2017年12月30日土曜日

#英紙ガーディアン【柏崎刈羽】世界最大の原発を再稼働する東電の計画:#フクシマ☢惨事再現の恐れ



フクシマ核惨事再現の恐れ

巨大な柏崎刈羽原子力発電所の反応炉の現役復帰が承認されたが、日本国民は活断層の存在と企業の不始末を危惧している

施設内の模擬中央制御室の機器をチェックする東京電力職員。撮影:ガーディアン紙、ジャスティン・マッカリー

ジャスティン・マッカリー【柏崎発】
Justin McCurry in Kashiwazaki
20171228

ただひとつの構築施設が地域社会の性格を決めかねないとすれば、それは柏崎市とその隣接自治体、刈羽村の住民、計90,000人にとって、40年以上にわたり海岸景観を圧倒してきた姿で大きく広がった原子力発電所である。

柏崎刈羽原発は反応炉7基がすべて稼働していれば、820万キロワットの電力――1600万世帯分の供給量――を生産する。同原発は日本海沿岸地帯に敷地4.2平方キロを占めており、世界最大の原子力発電所である。

だが、目下のところ、柏崎刈羽原発の反応炉は稼働していない。東京から北西225キロ、新潟県の同原発は、20113月、福島第一原発の反応炉3基メルトダウン後の全国的な原発停止において、核産業のなかで最も注目を集める槍玉だった。

最悪事態の渦中にある企業は、破局的事態を防げなかった失策、何万人もの避難住民に対する同社の処遇、原発事故現場の混乱状態を収束するさいの同社の場当たり的な対応策のせいで、怒りを招くことになった。

そのようなありさまの企業、東京電力が目下、3か所ある同社の原発のうちのひとつ、柏崎刈羽原発の反応炉2基の再稼働を推進して、フクシマの悪魔祓いを図っている。福島第一原発を解体するための資金を賄うための利益を得て、メルトダウン事故後に失った社会の信頼を回復するためには、それが唯一の方法だと同社はいう。

日本の原子力規制委員会は今週、東京電力に対し、柏崎刈羽原発6、7号炉――メルトダウン事故を起こした福島第一原発反応炉と同じ沸騰水型軽水炉――の再稼働を公的に認可した。

原子力規制委員会は1か月のパブリックヒアリング期間をへて、東京電力が原子力発電所の操業に適格であると結論づけ、2011年の原発事故後に導入された、より厳格な安全基準に反応炉2基が適合していると述べた。

東京電力は原子力委員会決定の直前、ガーディアン紙に対し、同社が世界で最も安全な原子力発電所になると自慢する施設の独占取材に招待した。

柏崎刈羽原発はいま、日本の北東沿岸部に広範な破壊をもたらした三重災害の当日と同じように、稼働中の原子力発電所の趣である。フクシマ後の安全基準に適合するため、推定6800億円かかった改修の背後に、1,000人強の東電職員および5,000ないし6,000人の下請け労働者がマンパワーを供していた。

日本海を遠景に望む柏崎刈羽原子力発電所。撮影:ガーディアン紙、ジャスティン・マッカリー

彼らは高さ15メートルの防波堤を建造し、東京電力によれば、それは最大の津波に対抗できるという。メルトダウン事象に際して、特別排気装置が大気中に放出される放射性粒子の99.9%を捕捉し、溶融物遮蔽装置が溶融燃料の反応炉格納容器貫通を防ぐ。自己触媒反応再結合器が設置され、福島第一原発の反応炉4基を揺さぶった水素爆発の再現を防ぐ。

この大きく広がる複合施設の別の場所に、大群の緊急車両、放水車、予備発電機が配置され、丘の上の溜池に20,000トンの水が蓄えられて、破局的なメルトダウン事象となれば、反応炉冷却用に汲みあげられる。

柏崎刈羽原子力発電所の設楽親(したら・ちかし)所長は、次のように述べた――

「わたしどもはフクシマ事故に責任を負う事業者として、教訓を肝に銘じ、なにが悪かったか再検討し、ここ柏崎刈羽で学んだことを実行に移すことに専心しております。わたしどもは休むことなく安全性を向上させる方法を考えています。

「わたしどもにはフクシマの経験がありますので、同じ過ちを繰り返さない――安全体制をさらに強化する――ことに尽力しております。これこそ、わたしどもが社会のみなさまにご説明しなければならないことです」

