2012年6月16日土曜日

「日本で最も美しい村」長野県中川村:曽我逸郎村長のメッセージ

昨日のことです。Twitter で次のようにつぶやきました――

inoue toshio 子どもを守れ! ‏@yuima21c
日本国民が誇るべき長野県中川村・曽我逸郎村長;野田佳彦総理、橋下徹市長、へりくだりて学ぶべし!RT @pinpinkiri こんなすごい村長がいたとは http://bit.ly/LT7u17

すると、長野県大鹿村在住の友人からEメールでレスポンスがありました――


良い情報ありがとう!
この村長は隣村の村長で、私たちの企画する上映会(樋口健二さんの講演会などや、アースディ)にも参加してくれます。

がぜん、わたしの関心が深まり、中川村公式サイトで村長の発言を拝読した結果、とても鼓舞され、元気と勇気をいただいたので、当ブログで曽我逸郎村長のメッセージを本格的に紹介したくなりました。



信州伊那谷中川村
中川村は、長野県の南部、伊那谷のほぼ中央で上伊那郡の最南に位置します。昭和33年、古くは「天の中川」と呼ばれた天竜川を挟んで東側の南向村と西側の片桐村が合併してできた村で、天竜川を中心に結束する新しい村として中川村と命名されました。村は、蛇行する天竜川を挟んで、竜東南向地区と竜西片桐地区に分かれており、それぞれに特色のある顔をもっています。竜東地区においては、南北に伊那山地が走り複雑な地形を呈しており、傾斜地が多く果樹栽培が盛んに行われています。一方、竜西地区においては、段丘や扇状地上に平坦な農地が多く比較的規模の大きな農業経営が行われています。土地利用については、田6.4%、畑5.2%、山林75.3%であり、典型的な農山村です。村の基幹産業は、農業であり主作物は米、果実、野菜、栽培きのこ等です。

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東京新聞社会部から「脱原発首長会議」参加市町村長へのアンケート

東京新聞社会部から、「脱原発首長会議」参加の首長(=市町村長)向けのアンケートが届いた。
自由表記がほとんどで、字数制限もなく、いろいろ書いたので、こちらにも掲載する。
2012年6月15日 曽我逸郎
自治体名:(長野県上伊那郡)中川村 なかがわむら
首長名: 曽我逸郎 そが いつろう

1 最も近い原発
中部電力 浜岡原発 約100km

2 首長の連携が、国の政策決定に対して どれだけ政治的有効性を持つか
国政は、経済や安全保障や外交やさまざまなしがらみの中で舵取りしている。他方、基礎自治体は、住民の暮らしだけを基準に判断することができるし、そうすべきである。もし国が、他のしがらみのために、一部地域であれ住民の暮らしを犠牲にするようなことがあれば、基礎自治体は連帯して国に対して異議を申し立てねばならない。
だが、原発に関しては、距離が離れた自治体ほど不安・憂慮がひろく共有されている一方、原発膝元の自治体は、単純ではない。現に汚染を受け、心配・不安が沸騰しているところがある一方、不安は底流として住民の中に沈殿するのみで、交付金・雇用などさまざまな原発へのしがらみを持つ側が空気を強固に支配している市町村もある。つまり、原発については、膝元か遠方か、またそれぞれの状況によって自治体の反応は異なっており、一致した動きが取りにくい。
脱原発首長会議は、意識が高く、勇気のある首長が集まっている。しかし、それでも、今問題となっている大飯原発の再稼動について、統一して反対を表明できるかどうかは、個人的には微妙だと感じている。私自身は、すべての原発が停止している中、ひとつでも再稼動を許せば、なし崩し的に再稼動は増やされると考えるので、阻止すべきだと考えるが、「脱原発」をどんなタイムスケジュールで実現するか、「会議」参加の首長にもさまざまな考えがありそうだ。
野田首相は、まるで耳に栓をしているかのように馬耳東風で、原発であれTPPであれ消費税増税であれ、心配する声は耳に入らないかのように振舞っている。不安に答える姿勢がない。説得力のない発言を繰り返すのみで、会話が成立しない。しばしば無力感・絶望感に襲われる。
このような有様では、野田政権に申し入れて政策を変えさせることには望みがもてないが、「脱原発首長会議」など、あらゆる場を使って、しがらみに負けずに自由に考えを表明できる空気を創りだし、国民世論の勢いを高め、国の政策を国民の望むものにできるよう、頑張るしかない。

3 脱原発に向けた自治体での取り組み
節電。
ありがたいことに、中部電力では、過剰な節電要請をせずとも関西電力に電力支援をおこないつつ、この夏を乗り切れる、としている。
しかし、関西電力は、厳しいと言っている。中電エリアの我々としても、できる限り節電に努めることで、関電への支援が増やせ、大飯原発を再稼動しなくてすむ状況が作り出せるかもしれない。
再生可能エネルギー利用については、国などの制度を利用し、無理のない範囲で取り組むが、原発のない分、慌てて自然エネルギーに走るのではなく、まず、贅沢と便利さに浸りきった今の生活を見直し、省エネルギーに努めることが肝要だと思う。

