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反核候補の知事選勝利に見る安倍政権の弱点
陳洋Chen
Yang 2016年10月24日
Illustration: Liu Rui/GT
先日、日本でおこなわれた新潟県知事選挙で、核発電所の再稼働に反対する医師が政府支援候補を大幅な得票差で破り、知事に就任した。この選挙結果は、安倍政権の現在の政策に対する新潟県民の不満を反映している。
勝利者、米山隆一氏はこれまでに4度、公職選挙に立候補しては不首尾に終わっていた。だが、今回の選挙戦では、記録的な得票率で勝利の座に押し上げられた。
米山候補の得票率の高さは、新潟県に立地する柏崎・刈羽核発電所の再稼働を認めようとしなかったからである。これは、総計820万キロワットの発電容量を誇る世界最大の核発電所である。柏崎・刈羽核発電所は、地震のさいに破滅的な事故を起こした福島第一核発電所と同タイプの技術を採用している。つまり、大地震が新潟県で勃発すれば、同じような悲劇が起こりかねないことになる。
最近の世論調査によれば、調査対象の新潟県民の60.9パーセントが柏崎・刈羽核発電所の再稼働に反対であり、その一方、賛成だったのは24.4パーセントだけだった。そこで、勝利した米山候補は選挙戦を通して常に、県民の暮らしを守ることのできない現在の状況では、柏崎・刈羽の再稼働に同意できないという公約を繰り返した。このスローガンは世論の主流を代表していた。
政府を後ろ盾にした敵対陣営、森民夫候補は対照的に、問題があれば、柏崎・刈羽核発電所に反対すると訴えただけだった。したがって、選挙のさい、政権与党の自由民主党およびその連立相手の公明党の幹事長たちが相次いで新潟入りして森候補を支えたものの、状況を覆すことはかなわなかった。
米山候補の選挙戦は日本の政治状況を揺るがすと予測されている。今年7月の鹿児島県知事選挙では、反対派を後ろ盾にした三反園訓候補が同じような反核政策を訴えて、知事に当選した。これは、安倍政権の核発電所再稼働計画に対する国民の抵抗の激しさを示している。日本の知事は核発電所の運転に直接的な関与をしていないが、中央政府はその再稼働について知事の同意を得なければならない。
安倍晋三首相が来年1月に衆議院を解散し、選挙戦に打って出るという噂が流れていた。しかし、2県の地方選挙を取りこぼしたことで、この計画は頓挫するかもしれない。
米山候補勝利は、核問題のおかげだけではなく、環太平洋連携協定（TPP）に反対していた彼の立場のおかげでもあったかもしれない。米国の大統領選挙で、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの両候補ともにTPP参加に反対すると明言しているにもかかわらず、それでも安倍首相は同盟国としての日本の忠実さを示すために、TPP合意の批准を国会に働きかけている。TPPに参加すれば、日本の自動車産業と製造業に利益がもたらされるが、日本の農民にとっては、深刻なダメージになる。
日本がTPPに参加したあと、安価な外国産のコメ、牛肉、その他の産品が日本市場に流入し、農業部門における日本の競争力を引き下げるだけではなく、この部門における実質的な雇用喪失の原因になるだろう。だから、日本の農民たちはTPP参加に常に反対してきた。新潟県は、日本海沿岸に位置する古くからの農業県であり、日本有数の良質米を産出している。新潟県知事選挙は、安倍首相の核発電政策を妨げる逆風だけでなく、TPPに対する国民の抗議をも反映していた。
米山候補が選挙戦で勝利したとはいっても、日本の国会におけるTPP批准を阻止するほどではないが、農業団体の声を勢いづけ、国民世論を結集するさいの有利な交渉材料を確保するための役には立つ。
7月の鹿児島県知事選挙から今月中旬の新潟県知事選挙まで、それに7月末の東京都知事選挙でも、安倍首相が率いる与党は選挙民の支持を集めることに失敗した。与党を率いて、来るべき国会選挙で勝つ安倍首相の能力は、かつてほど確実視されなくなった。
The author is a PhD candidate at the Graduate
School of Sociology at Toyo University.
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Posted
in: ASIAN REVIEW
【投稿者】
陳洋（Chen
Yang）さんは、黒龍江省ハルビン市出身。黒龍江大学を卒業後、来日。
現在、東洋大学大学院、社会学専攻、博士後期課程に在学中。
【クレジット】
The
Global Times, “Triumph of anti-nuke governor shows weakness for Abe government,”
by Chen Yang, posted on October 24, 2016 at;
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