2013年5月15日水曜日

地元紙が宣伝する福島県の「子どもの被曝」安全・安心キャンペーン

まず、次の2013年5月12日付け福島民報記事をお読みいただきたい――


2013年5月12日
記事の導入部を引用してみよう――
県と福島医大は6月から、東京電力福島第一原発事故に伴う甲状腺検査に関し、「本県が他県と比べて特異な状況にない」とした環境省の調査結果について情報共有化を推し進める。県内全ての小中学校、高校、保育所、幼稚園の計1700カ所余りの父母、教職員らを対象に検査の内容や意義などを伝える説明会を開き、リスクコミュニケーションを本格化させる。県民、教育関係者の放射線への不安解消につなげる。
出だしを読むだけで、福島県と県立医大のねらいが、子どもたちの甲状腺癌発症から県民の目をそらすための新たな放射線安全キャンペーンにあることは明らかである。ちなみに、記事中の調査結果は環境省の発表とされているが、調査事業「平成24年度原子力災害影響調査等事業(甲状腺結節性疾患有所見率等調査事業)」の入札公告官庁は資源エネルギー庁、問合せ・応札窓口は経済産業省電気・ガス事業部原子力立地・核燃料サイクル産業課となっている――
福島民報記事によれば、説明会の実施要項は次の通り――
実施会場:
公立の小学校                      472校
中学校                            232校
高校(全日制・定時制)             93校
公立幼稚園                        201施設
認可保育所                        317施設
私立小学校                         3校
私立中学校                         8校
私立高校                           17校
私立幼稚園                        147施設
認可外保育所                      213施設
施設単位の開催を基本とするが、地域単位で実施することも想定。
受講対象者:
①在校児童、生徒とその保護者、
②乳児を持つ地域の父母らも受け付ける方向で調整、
③県外避難者への対応も検討、
④教育関係者向けには、保護者からの問い合わせに対応できる問答集をマニュアルとして作成し、配布することも視野に。
講師:
福島医大放射線医学県民健康管理センターの甲状腺検査担当者ら、
県内の甲状腺検査の実務担当者20人程度を活用、
県外の専門家の協力、
県内各地の医師を説明担当者として養成。
説明内容と目的:
環境省がまとめた他県との比較調査をはじめ、県内の検査結果の概要、生涯にわたり子どもの健康を見守る甲状腺検査の意義などを説明する。放射線の影響に関する知識も伝え、正しい理解を促す。
資金の手当て:
平成24年度に政府から交付されたリスクコミュニケーション対策費約6億円の一部を充てる。
いかがだろうか? 福島県と県立医大は、疑問に満ちた環境省発表を好材料として前面に押し立て、新たに包括的で大規模な安全・安心キャンペーンを推進しようとしている。また福島民報記事は、次のような解説を付記して、キャンペーンの一翼を担っている――
■A2判定本県、3県より低く
県内の子どもの甲状腺検査結果は【表①】、環境省が実施した青森、山梨、長崎の3県の甲状腺検査結果は【表②】の通り。小さなしこりなどがある「A2判定」(二次検査の必要なし)の割合は41・2%だった本県の甲状腺検査結果の方が低かった。同省は「検査人数の違いなどを総合的に考慮すれば、ほぼ同様の結果。福島に特異な状況は見られない」とした。

念入りなことに、用語解説も添えている――
※リスクコミュニケーション 放射線や化学物質など健康への影響が心配される物・事象について、事業者や行政が説明会などで住民に正しい情報を伝え、互いに意思疎通を図った上でリスク(危険性)の軽減に取り組むこと。
福島県の場合、この解説文を次のように校正すべきだろう――
※リスクコミュニケーション 放射線や化学物質など健康への影響が心配される物・事象について、事業者や行政が説明会などで住民に歪曲した情報を伝え、互いの意思疎通の混乱と遮断を図った上でリスク(危険性)を隠蔽すること。

“Hunger Strike at Tent Plaza, Hunger Strike Anywhere”



Tent Plaza (Tento-hiroba), settled at a corner of the Ministry of Economy, Trade and Industry (METI) site, Tokyo, ever since September 11, 2011, has been serving as an essential foothold for all the people seeking for the way to break with nuclear power, including nuclear disaster victims and evacuees from Fukushima.
METI, however, without giving ear to deep voices of those people, has launched legal action to obtain the surrender of the tent site. (The 1st oral argument will be held on May 23.)
And we, the Tent Plaza stuff, are going to take a continuous joint hunger strike and sit-in action from May 16 to May 21, in order to express our unyielding intention to call for the METI’s withdrawal of litigation, and to represent the solidarity of all the people struggling to break with nuclear power.
There should be many people who cannot come to the Tent Plaza in front of METI building, and still want to join our action. So, we humbly request each and every of such people everywhere in Japan and in the world to take her/his own support action at the very spot she/he is at, in accordance with our word, “Hunger Strike at Tent Plaza, Hunger Strike Anywhere.”
We hope to create big surge of people’s demand to save the anti-nuclear tents by requesting you anywhere to take your own unique action united with “Hunger Strike at Tent Plaza.”
ü  Please inform us when and what kind of action you or your group can take as a “Hunger Strike Anywher”;
E-mail: tentohiroba@gmail.com
Fax:    81-3-6206-1102

