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2017年7月17日
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フクシマ放射能と2020年東京オリンピック大会
ダール・ジャメイル Dahr Jamail
45年間にわたる原子力エンジニアリング経験がある免許保持・反応炉操作員であり、日本でベストセラーになった福島第一核発電所惨事に関する本の著者、ガンダーセンは、「フクシマ惨事避難者に対する日本政府の非人道性は最悪です」とツルースアウト誌に語った。
ガンダーセンは、日本政府と原子力業界の両者とも、フクシマ核惨事の余波で自宅から避難した人びとのほぼ全員を2020年東京オリンピック大会開催の前に「帰宅」させようとしていると説明する。
日本政府は今年3月、自宅からの退去を強制されたフクシマ避難民にこれまで支払われてきた交付金は廃止されることになると発表しており、この措置によって、避難民の多くが経済的必要性により汚染された県土への帰還を強いられることになる。
それに、この措置は日本政府単独のものではない。国際オリンピック委員会もやはり、フクシマの状態が正常どころの話ではないのに、状況を正常化するためにしゃかりきに働きかけている。委員会には、2020年東京オリンピック大会の野球・ソフトボール競技をフクシマで開催させる計画があるほどである。
ガンダーセンは、このように物事が進展しているのは、核を贔屓にする日本政府がフクシマ惨事は「収束」したと主張できるようにするためであると信じている。ところが、「惨事は『収束』しておらず、『自宅』はもはや居住不能になっています」と彼は指摘した。
なにが起こっているのか、ガンダーセンの分析は単純である。彼は次のように付言した。
「大銀行、大電力会社、エネルギー会社は、住民の健康よりも利潤を大事にしています。幸い、二人いるわたしの幼い孫たちは米国で暮らしています。孫たちの両親が福島県(県は米国の州に相当)に住んでいるとすれば、そこを去って、二度と戻らないように告げるでしょう」
2011年の破滅的な地震に引き起こされた津波が核発電所に襲来したときにはじまった福島第一核発電所惨事に由来する放射能にまつわる報告が相次いでいる。
日本政府はこうした症例とフクシマ核惨事の相互関係を相変わらず一切否定しているが、甲状腺癌が福島第一核発電所事故のような核事故のさいに放出される放射性ヨウ素が原因で発症することがすでに久しく知られている。核惨事開始後に公表された世界保健機関報告はメルトダウンによってありうる結果として癌を挙げているし、Epidemiology[疫学]誌上で2015年に公開された研究論文は、フクシマ放射能に被曝した子どもたちの甲状腺癌発症率が上昇している可能性があると示唆している。
2011年核惨事の結果、発電所周辺の310平方マイル(800平方キロメートル)の地域が人の住めない土地になり、この地域の居住者160,000人が避難させられた。当局者たちは今年の4月になって、その一部の自宅帰還を歓迎しはじめたが、2016年に政府が実施した調査によれば、近隣の町にいる避難民の半数以上は、避難命令が解除されても、自宅に戻るつもりはないとすでにその時点で答えている。
核惨事の処理に責任がある企業、東京電力の関係者らは今年2月、反応炉のひとつの内部にある核燃料デブリの位置特定に困難を抱えていると述べた。内部の放射線量が超高レベルのままであり、ロボットでさえも機能不全に陥るほどである。
東京電力は、反応炉1基のなかで、1時間あたり630シーベルトの空気中測定値が記録されたと公表した。それまでの最高測定値は、遡って2012年の1時間あたり73シーベルトだった。5シーベルトの場合、1か月以内に被曝者の半数が死亡し、10シーベルトの線量では、被曝者にとって数週間で致命的になる。
明治大学の准教授、勝田忠広博士は、原子力規制委員会の原子炉安全専門審査会および核燃料安全専門審査会の審査委員である。ツルースアウト誌は、福島で進行している核惨事について、最も深刻な懸念事項は何かと博士に質問した。
「わたしが個人として、最も危険であるとみなしているのは、日本政府が国家の威信と電力各社の保護を国民の生命の上位に置くことを選んだという事実です」
ガンダーセンは、日本でオリンピック大会を開催するのはまったく正気の沙汰ではないと考えている。彼は次のようにいう――
