2012年9月22日土曜日

メッセージ「植物のセックスの覗き見で教えられたこと」


#ふくしま集団疎開裁判 #東京アクション
2012
921日(金)連続抗議集会メッセージ
「ふくしま集団疎開裁判の会」会員
筑波大学元教授・茨城県土浦市在住
生井兵治(なまい・ひょうじ
植物の性(セックス)の覗き見で教えられたこと
 お集まりの皆さん。どうもご苦労様です。
 私は、二〇〇一年三月まで40年間以上、植物の遺伝学や生態学や生殖学――平たくいえば、植物のエッチ(H)の総合的研究――をつづけたH爺さんです。
この間、植物たちの性(セックス)の覗き見をさせてもらいながら、たくさんのことを教えられました。
その第一は、植物たちのH行動がとても積極的で動的で、環境の影響を強く受けながら、多様に変動するということです。大地に根を張り移動できない植物たちのセックスの在り様(ありよう)は、どうにかして子孫(種子=たね)を残そうと、「所変われば品代わる」の諺(ことわざ)以上に、その場の様子次第で多様に変動します。
一例を示せば、生育環境があまり良くないダイコンの花の雌しべに、この花の花粉とキャベツの花粉を混ぜて受粉すると、花粉の混ざり具合次第で、ダイコンとキャベツの雑種種子が混ざって得られます。自然界には、ダイコンとキャベツの雑種植物はありませんが……。
しかし、ハクサイのご先祖とキャベツのご先祖の雑種・セイヨウナタネがあります。かつて、地中海の西岸で、比喩的にいえば、ハクサイとキャベツのご先祖たちの道ならぬ恋により雑種が自然にできました。きっと、ダイコンとキャベツの混ぜこぜ花粉の受粉実験と同じことが、地中海の西岸で昔起ったのでしょう。
植物たちが教えてくれたこのように動的な変動性は、学校教育が教える機械論的な生命観――遺伝子組換え(GM)技術を頂点とするバイテクの基礎――が、根本的に間違っていることを如実に示しています。私はこのことを、「あご・ほっぺ理論」と名付けて理論化しました。
現在、カナダから大量に輸入される遺伝子組換え(GM)カノーラは、ハクサイとキャベツのご先祖たちの道ならぬ恋の結果生まれたセイヨウナタネの末裔(まつえい)です。ただし、ただの末裔ではなく、機械論的なGM技術で無理やり改変されたGM植物ですから、問題です。
詳細は、時間が無くて語れませんが……。
さて、私は植物のHの研究をしながら、生命(生き物)の進化とヒトの在り方を、ずっと学び考えてきました。
一九六〇~七〇年代、植物遺伝学の世界では、どんなに低線量の放射線でも外部被曝の線量に応じて突然変異を起こすことは明らかでした。また、植物が気孔(空気の出し入れの孔で、葉っぱに多い)から空気と一緒に取り込む放射性物質による低線量の内部被曝でも、被曝線量に応じて突然変異が起きることも明らかでした。国内外のムラサキツユクサ等の研究論文によってです。
低線量被曝による突然変異や後代への遺伝的影響は、植物では早くから周知の事実でした。
放射線被曝の障害発現の様子も固定的ではなく、状況次第で容易に変動します。しかも、植物で見られる現象は、ヒトを含む動物でも見られます。生命の「からくり」は、微生物でも植物でも動物でも基本は同じで、分裂の盛んな細胞ほど放射線障害を受けやすいからです。
だから、三・一一以後、35%もの子どもたちの甲状腺に大きなしこりやのう胞が見つかっても、「チェルノブイリ原発事故では4、5年後に現れた」と平然と述べる福島県当局(山下俊一福島県立医大副学長を含む)は、誤った機械論に立ち、子どもたちの命を動的に見ません。万一、チェルノブイリでは発症が4、5年後だったとしても、福島も同じとは限りません。もっといえば、三・一一以前の山下氏は、チェルノブイリ原発事故で早期に甲状腺障害が出ることを正式に発表していたのです。
ふくしま集団疎開裁判に思を馳せ、チェルノブイリ原発事故と対比すれば、強制移住地域相当の郡山市の子どもたちを、意図的ともいえる行政の無為無策により、高線量の市内に留め置くことを、私は断じて許せません。
皆さん。ご一緒に仙台高裁と野田首相に強く働きかけましょう。もう、許せないノダ。
【リンク】
生井兵治 (POKOJICHAN) on Twitter
生態学・進化学・遺伝学・育種学が身に染みた爺さん。3.11で先鋭化した国の「大本営発表」体質と関連学会等々の「大政翼賛」体質に怒り。放射能関係の共著2種。日本科学者会議編『放射能からいのちとくらしを守る』(2012年5月、本の泉社)。歴教協編『中・高生と学ぶ 福島原発事故と放射能Q&A』(2012年6月、平和文化)。


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