【至急!】拡散希望 ★テントでハンスト/どこでもハンスト★



経済産業省前テントひろばは2011年9月11日の設置以来、福島の被災者、避難者をはじめ、全国の脱原発を求める人々にとって不可欠な拠り所として機能してきました。
ところが経産省はこの切実な声を省みることなく、テント敷地の明け渡し訴訟の提訴に踏み切りました(5月23日第1回口頭弁論)。
そこでテントひろばでは訴訟の取り下げを求める不退転の意思を表明し、脱原発を願う全ての人々との連帯を表すために5月16日から21日まで連続共同ハンスト・座り込み行動を行います。
経産省前テントひろばに来ることはできないが、ぜひ自分も参加したいと思われる方々も多数おられることと思います。そこで「テントでハンスト/どこでもハンスト」を合言葉に広く全国各地の皆さま、世界各地の皆さまにもこの連続行動に合わせて、お住まいの地で支援行動を起こしていただくよう、お願いいたします。
「テントでハンスト」に連帯するユニークな行動を各地で行っていただくことで、脱原発テントを守ろうという大きなうねりを拡げて行きたいと思います。
1.   「どこでもハンスト」に参加してくださる方・グループも申込みをしてください。その際、どのような形態での行動かもお記しください。
連絡先はメール(tentohiroba@gmail.com)
またはファクス(03-6206-1102)にてお願いします。
(件名に「どこでもハンスト」とお記しください)。
2.   「テントでハンストどこでもハンスト」チラシ → ダウンロード
3.   裁判について詳細は http://tentohiroba-saiban.info/ をご覧ください。
テントでハンスト/どこでもハンスト主催団体:
            経産省前テントひろば(070-6473-1947)
以上は、黒田節子@原発いらない福島の女たち

English(英語): 世界のみなさんに向けて拡散をお願いします!

2013年5月13日月曜日

#ふくしま集団疎開裁判 郡山連続講演会:第1回5月12日 西尾正道さん「甲状腺疾患と内部被曝」

◎あなたのアクションが間違った判決をただします->今すぐ、判決直後アクションに参加を!

「ふくしま集団疎開裁判」の会 郡山連続講演会
第1回「甲状腺疾患と内部被曝」
n  日 時  2013年5月12日(日)午後1時30分~
n  場 所  郡山市富久山総合学習センター(サンライフ)
n  講 師  西尾 正道 氏(北海道がんセンター名誉院長)

IWJ_FUKUSHIMA1

講演の部

http://www.ustream.tv/recorded/32725209

質疑応答の部
http://www.ustream.tv/recorded/32729791


第2回予告「チェルノブイリ被害の全貌~福島への教訓」
n  日 時  2013年5月20日(月)午後6時30分~
n  会 場  郡山市総合福祉センター5階集会室
     (郡山市役所裏 TEL 024-924-2950)
n  参加費  無料
n  講 師  アレクセイ・V・ヤブロコフ博士
     (岩波書店『チェルノブイリ被害の全貌』編著者)

n  共 催  チェルノブイリ被害実態レポート翻訳チーム
詳細情報→ リンク

2013年5月8日水曜日

国内メディア報道に見る【#ふくしま集団疎開裁判】高裁決定 


郡山市内の子どもたちが安全な場所での教育の実施を求めていた通称「ふくしま集団疎開裁判」で、4月24日、仙台高等裁判所は抗告を却下しました。
郡山市内の子どもたちだけでなく、日本の子どもたちの未来を決めるといっても過言ではない、この仙台高裁決定はAP通信記事になって世界を駆けめぐりました。一方、肝心のわが国では、この重大ニュースはほとんど報道されず、投稿筆者の寡聞のせいか、高裁決定の内実がうかがえる実質的な内容を備えた主流メディアの記事は、毎日新聞の4月25日付け福島版記事と東京新聞の5月3日付け特報記事だけです。
記録のため、ここにこの2本の記事の紙面画像を、クレジットとして紙名と掲載日付を付して紹介します。

2013年4月25日付け毎日新聞/福島版
テキスト:毎日jp記事(4.25福島版)

「集団疎開」申請を却下 高裁決定「直ちに悪影響の証拠ない」


2013年5月3日付け東京新聞/特報部

テキスト:5.3北陸中日新聞・朝刊

2013年5月7日火曜日

【海外論調】引き裂かれた東北、未来世代に引き継ぐ負の遺産


アジア太平洋ジャーナル:ジャパン・フォーカス
アジア太平洋…そして世界を形成する諸勢力の批判的深層分析

Vol. 11, Issue 10, No. 4, 2013年3月11日
引き裂かれた東北
未来世代に引き継ぐ負の遺産

Tohoku Has Been Rent Asunder for Future Generations
ロジャー・パルヴァース
Roger Pulvers

いま3つに裂かれた東北がある…2011年3月11日以来、ずっとそうなのだ。
本州北東部の一部には、その日の東日本大震災とそれが引き起こした巨大津波の影響を直接受けなかった各地が含まれている。第2の部分は、浸水したり破壊されたりした沿岸の各地である。3番目は、福島県の町や村であり、福島第1原子力発電所からの放射能汚染の影響をこうむった。
3.11地震後の津波の高さを示す地図

しかし、以上のように区分するとしても、東北地方全体と、ある意味では、日本のすべてとが、現在と将来にわたり、放射能に、または汚染の恐怖に汚染されている。
わたしは1970年にはじめて岩手県宮古市を訪れているが、たったいまも、その美しい港街への訪問から帰ってきたばかりだ。過去2年間、被災地に行く度、いつでも最初に気づくらしいものは、鳥たちである。今回もノスリにタカ、シラサギにカラス…そして、空き地に家族であるように思えるハクチョウたちを見た。
空の巣は、木の上や見捨てられた建物の軒下など、そこら中にあった。鳥たちは、2011年3月11日のあと、地上に生きる動物たちすべての暮らし向きを変えてしまった災難など忘れてしまったかのようだ。
宮古市はいくつかの村を市域内に合併し、その結果、人口がほとんど6万に達している。その村のひとつが田老であり、この地はとりわけ甚大な津波被害をこうむった。田老には、1958年に完成し、1966年に増強された高さ10メートルの防潮堤があった。だが、田老を襲った津波は、高さ12メートルに達した。津波がそこの陸地に襲来したのは、地震の約40分後、午後3時25分である。土地の人たちは、自分たちの防潮堤を重んじすぎていたので、それが多くの人たちが逃げ遅れる原因になったという。田老の人口の5パーセント近く、200人の人びとが津波で死亡した。


