2015年12月7日月曜日

【世界の潮流】億万長者階級の大ウソ~核エネルギーが気候変動の特効薬?

OtherWords.org
2015122

とんでもない放射性の大ウソ
核エネルギーこそは気候変動に対処する魔法の特効薬だという億万長者階級の誇大宣伝

エミリー・シュワルツ・グレコ Emily SchwartzGreco

カフス装身具の似合う億万長者で、わが国の教育システムに大枚をはたかない者は、つい最近までいなかった。彼らはチャータースクール[市民主導で設立・運営される公立学校]、難関の試験、大規模なハイスクールを小規模な専門学校に分割することに資金を注いでいた。彼らはアメリカの子どもたちにもっと勉強させることができなかったので、この永続的な慈善事業の流行の栄誉といえども色褪せてしまった。

そこで、億万長者たちは新たな任務に飛びついた。ドナルド・トランプなら言いそうなことだが、彼らは核エネルギーの偉大さを回復させたいと願った。

ペイパルの共同創始者にして、フェイスブック屈指の大株主、ピーター・シールは、195か国の代表たちが気候に関する国際協定の締結をめざしてパリに結集する少し前、ニューヨーク・タイムズの論説記事で、「われわれが化石燃料の代わりになるものを真剣に考えるのなら、核エネルギーが必要になる」と得意気にのたまった。

シールは、ご本人が核エネルギーに投資しており、米国政府が「わが国がぜひとも必要としている新型反応炉に資金を手当し、原型炉を建造する計画」を固めるべきだと、虫のいい要求を開陳した。

別の言い方をすれば――財産といえば、22億ドルしかない吾輩のような男が、わが社の政府助成金を獲得するために、なにをすればいいと言うのか?
JL Johnson / Flickr
ビル・ゲイツもまた新設計型を重視する公共投資の提唱者であり、彼ら核の応援団は、目下、世界の発電総量の10分の1を供給している391基の反応炉よりも安全・安あがりであると請けあっている。

パリ気候会議が開幕すると、このマイクロソフト共同創始者は空前の数十億ドル規模の「クリーン」エネルギー基金を設立し、米国、中国、インドの諸政府、それに他の億万長者たちや幾つかの財団の支援を得た。

爪先を放射能汚染水に浸したハイテク素養を誇る金持ち男たちの面々には、アマゾンの巨星、ジェフ・ベツォス、ゲイツと共同でマイクロソフトを創業したポール・アレンも連なっている。

だが、米国を含め、諸国政府が、核エネルギーにもっと税金を投入しろという彼らの要求に抵抗すべきである理由は数多くある。すなわち――

反応炉は高価であり、テロリストやその他の安全保障上の脅威から防護するのが非常にむつかしく、日本と旧ソ連でゴーストタウンを出現させた破局的事故をおこす可能性がある。さらにまた、核廃棄物の安全確保や閉山されたウラニウム鉱山の浄化といった厄介な課題に対処する解決策はない。

また、核エネルギーは起動に時間がかかりすぎる。驚くべきことに、世界で建造中の反応炉62基のうちの5基は、30年間にわたり開発途上にある。これでは遅すぎて、気候危機の収束に間に合わない。

おまけに、核エネルギーはそれ自体の炭素汚染を――ソーラーおよび風力よりもずっと大量に――排出する。この温室効果ガス排出はおおむね、反応炉の建造、廃棄物の搬送、ウラニウムの採掘といった活動に由来する。

さらに重要なことに、成功するビジネスマンたるものは、競合相手のない産業を選ぶことができてしかるべきである。1800億ドルの資金を管理下に置く投資銀行、ラザードが当代最善のエネルギー選択肢について言及すべきことは、次のとおり――事業規模の「風力およびソーラーはガスや石炭より大幅に安価であり、核にかかるコストの半値以下である」。

ソーラー発電がいま飛躍的に伸びており、世界的に核が停滞している、これまでの7年間、風力発電が年間20パーセント以上の伸び率で拡大しているのも、再生可能エネルギーの競争力を考えれば、驚くべきことではない。2014年における世界の核エネルギー発電の総量は1996年の水準にとうてい届いていない。

ジョージア州とサウスカロライナ州で建造中の新規核反応炉4基は、工期が少なくとも3年は遅れており、予算が数十億ドル規模で超過している。これらの発電所は(生憎なことに)コスト超過もなく、早急に核エネルギーの成長を図るモデルケースと考えられていたので、われらが核の救援派の億万長者階級にとって、この実績は悪い知らせである。

億万長者たちは、次の負け戦になにを選ぶのだろうか?

【筆者】

エミリー・シュワルツ・グレコ(Emily Schwartz Greco)は、政策研究所(the Institute for Policy Studies)が運営する非営利全米「論説」提供サイト、OtherWordsの編集主幹。OtherWords.org.

【クレジット】

OtherWords.org, “A Big Fat Radioactive Lie,” by Emily Schwartz Greco;
http://otherwords.org/a-big-fat-radioactive-lie/.

【Twitter ID】

Emily Schwartz Greco: @ESGreco
OtherWords.org: @OTWords

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