2013年8月2日金曜日

【資料】米艦ロナルド・レーガン乗組員らの損害賠償請求裁判の訴状

2011311日の東日本大震災後、トモダチ作戦に従事したロナルド・レーガンに乗り組んでいた米水兵らが、201212月になって、「東京電力福島第一原発の事故に関する正確な情報を得られずに被曝したとして、東電に総額1億1000万ドルの損害賠償などを求める訴えを米連邦地裁に起こした」(読売新聞記事「トモダチ作戦の米兵8人東電提訴…情報なく被曝」)事件は当時、ずいぶん話題になりました。その後、原告の数はうなぎのぼりに増えているようです(HUFF POSTトモダチ作戦:米海軍の100名超、健康被害で東電を提訴」)。
本稿は、201212月提訴時の訴状を「東京電力株主代表訴訟」翻訳チームが日本語訳したものであり、当ブログ管理人も翻訳に協力したことから、同チームの了解をいただいて、ここに掲載します。
国内でも、東電原発事故をめぐって、ゴルフ場の仮処分申請集団賠償請求裁判ふくしま集団疎開裁判福島原発告訴団など、民事・刑事・行政上の責任を問う数多くの訴訟や告発が提起されてきましたが、司法の独立性が損なわれているのか、これまでのところ、事故責任を明確に認定する裁定は皆無であるようです。
だからこそ、日本国内の司法管轄権がおよばないトモダチ作戦従軍者らの損害賠償請求裁判が注目をあびなければなりません。また本訴状は、東京電力および日本政府の刑事・民事責任を考察するためにも、重要な文献になるはずです。
yuima21c記)
米艦ドナルド・レーガン 出所:ウィキペディア/アメリカ合州国著作物(public domain
立証済み申立書(陪審員裁判請求)
対 東京電力株式会社

