2012年12月6日木曜日

#ICRP #WG84 報告を読む「4.内部被曝の重要性を評価すること」


ICRP ref 4832-8604-9553
2012
1122
ICRP放射線防護システムに照らして
日本における原子力発電所事故に学ぶ
初期段階の教訓に関する第84作業部会の報告
4.内部被曝の重要性を評価すること
内部被曝、つまり体内に取り込まれた放射性核種による放射線被曝は、日本の国民やメディア、それに科学界の一部において、論争の種であってきた。所与の(器官または実効)線量において、内部被曝は外部線源からの同等の被曝よりも危険であると受け取られているように見受ける。
放射線リスクは受ける線量によって決まるのであり、その線量が体の外部と内部のどちらから照射されているのかには左右されないことには有無を言わさない科学的な証拠があるが、メディアや国民はたいがいこれを無視している。ICPRは、ある一定の放射線量について、照射が体の外部からか内部からかにかかわりなく同じ放射線リスクを予想できると考える。線量が同じ場合、ICRP防護システムは、内部被曝のほうが外部被曝よりも控えめであるとする。前者の場合、じっさいに被曝した線量というよりも、実効的な線量に限定されるからである。
【勧告】
放射性核種の体内取り込みによる潜在的障害は適正に解釈されること。
【用語検索】
放射線源が人間の身体内部に存在することに起因する被ばく内部被ばくと呼ぶ。これは、放射性物質を含む空気、水、食物などを摂取することにより放射性物質が体内に取り込まれることによって起こる。放射性物質が体内に取り込まれるときの経路には、(a経口摂取、(b吸入摂取、(c)経皮吸収の3通りがある。日常の生活の中で受けている内部被ばくの大部分は自然放射線源によるものである。
人体が放射線にさら(曝)されることを「被ばく(被曝)」という。「被ばく」は、放射線源がどこにあるのかによって分けられ、放射線源が身体の外部にあり体外から被ばくする場合を「外部被ばく」、放射線源が身体の内部にあり体内から被ばくする場合を「内部被ばく」と呼ぶ。人間の生活環境中には、自然放射線宇宙線及び天然放射性核種に起因するもの)と人工放射線(フォールアウト原子力施設などの人間の活動に起因するもの)とが存在するが、一般公衆の生活環境中における外部被ばく線量の大半は自然放射線によるものである。
    ウィキペディア < 被曝
内部被曝の危険性 [編集]
同一の放射性物質からの放射線に被曝する場合でも、外部被曝より内部被曝の方が危険な場合がある[26]アルファ線は体外からの照射では、その大部分は皮膚の内側に達することはないが、体内にアルファ線を出す放射性物質が入ると、その周囲の細胞が照射されるため組織や器官の受ける放射線の量が大きく異なる[27]。透過力の弱いベータ線とエネルギーの低いガンマ線を出す放射性物質も外部被曝では影響を与える程ではないが体内にある場合の影響は大きくなる[26]
電離放射線と物質との相互作用を表した図 (;粒子線、~;電磁波、;電離作用)

荷電粒子(α粒子,β粒子)が物に衝突すると電離が起こる。β粒子では粒子の減速に伴って電磁波の放射(制動放射)が起こる。これらの荷電粒子は物質中の電子と直接的に電磁相互作用を起こすため、電離作用が大きい。一方、γ(電磁波)や中性子線(中性子の流れ)は電荷を持たないため、荷電粒子よりも電離作用は小さいが、貫通力は大きい。中性子は水素などの軽元素と衝突すると反跳陽子(図中の赤丸)を生じ、この陽子が電離作用を持つ。また中性子捕獲が起きた場合には光子が放出される。
【訳者によるコメント】
福島県立医科大学副学長・県民健康調査検討委員会座長、山下俊一氏は、福島県広報『ゆめだより』201110月(P.67)所収の特集②インタビュー「放射線と私たちの健康」で、「この『シーベルト』の数値が同じであれば、外部被ばくであっても内部被ばくであっても人体への影響は同じものです」と断言しています。

訳者のような素人が考えても、透過力は弱いが破壊エネルギーの強大なアルファ線、透過力は抜群だが破壊エネルギーはそれほどではないガンマ線、その中間のベータ線それぞれの影響力の違いから、外部被曝と内部被曝がまったく別物であると類推できます。また、ペトカウ効果イスタンダー効果といった、観察つまり経験知にもとづく理論も提示されています。
異説を検証することもなく、「放射線リスクは受ける線量によって決まるのであり、その線量が体の外部と内部のどちらから照射されているのかには左右されない」と断言できるのは、どのような類の科学なのでしょうか。「有無を言わさない科学的な証拠がある」といわれても、ハッ、ハ~と平伏するのが一般人の正しい態度なのでしょうか。
「科学的な証拠がある」というなら、わたしたち下々にも納得できるように、それを説明してもらいたいものです。
後段の「線量が同じ場合、ICRP防護システムは、内部被曝のほうが外部被曝よりも控えめであるとする。前者の場合、じっさいに被曝した線量というよりも、実効的な線量に限定されるからである」の文意には、訳者はまったくお手上げというしかありません。
勧告にいう「放射性核種の体内取り込みによる潜在的障害は適正に解釈されること」が、「放射性物質の体内摂取は恐れるに足りない。正しく怖がりましょう」のいうドグマを意味するなら、ICRPは罪深いといわねばなりません。
【参照記事】

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