「2020年オリンピック大会を日本で開催するのは、進行中の原子炉メルトダウンを国民の目から消し去るための日本の現政権の努力の一環です。わたしは2016年、東京の街角で高レベルに放射性のダストを見つけました」
ガンダーセンおよびツルースアウト誌が取材した他の核専門家たちによれば、この危機はさらに悪い。
フクシマとその周辺都県は放射能で「汚染」されている
ガンダーセンは、こういう――
「日本政府は、メルトダウンで放出された放射能を封じこめる事業に十分な資源を断じて投入しませんでした」
ガンダーセンは、彼が2012年に初めて訪日したさい、フクシマ処理のために2500億ドル以上の費用がかかると公の場で発言したが、東京電力は彼の見積もりを一笑に付したと語った。だが、2017年のいま、東京電力が同じ結論に達し、それを公表したのはいいが、2011年と2012年における同社の不作為の結果、太平洋とフクシマおよびその周辺都県の美しい山並みは汚染されてしまった。
安倍晋三首相政権が放射能を封じこめるためにフクシマで採用した戦術のひとつが、地下「凍土壁」だった。ガンダーセンは次のようにいう――
「わたしは『凍土壁』が設計されていたさい、失敗するに決まっているし、途方もなく高くつく分水策だと断言しました。水が破壊された反応炉の基礎部に流入するのを止める技術があり、放射能が地下水に混じって海に移動するのを止めることができるのですが、日本政府は相変わらずその技術の追求に抵抗しています」
ガンダーセンは、日本政府が破壊された反応炉全3基を覆う石棺を建造し、反応炉解体を100年後まで待つことができるし、そうすべきであると主張している。この方法によって、日本人作業員の放射能被曝量を最小化できるし、進行中の放射能環境放出の量をも最小化できる。
ガンダーセンはまた、谷川から太平洋へと放射能汚染水が流れつづけていることも同じように重要なので、山地の徹底的な除染を直ちに始めるべきだが、これは途方もない巨大事業になるので、決して成就しないかもしれないとも指摘する。
アーニー・ガンダーセンは他のさまざまな役割に加えて、彼の妻、マギーがヴァーモント州で創立した非営利団体、フェアーウィンズ・エネルギー教育(Fairewinds Energy Education)の主任エンジニアを務めている。マギー・ガンダーセンは団体創立からこのかた、フェアーウィンズの法務補助と鑑定の業務を担当してきた。マギーは彼女の夫と同じように、核産業の内部情報に通じている。というのも、彼女には、核施設供給事業者、コンバッション・エンジニアリング(Combustion Engineering)で再装填炉心の設計技師助手を務めていた経歴があり、ニューヨーク州北部で計画されていた核反応炉施設の広報を担当していたからである。
ツルースアウト誌がマギー・ガンダーセンに安倍政権のフクシマ対応についてどのように思うのかと質問してみると、彼女はこう述べた――
「人間の健康は、日本で見受けるような、企業利益、政治家や権力者の目標と交換されるべきものではありません。日本政府は正確な健康データの公表を拒否しており、放射線症状を診断する医師の医療者特権を取り上げると脅しています」
マギー・ガンダーセンは、彼女の夫もまた、患者の疾患が福島第一核発電所メルトダウンに伴う精神的ストレスのためであるとする政府の筋書きに妥協することなく、放射線疾患を抱えた患者たちを診断していたために、医院を失った医師に会ったと付け加えた。
M・V・ラマナ(M. V. Ramana)は、カナダはブリティッシュ・コロンビア大学、リュー世界問題研究所の軍縮・世界・人間安全保障担当のシモンズ記念議長であり、世界原子力産業動向年報2016年版の寄稿者でもある。彼はガンダーセン夫妻と同じく、安倍政権のフクシマ対応の過ちに批判的だ。ラマナはツルースアウト誌に、次のように語った――
「安倍政権は明確で広範に蔓延した反対を前にして、概して人びとの福利にほとんど敬意を払わず、核産業を支えてきており、われわれがこの政権にもっとマシなことを期待できるとは、わたしは思いません。核発電所の再稼働について言えば、この決定の理由のひとつは、核産業の負債、この場合は東京電力の負債ですが、それを減らすためです。再稼働はまた、オリンピック大会の開催適地として、またさらに広く一般的に、安倍政権が日本のイメージを補強するための方策なのです」
勝田准教授は同じ見解であり、次のように述べた――