1.      原告ら、リンゼイ・R・クーパー、ジェームス・R・サットン、キム・ギーゼキング、キム・ギーゼキングを母親かつ当然の保護者とする乳児、オータム・ギーゼキング、チャールズ・A・ヤリス、ロバート・M・ミラー、クリストファー・G・ビトナー、エリク・メンブリラおよびジュディ・グッドウィンは、本状記載の全期間において米国海軍乗組員であり、2011311日当時およびそれ以降、「トモダチ作戦」として知られる任務において、福島原子力発電所(以下、「福島原発」と称する)が立地する日本国福島県の沖合で放射線に被曝したさい、サンディエゴを母港とする米艦船ロナルド・レーガン(CVN-76)に配属されていた。
(注1)2011314日、米第7艦隊とその搭載航空機は、大気中の汚染状況検査とヘリコプター数機での陸上への物資輸送を終え、米艦船ロナルド・レーガン(CVN76)に帰還後、日本国福島原発沖海上に再配備された。
2.      航空甲板配属、航空甲板長助手を務めていた原告、リンゼイ・R・クーパーは1989712日生まれ、カリフォルニア州民であり、かつ本状記載の全期間を通じてそうであった。
3.      航空甲板配属、航空機誘導員として甲板長助手を務めていた原告、ジェームス・R・サットンは1987610日生まれ、ワシントン州民であり、かつ本状記載の全期間を通じてそうであった。
4.      航空甲板配属、甲板長助手を務めていた原告、キム・ギーゼキングは1989628日生まれ、カリフォルニア州民であり、かつ本状記載の全期間を通じてそうであった。
5.      キム・ギーゼキングを母親かつ当然の保護者とする原告、オータム・ギーゼキングは20111015日生まれ、カリフォルニア州民であり、かつ本状記載の全期間を通じてそうであった。
(注2) 周知のように、幼児は細胞の成長が迅速なので最も(放射線に)傷められやすく、母体が放射性同位元素に暴露された場合、胎児に致命的な影響または甚大な損傷を与えかねない。報道によれば、福島原発事故から1年後(20125月)には、検査を受けた日本の児童らのうち、35%にも達する児童らの甲状腺に嚢胞またはその他の異常が見つかっている。このことから、児童らの環境放射線レベルが上昇し危険になっていること、ならびに児童らは福島原発敷地からわずか1220マイル(約19㎞~32㎞)よりもっと遠くへ避難させられるべきだったことが示唆される。
6.      航空甲板配属、航空機誘導管理員として甲板長助手を務めていた原告、チャールズ・A・ヤリスは1988123日生まれ、オハイオ州民であり、かつ本状記載の全期間を通じてそうであった。
7.      航空部門の甲板長助手管理員を務めていた原告、ロバート・M・ミラーは1986419日生まれ、カリフォルニア州民であり、かつ本状記載の全期間を通じてそうであった。
8.      航空甲板配属、航空甲板長助手を務めていた原告、クリストファー・G・ビトナーは1985721日生まれ、ニューメキシコ州民であり、かつ本状記載の全期間を通じてそうであった。
9.      航空機除染専門員を務めていた原告、エリク・メンブリラは1974728日生まれ、カリフォルニア州民であり、かつ本状記載の全期間を通じてそうであった。
10.      航空甲板配属、航空甲板長助手を務めていた原告、ジュディス・C・グッドウィンは198819日生まれ、ニューメキシコ州民であり、かつ本状記載の全期間を通じてそうであった。
11.      被告、東京電力株式会社(以下、「東電」と称する)は、本状記載の全期間を通じ、かつ現在もなお日本国の法律に基づいて組織され存続する外国企業であり、営業本拠を日本国東京都千代田区内幸町113に置き、事務所をSuite 720, 1901 L Street N.W., Washington, D.C. 20036に構えている。
12.      被告東電は日本国政府全額出資の公益法人(訳注1であり、日本国民(訳注2に電力を供給する責任を負っている。
(訳注1)全額出資は誤りであり、かつ東電に政府が出資するようになったのは震災後の原発事故に対する補償のためである。
(訳注2)「東電の供給区域の契約者」が正しい。
13.      本状記載の全期間を通じて、被告東電は福島原発の稼働により、カリフォルニア州を含む全米で使われ消費された物品を用いた経由する企業活動で、大きな利益を得てきた。
14.      被告東電は本状記載の全期間を通じ、カリフォルニア州において、およびアメリカ合衆国のいかなる場所においても、同社の行為が影響を及ぼすことを予期し、または合理的に予期すべきであった。
15.      被告東電は本状記載の全期間を通じ、州間または国際商取引によって利益を得ていた。
16.      被告東電は本状記載の全期間を通じ、日本国福島県内の福島原発立地場所に施設を所有していた。
17.      被告東電は本状記載の全期間を通じ、福島原発の所有者のうちの1社だった。
18.      被告東電は本状記載の全期間を通じ、福島原発の賃貸人のうちの1社だった。
19.      被告東電、その社員、代理人あるいはまた従業員は本状記載の全期間を通じ、福島原発を操業していた。
20.      被告東電、その社員、代理人あるいはまた従業員は本状記載の全期間を通じ、福島原発を維持していた。
21.      被告東電、その社員、代理人あるいはまた従業員は本状記載の全期間を通じ、福島原発を運営していた。
22.      被告東電、その社員、代理人あるいはまた従業員は本状記載の全期間を通じ、福島原発を制御していた。
23.      被告東電、その社員、代理人あるいはまた従業員は本状記載の全期間を通じ、福島原発を管理していた。
24.      被告東電、その社員、代理人あるいはまた従業員は2011310日またはそれ以後、福島原発で修理を企図していた。
25.      被告東電、その社員、代理人あるいはまた従業員は2011310日またはそれ以後、福島原発を点検していた。
26.      被告東電、その社員、代理人あるいはまた従業員は2011310日またはそれ以前、福島原発を建造していた。
27.      被告東電、その社員、代理人あるいはまた従業員は20年以上前、福島原発を設計した。
28.      本件訴訟の趣旨における当裁判所の管轄はUSコード281332条に基づく。係争金額は利子および費用を除外して75000ドルを超える。
(注3 現在、多重管轄はUSコード281332条に明文化されている。http://www.law.cornell.edu/uscode/text/28/1332
参照 Ghotra v. Bandila Shipping, Inc., 713F3d1050, 1054, 9th Cir.1997 (ゴートラ 対 (株)バンディラ海運 事件713F3d1050, 1054, 第9、1997年~)
29.      海事法は当法定の管轄に含まれ、慣習法法廷の流儀で適用される。したがって、発生地規則は適用されず、原告は全ての法律問題を参照することを法廷に懇願するものである。
(注4) USコード281390(B)条、追補規則F9);海事明文法、USコード2813311);
Yamaha Motor Corp. U.S.A. v. Calhoun, 516 U.S. 199, 206, 116 S. Ct. 619, 623 [
(株)米ヤマハ発動機 対 キャルホーン 事件 516U.S.199, 206, 116S.Ct.619, 623];
Exxon Shipping Co. v. Barer, 554 U.S. 471, 489-90, 128 S Ct. 2605, 2619,
(エクソン運輸 対 ベアラー 事件 554 U.S. 471, 489-90, 128 S Ct. 2605, 2619
30.      本訴状に記載する全期間において、被告東電、その社員、代理人および従業員には、福島原発を十分に安全で適切な状態、かつ手入れの行き届いた状態に維持管理する責任があった。
31.      本訴状記載に関連する全期間において、被告東電は福島原発の真実の状態に関して、不正確で誤解を招く情報を故意に、かつ責任を放棄するごとく、アメリカ海軍省を含む社会全体に広めた。
32.      本訴状に関連する全期間において、被告東電、米海軍とその隊員が2011年3月10日(訳注1に起きた地震と津波によって破壊された日本国福島県内の仙台市民(訳注2に食料と水を運び届ける人道支援活動を実行する際に、福島原発とその周囲の状況に関する東電の発表に依存することを認識していた。
(訳注1米太平洋時間
(訳注2)原文のママ。宮城県の誤り。
33.      本訴状記載に関連する全期間において、福島原発で発生した放射線は自然に発生するものではない。
34.      放射線は、汽力発電用に水を沸騰させるために利用する核分裂の結果、発生した。
35.      本訴状に関連する全期間において、被告東電は低線量放射線被曝であっても人の健康に危害があること、また実際の放射線量を正確に報告することが重要であることを知っていた。   
(注5) 多くの研究が低線量放射線であっても健康に危険がおよぶと指摘している:参照例No Safe DoseJapans Low-Dose Radiation Disaster,「安全な線量はない - 日本の低線量放射線被害」http://rense.com/general95/no-safe-dose.htm;「低レベル放射能でも有害。多くの放射線研究の多岐にわたる分析で、生命に危害はないとする閾値は存在しないことが明らかになった」
http://www.sc.edu/newsarticle.php?nid=5214#.UKjmkvma6X;  Meta-Review of 46 Studies : Even the Lowest-Level Radiation is Damaging to Human Health,「46の論考 メタ・レヴュー:最低線量放射線さえも人の健康被害をもたらす」 http://www.washingtonsblog.com/2012/11/mega-review-of-42-studies-even-the-lowest-level-radiation-is-damaging-to-human-health.html
36.      地震と津波の結果、福島原発において原子炉の損傷に伴い冷却装置への電力が遮断され、核燃料棒および原子炉自体のメルトダウンへと進んだ。その結果、高線量放射線が放出された。6              
(注6) 福島では多くの放射能は明らかにコンクリート製プールから放出された。このプールでは使用済核燃料棒を特殊な金属で覆ったものが冷却されていた。これらの使用済核燃料棒は華氏2000°F(摂氏約1000超)まで達し、燃焼を防ぐために継続的な冷水の循環が必要であった。
(訳注:今日では、使用済燃料プールにおいて表記のようなことは起きていないことがわかっている)
37.      原子力による放射線はヒト発ガン物質と捉えられ、人への健康被害に関連があると認められている。米国環境庁(訳注:原文のまま。正しくは米国環境保護庁)はこの種の原子力による放射線をヒト発ガン物質と分類している。
(注7)専門家の意見は以下の通り。「被曝量が0.1シーベルト(訳注:100ミリシーベルトと同義)を超えると癌の発生の危険性が激増するという疫学データは、ほぼ全世界的に認められている。福島の放射性降下物に接触した全ての人は、おそらく甲状腺に支障をきたすだろう。」
参照http://enenews.com/watch-all-people-met-fukushimas-radioactive
fallout-problem-thyroid-many-tokyo-already-developing-problems-video: 
クローディア・フレンチ
Claudia French博士(原子力専門家。元カリフォルニア州立大学名誉教授。同大学バークレー校で細胞分子生物学を教授)は、「マンハッタン計画」でウランの影響を研究し、ローレンス・リバモア国立研究所の生体医学研究部門を設立した。彼は1990年の著書の中で「生体医学的証明のいかなる正当な基準によっても」放射線突然変異生成および発ガン現象に関して電離放射線の許容最低レベル(無害な被曝線量が分かる閾値)は、無いと書いている。この結論は1995年に政府出資の放射線委員会に支持された。