「ここは原子力発電所の適地ではありません」

だが、社会のみなさまは得心しているどころではない。新潟県民は昨年の知事選挙で反原発候補の米山隆一を選出し、電力会社の計画に反対を表した。出口調査によれば、投票者の73%が原発再稼働に反対であり、賛成はたかだか27%だった。

米山は2016年春に予定されている再稼働に関して、新たに設置された委員会がフクシマ核惨事の原因および影響を究明する報告を完成するまで――少なくとも3年はかかると思われる手続きが完了するまで――決定を差し控えると明言した。

多くの住民にとって、原発の位置のせいで、不相応に費用がかかる安全性向上策が必要になると思われる。元村議会議員で生涯にわたる反原発活動家、武本和幸は、「地質学的にいって、ここは原子力発電所の適地ではありません」という。

武本は、同地域の地下に存在する石油・ガス層を原因とする不安定性、それに東京電力の防波堤が建っている地表が大地震の勃発時に液状化しやすいことを示す証拠に言及する。

地元の反対派は、柏崎刈羽原発30キロ圏内の住民420,000人を避難させる企てが招きかねない混乱を指摘してきた。武本は、次のように付言した――

「これはフクシマ近辺の住民よりも大人数であり、おまけに当地は大変な豪雪地でもあり、全員を避難させるのは不可能になるでしょう。状況はフクシマより遥かに過酷なものになるでしょう」

こうした懸念事項に加えて、2007年に勃発したマグニチュード6.6の沖合地震のさい、小規模な被害ですんだ原発を支えた敷地の内外に走る地震断層の存在がある。2本の活断層――原子力規制委員会が過去400,000年のあいだに動いたと定義するもの――が1号炉の下を横断している。

だが、東京電力にとって、柏崎刈羽原発の反応炉2基を再稼働すれば、年間利益2000億円が見込まれ、原子力発電の再開は財務的必要性の問題だった

新潟県、柏崎刈羽原子力発電所の作業員ら。撮影:ガーディアン紙、ジャスティン・マッカリー

福島第一原発を解体し、近隣地域を除染し、メルトダウン事故で被災した住民に賠償する経費は、政府見の試算によれば、215000億円に達しかねない。この金額が、原発の運転停止で開いた穴を埋め合わせるために、高価な化石燃料を輸入する費用に上乗せされるのだ。

日本経済研究センターJCER)は今年はじめ、40年にわたるフクシマ浄化作業の――損壊反応炉3基の放射性廃棄物を処理するぶんを含めた――経費総額は50ないし70兆円の巨額に膨れあがるかもしれないと発表した。

設楽所長は、こういう――

「東京電力社長およびわたしどもの総合事業計画が明らかにしておりますが、当発電所の反応炉を再稼働することが、弊社にとって非常に重要なのです」

おまけに、エネルギー政策の中核に野心的な原子力発電の再開を据えている日本国総理大臣、安倍晋三にとって、賭けられているものは大きい。安倍政権は、2030年時点で原子力発電が日本の電力量の20%を担うこと――反応炉30基の再稼働が必要になる戦略――を望んでいる。

国内に48基ある運転可能な反応炉のうち、現在、4基だけが稼働している。他にも、フクシマ事故後に新たに導入された最も厳格な安全性試験に合格した反応炉は数基あるが、再稼働は地元住民の強力な反対に直面している。

再稼働に向けた手続きの一環として、柏崎刈羽原発の再稼働および原発運営者としての東京電力の適格性に関して、日本全国の人びとが先日、意見を表明する機会を与えられた。

柏崎刈羽原子力発電所・広報部の石川キヨトは、東京電力がフクシマ事故から教訓を学んだと主張し、次のように述べた――

3-11以前の弊社は思い上がり、安全性の向上を疎かにしました。地震が目覚まし時計になりました。弊社はいま、安全性の向上は絶え間なく継続するプロセスであると承知しております」

刈羽村の近藤ゆきこは東電の約束をバッサリ切り捨て、原発が恒久的に操業できない場合、国の支給金が打ち切られるとしても、それは、地元住民が心の平安を得ることができるなら、その代償にすぎないと述べ、次のようにいった――

「東京電力は2011年の事故を起こしましたので、この村で核反応炉を再稼働することに賛成するわけが、わたしにはありません。東京電力は福島第一原発が安全であるとわたしたちに言いつづけていました――そして、なにが起きたか、このザマです」

Topics; Japan

【クレジット】

The Guardian, “Fears of another Fukushima as Tepco plans to restart world's biggest nuclear plant,” by Justin McCurry, posted on December 28, 2017 at;

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