3.11津波に襲われる宮古
壁で囲った宮古の護岸も同じように役に立たなかった。黒い水が堤防を乗り越えるシーンの映像は何度も見られたが、これは宮古で撮影されたものである。
今日、市街の広大な区域が荒地になっている。膨大な量のガラクタが波止場と野球場に集められ、山と積まれている。鉄道は閉鎖され、再開はされないだろうとわたしは聞いた。道路利用だけが、かつて風光明媚なことで名高かった三陸海岸のこの区域に出入りする唯一の方法である。
2013年3月2日、岩手県宮古市の赤前保育園。
筆者の隣が、1948年に保育園を設立した小関さん。
中央の白髪女性は、翻訳者、児童書出版者の
末盛千枝子さん。末盛さんの現在の主な活動は、
被災地の子どもたちに絵本を届けること。
子どもたちは絵本を家に持ち帰ることができる。
わたしはのちほど、8歳を筆頭に5人の子どもがいる夫婦の家におじゃました。妻とわたしは、6年間に生まれた4人の子どもを育てあげた…だが、5人とは! 家は小さかったけれど、子どもたちは母親と一緒に絵本を読み、お母さんから、そして地域社会全体から注がれる愛を感じていた。「花は咲く」の歌詞さながらだった――「花は咲く…いつか生まれる君に」
これと対照的なのが、汚染された各地の状況である。そのような場所でのわたしの経験を語るより、先月「低線量放射線の影響」に関するデータを同僚のアンダース・モラーとともにオンライン公表した生物学者、ティモシー・ムソーにお鉢をまわしたい。ムソーとモラーは、2011年3月以来、福島で長期間過ごしただけでなく、チェルノブイリに20年間以上も通ってきた。
「放射線はそこら中にあるが、見ることも、嗅ぐことも、感じることもできない」と彼らは書く。だが、汚染地帯で訪問者たちは「ぶざまにも不均等に成長した樹木、昆虫、鳥類、その他の動物のおびただしい異常」に気づく。「これらは、放射線被曝に誘発された遺伝子変異によって引き起こされた」
ふたりの生物学者たちは、「ソ連、フランス、日本といったさまざまな国で、政府や政府機関による、チェルノブイリおよびフクシマに関する情報の抑圧」があったと断言する。日本にいたっては、「科学者たちに、公衆衛生や低線量放射線の生態学的影響に関する研究課題への関心に偏りがある世界は、原子力産業界の他にどこにもない」と彼らは指摘する。彼らはさらに踏み込んで、オンライン研究論文で、日本の核科学者を1950年代にタバコ産業に雇われていた医学者たちに匹敵するという。
世界保健機関は、最近、福島原発事故による放射線の健康に対する影響は重大なものでないと主張した。だが、ムソーとモラーによる研究は、明確な視点から、このような主張を検討することを迫る。人間の世代交代は、30年間台のできごとである。したがって、チェルノブイリ惨事の影響でさえ、いまだに研究対象は基本的に第1世代に留まっている。
「われわれは負の影響の第1段階を目撃しているだけなのかもしれない」と彼らは書く。「次の事故は3000万もの人びとを放射能汚染で被曝させるかもしれない。… (チェルノブイリ近くの)鳥類、齧歯動物、昆虫類はいま第25世代、またはそれ以上の世代のものであって、これらの生物に関して記録されたチェルノブイリ由来の低線量放射線による負の影響は、人間について報告されているものよりもずっとひどい」
このような知見について読むとき、わたしは、赤前保育園の園児たちの明るい顔や、お話を読んできかせる母親の声を聴いている幼い子どもたちのキラキラした目の輝きを忘れることができない。宮古の人びとは、彼らの生活と日本のすべての人たちの生活を変えてしまった2年前のあの日以来、思いもつかない喪失と過酷さに苦しんできた。だが、彼らは少なくとも「花は咲く…いつか生まれる君に」という希望を抱くことができる。
しかし、東北の汚染された各地で暮らしを築いていた人びとには、帰還の望みはない。彼らは、彼らを騙し、騙しつづけている政府と原子力産業に拉致されたのだ。
現在の日本政府が、安倍晋三総理大臣のリーダーシップのもと、原子力産業を再建する意向であるという事実そのものが、福島県の放射能汚染による被害者に対する侮辱であるだけでなく、この国に生きるすべての人びとに対する途方もない規模の攻撃である。
安倍さん、あなたは「強い日本」を願うという。だが、国を防衛すると称する豪腕が、国を粉砕し、その住民のあらゆる希望を奪うことになるだろう。
すべての敵が国外から来るのではない。核化した日本は、この国の人びとに迫る最大のテロなのだ。このテロがつづくなら、花が咲くとしても、いま生きている子どもたちといつか生まれる世代の墓に咲く花だけだろう。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆
本稿は、英字紙ジャパン・タイムズ、Counterpoint欄掲載の記事に若干の変更を加えた改訂版
ロジャー・パルヴァースは、作家、劇作家、舞台演出家、翻訳者であり、東京とシドニーで時間を配分して活動している。40冊を超える本を出版。最近著は“The Dream of Lafcadio Hearn”(『ラフカディオ・ハーンの夢』)。彼はアジア太平洋ジャーナルの提携パートナーである。


転載・引用のさいに推奨されるクレジット表記:
#原子力発電_原爆の子/アジア太平洋ジャーナル Vol. 11, Issue 10, No. 4, 2013年3月11日「引き裂かれた東北、未来世代に引き継ぐ負の遺産」――ロジャー・パルヴァース http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html
Roger Pulvers, "Tohoku Has Been Rent Asunder for Future Generations," The Asia-Pacific Journal, Vol. 11, Issue 10, No. 4. March 11, 2013.
http://www.japanfocus.org/site/view/3913

【関連記事】
フクシマとチェルノブイリの核事故が突きつける厄介な疑問

――アンダース・パぺ・モラー、ティモシー・A・ムソー

Follow “Asia-Pacific Journal” via Twitter at @JapanFocus, or Facebook. 

