2014年9月2日火曜日

タイム誌【フォト・エッセイ】フクシマ、死の原子炉のなかを覗きみる

 2014821
ハンナ・ビーチ Hannah Beech
フクシマ、死の原子炉のなかを覗きみる
See Inside Fukushima’s Lethal Reactor
タイム誌のためにドミニク・ナール撮影。
カメラマン、ドミニク・ナールは2011年の津波襲来時以来、フクシマを記録してきた。2014年、大熊町。12号炉中央制御室の内部。両炉ともに過熱し、メルトダウンにいたった。1号炉のメルトダウンはやがて水素爆発を誘発し、大量の放射性物質を大気中に放出した。
(訳注:原文サイト、写真39枚のスライドショーの1枚目)
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カメラマン、ドミニク・ナールは地震と津波が日本の北東部を打ちのめした2011311日の2日後、非常に小さな車で東北のいなかをうろつきまわるタイム誌取材班に参加しました。スイスで生まれ、香港で成長したドミニクは、背の低い男ではありません。でも、その痩せ気味の体を、ガソリンの5ガロン缶、携帯コンロ、何本もの飲用水、わたしが糧食用に詰めこんだ食品の山のあいだに、何とかねじ込みました。
わたしたちは、岩手、宮城、福島各県の農漁村を水没させ、2万人近くの死亡者を出した死の波を取材しにきました。だが、天災はたちまち、人工の危機のシュールレアルな様相を呈することになりました。老朽化した福島第一原子力発電所は、海岸線に立地しており、津波が殺到して、冷却システムを動かすのに必要な電源を喪失しました。原子炉3基の炉心が過熱し、メルトダウンして、放射能の雲を大気中に吐き出しました。

他社の取材班はその地域から撤退していましたが、わたしたちは毎日、損傷した原発のどこまで近くに迫る意志があるのか、検討していました。放射能は目に見えず、わたしたちは向こう見ずにはなりたくありませんでした。ドミニクは自分の個人線量を記録したくて、最終的に線量計――キリル文字表示がもうひとつの核災害、チェルノブイリを思い起こさせる製品――を購入しました。わたしたちはヨウ素が危険で目に見えない粒子に対抗するように願いつつ、海草の乾物を食べました。

(訳注:原文サイトにビデオ)

月日がたちました。福島第一原発から放射能がいまだに漏れており、原発事業者、東京電力株式会社の哀れさがさらになお明らかになっているのに、世界のメディアは、次の自然災害、次の大スキャンダルへと関心を移しました。だが、ドミニクは福島へ通いつづけました。彼は今年だけでも4か月かけて、20113月の悲劇から3年半以上、地域を包みこんでいる恐怖と不確実性の空気を記録しました。
なくなることのない放射能のため、125000人ばかりの人びとが故郷に戻れず、その一部はアルミ外装の仮設住宅――実を言えば、小屋――で暮らすことを余儀なくされています。グラウンド・ゼロでは、核作業員らが絞めつける防護服とガスマスクで身を包み、原発解体と放射性物質放出の封じ込めのために苦闘しています。ドミニクとわたしは今年の夏の23時間、勇をふるって、この装備を着用してみましたが、これほどの短時間の挑戦でクタクタになってしまいました。「わたしは、この人々が心身両面で耐えていることを記録する責任があると感じています」と、カメラマンはいいます。「人に取り付いて、いつまでも離れない恐怖と不安があります。わたしの目の前で、人びとが時おり、完全な感情の破綻を見せてしまうこともあります。最もひどく被災した人びとの精神を擦り減らすものは、不可視の危険性と透明性の欠如がもたらす得体の知れなさです」
ドミニクは、ある晩、福島市内の家族とご一緒していたとき、警報サイレンが鳴って、ビックリしました。外に駆け出してみると、甘ったるいガスの匂いがしました。近くの家屋に消防士たちが踏みこむと、自殺する前にドアを鎖で閉ざした男を発見しました。その死亡者は福島地区でパートタイムの除染作業員をしていました。「わたしと同じ歳でした」とドミニクは振り返りました。
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ドミニク・ナールはタイム誌契約カメラマン。
Dominic Nahr is a TIME contract photographer. LightBox previously featured Nahr’s work on Somalia in Transition.
ハンナ・ビーチはタイム誌中国局長、東アジア特派員。
Hannah Beech
 is TIME’s China bureau chief and East Asia correspondent. Read her full story on the aftermath of the Fukushima disaster on TIME.com
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