2012年12月30日日曜日

宗教者の皆さん、そしてこころある皆さん、「#ふくしま集団疎開裁判」にあなたの声を

2012年11月26日、仙台高裁へ向かう

日本の宗教者の皆さん、そして全国のこころある皆さん
未曾有の原発震災から1年9か月が過ぎました。福島は、放射性物質という見えない極小の微粒子爆弾が、生活の場、家の外壁に、庭に、道に、田畑 に、川に、山に、公園に、バラまかれ、いのちといういのちにその「破壊力」を行使する大地となりました。さまざまな放射性核種からは、止むことなく細胞を切る放射線が発せられ、未来の永きにわたって、それが生活の場に存在するのです。それはまさに目に見えない弾の飛び交う「戦場」と呼ぶにふさわしいものです。
そこに1年と9か月、子どもたちは放置されています。成長しようとする細胞を、その破壊しようとする力が24時間貫いていることを想像してください。細胞の遺伝子が切断され、そのたびに体は懸命に修復しようとしては、再び切断されるのです。そのような破壊が何度も繰り返されれば、いのちの力はその働きを全うできるでしょうか? 成長しようとする力は、誤って修復された遺伝子を増殖してしまうこともあるのです。さまざまな意味で子どもの背負うリスクは大人の100倍ともいわれています。いわば子どもに集中して当たる機関銃の見えない弾丸が飛び交う真っ只中に子どもを置いているということです。大人なら誰も見過ごすことはできないでしょう。ソ連では強制移住となった汚染レベルの土地に、日本の子どもが放置されているのです。子どもたちの修復力はもはや限界にきています。これ以上放置すればどのようなことになるか、チェルノブイリの子どもたちが、そのいのちで教えてくれています。
ところが、そのチェルノブイリ以上のことが福島では起きる可能性があるのです。福島県は実施した甲状腺検査で、4万2千人の子どものうち、6~10歳の女子の54.1%、11~15歳の女子の55.3%に「のう胞」または「結節」が、男女合わせた全体でも44%に「のう胞」または「結節」が見つかったと911日に発表しました(資料1)。この数値がいかに異常なものであるか、放射線に詳しい世界の医師、学者が驚き、警告し、そしてそれが大きな報道にならないということが大変な驚きである、という強い指摘をしています。知らないあいだに、大変な事態が進行しつつあるのではないでしょうか・・・。
振り返り私たちは、広島長崎で、原爆投下後に降った「黒い雨」(放射性物質がたくさん含まれた真っ黒な雨)に当たった日本の子どもたちが、どのような苦しい人生を歩んだのかを知らねばなりませんでした。放射線の害は、その時から一貫して世界の大きな力によって隠されてきました。広島長崎原 爆の被害者は、GHQによって治療されることなく症状の経過を調査され、その上その病状を人に言うことを禁じられました。医者も、治療及びその因果関係を研究したりすることを禁じられました。そして「核の平和利用」原子力発電が怒涛のごとく推進されました。原発労働に伴う被曝も、原発立地での放射能漏れなども、大きな問題にされずにきました。それがまさしく今の福島の現状につながっているのです。
今再び世界の大きな力の思惑どおり、放射能汚染の現実に目をつむればどのようなことになるか。未来へ果てしなく続く惨禍を、子どもたちに刻み続けるのではないでしょうか? 福島の子どもたちをそのまま放置するということは、日本中の子どもたちをやがてそうすることでもあります。放射能の危険性がきちんと認識されなければ、空気はもちろん、食べ物、建材、肥料・・・などを通じて、どんどん拡散させていってしまうからです。
私たちは、私たちの国が戦時中したように、安全な地へ、危機に瀕している子どもたちを、集団で疎開させてほしいとこころから望みます。個この避難は、大変厳しく高いハードルがあります。親の経済的問題はもちろん、子どもにとって友達と別れる悲しみ、友達を置いていったことの罪の意識、新しい土地でのストレス、経験を共有できない孤独感、そして中には差別されることも・・・。それが幼い身にどれほど過酷であるか、想像していただきたいのです。なにより、避難できる子とできない子、というものがあってはならないはずです。
放射線管理区域には、人は無用に立ち入ってはいけない、ましてやその中で暮らしてはいけないと、この国の法律で定められています。放射線管理区域とは身近には病院のレントゲン室で、空間線量が0.6μSv/h以上である場所です。福島にはそのような場所は無数にあります(資料2)。即刻そこから子どもたちを出さなければならないのです。であるにかかわらず、国は「緊急事態宣言」の中、放射線の基準値を20倍に上げ、人々を逃がすことをしませんでした。
しかしその「緊急事態宣言」はいつ終わるのでしょうか? 福島第一原発からは未だ毎時1000万ベクレルの放射能が漏れ出ているそうです。これ以上 累積する被曝を子どもたちに強要して良い訳はありません。せめて除染の目処が立つまで、原発の収束が進むまで、何らかの形で集団避難させていただきたいと切望いたします。
私たちは14人の子どもたちと親を原告とし、2011年6月24日、福島地方裁判所郡山支部に、原発事故からの被ばくから守るため、子どもたちに対する 「1ミリシーベルト/年以下の安全な場所での教育活動の実施」を求める仮処分の申し立て、つまり実質的には危険な地域にある小中学校などの集団疎 開を求める、通称「ふくしま集団疎開仮処分」を提起しました(資料3)。福島地裁郡山支部では数回の審尋を経て、昨年12月16日、奇しくも当時 の野田佳彦総理大臣が福島第一原発事故の「収束」を宣言したのと同じ日に却下の判決が下されました。私たちはこれを大変不当な判決だと考え(資料4)、上級裁判所に即時抗告を行ない、これまでに仙台高裁の公告審で2回の審尋が行われ、3回目が1月21日の予定になっています。
裁判所の判断には世論の後押しが大変重要です。私たちは提訴以来、琉球大学の矢ヶ崎克馬名誉教授や北海道深川市立病院の松崎道幸内科部長等の先生方に科学的な意見書の提出をお願いするとともに、様々な情報の拡散を努力してまいりました。多くの方々の賛同を得、集団疎開民衆法定を開催し、集団疎開の即時実現を求める緊急署名を22886筆裁判所に提出、毎週金曜日に文科省前でアピールし、全国、世界へ向けて映像配信し、10月30日にはジュネーブで開かれた国連人権理事会へ子どもたちの窮状を訴えてきました(資料5)。その結果《放射能の危険から福島の人々の命と健康に関する権利を守るために 必要なあらゆる措置を取ること(略)》という日本政府への勧告、調査がなされ、より具体的な声明が発表されました(資料6)。
そしてこの度、日本の宗教者の皆さん、そしてすべてのこころある皆さんへこういった事実を伝えようと、お手紙を書かせていただきました。何とぞ福島をはじめとする各地の放射能汚染地域に生きる子どもたちのことを知っていただき、周りの方々へお伝えいただきたいと存じます。そして、できることなら1月21日までに何らかの形 で声を上げていただけないでしょうか? 宗教者の皆さん、こころある皆さんの声こそが、3.11以降、混乱した社会のあちらこちらにうずくまる立場弱き人々が、待ち望んでいるものであると確信します。私たちの社会が、これからどうあるべきなのか、私たちはどう生きればいいのか、頼りにしていたものは全て消え失せたような心寒さの中、いのちに寄り添う宗教者、こころある方がたの言葉を聞かせていただきたい、と切に願う次第であります。



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