2017年1月18日水曜日

アジアン・サイエンティスト/東京大学「福島から首都圏へ放射性物質を運んだ風」


夜間局地風が福島の放射能を東京に運んだ

2011年福島第一核発電所事故のあと、夜間に吹く局地風が放射性物質を福島から東京へと運んだ。

AsianScientist Newsroom | 2017117 | In the Lab


アジアン・サイエンティスト【2017117日付け】福島第一核発電所事故による放射性物質が東京首都圏に運ばれたのは、夜間の局地風のせいだった。東京大学の研究者らによるこのような知見がサイエンティフィック・リポーツで公開された。

吉兼隆生特任研究員、芳村圭准教授が率いる研究チームは観測データを解析し、コンピュータ・シミュレーションを動かして、放射能プルームが運ばれたのは、偶発的な空気の動きによるものなのか、定常的な大気中のメカニズムによるものかを判定した。

研究チームは、北西からの季節風と低気圧領域の影響が弱まる穏やかな日々の夜に現れる局地風系に乗って、放射能プルームが移動することを突き止めた。このような夜間の局地風は、上層の暖気と下層の冷気を生む南北間の温度差によって形成されていた。

この知見は、放射性物質が長期にわたって放出される場合、遠く離れた場所であっても、そのような夜間の局地風系によって、放射能プルームが頻繁に運びこまれ、そのような地域に深刻な汚染を起こすことを示している。

その一方、風の周期を知ることによって、いつ、どこに、どのようにして、放射能プルームが移動するのかを大雑把に予測することができることをデータが示している。今回の研究結果は、放射線被曝を避けるための避難場所を探すときに役立つと判明するかもしれない。吉兼は次のように語った――

「想定外の事態であっても、冷静かつ迅速に対処できるよう危機管理の強化が求められています。実際の避難では、地理的特性や交通事情などの地域特有の問題を考慮する必要があります。

「今後は、他分野や行政、地方自治体関係者の方々と連携し、研究をさらに発展させ、危機管理の強化に貢献できればと願っています」


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出処:東京大学「福島から首都圏へ放射性物質を運んだ風」。画像:吉兼隆生。
免責事項:この記事はアジアン・サイエンティスト誌またはその職員の見解を反映していません。


【クレジット】

Asian Scientist Magazine, “Local Winds Brought Radioactive Materials From Fukushima To Tokyo,” posted on January 17, 2017 at;


【訳注】

アジアン・サイエンティスト誌は、2011年初頭に創刊されたオンライン雑誌。本社はシンガポール籍、20141月に印刷版を創刊。

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