モスクワの科学アカデミーのエマニュエル生物化学研究所の
E.B.ブルラーコヴァE. B. Burlakova博士とA.G.ナザロフA. G. Nazarov博士は共著書の中で、「チェルノブイリの子供と大人の双方に行った調査と生物学的モニタリングは、チェルノブイリ事故の影響を受けた全被害者の健康が確実に、急速にかつ劇的に悪化していったこと」を明示している。さらに興味深いことには、「放射線の影響と被曝線量の相互関係はおそらくは非線形、非単調、ポリモーダル(受容体)としての特徴がある。ある一定の線量範囲を越えると、一器官および個体群への放射線の影響の結果としては、低レベル放射線被曝は急性の高レベル被曝よりもいっそう破壊的」という表現が続く。
さらに、ピッツバーグ医科大学放射線物理学名誉教授アーネスト
J.スターングラスErnest J. Sternglass博士は彼の著書「隠された降下物質  低レベル放射線、広島からスリーマイル島へ」の中で、一つずつ加わっていく条件に伴い危険性が増すことを指摘している。これは、損傷からの有意義な治癒がどこにも見られなかったこと、ゆえに放射線による癌の影響は累積されるもの、ということを明確に示唆している。
放射線被曝により遊離基の核子カスケードが起き、体は破壊される。放射線はまた多くの体内グルタチオン
(抗酸化アミノ酸)供給も破壊し、それによって遊離基は組織や器官の中を激しく通過する。
38.      放射性物質が原子炉から飛散または漏れ出すと、その周囲は汚染され、人や他の生物に重大な健康被害をおよぼす。原子炉または核燃料棒から漏れ出す放射性物質の量が多いほど人への危険性も高まり、健康への脅威も増す。
39.      放射性物質は被曝した土、水または生体器官の中で簡単に弱まることもなく、生物分解もしない。現在の研究では放射能の半減期は被ばく者の平均寿命である77歳を数十年間超過して、ずっと長い期間にわたり環境中に止まることを示している。
40.      福島原発は19・・年(訳注)に福島に建設された。
(訳注)数字欠落は原文のママ。第1原発1号機は71年、2号機は74年、3号機は76年、4号機は78年。
41.      原告らは夫々、2011年3月11日までの人生の中で、米艦船ロナルド・レーガン (CV-76)での勤務期間も含め、ただの一度も危険な水準の放射線にさらされたことはない。
42.      被告東電は、原告らに現実に上昇している危険性を警告しなかったため、原告らの被曝リスクは高まった。いわゆるトモダチ作戦という人道支援活動に従事していた原告ら、そして政府担当官、住民、諸団体に対し、被曝の危険性がはっきりと認められるレベルにまで上昇していたことを警告しなかった。
43.      被告東電の行状は原告、そして政府担当官や一般市民に対する詐欺的行為と行動を含む。その行状は、具体的事実を虚偽に報告したこと、すなわち、当時の状況に照らし合わせても具体的事実を欠いた報告を発表したことをいう。
44.      被告東電の責務は、被告の共同謀議から発生している。また、ここに申し立てた違反行為の遂行を幇助、賛助し、または意図的な、故意の、または無謀な真実の無視という違法行為に関与した。
45.      このような違法行為に関して、被告東電と日本政府は共謀し、協調して行動した。特に、福島原発の敷地から漏れ出した放射性物質の広がりが原告らに脅威となるレベルでないような錯覚を与える印象を作りあげた。それは、東電と日本政府は利益促進のために、自らが広めた情報が不完全、不十分かつ真実でないと知りながらのことだった。米艦船ロナルド・レーガンで任務遂行中の原告らに及んだ異常な危険を発表することを怠った。
46.      被告東電の代理人あるいはまた従業員、日本政府内の責任者は夫々、上記申し立ての共同謀議の推進のために行動し、また共謀者とその代理人の行為を是認し採用した。
47.      上に述べたように違法行為と共同謀議が主因並びに近因となり、原告らはここに申し立てた被害を被った。
48.      被告東電は福島原発での全活動を監督した。ゆえに、本訴状で申し立てた放射線被曝の危険性を高めたこと及び被害を引き起こしたことについて、もっぱら責任を有するものである。
49.      2011年3月11日以降に、外部専門家によって検討されている「原子力内部告発者」からの情報がなかったなら、確かに、本訴訟の原告を含む一般人は、事故当時、福島原発からの放射性物質の放出から始まった放射能影響の広がりを判断するには、本訴訟の被告または日本政府による出まかせの技術的にも受け入れがたい情報に頼っていただろう。
(注8)enenews.com”や “fukushima-diary.com” や“rense.com”などのウェブサイトは、日本の原子力事故についての主だったニュースや学術的研究や民間の独立情報源としての情報交換の場として機能している。
東京のテンプル大学のジェフ・キングストンJeff Kingston 教授は福島原発事故の完全報告書(時系列で著したもの)の中で政治的見地からこう語っている。災害「に先だって、複数の災難、隠ぺい、無責任な操業、危うい事故回避や警告の無視があった。つまり、起きるべくして起きた事故だ…」事故は教授が指摘するように「企業経営ミスの危険性」だ。そして:
一体、誰が福島の3つのメルトダウンの責任を負うのか?原子力ムラは菅首相への非難へと話を逸らし、首相の福島第1原発視察についての誤報を広めた。首相が東電にベント停止を迫り原子炉と隣接プール内の使用済核燃料棒の冷却用海水の汲み上げを止めさせた、と言う訳だ。しかし、責任は東電にあり、312日の菅首相の視察とは関係がない。菅首相の評判を貶めた後で、東電は菅首相への非難を取り消した。こうして首相を晒し者にすることは沢山の目的に適っていた。特に、東電や原子力安全・保安院や経産省の責任逃れのためにも、そして原発事故と嘆かわしい事故対応のためにも…。
原発事故を調査した第三者委員会は、東電と政府を厳しく非難した。東電は事故対策を誤り、従業員は重大な間違いを犯し…、従業員と経営陣は緊急事態対応の訓練を十分行わず、不手際な緊急処置が事故に繋がった、と指摘した。
調査官たちは、原発周辺住民への東電と政府の避難措置の不手際を厳しく非難した。多くの場合、避難者は逃げ出した所よりも放射線値の高い場所に避難した…。この第三者委員会は放射能影響予測システム(SPEEDI)のデータは当時入手可能であり、危険度の最も高い地域の住民をより安全な場所へ避難させるのに使えたはず、と指摘した。しかし、この情報は総理大臣危機管理センターには3月23日まで届かなかった。最初の避難から1か月後に、政府はこのSPEEDIのデータを使い危険な方面から避難者を移すのに利用した。つまり、多くの人々が避けられたはずの大量被曝を被ってしまったのだ。
東電と取締機関は津波リスクの最新かつ説得性の高い根拠に基づいての行動がとれなかったが、それが原発を不必要にも脆くさせる盲点であった。内部告発者からの警告は3・11津波より10年以上も前から蓄積されていた…。3・11津波の規模は想定外だったという東電の言い分は明らかに根拠が無く、東電は何世紀にも及ぶ地質学的知見と現代の科学者(東電内部の研究者も含む)からの多数の21世紀の警告を無視した…。東電は安全をその社風とせず、その一方で政府による緩い監視は、自己満足の社風を長く蔓延らせ、やがて東電をコスト削減へと走らせたのは明らかだ。 参照 Mismanaging Risk and the Fukushima Nuclear Crisis, 「管理経営ミスの危険性と福島原発事故」、http://japanfocus/org/~Jeff-Kingston/3724
50.      本訴状に記載する全期間において、日本政府は、米艦船ロナルド・レーガン(CVN-76)と、またはその乗組員に放射能汚染の恐れは無い、「全てがコントロール下にあります」「全く問題はありません。我々を信頼できます」「直ちに危険ではありません」あるいは人命への脅威はない、と繰り返し、その一方で、福島原発の原子炉のメルトダウンについては真っ赤な嘘をつき通していた。
(注9)東電に代って想定や声明を出していたのは細野豪志(訳注:原文のママ。元弁護士の枝野幸男の間違いか?)だが、彼は弁護士だったが、原子力科学者ではない。 
参照 http://www.dpj.or.jp/english/217
「素人でも聡明ならば、次のような災害の技術的側面を考えると途方に暮れるのではなかろうか。たとえばその人が、激しく壊れたかもしれない冷却システムをどのように原発運転者が回復できるだろうかと考えたり、もしくは原子炉が修復不可能、またはメルトダウンのあらゆる様相を呈していたらと考えたり、もしくは原子炉内の核燃料が床に抜け落ちていたら、はたして機能不全の原子炉の冷却システムの立て直しに必要なのは何か、もしくは溶け出た核燃料が床に水たまり状態になっていたら、などと思案すれば答えに窮するだろう。政府内の誰一人として、この質問へ明確に答えられはしないだろう」(参照 Testimony from Japan: Evolving Coverup of a Nuclear Disaster,「日本からの証言: 進化する原発災害隠ぺい」、http://www.globalresearch.ca/index.php?contex=va&aid=24302
51.      より高い値の放射線が、原告や搭乗艦が活動中であった区域内にあったと知ながら、このような報告を東電が作り出し、組織の中で広く配布された。
(注10)2011311日の原発事故の直後、日本の事故軽視が招いた「情報の不確実性」が明らかになった。日本の官僚にとって危機下での情報伝達の透明化は喫緊の課題だ。世界中の官僚にとってもそれは同様だ。現在進行中の危機で分かったように危機下での危機情報のごまかしや歪曲による大損害を認識することは必要不可欠なのだ。
52.      被告東電は、時に単独で、時に共同し、又あるときは政府官僚を通して企業経営を行ってきたが、トモダチ作戦で任務を遂行中だった原告や周辺の人々に危険は無いと公に主張した。
53.      しかしながら、原告たちが行動中の区域に関する実際の状態について被告らは気づいていた。
54.      2011年3月11日から遅すぎるほど後になって被告東電はメモを一枚用意し回覧した。そこには「環境的および技術的観点から、皆様の知る必要性に配慮し、効果的に治療上の要求事項に対処するのを助けるために、津波の二次的結果である当地域内でのより高い放射線値の存在を認めます」と書かれてあった。
55.      被告は、健康上のリスクの可能性は代理人が報告していたものよりも大きいことに気づいていた。
56.      被告の行動は、日本政府内の代理人の行動も含め、放射能汚染地域内で活動中の人達への重大な虚偽の安全宣言や、または周知の欠陥の欺瞞だらけの隠ぺいへとエスカレートしていった。
57.      被告東電と官僚との間で交わされたある特定の通信により、実際の福島原発周辺状況と、被告の実際の認識との違いや被曝レベルについての公式の姿勢と発表、そして当時の被告のずさんな経営が実証された。
58.      被告東電は、日本政府、日本国民、米海軍、原告、そして世界を納得させるために、偽りと知っていながらも、原告が配属された福島原発周辺地域が、住むにも働くにも安全だと納得させることに総力をあげた。
59.     このようにして被告が放射線量の危険性について虚偽の主張を行ったため、これと逆の、より正確な情報、すなわち実際の放射線量は東電発表よりも高いというものは、排除された。これは東電のとった手段(可能な方法を駆使して原告や米海軍、そして一般人にトモダチ作戦のもたらす真の危険性を隠した)を裏付ける証拠である。11
(注11)原子力専門家、アーニー・ガンダーセンArnie Gundersenは1~3号機の原子炉に関して、それら原子炉の状態の本質を次のようにして際立たせている。ガンダーセンは、「それら原子炉のてっぺんにコンクリート片を投げつけ、以後300年間放置する状態になりつつあるようだ」と比喩し、「500年!」経ってもそれは片付かないだろう、と確信している。
  