2013年5月6日月曜日

【#TomDispatch】シェール・ガス、エネルギー革命の裏側

21世紀アメリカのエネルギー革命――シェール・ガス。福島原発事故後、発電燃料費の増大に悩むわが国でも、官民あげて救世主を崇めるような熱視線を送っています。ところが、ものごとには負の側面があるものです。メディアがまったく報道しない天然ガス低コスト生産の隠された裏側、フラッキング(シェール層の水圧破砕によるガス抽出)の実態をみてみましょう。
Yuima21c

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

ネイション・インスティチュート(The Nation Institute)企画
トムディスパッチ 抗主流メディア常備薬

トムグラム:
エレン・カンタロウ、大規模エネルギー開発による大規模汚染を語る
Tomgram: Ellen Cantarow, Big Energy Means Big Pollution
エレン・カンタロウ(Ellen Cantarow)2013年5月2日
Twitter でTomDhispatch @TomDispatchのフォローをよろしく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
[サイト編集スタッフ、ニック・タースによるまえがき]
ゲイリー・ジャドソンは、彼らが手錠をかけたとき、自前のシャックルから外されたばかりだった。齢72歳のメソジスト教会牧師は、コンプレッサー施設――フラッキング(fracking=破砕採掘)の別称のほうが一般に通りがよい水圧破砕技術に随伴する必須基盤施設の一部――に張り巡らされたフェンスにわが身を鎖で縛っていた。ニューヨーク北部地方のセネカ湖から投じられた一石である。シェリフとその副官らは、不法侵入で逮捕するためだけの目的で彼の身を鎖から解き放ったのである。
「彼らには、これ――湖を危険に陥れること――をする権利がない。わたしたちはみな、彼らの乱暴狼藉の代価を支払って終わることになるでしょう」と、ジャドソンは彼の市民的不服従行為を目撃するために居合わせていた支持者の小集団に向かって説いた。彼が抵抗していた「これ」とは、オリオン誌の最新号でサンドラ・スタイングレイバーが物語っているが、湖岸の地下に放棄された岩塩鉱の空洞をペンシルヴェニアの破砕採掘ガス田からパイプライン輸送される天然ガスの貯蔵庫区域に転用する、ミズーリを本拠とするイナジー・ミッドストリーム社による計画である。「イナジーは、これまでの3年間のどの四半期をとっても、この施設において水質汚染防止法を侵犯してきました」と彼はいった。「1972年以来、ガス貯蔵施設で14件の破滅的な事故が起こっています。そのひとつひとつが、岩塩空洞で起こったものです」。セネカ湖で「事故」になれば、スタイングレイバーの記事によれば、その湖が10万の人びとの飲料水を供給しているので、とりわけ破滅的なものになるだろう。(先月、スタイングレイバーはイナジーに対する彼女自身の市民的不服従行為のために15日間の 収監をこうむった)
ペンシルヴェニアでは、ガスがシェール岩のなかで何百万年もの眠りについていたが、近ごろ強制的に抽出され、その結果、トムディスパッチ常連投稿者、エレン・カンタロウが破砕採掘の最前線から投稿する記事シリーズの最新号で報告するように、「事故」はすでに日常茶飯事になっている。その昔、炭鉱夫、トンネル労働者、「 ラジウム少女」(※) たちは、人里離れた場で、地底深くで、山奥で、あるいは工場の壁の背後に隠されて、危険な取引の恐怖に直面した。彼らは、見られることも聞かれることもなく、働き、死んでいった。(※1910~20年代、米国のラジウム社で腕時計の文字盤にラジウム夜光塗料を塗っていて、被曝した女工たち)
今日、産業安全問題が――文字通りに――再来した。毒性化学物質はスーパーファンド法適用現場の專用物ではまったくない。そういうものが、わたしたちの家に、わたしたちの水に、わたしたちの食品にますます入りこんでいる。肥料工場でなにか不具合があれば、もはや労働者が危険にさらされるだけでは済まず――テキサス州ウェストの町の事件のように―― 老人ホーム、学校、住宅団地、それに小さな町の住宅地5区画にまで危険がおよぶ。カンタロウが書いているように、ペンシルヴェニアの農耕社会は、北アメリカを21世紀のサウジアラビアに転換することにご執心のエネルギー企業によって、巨大な屋外実験場に変貌され、一般人はモルモットにされている。そして、そうした人びとは、謎の病気、死んだ動物、汚染された水、土地の価値喪失、生活様式の崩壊という高い代償を払っている。この新しい地獄のただなか、希望もある。ペンシルヴェニア州民は、ニューヨークのゲイリー・ジャドソンのように、声を出し、組織化し、長引く理不尽と過酷な時に直面しながら、できることをやっている。ニック・タース
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
■ ペンシルヴェニア

