2017年8月3日木曜日

ロイター通信【海外報道】米電力会社、東芝関連の☢発電所の完成を断念




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電力会社、アメリカ核ルネッサンスの嚆矢だったはずの反応炉建設プロジェクトを断念

ハリエット・マクラウド Harriet McLeod

サウスカロライナ州コロンビア発、731日【ロイター】サウスカロライナ州の電力会社は、数十億ドル規模の費用超過に陥るまで米国の原発ルネッサンスの先駆けともてはやされていた未完成の核反応炉2基を放棄すると発表した。

当該の反応炉は、米国の政治家らが二酸化炭素排出と無縁の電力供給を期待して、十数件の核発電所新規建設を予測していた10年前に提案されていた。しかしながら、その後の歳月のあいだ、シェール革命が安価な天然ガスの過剰供給を招来し、日本のフクシマ事故が新たな安全性不安を募らせたうえ、いまトランプ政権が気候変動対処策を解体している。

スキャナ(SCANA)社の一部門と州営のサンティー・クーパー(Santee Cooper)は731日、VCサマー核発電所(V. C. Summer)と称される反応炉2基の新設事業を断念すると発表した。この事業の完工率は40パーセントに満たず、建設費が90億ドル(9900億円)をすでに超えている。

スキャナ社のCEO(最高経営責任者)、ケヴィン・マーシュ(Kevin Marsh)は告知書で、「わが社は、この数か月のあいだ、最も堅実な前途を決定するために、この事業をあらゆる観点から評価してまいりましたが、この非常に困難で、なおかつ必要な結論に達しました」と述べた。

この事業は、昨年中に電力生産の開始にこぎつけると期待されていたが、建設上の問題、規制当局との紛争、質の劣る作業の問題に悩まされてきた。

建設プロジェクトの請負業者であり、東芝の子会社、ウェスティングハウス・エレクトリック社(Westinghouse Electric Co)は今年3月になって、VCサマー、それにヴォグトル(Vogtle)と呼ばれるジョージア州の同様な核発電所新設工事の固定価格契約を履行する余裕がないと申し立てており、電力会社はウェスティングハウスの破産を非難した。

サンティー・クーパーの役員会で提示されたプレゼンテーションによれば、ウェスティングハウスの破産の影響でプロジェクトが2023年までに完工する見込みがなくなり、建設費が当初予算より75パーセントの増、240億ドル(24000億円)まで膨れあがるという。

サザン社(Southern Co)の一部門が主導するジョージア州のプロジェクトは、1979年のスリーマイル・アイランド事故以来、米国初の新規反応炉の建設事業である。ウェスティングハウスは同社のAP1000型炉が安全であり、なおかつ建設費が安上がり、工期が短いと売り込んで、契約にこぎつけた。

VCサマー計画を中止すれば、サザン社がヴォグトル建設プロジェクトを断念する公算が大きくなり、これも着工後に建設が中断された核発電所の長いリストに連なることになる。

それにまた、財務危機から救済されることを求めて、身売り先を探しているウェスティングハウスにとっても打撃になるだろう。

ワシントンで「憂慮する科学者同盟」グローバル安全保障プログラムの上席科学者を務めるエドウィン・ライマン(Edwin Lyman)は、「サマー・プロジェクトの頓挫は、教訓と捉えるべきです」と述べた。彼は、新型炉が厳格な安全基準遵守を確保するためには、まだ数十億ドル規模の資金が必要になるという。「核産業が新しい核発電テクノロジーの開発には近道がないと認識しなければ、この失敗を繰り返す運命になるでしょう」と、彼は語った。

全米各地の核発電所は、安価な天然ガスによる火力発電を相手にした競争で苦戦している。サンティー・クーパーのCEO、ロニー・カーター(Lonnie Carter)は米国政府にエネルギー投資を要請し、低迷した電力需要が再び上向きになれば、国家が無防備状態に陥りかねないと指摘した。

カーターは、期待が大きく膨らんでいたテスラ社(Tesla Inc)の電気自動車モデル3の公開が始まったことを念頭に置いて、「誰も彼も電動車両にプラグを差し込むようになったら、どうなりますか?」といった。

スキャナ株は731日、4.44パーセント上昇した。今年の株価は約14パーセント下落した。

サザン社の株価は0.6パーセント上昇した。

スキャナとサンティー・クーパーは、相場上昇分の一部を放棄された反応炉の資金調達のために償還する企てに対して防衛しなければならなくなるかもしれない。

サウスカロライナ電力&ガス社(SCE&G)はVCサマー発電所の資金手当分として9件の料金引き上げを顧客に押しつけた。サンティー・クーパーは9件の料金引き上げに踏み切り、あと2件が承認待ちである。

 (Additional reporting by Scott DiSavino in New York; writing by Tom Hals in Wilmington, Delaware; Editing by Diane Craft and Cynthia Osterman)

【クレジット】

Reuters, “UPDATE 3-Utilities ditch reactors that launched US nuclear renaissance,” by Harriet McLeod, posted on July 31, 2017 at;

【関連報道】

日刊工業新聞ニュースイッチ 20170212
超過コストをすべて負担する「固定価格オプション」はなぜ生まれた?
米スキャナ電力のVCサマー発電所
東芝が米原子力発電事業で7000億円規模の損失を計上する可能性が高まった。何が要因となったのか。関連資料を探ると、建設プロジェクトのコスト超過分を東芝側が負担する「固定価格オプション」というキーワードが浮かび上がる。また足元では工事の遅延リスクが顕在化しておりコストは上昇傾向にある。固定価格オプション、コスト増という二重苦で東芝側の負担が膨張していく構図が鮮明化している。

日本経済新聞 20178月1日

【ニューヨーク=稲井創一】米電力会社スキャナ・コーポレーションは31日、サウスカロライナ州で米原発大手ウエスチングハウス(WH)が建設を担っていた原発2基の建設を断念すると発表した。従来想定より建設コストが大幅に膨らむ見通しとなり、異例の建設途中での中止に踏みきる。WHにとって原発ビジネスの機会損失となり、経営再建に向けての足かせとなりかねない。

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