参照 Arnold Gundersen with the latest on Fukushima, including the perilous worldwide consequences if reactor no. 4 collapses「アーニー・ガンダーセン、4号機原子炉の崩壊という世界危機的結末について語る」: http://ifyoulovethisplanet.org/?p=6282 
元原子力関係者であり、高名な内部告発者でもあるローレン・モレ Lauren Moret はこう明言する。福島からの放射性物質のプルームはジェット気流に乗って2011318日に、すなわち事故からわずか1週間後に、米西海岸に到達した。
興味深いことに、それは米大統領とその家族が南半球へ旅立った後の出来事であり、そして大統領一家は、ヨウ素関連診断(被曝が過度なものかを診る)は使うべきでない、という手紙が医学界へ提出された。
60.      更に、被告東電は次のような虚偽の陳述を行った。それには「作戦活動地域内の放射線量は原告の健康に対して著しい危害を与えるとするデータは存在しない」や、「当該地域内の人の放射線被曝量は無視し得る程度である」や、「当該地域内で作戦行動中の原告及び環境に対して有害な影響がないことを合理的に判定または予測できる十分なデータがあるので、更なる検査でこれらデータを明らかにする必要ないとの説を証明する、入手可能なデータが存在する」などとデタラメと知りながら発表した。それよりも、被告の最大の関心事は、福島原発周辺住民への援助の遅れが明らかに不都合な経済的影響を与えるであろうということだった。12
(注12) 日本政府はメルトダウンの主因は地震にあると言う説を否定し続け、その一方では、全ての災害の原因は津波という「想定外」の自然現象だとした。しかしながら、政府は地震により「3の破裂が一つ」1号機原子炉の緊急時冷却装置のパイプに生じたことは認めている。更に政府は「地震動によりできた0.3もしくはそれ以下の小さな破れが原子炉内の温度と圧力の上昇に伴い拡大していき、そこから放射性物質が漏れた可能性」とも言及している。 Government Probe: Reactor Cooling Botched at Fukushima No.1, But Not No.2 Plant, 「政府精査:福島第1で炉心冷却に不手際、第2では回避」
http://ajw.ashi.com/article/0311disaster/analysis/AJ201207240096
上記表現は誤りだ。1号機建屋が津波到来前に壊れていくのを目撃した人がいるのだから。3月11日当日、福島原発に居た20代後半のメンテナンス技術者は、複数のパイプが立てるヒューヒューという音と漏出を記憶している。「壊れた複数のパイプを私はこの目で見たから原発内にはそんなパイプがもっとあると思う。地震で原発施設がやられたのは間違いない」とか「パイプからの漏れは間違いない。それがどの装置のものなのかは分からないが、今後の調査が必要だ。1号機タービン建屋の壁の一部がはがれるのも見た。あの損壊は原子炉に影響しただろう」と彼は語った。Meltdown: What Really Happened at Fukushima? 「メルトダウン 炉心溶融:一体福島に何が起きたのか?」
http://www.theatlanticwire.com/global/2011/07/meltdown-what-really-happened-fukushima/39541/
61.      これらの虚偽の陳述は、被告による周知の事実の無視や、福島原発内外の放射能の特異性や影響の隠ぺいなどを意図的にやってきたことを証明する更なる証拠である。被告は被告の政府の望むように、東京からの避難や予想される最悪の経済的影響について口を閉ざすという目標に添うようにして事業を進めてきた。
62.      被告東電は、トモダチ作戦の活動範囲を含む地域の放射線値の真の危険性についての情報を適宜発表し、安全を保証するという被告にとっては不都合な義務を怠った。
63.      その代わりに、被告東電は原告を含む救助隊員を損傷し危険な福島原発の余りにも近く安全ではない区域に突入させるという方針をとった。東電がでっち上げた健康と安全に関する虚偽の陳述に頼るしかなかった米海軍は、しかるべき情報に基づき信じるところでは、誤った安心感に導かれて行った。米艦船ロナルド・レーガンの士官と乗員は福島原発に接続する水域での活動が安全だと信じていた。被告東電側には周知の事実だった問題を確認すべき調査と検査が当時は行われなかった。こうして、原告向けの安心安全宣言の正しさを頼りにしたばかりに原告は今も苦しみ続けている。13
(注13)今や多くの日本人が政府による検査、結果報道に懐疑的であり、東電が12マイル(約19km)の立ち入り禁止区域内の水質検査に外部専門家を入れないせいで、人々は一層疑い深くなった。 Fears Accompany Fishermen in Japanese Disaster Region,「日本の被災地の漁師につきまとう恐れ」
http://www.nytimes.com/2012/06/26world/asia/fears-accompany-fishermen-in-japanese-disaster-region.html?_r=Etpagewanted=print
64.      放射線被曝が不可避だと知りながら、被告東電は原告、米海軍、政府担当官や一般人に警告しないと決めた。
65.      被告東電はこれら環境安全宣言が原告に損害をもたらすと知りながら、誤解を招くような環境宣言を意図的に故意に流した。
66.      この被告東電による意図的な不法行為の対象区域だったのが、原告が派遣され任務を遂行中だった福島原発近隣海域を含む原発周辺の全域だった。
67.      原告を含む、米艦船ロナルド・レーガンの数千人の乗員およびその他の人々が被告の行動に直接影響を受けることを被告は認識しており、またはそうなることを当然の対策をとるなかで、既に認識しておくべきであった。
68.      正直さや真摯な態度は基本的かつ、最上の資質であると同時に最も貴重で根本的な資質でもある。原告と米海軍にはトモダチ作戦中に遭遇することになる本当の状況を知る権利があった。
69.      原告らは、部隊指揮官に提供される情報の正確さに拠ってのみ自身の心身の安寧が維持されるという特殊で独特の利害関係にあった。
70.      しかるべき情報と現在入手可能なデータに基づき信じるところでは、被告東電のせいで原告は衰弱し、身体が汚染された。
71.      被告東電による放射線被害のせいで、本来避けられたであろう苦痛に原告は現在も、そして生涯にわたり耐え続けねばならない。
72.      しかるべき情報に基づき信じるところでは、被告東電は水質検査を適宜に十分に行わなかったので、原告は水質検査の際に汚染水に接触してしまった。
73.      しかるべき情報に基づき信じるところでは、被告東電、その社員、代理人そして、または従業員は、原告の活動範囲内で搭乗機や人が被曝し、損傷する恐れがある放射線値の、適切かつかならずしも十分でなかろうと、調査自体を怠った。
74.      2011年3月11日頃、及びそれ以後においても被告東電は原告や一般人に対して放射能汚染の可能性及びその汚染レベルについての警告を出さなかった。
75.      しかるべき情報に基づき信じるところでは、被告東電は、核燃料からの放射性物質漏出の可能性を知りつつ、または福島原発から環境への放射性物質漏出の可能性についての情報を無謀にも軽視しつつ、福島原発を建設、操業していた。
76.      原発の所有者、操業者そして、または原発の推進者である被告東電が原告に対して負うべき義務は以下を根拠に生起する。
(a)
被告は知識と情報の供給源に関して原告よりはるかに優位であり 
(b)
放射能汚染の規模に関連している重要な表示や水準に関する不作為、そして 
(c)
原告が頼っていた環境への予測被害影響に関する警告を怠り、核分裂によって生産された電力の取引、奨励、販売を行ってきたこと。
77.      被告の義務は以下のとおりであるが、これのみに限定されるものではない。
(a)
原告の安心安全を相応に守る義務 
(b)
適宜、政府担当官や原告に、福島原発、貯蔵タンクや原子炉から予想される漏えい量を報告する義務 
(c)
適宜、政府担当官や原告に実態及び予想される危険性を知らせる義務 
(d)
その所有する施設が人々の安心安全を害している事実を政府担当官や原告に警告する義務 
(e)
被告の発表に依存している原告を含む全住民に対し、福島原発からの放射性物質漏えいの有無、漏えい範囲の拡大傾向、予想される健康被害、有害な施設の存在、適宜十分な検査をする必要性を随時警告する義務 
(f)
今後、新事実の発見や裁判において示される義務
78.      被告東電はその義務を怠り、原告に放射能汚染という身体的損害を与え、心身ともに過酷な結果を与えた。
79.      環境の安全に関する被告の発表に原告は間接的に依拠し、そして警告を怠っていた被告の行動に間接的にも直接的にも依拠せざるを得ない状況下で、原告の知らぬ間に福島原発周辺での放射線値は周辺住民への重大な汚染事故に並行して上がっていった。
80.      また、被告東電は、当時稼働中だった使用済み核燃料棒用の貯蔵施設(訳注 使用済み燃料プールのことか?)に関する、福島原発での放射能の制御についての安全性に関する、そして核燃料資材の利用に関する全システムが、不完全で不適切で手抜かりがあったことを認識しており、認識しておくべきだった。
81.      さらに被告東電は、福島原発から放出された放射性物質が自然崩壊に至るのは非常に困難であることや、一旦環境に漏れ出した放射性物質の除染は大変難しいことを全て認識していたし、または認識しておくべきだった。
82.      当時、被告のみが知り得たデータによると、原告の活動範囲内での最終的な被曝量はチェルノブイリ原発事故を経て癌を発症した原発周辺住民の値を超えていた。14
(注14)原子力ムラは、後に福島原発事故用に特殊な評価システムを作り出した。それはチェルノブイリ超えのレベル8(訳注:原文のまま。実際の国際評価尺度は7が最大でありチェルノブイリ原発事故も福島第一原発事故もレベル7である)原発災害というカテゴリーで、福島での事故は国際的な援助とモニタリングを必要とする複合的要因による重大事故となった。参照 Nuclear incident scales, 「原子力事故の規模」:
http://www.coastocoastam.com/pages/portzline-images:
Measured as quadrillions or petabecquerels(10 to 15th Power) See, Becquerel,
 参照 「クオドリオン(10の15乗)ベクレルまたはペタベクレルと計測された数値、ベクレルも要参照」 : http://www.//wikipedia.org/wiki/Becquerel,  the radiation was comparable to Chernobyl, being well over half, if not equivalent in volume, チェルノブイリの半分超の放射線値(放射線量比較ではない)、 Chernobyl: Assessment of Radiological and Health Impact 2002 Update of Chernobyl: Ten Years On, 「チェルノブイリ:放射線学的にみる健康への影響2002年チェルノブイリ最新データ:事故後の10年」
http://www.oecd-nea.org/rp/chernoble/c02.html
83.      結局、トモダチ作戦中に被爆した放射線のため、原告のガンになる可能性は高くなった。
84.      被告による虚偽とも言える情報のため、政府担当官、米海軍、及び原告や一般人は情報の蚊帳の外に置かれることとなり、そこが危険だという警告や放射能汚染を回避するに必要な詳しい指示すら福島原発に余りにも近接した地域にいる人達には届かなかった。
85.      被告東電の行為は非道、または無謀極まりなく、または理不尽にも怠慢であった。その行為は原告の権利を故意に軽視するに等しく、その行動に対しては原告に懲罰的損害賠償請求の権利を与えられるべきものであり、この行為は以下にのみ限定されるものではないが、以下に十分該当する。
(1)被告には重大な欠陥に関する一定の実際的な知識がありながら、原告の身体を不可避にも汚染させた福島原発で発電、販売事業を行ったこと 
(2)2011年3月10日~11日とその前後に原発及び周辺に存在した実際の放射線値を伝えず、隠ぺいしたこと 
(3)一定の知識がありながら、福島原発の電力の環境への安全性を偽り推進したこと 
(4)複数の冷却用タンクの漏えいを知りつつ、福島原発内で核燃料棒(原文まま)を保管し、保管し続けたこと 
(5)福島原発周辺の大気と海水に原告が継続的に曝され健康を損なっているのに何ら警告しなかったこと 
(6)不十分な検査のみで不正確な発表をし、現実を軽視し、ロナルド・レーガンに乗務していた原告が滞在していた活動区域の位置は安全だと偽っていたこと 
(7)原告が受けた損害への経済的責任を拒み、原告の安寧、すなわち一家の大黒柱である原告が任務の遂行中に依存していた安全安心、を過度の放射線汚染により損なったこと。
86.      原告が頼りとする諸施設、空気、水を使うときには、原子力発電の生産者、配給者、販売者、供給者、取引者そして、または推進者である被告は自らの生産物の安全性を保証すべきだったが、その当然の措置と警戒の義務を怠った。
87.      被告東電は、福島原発と原発内の貯蔵施設を含む諸施設の潜在的欠陥を認識すべしという義務を明らかに負い、その為の経済的手段も確かに持っていた。そして被告の代理人や従業員には周知の欠陥を、原告や政府担当官に警告すべきだったが、被告はこの義務も怠った。
88.      被告東電は、その専門知識と発表を頼りとしている原告へ警告する義務を怠った。
89.      被告東電は原発操業上の環境への危害と利便性に関する調査を明確に自発的に報告する義務もあったが、被告は当該の業務に関して正しい措置と警戒を怠った。
90.      被告東電、その代理人や、または従業員は、原子力による電力を設計、生産、取引そして、または販売において原告への善管注意義務を履行しなかった。すなわち、地震と津波が発生する以前において原発に設置された貯蔵タンクの保全が不適切または不十分で、福島原発用核燃料の供給や貯蔵により発生した健康への危険性が増していることを警告せず、または適切な警告を怠り、故意にも無謀にも、または怠慢にも原発とその周辺の放射線値の実態を隠ぺいし、またはその公表を怠り、当該の地点の屋上貯蔵タンクと原子炉の実態を隠ぺいし、または公表を怠ったこと全ては善管注意義務違反の罪に該当するが、これのみに限定されるものではない。
91.      被告東電、その代理人及び、または従業員は、既述のごとく福島原発での高放射線値により土地、大気、水が著しく汚染される災害が更に巨大化し深刻化していたことや、放射性物質への接触や、または吸引が原告とその他の人々、すなわち米艦船ロナルド・レーガンや搭載ヘリコプターの除染作業を貯蔵水ではなく海水で行った人たち、の健康と安寧を脅かすであろうことや、発ガン性物質によって原告が心身ともに傷つくであろうことや、財物損壊、放射能汚染や水不足に起因する諸々の困難を被告は認識していたか、あるいは当然の措置の実践のなかで認識しておくべきであった。15
(注15) 東電は1号機と2号機から6月時点で合計約10万ベクレル/時の放射性セシウムが放出されていたことを認めた。それは事故直後の値の約8000万分の1である。参照 After 500 days, Fukushima No. 1 Plant Not out of woods, 「500日後、福島第1は未だ危機を脱せず」 
http://ajw.ashi.com/article/0311/disaster/fukushima/AJ201207240087
92.      事故の近因である被告の怠慢のため、環境(空気と水の供給も含む)広域汚染が原告の周囲で発生した。
93.      本状で既に記したように、被告の怠慢が主因そして近因の損傷害を原告は被った。
94.      情報と信用に基づき、被告の怠慢が主因そして近因の結果、現在そして今後も原告は医学検査や審査、治療(キレート治療や骨髄移植等その他諸々の処置を含む)を受けるように要求され、いずれ完治のための特殊治療を受けることにもなるだろう。
95.      更には、被告の怠慢が主因そして近因の結果、原告への心身の損傷、財物損壊、人生と資産の享受の機会の喪失、定期的な健康診断と治療の必要性、収入の喪失や時間と資産における経済的損失などの損害が現在も、そして今後も続くのだろう。
96.      更には、原告の寿命に与える悪影響は取り除くこともできず、寿命は事故前より短くなり、もはや、元の状態には戻せない。
97.      被告の怠慢、不注意そして無謀の結果、原告は過酷な損害を心身に受け、それは過酷な身体的苦痛と精神的苦悩にまで至った。
98.      既述表記を理由とする原告が被った過酷な損害のいくつかは本質的に生涯にわたるものとなるだろう。それは、慢性的な重い神経的ダメージ、精神的苦悩、深刻な身体的苦痛、感情的動揺などである。原告は今後も痛み、不便、そしてこれらの傷害による様々な影響にも耐えねばならない。将来において、こうした傷害の治療のための医療費はかさみ、事故前と同様の効率的任務の遂行は不可能となったが、それら全ては原告にとって莫大な損害である。
99.      被告の行為は意図的で理不尽で無謀で悪意に満ちており、または人命、安全、他者の権利、敢えて言うなら原告の権利や命や安全など、を冷酷にも軽視するものである。被告は金儲け、経済優先、拝金主義、経済発展至上主義や、またはコスト削減に走り、その他を事実上除外する道を選んだ。
100.      被告の善管注意義務違反に対し、原告は一人につき1000万ドルの代償的損害賠償を、更には3000万ドルの懲罰的損害賠償を求める権利を与えられる。

