、荒川流域に生息する野生ニホンザル(Macaca fuscata)は、福島第一原発の北方400キロ、本州北部の下北半島のサル個体群に比べて、白血球・赤血球細胞の計数値が「有意に低く」、筋肉中のセシウム濃度が高いことが示されることになった時点のほんの2日前にもたらされた。





0 件のコメント:

コメントを投稿