「安倍首相には、フクシマ事故問題について、知識もなければ、関心もありません。安倍政権は、核エネルギー政策を推進してきたことについて、明確な謝罪をまだしていません」
勝田准教授によれば、その代わり、安倍政権は「事故の記憶を消す」努力の一環として避難命令を解除した。
フクシマ避難民の「強制」帰還
福島第一核発電所メルトダウンの直後、発電所の周辺地域から160,000人が逃げた。安倍政権は避難した人びとに住宅補助を支給してきたが、最近の発表によって、そのような補助がもはや支給されないことになった。「自主避難者」の多くは、放射能不安が根強いにも拘らず、帰還する思案を無理強いされることになるだろう。ラマナは補助の打ち切りについて、次のようにいった――
「これは大変残念なことです。福島から避難した人びとはすでに散々な目にあっており、彼らの一部にとって、政府、それにおそらく東京電力は彼らの苦境の責任をもはや負わないと告げられるのは、まったく無慈悲なことだと思えるでしょう」
ラマナは、日本政府はこの無情な措置を実施するにあたって、今では放射線被曝量は人びとが帰宅しても「安全なレベル」に収まっていると主張していると説明する。この主張は、現在の放射線レベルが事故以前よりも高いという事実を無視しており、また被曝地域の放射線量測定の足かせとなっている広範におよぶ不確実性をも度外視している。
勝田准教授は同様な懸念を、次のように表明した――
「避難指示解除区域は、放射線量レベルがいまだに高く、森林の除染が実施されていませんので、完全に修復されておりません。おまけに、除染廃棄物が住宅の周辺に置かれていることも多く、たくさんの家族が帰還していないことから、地域社会は崩壊しています」
勝田准教授は、避難者一人あたり月額10万円の補助は、今後10年間にわたり支給しても、人命を守るためには、「高くつくとはいえない」と言い添えた。
マギー・ガンダーセンは核産業の広報業務を担当していたことから、安倍政権の戦術について、興味深い立場を示している。
彼女は原子力産業で働いていたとき、業界の科学者とエンジニアによって、原子炉に関する、ある種の偽情報の「注意深い教育」を授けられた。彼女は「隠された真実」を知っていたなら、金輪際、そのような仕事をしなかっただろうといった。彼女は――戦争を支持しておらず、核兵器や減衰ウラニウムの使用は重罪であると信じているが――アーニーともども、原子力は「原子の平和利用」であると教えこまれており、現在時点で知っていることを知っていたなら、原子力のために働いたり、宣伝したりするなんてことは決してしなかっただろうという。マギー・ガンダーセンは、次のように説明した――
「アーニーとわたしは、東京電力と日本政府が、チェルノブイリとスリーマイル・アイランド(それにその意味では、メキシコ湾のディープウォーター・ホライズン原油流出事故)で使われたのと同じ脚本を使っていると直ちに気づきました。政府というものは、放射能放出量、あるいはディープウォーター・ホライズンの場合、原油放出量を直ちに極小化するものなのです」
上記事故事例のいずれの場合でも、大手の報道機関は危機が勃発するとすぐ、憶測を支持する証拠すらなくても、恐れるべきことはまったくないと律儀に報道していたと彼女は付言した。政府の目標は恐れと混乱を最小に抑えることであり、たいがいのメディアは公式見解をそのまま垂れ流した。フクシマ惨事対応措置は、同じパターンを後追いしている。マギー・ガンダーセンは、次のように述べた――
「安倍体制は、フクシマ核メルトダウンと垂れ流し中の放射能の深刻さをごまかしているのでしょうか? きっとそうです。既知であれ、未知であれ、被曝者に対して日本で起こっていることは、人権侵害であり、環境に対する正義の侵犯なのです」
2020年東京オリンピック大会は「高レベル放射性粒子」のど真ん中で開催
勝田准教授は、フクシマ避難民は彼らの窮状がオリンピック大会で覆い隠されてしまうだろうと「心底から恐れている」といった。日本政府は、今や日本が「安全」な国であり、フクシマ惨事は「解決した」と世界に示すためにオリンピックを利用していると彼は信じている。彼は、こういう――
「日本で、オリンピック関連のニュースが増えるにつれ……国民はフクシマ事故のことをまるまる忘れるようになっています」
アーニー・ガンダーセンは、福島県のその地でオリンピック競技の一部(サッカー、野球、可能性としてサーフィング)を開催するのには理があるとは考えていない。彼は、次のように述べた――