訴訟の原因-その2
(警告をしなかったことへの厳しい責任)

101.      原告は、本訴状に十分詳細に記載された項目「1」から「100」までの申立条項を繰り返し再び主張する。
102.      原子力の製造業者、設計者、卸売り業者、納入業者、売り手と市場取引者としての被告には、原告が依存する土地や大気や土壌に重大な危険をもたらす生産物を市場に出してはならないという義務があるにもかかわらず、トモダチ作戦の期間中に原告及び一般人と政府担当官に対して生産物により生じるリスクに関する警告を出さなかった。
103.      被告は、自らの生産物が原告の安心安全への著しい脅威があるという現実的で建設的な認識を持って核反応によって生産された電力を配布し、売り、そして市場に出しながら、警告、あるいは高まる危険性についての十分な警告を出さないことで、この義務に違反した。
104.      被告がこの義務を、製造、分配、販売に際して怠った。被告の生産物が原告の安全と健康に大きな脅威をもたらすということに気づきながら、福島第一原発の原子炉で核による電力を作り、核燃料棒を不適切に保管したことで危険性は一層高まったが、その危険性に関する警告または十分な警告を出すという義務は守られなかった。
105.      原告が依存する大地、大気、水の中に放射性物質が放出されるという現実的で建設的な認識を被告は持っていた。また、一旦環境に放出されると放射性物質はより遠くへ高濃度で拡散し原告に危害を加えるという性質が放射能にあるという現実的で建設的な認識も被告は持っていた。
106.      原告が被曝する汚染レベルは有害まで至らず、原告がトモダチ作戦の任務を遂行することは、原告がそれまでに経験した任務で受けたと考えられる危害と同等、あるいはそれ以上ではない程度の被害の原因にしかならないと被告は表明し保証した。
107.      本状に記載する全期間において、被告は、福島原発において原子炉と貯蔵タンクから高線量の放射性物質が漏れ出し、または放出していたことを知っていた。
108.      (108項は原文において欠落)
109.      被告は、米海軍が乗員約5500人の空母ロナルド・レーガン(CVN-76)や他の艦船を作戦行動に投入すること、福島原発に接続する水域での独自の検査や同水域での異常を検証することなく被告の発表した説明の真実性と安全性に頼らざるを得ないと知っていた。
110.      全ての該当する期間において被告は、福島原発で検出された実際の放射能レベルについて原告や、米国海軍及び政府担当官に警告を出さなかった。
111.      本状に記載する全ての期間において、例えば被告は、福島原発に接続する水域で放射能レベルが人間、動物、水生生物の健康に多大な脅威をもたらしていることを米海軍と原告に警告しなかったので、当該水域内の艦上で生活し働いていた人達は実際の被曝量を知るためのひんぱんな検査(原告の安心安全を保証するために必要な実際の危険性を見つけ、防衛方法を判断するためのもの)が必要となり、いずれ裁判において提示すべき他の注意喚起(警告)も必要となった。
112.      被告は、放射能被曝の特性と特徴が、原告が非放射線検出地域で任務を遂行する際に遭遇する危険性とは規模や重大性において異なることを知っていた、あるいは当然知っているべきだった。
113.      原告と米海軍は、このような実際の危険の度合いを知らなかった。被告からの十分な警告が無くては通常知ることも、またはそれから身を守ることはできない。
114.      一旦、被告が実際の危険の規模に気づいたうえで、原告が任務を遂行している区域を含む福島原発の周辺水域での線量に関する重要で正確なデータを出さないと決断したが、そのため原告は損害を避けられず、そして警告が出なかったために損害から回避することや損害を最小限に抑えることもできなかった。
115.      被告の行為はこうした状況下では理不尽なものだった。
116.      既述のとおり、被告の現実的で建設的な認識を含む科学データに基づけば、訴えられている危険は実在し予見可能でもあったという合理的な推論に至る。
117.      被告が、原告やその他の人々への警告を怠ったため、ここに主張するとおり、近因的結果として、原告は本来、予見可能であった損害を被った。
118.      被告の正当とは程遠い行為によって近因的に生じた原告の損害は、ここに主張するとおりの傷害や損害をいう。
119.      被告がとった警告を怠たるという違法行為は不完全かつ危険極まりないもので、被告のこのような行為は、厳しくその責任を問われるべきものである。
訴訟の原因-その3
(設計欠陥に対する厳しい責任)
120.      原告は、本訴状に十分詳細に記載された項目「1」から「119」までの申立条項を繰り返し再び主張する。
121.      被告は該当する期間中に、福島原発の設計者、製造業者であり創設者であった。
122.      被告は合理的に安全な福島原発を設計し建設する注意義務を負っていた。
123.      被告は福島原発周辺の環境、水や大気にもたらされる危険要素を特定する為に福島原発を検査、検証する注意義務を負っていた
124.      被告は、原告及び他の人々の健康や安心安全に対して重度の危険を与え、安全性において問題があり、設計に欠陥のある製品を市場に出さない義務を有していた。
125.      被告は、現実に或いは推定的に欠陥が存在していたことを認識しながら、福島原発という不完全に設計された欠陥品を作った時点で上述の善管注意義務に違反した。
(注16) 地震がメルトダウンの主因だという証拠が頻出しているが、東電はそれを認めようとしていない。その行為は福島原発の建設と操業に関するその他の本質的欠陥についても同様だ。参照 Report on Nuclear Disaster Hold Key to Reactors Fate, 「原発事故にみる原子炉の命運についての報告書」、http://online.wsj.com/articleSB1000142405270230444140577482113658775518.html
原子力専門家ガンダーセン氏は「サービスポンプ(訳注 海水冷却ポンプ)の設置場所は3月11日の津波で浸水してしまった」と指摘している。これらポンプは支援ディーゼル発電機のための海水を海から送るものだった。「もしかしたら、メルトダウンは3基だけではなく、14基だったかもしれなかった。データ上の数は福島第1に6基、第2に4基、女川原発に3基、そして東海原発に1基だ。これらの原発には合わせて37台のディーゼル発電機があり、そのうち24台は津波で壊れた。原発にはディーゼル発電機は必要なのだ」と氏の指摘は続く。福島第1のディーゼル発電機は浸水し、他原発ではサービスウオーターと呼ばれるディーゼル発電機用冷却水系が壊れた。日本は14基のメルトダウンはなんとか逃れたが、うち3基はメルトダウンした。それは37台のうちの24台のディーゼル発電機用の冷却水系統が壊れたからだ。 参照 Gundersen, July 6, 2012, Pacifica Radio Host Ian Masters and Fairewinds Arnie Gundersen,  「ガンダーセン、 7月6日 パシィフィカラジオ発、イアン・マスターズとアーニー・ガンダーセンの対談」; Lessons Not Learned From Fukushima Daiichi, 「福島第1から学ばれなかった教訓」、参照 http://www.fairewinds.com/radio; SolarilMG Podcast with Arnie Gundersen-Aug 10/2012, 「ソラリルMG ポッドキャスト、アーニー・ガンダーセン、2012年8月10日」, http://solarimg.org/?=3021
126.      設計の欠陥のために、福島原発には合理的な安全性は無く、広くは環境に対して、そして人々、別けても原告に対して、その健康や安心安全を守ることすらできなかった。
127.      このように製造、維持されてきた福島原発が内在する危険性よりも原子力発電の公益性の方が重要であることはない。
(注17) 福島原発は危険に満ち、あちこちのパイプや原子炉から高濃度汚染水の漏出の報告が絶え間なく届く。その一例は、2号機タービン建屋地下での4,700万ベクレル/の放射能の検出だ。 参照 Unit 2 Water 10 Times More Radioactive than Unit 1, 「2号機内の水の放射能値は1号機の10倍」
http://enenews.com/unit-2-10-times-more-radioactive-than-unit-1-47000000-Becquerals-per-liter-in-turbine-room-basement
128.      被告が福島原発を不完全に設計したことが主因となり、既述のごとく、合理的には予見可能だったはずの損害を原告にもたらした。
129.      不当にも危険な欠陥品である福島原発を設計、製造、維持管理を行った被告は、原告に対して厳しい責任を負う。