風下住民
人間を死にいたらしめる
ペンシルヴェニアの破砕ガス採掘
――エレン・カンタロウ
The Downwinders 
Fracking Ourselves to Death in Pennsylvania 
By Ellen Cantarow
70年以上前、ワシントン州とネヴァダ州に対して化学攻撃が仕掛けられた。この攻撃は人間、動物をはじめ、成長し、呼吸し、水を摂取する生き物すべてに毒を注いだ。マーシャル諸島も攻撃された。この元は清純だった太平洋の環礁は、「世界一汚染された場所」の汚名をかぶせられた。原爆実験と核兵器開発の犠牲者らは、癌が進行するにつれ、風下住民の名が与えられた。彼らの悲劇に刻印されているものは、自分たちになされたことについて知らされないままに放置される暗闇だった。危害の立証責任は彼らに負わされ、責任主体のアメリカ政府当局は負わなかった。
今日、新興産業が夢の新技術――この場合、大規模水圧破砕法――を推進するにつれ、新世代の風下住民が病気になっている。症状は、テキサス、コロラド、あるいはペンシルヴェニアのどこに住んでいても、発疹、鼻血、激しい頭痛、呼吸困難、関節痛、腸の病気、記憶喪失、その他にもいっぱいあって、同じである。レンセラー科学技術専門学校のユリ・ゴルビーは、「私見ですが、いま明らかになりつつあることは深刻な健康危機であり、これは始まったばかりです」という。
「破砕」採掘の工程は、まず垂直方向に1マイルかそれ以上深く掘削し、ついで横方向に掘削して、かつて北米大陸の各地に侵入していた海の名残、5億年の歳月を経たシェール層に達する。そして化学物質と砂を混ぜた水が高圧で地中に送りこまれ、シェール(頁岩)を破砕して、それに含まれるメタンを分離する。ガスの放出とともに、何千ガロンもの汚染水が流出する。この「逆墳」流動体には、元の破砕化学物質にプラスして、シェール中に安全に埋蔵されていた重金属と放射性物質が含まれている。