脱原発の取り組みではないが、「日本で最も美しい村」連合の仲間である飯舘村の皆さんを、中川村有志が昨年夏、村の祭りに招待し、村も一部支援して、太鼓やヨサコイソーランなど交流が図られた。また、福島市の私立保育園連合への野菜等の支援要請を受け、村保育園保護者会などに呼びかけ、野菜・果物など3.4tを提供した。

4 首長個人としての脱原発への取り組み
以前、広告会社に勤めていた頃、電力会社の担当を命じられたが、原発推進を請け負わねばならないので、断ったことがある。それ以降は、格別な取り組みはしてこなかったが、特に中川村に移住して以降は、電力消費の少ない暮らしをしているとは思う。
東京電力福島原発の事故以降は、東京での反原発サウンドデモ、近隣駒ヶ根市のデモなどに参加。経産省前のテントも一度訪問した。講演会としては、報道写真家・樋口健二氏、飯舘村の酪農家・長谷川健一氏、京都大学原子炉実験所の小出裕章氏らを拝聴。
式典等の挨拶なども含め、あらゆる機会を捉えて、脱原発に言及するよう努めている。

5 「脱原発首長会議」参加の理由と地元の反応
被曝労働については、以前から耳にしていた。ウラン採掘現場、原発内労働、今回の福島の災害のような広い範囲の周辺地域、そして、数十万年先の人類・生態系にまで被曝の危険を押し付けている。そうまでして贅沢と便利さを享受する権利は我々にはない。経済的理由をあげて原発再稼動が主張されるが、道徳的理由により、原発は止めなければならない。
「日本で最も美しい村」連合の仲間である飯舘村の現状を知るにつけ、原発の不条理を痛感する。「までい」に丹精こめて積み上げてきた村づくりが、一日でダメにされた。小さな祠を守ってきた集落もばらばら、家族までもがばらばらに寸断された。受け継がれてきた歴史も文化も断ち切られた。
中川村でも、高齢化・後継者不足に悩みつつ、なんとか心豊かな暮らしが末永く村で持続させられるように努力を重ねているところだが、原発の事故ですべてを台無しにされてしまいかねない。そんなことは避けたい。
事故後の国の対応は経済や予算など自分達の都合を優先して、子どもたちを含め高濃度汚染地域に放置した。かつての満州や沖縄と同じ棄民政策である。
道徳的に原発は許されない。経済は理由にならない。

地元での反応については、周辺市町村などから共感の声を聞くことはしばしばあるが、村内からはさほど多くない。その点は、残念に思っている。
以上


中川村議会6月定例会で、高橋昭夫議員から、「国旗と国歌について村長の認識は」という一般質問を頂いた。
一問一答方式のため、受け答えはやりとりの流れに応じた“アドリブ”になっていき、正確に再現することは難しいので、頂いた通告と私の答弁原稿を以下に掲載する。

<一般質問通告>
小・中学校の入学式や、卒業式の席で、村長は(壇上に上る際、降りる際に)国旗に礼をされていないように思います。このことについて村長のお考えをお聞きしたい。

<答弁原稿>
たいへんありがたい質問を頂戴しました。ご質問の件については、村民の皆さん方の中にも、いろいろ想像して様々に解釈しておられる方がおられるかもしれません。説明するよい機会を与えていただきました。感謝申し上げます。

私は、日本を誇りにできる国、自慢できる国にしたいと熱望しています。日本人だけではなく、世界中の人々から尊敬され、愛される国になって欲しい。
それはどのような国かというと、国民を大切にし、日本と外国の自然や文化を大切にし、外国の人々に対しても、貧困や搾取や抑圧や戦争や災害や病気などで苦しまないで済むように、できる限りの努力をする国です。海外の紛争・戦争に関しても、積極的に仲立ちをして、平和の維持・構築のために働く。災害への支援にも取り組む。
たとえて言えば、日の丸が、赤十字や赤新月とならぶ、赤日輪とでもいうようなイメージになれば、と思います。
世界中の人々から敬愛され信頼される国となることが、安全保障にも繋がります。

これは、私一人の個人的見解ではなく、既に55年以上も前から、日本国憲法の前文に明確に謳われています。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

そして、憲法前文は、次のような言葉で締めくくられています。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。

しかし、現状はまったく程遠いと言わざるを得ません。日本国は、名誉にかけて達成すると誓った理想と目的を、本気で目指したことが、一度でもあったのでしょうか。

東京電力福島第一原発による災害では、国土も、世界に繋がる海も汚染させました。たくさんの子ども達が、かつての基準なら考えられない高汚染地域に放置されています。そしてまた、安全基準も確立しないまま、目先の経済を優先して、大飯原発の再稼動を急いでいます。放射性廃棄物をモンゴルに捨てようとしたり、原発の海外輸出まで模索しています。
明治になって日本に組み入れられた琉球は、抑止力のためという本土の勝手な理屈で多くの米軍基地を押し付けられ、さらにまた美しい海岸をつぶして新たな米軍基地を造ろうとする動きがあります。イラク戦争に協力し、劣化ウラン弾で子どもたちが苦しめらることにも、日本は加担しました。兵器輸出の緩和さえ模索しています。
他にも、福祉を削り落として、貧困を自己責任に転嫁するなど、言い出せばきりがありません。ともかく今の日本は、誇りにできる状態から程遠いと言わざるを得ません。