訴訟の原因-その4(虚偽の陳述に対する厳格な責任
不法行為 コード402B条の再(第2番目)陳述)
130.     原告は、本訴状に十分詳細に記載された項目「1」から「129」までの申立条項を繰り返し再び主張する。
131.     救済の為の本主張は、不法行為 コード402B条あるいはまた、製造物責任に関する法令の再陳述の名の基に提起される。
132.     福島原発の設計者、製造者、または維持管理者である被告は、自らの生産物の広告と販売推進において、福島原発がおかれている状況の特徴と特性に関する一つまたはそれ以上の重大な事実について当該期間中に虚偽の陳述を行った。
133.     以下の虚偽の陳述は以下の主張を含むが、これのみに限られるものではない。福島原発は(a)環境に有益で (b)「クリーン(汚染されていない)」で (c)関連期間中には危険な値に達するような放射能能汚染はなく (d)人に対する放射線被曝は他の発電方法に比べてもさほど高くはなく (e)他の発電方式に比べても損害を発生させる可能性は高くなく (f)使用に際しては危険な放射線は安全に抑制されており (g)いんぎんな注意勧告を通して、関連期間中は本質的に完璧に安全だとした。そして (h) 放射線量は適正に検査されたと提示されたが、それは、健康被害の発生や、環境へのリスクや原告(放射線値発表に当然のごとく依拠していた)の健康と安心安全へのリスクが悪化していることを明かさぬための作為だった。
134.     こうした虚偽の陳述は政府担当官、原告、そして一般人という、被告に当然のごとく依存していた人たちに向けて作られた。
135.     原告は、自らの身体と資産への損害を被ったが、それは本状に既載したごとく放射線被曝ゆえのもので、原告は間接的にそして当然のごとく被告の虚偽の陳述と怠慢に依存するしかなかったために、本訴状の損害が発生した。