この技術を用いる産業は、その生産物を「天然ガス」と呼んでいるが、メタンおよびその周辺物質を安全に貯蔵していた5億年に終止符を打つことには、自然なことはなにもない。それは、実のところ、人里離れたアメリカに異質の社会資本――パイプライン輸送のためにメタンを凝縮する圧縮施設、汚染逆噴水の溜池、ガス不純物を燃やす煙突、大量のディーゼル・トラック、数千マイルのパイプライン、その他もろもろ――をのさばらせる生態学的暴力であり、発癌物質と毒物を水系、大気、土壌に放出している。
出所:ペンシルヴェニア州政府日本代表事務所サイト
ペンシルヴェニアの60パーセントは、マーセラスと呼ばれる巨大なシェールの広がりの上に乗っかっていて、2008年からこのかた破砕採掘業界の視野に入っていた。シェールを開発する業界各社は、手厚い連邦政府の特典、すなわちスーパーファンド法に加えて、有害物質の除去を求める清浄大気・清浄水系・清浄飲用水法規の規定免除の資格をえている。業界は、年間数兆ガロンにも達する廃棄物を「有害物質」と呼ばなくてもよい。「残滓廃棄物」といった遠回しな表現で済むのだ。おまけに破砕採掘企業は、用いる化学物質の多くを秘密にするのを許されている。
一方、ペンシルヴェニアは州自体の特恵を付け加える。天下りシステムが、議員、知事、州政府環境保護省(Department of Environmental Protection)の官僚をガス業界の椅子に送りこむ。いまDEPそのものが、虚偽記載の検査報告を提出し、シェール・ガス企業が水を汚染し、病気を引き起こしたとする住宅所有者らの告訴を退けるために用いたとして、部局が告発された訴訟の対象となっている。筆者が取材した人たちは、DEPを「保護は無理で省(Don’t Expect Protection.)」と呼ぶ。
風下住民
ランディ・モイアーは、愉快な顔つきにあごひげを蓄えた49歳であり、母音伸ばしの訛りは、ペンシルヴェニアの貧しいホームタウン、ポーテージがアパラチアの一部であることを思い起こさせる。彼は、18年間――ガソリン価格があまりにも法外になるまで――自家所有のトラックを運転してニューヨークとニュージャージーの廃棄物を運搬する仕事をしていた。すると、たいしたものと思える機会に出くわした。ペンシルヴェニア北東部で水圧破砕請負業者のために仕事をすれば、1時間あたり25ドルになるのだ。
破砕液体、水、廃棄物を運搬するのに加えて、ランディは皮肉抜きで「環境」の仕事もやった。大きな容器の中に入り込んで破砕液体の残滓を拭き取るのである。トラックが行き来できるように地面を平にするために、掘削井の周りに敷き詰めた巨大なマットの清掃もした。
マットは、「掘削泥」、ドリルがシェールに貫通するのを容易にするための粘り気のある化学物質を含んだ流動物でベトベトになっていた。雇用主が彼に告げなかったのは、破砕採掘の廃水もそうだが、ドリル掘削泥が強い毒であるだけでなく、放射性であることだった。
2011年11月、非常に寒い日の早朝の時間帯、掘削井現場の巨大な盆地の底に立ち、1000枚のマットを高圧ホースで洗浄していて、非常に頻繁に小休止をとっては、彼のトラックのなかで足を暖めていた。「靴を脱いでみると、ぼくの足がトマトのように赤かった」と、彼は筆者にいった。ヒーターからの暖気が足にあたると、彼は「すんでのところで天上を突き破るほどだった」
あるとき自宅で、ランディは自分の足をゴシゴシこすってみたが、耐えがたい痛みは和らがなかった。足をおおっていた「発疹」が拡がり、ほどなく胴に達した。1年半たって、肌の炎症はまだぶり返す。上唇がたびたび腫(は)れる。二度ばかり、舌が大きく腫れて、息をするためにスプーンで押し下げなければならなかったほどである。「ぼくは13か月以上もこの代物でフライに揚げられているのです」と、彼は1月遅くに筆者に語った。「地獄がどんなものかはっきり想像できます。まさしく火の上にいる気分です」
家族や友人らは、少なくとも4度、ランディを救急処置室に運びこんだ。彼は40人以上の医者に診てもらった。発疹や頭痛、片頭痛、胸痛、不整脈、あるいは背中と両脚の激痛、視力障害、目眩(めまい)、記憶喪失、持続的な耳鳴り、狭いアパートのそこら中に吸入器を置いておかねばならないほどの呼吸困難の原因を告知できる医者はいなかった。
かつて労働者の疾患は「産業医学」の領域に分類された。だが今日、アメリカの破砕採掘産業を見ると、カナリアは炭鉱專用ではない。ランディのような人たちは、もはや地中深く埋蔵されてはいない毒性環境で起こることの前兆であるようだ。明らかに彼に毒を盛ったガス田は、活況を呈する地域社会の近くにある。破砕採掘のおよぼす温室効果ガスによる巨大な影響を実証した画期的な研究論文の共著者、コーネル大学のアンソニー・イングラフィア(Anthony Ingraffea)は、「ペンキ製造、トースター工場、自動車生産など、思いつく限りの他産業をあげてみますと、こうした従来からの産業は、指定工業地域の屋内で操業し、農場から隔てられ、学校からも離されています」という。それに対して天然ガス企業は、「業界の産業空間のなかに住宅、病院、学校を置いておく必要性をわたしたちに押しつけています」と彼はいう。
リトル・ローズの死と生
リトル・ローズはエンジェル・スミスお気に入りの馬だった。獣医が蹄鉄を打ちつけたとき、一本の脚が終わるとすぐ、誇らしげに次の蹄を持ちあげたのよ、とエンジェルは筆者に話した。「ロージー、お腹すいた?」とエンジェルが声をかけると、ロージーは首を縦に振った。「ほんとうなの?」とエンジェルがじらすと、ロージーは前脚を上げ、歯を打ち鳴らした。ポーテジのすぐ南、クリアヴィルのパレードで、エンジェルはリトル・ローズに騎乗し、家族のアメリカ国旗を掲げた。
2002年のこと、「土地の人」がドアをノックして、エンジェルと夫のウェインに向かって、115エーカーある夫妻の農場のガス採掘権を、サンフランシスコを本拠とするエネルギー企業、パシフィック・ガス&エレクトリック社(PG&E)に貸与してくれないかと頼んだ。最初のうちこそ、丁寧な物腰だったが、「お隣さんたちは全員サインしているのです。サインしなければ、お宅の土地の下からガスを吸いあげるだけのことです」と脅しにかかった。おそらく倦怠感と情報不足(当時、業界外部者のほぼ全員が大量水圧破砕採掘についてなにも知らなかった)のせいだろうが、夫妻は同意した。掘削は2002年に隣人の土地ではじまり、2005年にスミス家の土地ではじまった。
2007年1月30日、リトル・ローズがよろめき、転倒して、起きあがれなくなった。脚を発作的にバタバタさせていた。ウェインとエンジェルが引き起こして座らせても、ふたたび倒れるだけだった。「電話帳の獣医全部に電話しました。『射殺するのですね』とみないうのです」とエンジェルはいう。夫妻には無理だった。2日たって、隣人が射殺した。「わたしたちの決断でした」というエンジェルの声は、乱れていた。「彼女はわたしの親友でした」
まもなくスミス家の牛たちが同じような症状をみせはじめた。死ななかった牝牛たちは、流産したり死産したりした。ニワトリもすべて死んだ。納屋猫たちも死んだ。3頭の愛犬らも死んだが、みな老犬ではなく、以前は健康だった。ミッチェル・バムバーガーとコーネル大学薬学教授のロバート・オズワルドによる2012年の研究が、ガス田において動物に独特な症状が発現し、その後、飼い主に現れる疾病を早くから警告する前兆として役立つことを示唆している。
スミス夫妻は州環境保護省に水質検査を依頼した。当局は飲用にしても安全であると告げたが、ペンシルヴェニア州立大学の研究者らによるその後の検査では、高レベルのヒ素が検出されたとエンジェル・スミスはいう。
そうするうちに夫妻は、頭痛、鼻血、倦怠感、喉と眼の炎症、息切れに悩みはじめた。ウェインは重たくもないのに、腹部が奇妙に肥大した、とエンジェルがいう。彼の肺のエックス線画像で、瘢痕(はんこん)(腫瘍などのあと)とカルシウムの沈着が見つかった。血液分析で肝硬変になっていると判明した。結果が出たとき、医者がエンジェルを脇へ引っ張って、「酒をやめさせなさい」といった。「ウェインは呑みません」と彼女は応えた。エンジェルも呑まないが、現在42歳の彼女は肝臓病を患っている。
動物たちが死にはじめるまでには、隣人の土地に5本の大容量採掘井が掘削されていた。まもなく、夫妻の納屋の床下で水が泡立ちはじめ、池に油性の光沢とあぶくが現れた。2008年、半マイル向こうにコンプレッサー施設が建造された。これらの施設は、天然ガスをパイプライン輸送のために圧縮するものだが、ベンゼンやトルエンなど、既知の発癌性物質や毒物を排出する。
スミス夫妻は、クリアヴィル内の他の場所にいる知人たちも同様な健康問題を抱えているし、その動物たちもそうだという。一時期、自分たちの動物の災難は収まったと夫妻は考えたが、先だっての2月、数頭の牛が流産した。夫妻はよそに引っ越したいが、それもできない。土地の買い手がいないのだ。