しかしながら、誇りにできる状態にないから、国旗に一礼をしない、ということではありません。完璧な理想国歌家(twitterで誤字を指摘頂いた。多謝)はあり得ないでしょう。しかし、理想を目指すことはできる。しかし、そのそぶりさえ日本にはない。それが問題です。
もっと問題なのは、名誉にかけて誓った理想を足蹴にして気にもしない今の日本を、一部の人たちが、褒め称え全面的に肯定させようとしている点です。この人たちは、国旗や国歌に対する一定の態度を声高に要求し、人々をそれに従わせる空気を作り出そうとしています。
声高に主張され、人々を従わせようとする空気に従うことこそが、日本の国の足を引っ張り、誇れる国から遠ざける元凶だと思います。
人々を従わせようとする空気に抵抗することによって、日本という国はどうあるべきか、ひとりひとりが考えを表明し、自由に議論しあえる空気が生まれ、それによって日本は良い方向に動き出すことができるようになります。
人々に同じ空気を強制して現状のままの日本を肯定させようとする風潮に対して、風穴を開け、誰もが考えを自由に表明しあい、あるべき日本、目指すべき日本を皆で模索しあうことによって、誇りにできる日本、世界から敬愛され信頼される日本が築かれる。日本を誇りにできる国、世界から敬愛される国にするために、頭ごなしに押しつけ型にはめようとする風潮があるうちは、国旗への一礼はなるべく控えようと考えております。
<以上、初回答弁の原稿>


<一問一答のやりとりの最後(要旨)>
:村長は子供たちが国旗に礼をしないようになる方がいいと考えているのか?
:教育内容について行政から口を挟むことは控えるべきだと考える。なにをどう教えるかは、教育委員会の管轄である。国旗に対して、どういう態度を取るべき、とか、取るべきでない、とか、これまでも申し上げたことはないし、今後も申し上げるつもりはない。

<新聞記者(信濃毎日新聞、長野日報)との取材でのやりとりの最後(要旨)>
Q:子どもたちには、どうあって欲しいと思っているのか?
A:いろいろな人がいて、いろいろな考え方があるのだな、と感じてもらえれば嬉しい。その上で、自分はどう考えるのか、じっくり検討して欲しい。こういう態度を取らねばならないと、ただひとつの形しか提示しないのは問題。型にはめようとするのはよくない。「まぁ、この場は空気を読んでこう振る舞うのが大人だし…」というような対応を積み重ねた結果、曾て、場の空気に絡め取られ戦争に向けて後戻りできない状況に陥り、後悔したのではなかったか。どういうものであれ、自分の感じ方、思いを気安く表明できる「空気」を創っていくことが大事。それによって、互いに議論が深まり、理想の日本、あるべき日本、目指すべき日本が模索され、その結果が皆に共有されていけば嬉しい。

2012年6月12日 曽我逸郎

中川村役場
〒 399-3892 長野県上伊那郡中川村大草4045-1
TEL 0265-88-3001(代) FAX 0265-88-3890

【後記】2011.06.19
本記事を投稿したあと、中川村代表あてに転載をご了承いただくようにお願いメールを発信したところ、次のような暖かいご返信をいただきました――


前略

転載、了承どころか、かえって拡散していただいて有り難く存じます。ご意見・ご批判が私の元へ届くようにさえご配慮頂ければ、まったく構いません。

私も、子ども達と若い人達は、まず避難させることを考えるべきだと思います。地域の共同体や家族が破壊されることを心配する意見もありますが、まず命・健康を万全に確保した上で、コミュニティや家族や雇用や経済には、その後できる限りの配慮をするしかしかたがない。原発はそれだけ不条理な、無くさねばならないものだと思います。
裁判がよい結果を得られますよう、お祈り申し上げます。

                                         草々
井上利男様
2012年6月19日               曽我逸郎
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(天の)中川村ホームページ:www.vill.nakagawa.nagano.jp/
mixiメンバーの方、中川村コミュニティも覗いてみてください。
個人ホームページ:www.dia.janis.or.jp/~soga/
たまにつぶやきます。http://twitter.com/itrsoga

曽我逸郎

@itrsoga

ベーシック・インカムとか、クオリア、脳科学とか、平和の事とか勉強中。でも一番の根っこは、「仏教」というより釈尊の教え。ついでにこれも
(天の)中川村 · http://www.dia.janis.or.jp/~soga/


曽我村長は、みなさんからのご意見・ご批判などを歓迎なさるそうです。ご意見などがあれば、次のリンクからどうぞ…

村長への手紙(フォーム)

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