訴訟の原因-その5
(欺瞞に満ちた事業行為と操業)
136.      原告は、本訴状に十分詳細に記載された項目「1」から「135」までの申立条項を繰り返し再び主張する。
137.      被告は福島原発からの電力を日本の消費者に供給する事業に従事している。
138.      被告は、原発に拠る電力の生産、流通、取引、そして販売に従事するなかで著しく欺瞞的で怪しげな活動をし、慣行実践していた。それはここに記載するとおりであるが、全てではない。
(a)
実際の環境への損害について言及もせず理解もせぬまま、福島原発の環境への有益性を誇張し 

(b)原発で作られる電力を「クリーン(汚染しない)」で環境にも「安全」で有益な燃料として取引し 
(c)
被告は、原告が任務遂行中に危害を受ける恐れは無いなどと放射線量に関して虚偽の主張を行い
d)福島原発の状態は原発以外の従来の発電所に比べても異常な損害の恐れは無いと発表し 
(e)
福島原発が放射線漏れを起こせば、放射能を閉じ込めておくことが不可能なため、他電源利用発電所の場合と比べると汚染を引き起こす可能性がはるかに高くなることを隠ぺいしていた 
(f)
被告は、放射線の検出値を知りながらも、福島原発近隣の海域での原告の任務続行は可能と市民や原告を思い込ませ 
(g)
福島原発とその周辺の空気や水は適宜検査され、健康災害や環境への危険性が増す気配は無いと発表する一方で、追加検査を避けるのみならず検査をさせないように意図し、そして
(h)
初期検査としてのモダリティー(危険レベルの放射線被曝や発癌性物質の可能性の有無を確認する物理療法)の受診が必要であったのに、それを原告には知らせなかった。
139.      被告の行った本来、欺瞞的で危うい操業が近因となって、原告に対する危害と損害が発生した。これは、個人的損傷、資産の損害、資産と人生の享受の喪失、定期的検査と治療の必要性のみならず、収入喪失、深刻な精神的ダメージ、治療費、そして時間とお金の無駄な消費などといった経済的損失をいう。原告は将来もこのような損失と損害を被り続けるであろう。

訴訟の原因-その6
(公衆への迷惑行為)
140.      原告は、本訴状に十分詳細に記載された項目「1」から「139」までの申立条項を繰り返し再び主張する。
141.      原告の資産、健康、安心、安全を不当にも危うくし損傷した方法で、被告はその生産物を製造し、流通し、取引し、推進ししたため、不便と不快を与えた。
142.      被告は既述のごとく怠慢で、無謀で、利己的な行動と不作為により放射能汚染を起こし、トモダチ作戦に従事した人たちの被害の拡大を許した。この汚染は環境へと拡がり、あるいは拡がり続け、結果として地球をも汚染しつつある。18
(注 18 2011311日から500日後のセシウム放出レベルは、原子炉爆発当時の最高値である数千兆ベクレルよりも低下していた。参照:
Fukushima Derived Radionuclides in the Ocean and Biota Off Japan
(東京大学大気海洋研究所「日本列島沖の海洋および生物相における福島事故由来の放射性同位性元素」日本語PDF
http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2012/files/20120404.pdf;
http://www.pnas.org/content/early/2012/03/26/1120794109.full.pdf+html;
Scientists: Far more Cesium Released than Previously Believed:
(朝日新聞英語版「科学者ら、従来の想定よりはるかに多量のセシウム放出と明かす」)
http://ajw.asahi.com/article/0311disaster/fukushima/AJ201202290025.
テラ・ベクレルはベクレル(放射性物質が放つ放射線量を表すために一般的に用いられる単位)の1兆倍にあたるものだ。したがって、ニューヨーク・タイムズによれば、原発災害の初期、最初の20日間で900,000,000,000,000,000ベクレルが放出されたという。放射線は人の細胞の化学結合を断ち切ることによって、人体に損傷を与えうる。損傷の程度は人が放射線に被曝する量に拠る。被曝量もまた、環境や食物などに存在する放射性物質の量に拠る。
「放射線被曝に関する最大規模の人体実験がウクライナとベラルーシ共和国で進行中であり、そこでは
1986年のチェルノブイリ事故で放出されたソ連政府のいう5000万キューリーの多くが感知されているチェルノブイリの遺産には数十万人の癌死亡者が追加されていたかもしれない最近の推計によれば、世界全体で14,000人~475,000人のチェルノブイリ由来の死亡が予測される」(キューリーは放射線強度の単位であり、1秒間に370億回の原子崩壊を表す。参考までに、広島・長崎の原爆は推計100万キューリーを放出したと推測されている)。「クリーン(汚染されていない)」な国々では稀な小児甲状腺癌の自然発生率の5000倍にまで増加したという、ベラルーシの科学者たちの報告もまた銘記すべきである。ミンスク国連開発計画(UNDP2000年報告によれば、1960年代のベラルーシにおける平均寿命は、西欧諸国におけるそれとほとんど同じ水準にあった。チェルノブイリ事故から13年後の1994年には、男性のそれは1214年、女性のそれは79年も短くなっていた。今日、ベラルーシの農村部に生まれる新生児は、59年間の寿命が予測される。しかしベラルーシの10代の若者の半数近くが深刻な健康問題を抱えていることを考えると、その59年間は非常に厳しい歳月になるかもしれない。そこでは、高校卒業生の45ないし47パーセントが、胃腸の異常、心臓の脆弱化、白内障などの身体不調に陥り、40パーセントが慢性「血液異常」や甲状腺機能不全に悩まされている。障害のある思春期層の人数は、過去10年間で3倍に増えた。バックグラウンドレベル(宇宙線や自然界に存する放射性物質からの平常の被曝値)よりも多く被曝すると、電離放射線が癌や白血病の深刻な増加の原因になり、また同時に将来世代に影響する遺伝子突然変異を引き起こしかねないことは常に周知の事実であった。
しかるに、ニューヨーク・タイムズは福島原発で最初の
20日間に放出された放射能に関して、90万テラ・ベクレルが2700万キューリーに相当すると報じた。これは1年以上も経過した後の報道であり、これまで放出された放射能の総計がどれほどになるのかは誰にも分からず、取り沙汰されもしないが、驚くべき量であることは明確である。
1キューリーは、1秒間に370億の原子の崩壊に相当する放射線量――370億ベクレル――に等しい。明らかに、これは非常に大きな放射能の量である。これらの数値を掛け算すれば(2700万キューリー×370億の放射性原子)、その結果は90万テラ・ベクレルを超えている……これは実に999,000,000,000,000,000ベクレルということになり、換言すれば、福島の核悪夢のあとの最初の20日間に999,000,000,000,000,000個の原子核粒子が崩壊したことになる。
143.      被告の行為が起こした現行の、そして今後も続く放射能汚染は、原告の健康を危うくし、本質的に、そして不当にも原告の資産の活用、利益そしてそれらを享受することをも妨害した。それは一般に理性ある人が極めて不便、不快、そして侵害と感じるものである。
144.      進行中の状況は、福島原発敷地全域そして国全域にわたって確認されており、現行の、そして進行中の放射能汚染と被曝ゆえの良好な健康の喪失という重大な損失を引き起こしたが、それは今後も続くだろう。
145.      一般人と比べ、ガンを含む被曝に関係する傷害を負う危険性がより高い場所に居たために、過剰な量の放射線に曝された原告は、特異な損害を受けた。
146.      原告の特異な損害は、健康の喪失や多種多様の治療を探す必要性を含み、又、今後の医学的状況はいっそう不確実で、不安全で、予見不可能と考えられる。その結果、原告は様々な損傷を受け、人生を享受することもできなくなった。
147.      放射能を基とするエネルギーの導入や使用は、通常の安心、安全や原告が人生を享受することを理不尽にも深刻にも危うくし、傷つけ、妨害し得ること、そして現にしてきたことを、被告は分かっていた、または当然の措置をとるなかで認識しておくべきだった。
148.      被告は、空気と水は汚染されないという公衆の権利を犯し、または犯しかねないという脅威を与え続けている。
149.      主因、そして近因の結果としての被告の行動と不作為は既述の迷惑行為を生み出してきた。相当数にのぼる原告の身体が放射性物質に曝され、その資産や健康への危害、安全面での特別な損害と傷害は、福島原発周辺の危険地域内の放射性物質に曝されなかった人々に比べより大きい。