破砕採掘の博物館
デヴィット、リンダ・ヘッドリー夫妻は、スミス夫妻と違って、土地を貸さなかった。2005年、スミスフィールドの農場を購入したとき、自分たちの土地の下のガス採掘権に金を使わないと決めたのだ。彼らの親たちが知っていた浅はかなガス採掘は過去の時代の代物であり、経費をかけて面倒なことになる値打ちがないように思えた。
丘や谷、土地を横切って流れる小川、水を供給する泉を備えたこの場所は、ハイキング、水泳、息子のグラントの生育に完璧であると思えた。厄介事がすべてはじまったあと、アダムが生まれた。
夫妻が購入を完了した丁度そのとき、ブルドーザーが入ってきた。前の所有者が、夫妻に告げずに、ガス採掘権を貸しだしていたのだ。後に夫妻が指摘するように、彼らは自分たちが企業不動産の単なる「管理人」であると悟った。
今日、ヘッドリーの地所は一種の破砕採掘博物館である。採掘井が5本あって、そのすべてに、ガスから液体を分離する付属タンク、逆流が貯蔵される塩性溶液タンクが備わっている。井戸のうちの4本は小容量垂直井であり、今日の大容量法に先立つ破砕採掘技術を用いている。ヘッドリー宅の表玄関から徒歩2分の場所に、大容量井が立っている。パイプラインは小川の地下に掘削された。
「事故」が常態だった。家屋に最も近い井戸が破砕採掘したとき、植生、ザリガニ、虫の天国だった泉が劣化した。環境保護省は、スミス夫妻の場合と同じくヘッドリー夫妻にも、水を飲んでも安全であると告げた。だが、「泉のなかの生き物すべてが死んで、白くなりました」とデヴィッドはいう。アダムが生まれたばかりだった。「まさか子どもたちをあれに被曝させるわけにはいきませんでした」。デヴィッドは2年間にわたり一族宅や友人宅から水を自宅に運び、次いで市の水道から給水を受けるようになった。
塩性溶液タンクのすべてから有毒廃棄物がヘッドリーの土地に漏出した。大容量タンクの周辺から除去された汚染土壌は、大型廃棄物容器や井戸のそばの無蓋の穴に貯蔵された。ヘッドリー夫妻は、その汚染土壌を運びだしてほしいと環境保護省に懇願した。まず廃棄物の放射能を検査しなけれならないだろうと当局の代表者が夫妻に告げたとデヴィッドはいう。最終的に、汚染土壌の一部は搬出され、残りはヘッドリーの土地の下に埋められた。放射能検査はまだ保留されているが、デヴィッドは自前のガイガーカウンターを所持していて、井戸の現場で高レベルを測定した。
独立環境団体、アースワークス(Earthworks)がガス生産施設の近隣の健康問題に関して実施した最近の調査で、ヘッドリー家は対象の55世帯に含まれていた。検査の結果、ヘッドリー宅の空気から、神経毒であるクロロメタン、既知の発癌性物質であるトリクロロエチレンをふくむ高レベルの汚染物質が検出された。
おそらくもっと雄弁なのは、家族のだれもが病気であるという事実だろう。17か月児のグラントには、体のあちこち違った部位に周期的に現れる、ランディ・モイアーのもののような発疹がある。4歳児のアダムは胃の急激な痛みに苦しみ、叫び声をあげる。デヴィッドとリンダのふたりとも「ひどい関節痛があります。恐ろしい代物で、左の肘に出たり、右の臀部に出たり、3日間、気分がよかったりして、次に背中にきたりといった具合です」とデヴィッドはいう。リンダの家系には関節炎や喘息の前歴がなかったのに、42歳の彼女はその両方を診断された。みなに鼻血がある――馬も含めてである。
ペンシルヴェニアのこの地方におけるマーセラス・ガス田ラッシュに突入して5年、ランディ・モイアー、スミス夫妻、ヘッドリー家のもののような症状は、ますます一般的になった。子どもたちは、若年層がほとんど抱えることのない問題、関節痛や健忘症を経験している。動物の異常や死亡が蔓延している。アースワークの研究は、生活の場がガス田基盤施設に近いほど、皮膚発疹、呼吸困難、嘔吐を含む25種の共通症状の重大度を増すと示唆している。
環境保護は無理で省(Don’t Expect Protection.)
DEPの内部告発者らは、土地所有者への加害の証拠を減らすために、当局が意図的に化学検査を制限していると暴露 した。ペンシルヴェニア州ワシントン郡の住民は、自分を病気にしたと彼女のいう、掘削関連の大気および水系の汚染に対する調査を十全に実施しなかったとして、当局を 告訴している。訴訟に関連して、州民主党代表、ジェッシー・ホワイトは、州と連邦の機関がDPEの「不作為・詐欺疑惑」を捜査することを要求している。
州政府の誠実な保護が望めないなか、独立の科学者らが埋め合わせるしかなかった。だが、産業がすさまじい勢いで前進するので、さまざまな潜在的な原因による症状に対処するのは、絶え間なくつづくイタチごっこである。内分泌撹乱交換社(Endocrine Disruption Exchange)の創始者であり、全米科学環境会議(National Council for Science and Environment)の生涯功労賞を授与されたセオ・コルボーンによる2011年の研究が、皮膚、脳、呼吸器、胃腸、免疫系、心血管、内分泌(ホルモン生産)系を損傷しうる353種の産業化学物質を特定した。研究によって見つかった化学物質の25パーセントは、癌の原因になりうるものだった。
デヴィッド・ブラウン(David Brown)は老練の毒物学者であり、独立の環境健康団体、南西ペンシルヴェニア環境健康プロジェクト(Southwest Pennsylvania Environmental Health Project)の顧問を務める。ブラウンによれば、ガス田化学物質被曝には4つの経路があって、それらは水、空気、土壌、食品である。言い換えれば、わたしたちの身の回り、実質的にすべてのものだ。
