トリシティ・ヘラルド紙
[訳注]トリシティズ(Tri-Cities)とは、米国ワシントン州ハンフォード核保留区の後背地に位置する3自治体、ケニウィック、パスコ、リッチランドを中心とする広域都市圏。人口は2010年国勢調査で253,540人。
連邦政府、ハンフォード疾病作業員救済州法を提訴すると脅迫
アネッテ・キャリー ANNETTE CARY
2018年11月28日
2018年に制定された州法は、ハンフォード作業員らが申し立てる幅広い疾病について、首尾よく承認されるようになることを目指していた。
作業員らが救済申し立て手続きを取るさい、その疾患が――呼吸器科や神経科の病気、あるいは多発性の癌であれ――核保留区で働いたことが原因であると証明することが不要になった。
司法省がジェイ・インスリー知事宛てに送付した書簡によれば、連邦政府をじかに規制することになる新法は、合衆国憲法の優越条項を侵害するという。
州法はまた、連邦政府に対して州内の他の団体とは違った基準を適用しており、これは差別であると司法省は主張する。
ワシントン州労働産業省に承認された申し立てにもとづいて、病気になった作業員の医療費と逸失賃金が補償されることになる可能性があるので、エネルギー省は作業員賠償請求に備えて自家保険*をかけている。
*[訳注]行政や企業などの経済体が不測の事態を想定して準備金を用意しておくこと。
司法省は、事態が訴訟なしに解消しないようでは、週末までにワシントン州に対して提訴に踏み切る意向であると明言した。
司法省はワシントン州に対して、病気になったハンフォード作業員向けの州政府労働者補償プログラムの拡大を阻止するために提訴すると脅迫している。
労働産業省のティム・チャーチ広報官は、同省が州司法長官室と連携して、連邦司法省の主張を聴取する意志があると同省に告知したといった。
州政府のボブ・ファーガソン司法長官は、「司法省が法廷でこの法律に異議を申し立てるとすれば、わたくしは同法を弁護するのを楽しみにしております。ハンフォード作業員たちは危険な作業でこうむった健康問題の補償を受けて当然です」と声明で発言した。
司法長官室は、ファーガソンの指揮のもと、司法省を相手にした裁判沙汰で負け知らずであり、州法が維持される自信があるとファーガソンは明言した
作業員らとその家族は2018年の法律制定のまえ、ハンフォード作業員が賠償を申し立てても、却下されるのが通例であると証言した。
作業員支援団体、ハンフォード・チャレンジによれば、新法が採択されるまでは、ハンフォード作業員の申し立てが却下される確率は、州に対するその他の申し立てに比べて5倍だった。
新法が発効した6月以来、83件の申し立てが見直された。労働産業省によれば、そのうち、28件が認可、6件が却下され、残りは保留されている。
ハンフォード・チャレンジは、却下に異議を唱える作業員らが攻撃的なエネルギー省の法的戦術で迎え撃たれ、補償措置はエネルギー省による干渉の余地を備えているという。
ハンフォード・チャレンジと配管工労働組合598支部は、新法支持を要請するインスリー知事宛て書簡を発送した。
エネルギー省提供
その書簡には、同法が憲法に違反するものではなく、むしろ「ハンフォード浄化事業にともなう危険に対する不適正な措置に関する文書化された歴史および作業員らの賠償請求にいたるその結果に対処する適正な反応」であると記されていた。
同書簡にはまた、新法には「雇用の結果として、衰弱するのみではなく、死亡したり、病気になったりしたまま放置されるハンフォード作業員らが直面する現実的な問題に対処する」方策が備わっているとも記されていた。
ワシントン州の消防隊員らもまた、労働災害賠償申請の要件を緩和した。
両方の事例とも、病気の原因になった可能性のある化学被曝を特定するのが困難であるかもしれない。
しかし、法定化された法案に対する産業界と保険業界の批判派は、立法議員らの面前で、ハンフォード法案は消防隊員保護法案に比べて大幅に救済対象が広範にわたると論じたてた。
ある議会職員の報告によれば、批判派は、ハンフォード法案を「適用範囲の広がりと包括性には息を呑むようだ」と評したという。
職員の反対論概要報告には、「同法案は、条件と特定クラス作業員や被曝の関連性をまったく考慮に入れていない」と記されていた。
引退予定のラリー・ハラー議員(共和党・リッチランド選挙区)が主導した法案は、発症原因がハンフォード作業であると立証する責任を作業員からエネルギー省に転嫁する。
申し立てをつかさどる州労働産業省は今や、対象疾病がハンフォードにおける化学・放射能被曝の結果であるとみなさなければならなくなった。
エネルギー省は、喫煙、生活習慣、遺伝要因、体質、あるいは他の仕事か家庭内における毒性物質被曝など、他の発症原因を明かす証拠をあげて、対抗するかもしれない。
緩和された賠償基準は、核保留区にたくさんある区域で8時間労働にほんの1日就役しただけであっても、いかなる作業員にも適用される。
1518
平方キロの敷地における適用区域には、第二次世界大戦中や冷戦中の国家核兵器計画に向けてプルトニウムが製造されていた区域が含まれる。
それにはまた、低レベル放射性または危険化学廃棄物のための中央ハンフォード埋立地など、廃棄物が最終処分向けに処理することができるようになるまで保管されている区域、それに環境除染と関連する区域も含まれる。
賠償申請の提出を志望する現役作業員または元作業員は、リッチランド120番街、ブラドリー・ビル309号、ハンフォード労働力雇用センターにて、無料の支援を受けることができる。電話番号は、509-376-4932。
Annette Cary: 509-582-1533; @HanfordNews
【クレジット】
The
Tri-City Herald, “Feds threaten to sue over law to help sick Hanford workers,”
by Annette Cary, published on November 28, 2018 at https://www.tri-cityherald.com/news/local/hanford/article222309350.html
0 件のコメント:
コメントを投稿