カウンターパンチ
事実にもとづく実名報道
事実にもとづく実名報道
2015年12月14日
マーフィーの法則を補強するフクシマ
マーフィーの法則はフクシマで終の住処を見つけたようだ――「間違うかもしれないものは、すべて間違ってしまう」。
たとえば、つい最近のこと、フクシマの地下トンネル内の放射性セシウムのレベルが突如として1年前の同様な測定の値の4,000倍あまりに跳ね上がった。この不気味にも、途方もなく急上昇した放射能レベルは、1リットルあたり482,000ベクレルに達した。2015年12月9日付けNHKワールド“Radiation Spikes in Fukushima Underground Ducts“[フクシマの地下ダクトで放射能レベル急上昇]によれば、東京電力はこの膨大で異常な上昇の背後にある原因を調査する意向である。1年間で4,000倍とは、おそらくよくない話だろう。
それだけではなく、汚染水が海洋に漏れだすのを防止する願いをこめて、福島第一核発電所で建造された防護壁が傾いており、基礎部に約500メートルにわたって亀裂が生じている。防護壁の長さは800メートルであり、地中の深さは30メートルである。
いみじくも海洋防護壁である――2015年12月3日付けステーツマン・ジャーナル[米国オレゴン州の日刊紙]“Higher Levels of Fukushima Radiation Detected Off
West Coast“[西海岸沖合でフクシマ放射能レベルの上昇を検出]によれば、「ウッズホール海洋研究所の科学者たちが、北アメリカ西岸沖合の海洋中で日本の2011年フクシマ核事故による放射能レベルの上昇が認められると報告した」。目下のところ、幸いなことに、検出されたレベルは米国政府が定めた安全限度より下である。
東京電力はその間にも、平均7,000名余りの日雇い労働者を使って、史上屈指に厄介な災害に対処している。現場の労働者の調達は、想像を絶して困難だ。危険な除染作業を請け負わせるために、街頭でホームレスが雇われている。
東京オリンピック2020年大会
オリンピック大会が2020年に予定されているので、状況は間もなくどんどん良くなるのだろうが、危険な行方不明のコリウム[炉心溶融物]、すなわち地中に潜りこんで、不規則ながら、いたるところ遍在的に死のアイソトープを撒き散らしていないと神頼みするしかない灼熱の2号炉溶融炉心が頭をよぎる。核世界の失われたコリウム・ウォルド[『ウォーリーをさがせ!』を参照のこと]が、どこにあるのか、だれにもわからない。
一方、2015年2月9日付けスプートニック・ニュース、“IAEA Downplays Dangers of Fukushima Disaster”[IAEA、フクシマ惨事の危険性を過小評価]によれば、グリーンピース・ジャパンは、国際原子力機関(IAEA)が健康におよぼす2011年フクシマ惨事の危険を過小評価し、安倍晋三首相の災害を「正常化」しようとする企てと協調して振舞っていると糾弾している。急げや、急げ、オリンピックがやってくる!
放射能超過の問題に対処する賢い方法は、「許容限度」の引き上げである――国連防災世界会議における村田光平(地球システム・倫理学会の常任理事、元駐スイス日本大使)による2015年3月16日付け発言“Nuclear Disaster and Global Ethics”[核災害と地球倫理]によれば、「日本で3月11日の事故のあと、放射線被曝レベルの年間許容限度が危険なまでに引き上げられた。被災地では、1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げられたのである。政府は『緊急事態』における核労働者の放射線被曝量の年間許容限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げた」。
放射線の「許容レベル」が最初に引き上げられたとき、日本医師会は「1ないし20ミリシーベルトの幅のうち、最大値の20ミリシーベルトを選んだ科学的根拠が明らかでない」と言明した。
おまけに、「社会的責任を果たすための医師団」によれば、放射線に安全なレベルは存在しない。フクシマの状況について言えば、「子どもたちの許容線量を20ミリシーベルトに引き上げるのは、良心にそむく行為である。成人の場合、20ミリシーベルトの被曝線量で癌になるリスクは500分の1になる。子どもの場合は、200分の1である。この線量で2年間の被曝をすれば、リスクは100分の1になる。このレベルの被曝線量が子どもたちにとって『安全』であることは、まったくありえない」。
最近の研究によれば、「低レベルの放射線被曝が癌の原因になりうる」ことが確認されており、とりわけ「低線量の慢性被曝、あるいは高線量の急性被曝のいずれにしても、単位放射線量あたりの線量と固形癌リスクに認められる相関関係は同等である」(出処:2015年10月21日付け英国医学会報プレスリリース、WHO国際癌研究機関“Low Doses of Ionizing Radiation Increase Risk of
Death from Solid Cancers“[低線量の電離放射線が固形癌による死亡リスクを高める])。
チェルノブイリの官僚機構は、日本の姿勢と著しく対極的な違いのある「年間許容放射線量」を採用しており、具体的にいえば――「事故の5年後、チェルノブイリ核施設立入禁止ゾーン周辺の30キロ圏内に暮らす人びとを除いて、放射線量限度は年間5ミリシーベルトに定められた。ゾーン内から100,000人あまりの人びとが避難し、決して帰還することはない」(グリーンピース・ジャパン)。金輪際、帰還しない!