水による被曝は飲むことによるが、シャワーを浴びたり、湯船に浸かったりすれば、肌に浸透したり、水蒸気を吸い込んだりして、水被曝になりうる。「空気被曝はさらにもっと込み入っています」とブラウンはいう。たとえば、激しい活動のあいだ、汚染空気の影響は大きくなる。「走り回る子どもたちは、年配の人たちよりも被曝しがちです」と彼はいう。新興学問である毒物学をもっと複雑にしているものは、化学物質が単一の作用物質としてふるまうのではなく、相乗的な効果をおよぼすことである。「ひとつの作用物質の存在が、別のものの毒性を幾倍も増大させます」とブラウンはいう。
ブラウンは、助けを求める住民の叫びに耳を貸さない政府の怠慢を遺憾に思っている。「だれも『どうしましたか? あなたの地域に病気になった人は他にもいますか?』と聞きません。わたしは倫理を教えます。わたしたちが全国民的に維持すべき道義的責任のレベルがあります。わたしたちは、とても切迫してエネルギーが必要だと決めてしまったようです…そこでわたしたちはほぼ受動的な感覚で、個人や地域を犠牲にすることにしてしまったのです」
信頼の輪
破砕採掘の影響を受けたペンシルヴェニア南西部の地域社会で筆者が取材した人たちのうち、だれももはや自前の水を飲んでいなかった。じっさい、1ケースのポーランド・スプリング(ネッスル社のボトル入り飲用水ブランド)のほうがどんなワインよりも土産にふさわしいと考えるようになった(この点、筆者ひとりではなかった)。空気を呼吸することは、別次元宇宙のリスクだった。清浄空気をボトル詰めすることはできないが、ひとりの匿名を希望する取材対象者がしてきたように、空気浄化機を寄贈することはできる。
彼女を、わたしの新しいペンシルヴェニアの友がいう「信頼の輪」の創造者と評価しよう。エネルギー産業は地域や家族を相争う敵対関係に分断する。そのような敵意は容易に見つかるが、筆者は破局のただなかに相互扶助を、それに繋がりたいという人間的な欲求の再興も見た。
ジョン・ディア重機のセールスマン、ロン・ガラは――彼の土地はペンシルヴェニアで破砕採掘の対象になった2番目の農場であったこともあり――土地を台無しにした企業に対する怒りに駆りたてられていたが、「農場はまさしく子育てのようなものです。世話をして、育んで、問題があれば気づくのです」というように、土地への深い思いにも駆りたてられていた。
ガラは、業界の活動の危険性を彼に教えてくれた、全米初の反破砕採掘団体、ペンシルヴェニアの「持続性をめざすダマスカス市民たち」(Damascus Citizens for Sustainability)の創始者、バーバラ・アリンデルを信じている。いま、彼はみずからドキュメンタリー作家となっている人びとのネットワークの中心人物だ。筆者が取材しただれもが、写真、ヴィデオ、新聞記事、みずから書いたできごとの記録といった証拠のファイルを持ち出し、見せてくれた。
「ものごとが起こるには理由があると信じなければなりません」とデヴィッド・ヘッドリーはいう。「それは以前には知らなかったとても大勢の人たちを引きあわせました。会合を開いて、共通の大義のために闘っていると、協力している人びとにとても親しく感じるようになります。あなたがた、記者も含めてです。それはわたしたちを大きな家族のようにしました。まったく独りぼっちだと思っていると、だれかがひょこり現れます。神さまは常に天使を遣わしてくださいます」
それでも、間違ってはならない。これは憂慮すべき、悪化しつつある公衆衛生緊急事態なのだ。「地域社会全体の移転、または破砕採掘の禁止がなければ、空気経由の被曝に終止符を打つことはできません」と、デヴィッド・ブラウンはニューヨーク州でおこなった最近の講演でいった。「ワシントン郡におけるわたしたちの唯一の選択肢は…住民が被曝量を減らすための方策を見つけようとすること、空気が呼吸するには格段に危険であるときに住民に警告することであってきたのです」
破砕採掘地帯に生きる人びとの保護を担わない州政府の怠慢が残した孤立状態にあって、ボランティア、ブラウンのような専門家、南西ペンシルヴェニア環境保護プロジェクトのような未熟な団体が住民の健康の新たな守護者になってきた。エンジェル、ウェイン・スミス夫妻を含め、ますます多くの破砕採掘の被害者たちがガス企業を告訴してもいる。「2000年に戻れるなら、あの人たちに行末の果てを見せて、『二度と来るな』といってやります」とエンジェルは筆者にいった。「でも、わたしたちは難局にいます。闘って、前進します」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
エレン・カンタロウは、1979年にイスラエルと西岸地帯から初めて書いてきた。トムディスパッチ常連投稿者であり。彼女の記事は、Village Voice、Grand Street、Mother Jones、Alternet、Counterpunch、ZNetに掲載され、South End Pressの選集に収録されている。彼女はまた、口述歴史三部作、Moving the Mountain: Women Working for Social Change(仮題『山を動かす~社会変革のために働く女性たち』)の主導的な著者であり、監修者。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
Twitter @TomDispatchのフォロー、 FacebookまたはTumblrをよろしく。トムディスパッチ・ブック最新刊、ニック・タース著The Changing Face of Empire: Special Ops, Drones, Proxy Fighters, Secret Bases, and Cyberwarfare(仮題『帝国の変貌する顔~特殊作戦、無人航空機、スパイ、代理戦争仕掛け人、サイバー戦争』)。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【原文】
Tomgram: Ellen Cantarow, Big Energy Means Big Pollution
Copyright ©2013 Ellen Cantarow