本稿は、北海道・深川市立病院内科の松崎道幸先生作成「福島の子どもたちの甲状腺がんについての緊急見解」pptをブログ記事に再構成したものです――
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福島の小児甲状腺がんの発生率は
チェルノブイリと同じかそれ以上である可能性があります
チェルノブイリと同じかそれ以上である可能性があります
~福島県県民健康管理調査結果に対する見解~
松崎道幸
(北海道反核医師の会運営委員)
(北海道反核医師の会運営委員)
2013年2月15日
(この見解は暫定的なものでありますが、事態が深刻であると考え、多くの人に見ていただき、共に考える材料としたいと思います。広く拡散下さい)
1995年に山下俊一氏、長瀧重信氏らが共同著者となった論文がThyroidという医学雑誌に発表されています。
これは、事故時10才以下だったチェルノブイリ周辺の約5万人の子どもたちを対象に、事故から5~7年後に甲状腺超音波検査を行った結果を報告したものです。
径5ミリ超の甲状腺病変を超音波検査で検出し、穿刺細胞診検査などで確定診断を行った結果、1万4千人に1人の甲状腺がんが発見されました。高汚染地域では4千5百人に1人見つかりました。
ところで、今回、福島県の健康管理調査で、18才以下の子どもたち3万8千人の甲状腺件超音波検査で、3名の甲状腺がんが発見されました。
しかもこのほかに甲状腺がんの疑いのある子どもさんが7名おられるということです。
原発事故から2年も経たないうちに、チェルノブイリ事故の数年後と同じかそれ以上の率で甲状腺がんが福島の子どもたちに発生している可能性があると考えざるを得ない結果です。
ちなみに、山下氏らの調査が行われたのは、小児甲状腺がんの激増が明らかになった時期です。
論文の要約
Ito M,
Yamashita S, Ashizawa K, Namba H, Hoshi M, Shibata Y, Sekine I, Nagataki S,
Shigematsu I. Childhood thyroid diseases around Chernobyl evaluated by
ultrasound examination and fine needle aspiration cytology. Thyroid. 1995
Oct;5(5):365-8.
イトウM、山下S、セリザワK、ナンバH、ホシM、シバタY、セキネI、長瀧S、重松I
超音波診断および穿刺吸引細胞診(FNA)によって評価したチェルノブイリ周辺の小児甲状腺疾患 Thyroid 1995年10月;5(5):365-8.
超音波診断および穿刺吸引細胞診(FNA)によって評価したチェルノブイリ周辺の小児甲状腺疾患 Thyroid 1995年10月;5(5):365-8.
Screening by ultrasound
examination and fine-needle aspiration cytological biopsy (FNA) was conducted
in five regions in Belarus , Ukraine , and Russia
to investigate the prevalence of childhood thyroid diseases around Chernobyl . Gomel , Zhitomir , Kiev , and the western area of Bryansk are the administrative regions where
severe radioactive contamination occurred. The subjects from Mogilev , where contamination was relatively
low, served as controls. Among 55,054 subjects (26,406 boys and 28,648 girls),
the prevalence of ultrasonographic thyroid abnormalities such as nodule, cyst,
and abnormal echogenity was significantly higher in the regions with severe
contamination than in Mogilev .
Of the 1,396 children showing echographic thyroid abnormalities 197 were
selected for FNA, and a sample was successfully obtained for diagnosis from 171
(51 boys and 120 girls) of the 197 subjects. The aspirate was insufficient for
diagnosis in the remaining 26 subjects. Thyroid cancer was encountered in four
children (2.3%) from the contaminated regions, two children being from Gomel . The other thyroid
diseases were follicular neoplasm, 6.4%; adenomatous goiter, 18.7%; chronic
thyroiditis, 31.0%; and cyst, 24.0%, suggesting that a major cause of thyroid
nodularity is nonneoplastic changes, mainly chronic thyroiditis and cysts. These
results will serve as an important data base for further analyses and suggest
that childhood thyroid diseases, including both neoplasms and immunological
disorders, are consequences of radioactive fallout. PMID: 8563473
チェルノブイリ周辺における小児甲状腺疾患の有病率を調査するために、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの5地域において、超音波診断および穿刺吸引細胞診生体検査(FNA)を実施した。ゴメリ、ジトーミル、およびブリャンスクの西部地域は、高度放射能汚染にみまわれた管理区域である。汚染度が相対的に低いモギレフの被験者を比較対象群とした。被験者55,054人(男児26,406人、女児28,648人)のうち、結節、嚢胞、および異常なエコー反応を示すものの割合は、高度汚染地域のほうがモギレフよりも有意に高かった。超音波診断による甲状腺異常を示した児童1,396人のうち、197人がFNAのために選別され、その被験者197人のうち、171人(男児51人、女児120人)から診断のための試料が首尾よく得られた。残りの被験者26人について、吸引試料が診断するには不足であった。児童4人(2.3%)に甲状腺癌が見つかり、うち2人はゴメリの児童だった。他の甲状腺疾患としては、濾胞性腫瘍が6.4%、腺腫性甲状腺腫が18.7%、慢性甲状腺炎が31.0%、嚢胞が24.0%あり、甲状腺小結節形成の主要な原因が非腫瘍性病変であり、主として慢性甲状腺炎および嚢胞であることを示唆している。これらの結果は、追加的な分析のための重要なデータベースとなるだろうし、腫瘍および免疫不全の両者を含む小児甲状腺疾患が放射性降下物の影響であることを示唆している。PMID: 8563473
(翻訳/井上)
事故時0~10才だったチェルノブイリ周辺の子どもたちに、事故から5~7年目に詳しい甲状腺超音波検査を行った山下チームの調査結果
地域
|
汚染度
|
検査人数
|
甲状腺がん
|
モギレフ
|
やや低
|
12,285名
|
0名
|
ゴメリ
|
高
|
8,949名
|
2名
|
ブリヤンスク
|
低
|
12,147名
|
0名
|
キエフ
|
低
|
10,578名
|
1名
|
ジトミル
|
低
|
11,095名
|
1名
|
合計
|
55,054名
|
4名
|
小児甲状腺がんが1万人当り0.7人(13,763人に1人)発見された。高汚染地域のゴメリでは4千5百人に1人が甲状腺癌がんだった。
↓
2013/2/13 13:01
福島県立医大の鈴木真一教授は「甲状腺がんは最短で4~5年で発見というのがチェルノブイリの知見。今の調査はもともとあった甲状腺がんを把握している」と述べ、同原発事故による放射線の影響を否定した。
3人のほかに7人ががんの疑いがあるとして、県立医大が検査を続けている。甲状腺検査は震災当時18歳以下が対象。2011年度に1次検査を約3万8千人を対象に実施した。
2次検査で細胞検査が必要とした76人のうち、10人にがんの疑いがあるとされ、このうち3人が甲状腺がんと判明した。〔共同〕
福島の子どもたちの健康が本当に心配です。
放射線の被害を防ぐために、共に考え、共に行動しましょう。
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