訴訟の原因-その7
(個人への迷惑行為)
150.      原告は、本告訴状に十分詳細に記載された項目「1」から「149」までの申立条項を繰り返し再び主張する。
151.      原告の身体は、被告の意図的で理不尽で怠慢で無謀な行為の主因、そして近因の結果である放射線によって汚染されたが、その全ては本訴状に記載するとおりである。
152.      被告の行為によって原告の身体は汚染されたが、それは本質的に理不尽だったため、原告は貴重な安心安全、資産や人生の運用や利益とそれを享受することを妨害されている。
153.      不名誉や身体が汚染されたために、原告の資産の価値や余命が著しく損なわれた。

訴訟の原因-その8
(欺瞞)
154.      原告は、本告訴状に十分詳細に記載された項目「1」から「153」までの申立条項を繰り返し再び主張する。
155.      あらゆる行動、実践、既述の虚偽の陳述、不作為やその他の不法行為の全ては、被告の特異で意図的な目論見や、または無謀なまでの真実無視や、または本状に記載する全期間において存在した放射線量の虚偽の発表によってなされたが、それらは原告、政府担当官、そして一般人を利用し騙すために行われた。
156.      被告、その代理人、社員、並びに従業員は当時現地での実状に関する認識があり、地震と津波の後に福島原発の重要事実を述べることをせず、あるいは実際の放射線検出値についての重大な事実や生物的分解そして事態緩和は絶望的とは発表せず、原告の置かれた環境の健全性と安全への明確な脅威を隠ぺいした。
157.      放射線の検査レベル及び原告の安全に関する重大な虚偽の陳述及び不作為を決め込み、被告、その代理人、社員、並びに従業員は、原告と政府担当官の周辺環境放射線値は安全だと思い込ませようと意図し、当時、実際に放射線量が許容値を超え過度に汚染されている場所への誘導をも意図した。そして原告やその他の人々の身体やギーゼキングの胎児の身体が危険な被曝をしないためのより早く適宜な対策はいらないと思い込ませ、あるいはまた、被曝後に、より適切な処置を実施する努力も不要と思い込ませた。
158.      事実は、被告、その代理人、社員、並びに従業員によって当時作られた発表とは異なる。19
(注 19)多くの技術者は、状況は酷くないとする政府による保証が「大いに疑わしい」としている。たとえば、「原発の冷却システムの元作業員であり、現在は放射線調査ボランティアとして活動するタカシ・ケイは、東電経営陣が、できるかぎりの有利な観点から状況を説明していると語る。『いたるところで漏出しており、破壊もされています。経営陣がいうほど単純ではありません』と彼はいう」。日本の原子力専門家、小出裕章氏は、最近「原子炉の状態はいまも悪化しつつあります」と語った。
In Japan, a nuclear ghost town stirs to life
CBSニュースサイト『日本では原発事故ゴーストタウンが生物を攪乱している』)
159.      USS ロナルド・レーガンが入手した放射能アセスメント(評価)によれば、被告は全期間において、情報、すなわち原告が任務遂行を要請された地域の関連施設に関する情報、福島原発近隣地域へ原告が派遣された後の健康と安心安全への脅威が増しているという情報、現地貯蔵タンクや地下水の状況に関する情報、USS ロナルド・レーガンの活動水域に関する情報、を入手する被告の能力やそれを効率的に制御する能力は、原告のそれと比べて相当高かった。
160.      該当する全業務において、被告の優位な立場と影響力により、原告およびその他の人々は欺瞞に満ちた業務に組込まれる前に、またはその犠牲者となる前に、正しい事実を発見する機会を持ち得なかった。20
(注 20)福島原発の操作員らは、放射線レベルが12倍の範囲内で以前の公表値を超えていることを認めている。驚くこともないが、作業員らが自分たちの被曝している放射線のレベルを極めて長期間にわたり隠してきたことについて東京電力は知らなかったという姿勢を続けているが、少なくとも10名の作業員および元作業員らは、安全に対する関心を喚起せずに自分たちを作業させつづけてきた業務についての議論の証人として立ち上がり始めた。作業員らは、しばしば積算放射線レベルを測定するように設計された線量計を装着していなかったという。単純にも、作業員らは就労日に安全装備を自分たちの車に残していたのである。ある作業員は、「私が本当はどれほどの放射線に被曝したのか、わかりません。会社は私に癌検診をさせてくれません。私は自分の健康について非常に心配です」という。作業員たちは、継続して仕事を確保するために、事を荒立てるよりも、自分たちの放射線レベルを隠すために必要なことをしている。
日本紙、朝日新聞によれば、東京電力による福島の除染では、作業員らに偽りの放射線値をねつ造させていたという。

NHK Documentary: Recently deteriorating working conditions at Fukushima plant causing workers to quit.
Energy NewsNHKドキュメンタリー:最近の福島原発における労働条件の悪化が原因で作業員が辞めていく」)
http://enenews.com/nhk-documentary-working-conditions-deteriorating-fukushima-plant-many-workers-leaving-company-hasnt-able-recruit-single-worker-video 
161.      原告は、被告、その代理人、社員または従業員による放射能検出量についての重要な情報が欠落した本質的な欺瞞で過失を招く発表を原告は信頼したが、被告らの所有する福島原発によって環境は既に汚染された後で、結果として危険な量の放射線に曝された。この状況下で被告の代理人、従業員そして、または社員の取った行動は理不尽なものだった。21
(注 21Ocean Still Suffering From Fukushima Fallout.
Nature「フクシマからの放射性降下物により海洋汚染はいまも続く」)
http://www.nature.com/news/ocean-still-suffering-from-fukushima-fallout-1.11823
Top scientist suggests contaminated water is actively being pumped outinto the ocean from Fukushima Plant.
Energy News「一流科学者、福島原発から汚染水が海へと『ポンプで積極的に汲み出されている』という」)
http://enenews.com/reuters-top-scientist-suggests-water-is-actively-being-pumped-out-into-ocean-from-fukushima-plant-video
CBSニュースサイト『日本では原発事故ゴーストタウンが生物を攪乱している』)
http://openchannel.nbcnews.com/_news/2012/07/26/12839675-in-japan-a-nuclear-ghost-town-stirs-to-life?lite
162.      原告や米海軍、政府担当官、役人、そして不正確な情報を使った為に損害を受けた人達が、直接的、間接的に被告に依存したことで、本状記載の損傷と災害を被った。22
(注 22)問題は、継続中の堆積および放出にまつわる現実を無視したいと願う被告が原因になっており、「……したがって低すぎる被曝量に至った。また、恐らく彼らはホット・パーティクル(高放射能粒子)と内部放射線源を想定被曝線量から除外したのではないか、と私は疑っている。同じことがスリーマイル島でも起こった。誤った想定が低い被曝量を作り出した。誤ったデータを入れると誤った結果が出てくるというわけだ。もし、根拠が薄弱な仮説または偽のデータから全てが始まれば、誤った結論に至るわけだ」。
Gundersen on WHO: I don
t trust their data
Energy NewsWHOに関するガンダーセンの意見:私は彼らのデータを信用しない」)
http://enenews.com/gundersen-dont-trust-data-garbage-garbage-suspect-hot-particles-internal-emitters-left-radioactive-releases-underestimated

よってここに、各原告は以下のような判決が被告に対して下されることを心から願うものである:
a.      訴訟第一から第八の行動に対する1000万ドル($10,000,000.00)の損害賠償金を認めるとの判決。
b.      総額3000万ドル($30,000,000.00)の懲罰的損害賠償金、または同等の金額が裁判所または陪審員の判決で被告を罰するに十分であると認められるとともに、この賠償額が将来において「訴訟第一から第七」に示された行為に対する抑止となること。
c.      被告に対し、少なくとも1億ドル($100,000,000.00)以上の基金を設立することを命令し、要求し、厳しく求める判決が下されること。この1億ドルの基金は、原告の意思に基づき選ばれた医者によって施される原告各自に必要な医学検査、医学モニタリング、そして治療の為の全費用に使われることとする。
d.      当裁判所が公正で適正であるとみなして、利子と本訴訟の全費用が共に、更なる救済となるべき判決が下されること。


2012年、12月12日
代理人 ポール C. ガーナー

陪審員裁判請求
 原告は、ここに民事訴訟連邦法第38(a)規定に基づき陪審員裁判を請求する。

代理人立証
 以下省略(原告代理人の身分説明や訴訟経緯など)
日本語版©東京電力株主集団訴訟、2013



2 件のコメント:

  1. 英語原文はウエブで手に入りますか?

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    1. テキストpdfは入手不能のようです。
      画像pdfはネット上にあるようですが、残念ながら、小生は所在を突き止めていません。

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