核惨事は、容易には収束しない。たとえば、チェルノブイリはすでにまったく新たな危機に直面している。元の石棺が老朽化して崩れそうであり、今後12か月で耐久性が消失する。しかし、新たな代わりの石棺、否、世界史上で最大の金属製ドームは、資金不足(6億1500万ユーロ)のため、期限内に完成しない。
ウクライナは、親ロシア派国民との内紛に加えて、深刻な財政難にあえいでいる。これひとつだけをとっても、核反応炉の拡散に対する「歯止め」になるはずである(たまたま中国は、400基の反応炉を計画中)。財務的に首の回らない国で、反応炉が壊れようものなら、どうなる? なにが起こる?
ウクライナはすでに、乱れ飛ぶ弾丸と強力なロケットの只中に高くそびえる15基の核反応炉を保有している。ウクライナは憂慮すべきことに、たとえば、2014年7月17日、マレーシア航空17便がおそらく事故により、ミサイルで撃ち落とされ、搭乗していた298に人が死亡したように、砲火、戦車の轟音、地対空ミサイルのど真ん中で、核ホロコーストの火薬庫になってしまったようである。
さて、日本に眼を戻せば、年間許容被曝放射線量レベルの引き上げは、国際社会の注目を免れえない。英国政府、内部被曝調査委員会の元委員長、イアン・フェアリー博士によれば――「日本政府は、日本における公衆の放射線量レベルを年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げるという極端なことをしており、政府の科学者たちは、この大幅な引き上げを国際放射線防護委員会(ICRP)に納得してもらおうと頑張っている」。
だが、ちょっと待ってほしい――オリンピック委員会はすでに東京2020年大会を承認している。IOCはおそらく先走ったことをして、馬の前に馬車を繋ぐことができるのだろうか?
新たに設定された日本の放射線量レベルの引き上げについて――2015年8月8日付けスプートニク・インターナショナル記事、フェアリー博士“Unspoken Death Toll of Fukushima: Nuclear Disaster
Killing Japanese Slowly“[語られないフクシマの死亡者数~日本人を緩慢に殺す核惨事]によれば、「これは科学に反するだけでなく、良心にも反する」。事実にもとづく根拠でいえば、結局、「反科学と非良心」は強烈な弾劾である。
それなのに、オリンピック委員会はすでに東京2020年大会を受諾し、世界の人びとは馳せ参じる計画を立てている。それにしても、オリンピック委員会が日本の気まぐれな放射能状態をOKというなら、他のだれも、やはりOKと言うべきでないのではなかろうか? はてさて…
頭によぎることといえば――フクシマの坑道内カナリアが核エネルギーの隠された恥部を暴露するとすれば、つまり、マーフィーの法則に準拠して、ものごとがおかしくなれば、とことんおかしくなるとすれば、交戦地帯の大型ポンコツ核施設の潜在的な論理的帰結は、どのようなものになるのだろう? 交戦地帯で、マーフィーの法則はどのように働くのだろう? 一番気楽な答えは――そんなこと、考えない。
それでも、世界430基の核反応炉は「図体のでかい脆弱な標的」である。村田元大使によれば、核反応炉は「世界で最も深刻な安全保障問題」なのだ。
したがって、フクシマは自然の極限的な力に対する核エネルギーの脆弱さの申し子であるだけでは済まないのかもしれない――核エネルギーはまた、たとえば、ウクライナの上空で撃ち落とされた航空便のように、「厄介なことになりうるものは、すべて厄介なことになる」、テロリズムの背後とさなかに、そして戦域内に潜んでいる危険に対して、代理に捧げる人身御供でもあるのだ。
核反応炉は核兵器と同等に危険(村田)
イスラエルでロケットが核施設にむけて発射された。「ハマスは核反応炉に対する攻撃を狙っていたとして、彼らがロケットを発射したと主張した。ハマスのカッサム旅団戦闘員らは、自分たちがディモナ[原子爆弾製造の疑いがあるネゲヴ原子力研究センターの近隣都市]に向けてM75長距離ロケットを発射したといった」(2014年7月9日付けイェルサレム・ポスト紙)。
既述したように、ウクライナは戦域のまんなかに15基の核反応炉を保有している。偶発的にしろ、意図的にしろ、ミサイルが核反応炉に命中すれば、どうなるだろう? そのような惨事の帰結について、フクシマはなんらかの手がかりになるのだろうか?
核惨事が、事実として、マーフィーの法則に首尾一貫して実に顕著になじむことの真の前触れがフクシマであると考えると、たぶん「番狂わせになる」ということだろう。
【後記】元駐スイス日本大使、東京の地球システム・倫理学会の常任理事、村田光平氏の2015年十月28日付け発言によれば、「オリンピック大会の将来が賭けられている。わたしはオリンピック大会とオリンピック運動の精神を信じるものとして、名誉ある撤退を心からお願いし、それも日本がフクシマ危機の制御に最大限の努力を尽くすためである」。
【筆者】
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【クレジット】
Counter Punch, “Fukushima Amplifies Murphy’s Law,” December 14,
2015 by ROBERT HUNZIKER; http://www.counterpunch.org/2015/12/14/fukushima-amplifies-murphys-law/
【付録】
出処:Shadow over Tokyo’s 2020 Olympics 東京オリンピック2020年大会を覆う影 |
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