「放射線量レベルが高い『ホット・パーティクル』は福島県とその近隣諸県のどこでも遍在しています。これら『ホット・パーティクル』は、その地の住民とその地を訪れる選手に長期的な健康リスクをもたらします」
ラマナもまた、フクシマ近接地で開催される競技会は「競技選手と観客に余分な放射線量を与えることになりかねません」と信じていう。
フクシマ惨事は「100年以上もつづく」
マギー・ガンダーセンは、原子力規制委員会はフクシマから教訓を学んできたと常に主張してきたと指摘し、ところがその実、同委員会――または日本政府、あるいは業界各社――がなんらかの教訓を学んだとは彼女はまったく考えていない。彼女は、こういった――
「エネルギー生産はすべて金絡みのことです。日本にある銀行の多くはメルトダウンのあと、事故が収束するまで各地の原子炉を現状保存するために投資しました。銀行団、それに原子力利用への投資を支援する日本政府は、老朽化した反応炉の稼働に既得権益を保持しているのです」
勝田准教授はフクシマの将来に関して悲惨な展望を抱いており、おびただしい数の避難民が、東京電力と日本政府による現在の施策によっては、危機は解消されないと気付いており、帰還の希望を捨てていると述べ、次のように語った――
「除染や解体作業が進展したとしても、問題は解決しないでしょう。わが国は、除染廃棄物と解体廃棄物の処分方法をいまだに決めていないのです」
ラマナは、核エネルギーに固有の危険、それにこうしたテクノロジーを支配する主体が人間の福利に利益を優先させれば、その危険が悪化する様相を思いださせる事象でフクシマがあるべきであると信じている。
アーニー・ガンダーセンはさらに強いことばで、次のように説いた――
「福島第一核発電所の惨事はさらに100年以上もつづくでしょう。別の原子炉災害がきっと起こります。チェルノブイリと福島第一核発電所は、原子力が社会構造を一夜にして破壊しかねないテクノロジーであることを世界の万民に教えたはずです」
アーニー・ガンダーセンによれば、フクシマ1、2、3号炉格納容器の残骸は、さらなる大地震による被害に対して極めて脆弱であり、フクシマ現場でマグニチュード7.0またはそれ以上の地震が起これば、さらに過酷な放射能放出事故が招来しかねない。
マギー、アーニー・ガンダーセン夫妻はメルトダウンからほどなくして、日本は「転機」に差し掛かっていると両者揃って発言した。日本は、維持可能なエネルギー経済によって国民と無垢な農村環境を守りながら、再生可能エネルギーで世界の最先端を行くことで災害に対応することもできた。
だが明らかに、日本はその方向に進まなかった。マギー・ガンダーセンは、次のようにいった――
「世界は日本をテクノロジーに精通した国と見ていましたが、日本は先陣をきって、世界に通用する新たな経済を創造する代わりに、エネルギー生産の老朽化した20世紀型パラダイムに固執しました。ドイツ、ニカラグア、デンマークなど、他の諸国における、ソーラーと風力の大成功をご覧なさい。エネルギー独立を達成し、強い経済を創造し、もっとたくさんの雇用を創出し、環境を保護しないのは、なぜでしょう?」
アーニー・ガンダーセンは今年おそく、クラウドソーシング資金によって、日本の市民科学者たちに付加的な放射性物質試料の採取方法を教えるため、科学者仲間とともに日本を再訪する計画を暖めている。その実現のためにフェアーウィンズ・エネルギー教育は、目下、資金を募っている。
その一方、日本では、原子力にまつわって進行中の危険の劇的な見本がふんだんにある。
一方、米国では、ドナルド・トランプ大統領が国家エネルギー計画における原子力ファーストを唱え、米国核エネルギー産業の包括的研究を公表した。「われわれは核を再び格好いいものにしたい」と、トランプのエネルギー長官、リック・ペリーは発言した。
Reposted with permission
from our media associate Truthout.
【クレジット】
The EcoWatch, “Fukushima
Radiation and the 2020 Tokyo Olympics,” posted on July 17, 2017 at https://www.ecowatch.com/tokyo-olympics-fukushima-2460798164.html.
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