2012年4月20日金曜日

郡山市教育委員会担当者に会ってみれば…(2011.4.文書類、2012.4.調査報道記事)


この記事は当ブログの410日付け記事「郡山市の小中学校、校庭の使用制限解除」の続編です。今日、郡山市音楽・文化交流館(ミューカルがくと館)大ホールで、小中学生の保護者たちと市民による郡山市教育委員会に対する交渉が行われました。
出席者は、保護者・市民が15名ほど、教育委員会が学校教育課職員3名でした。
校庭などの使用制限についての通知は郡山市サイトに次のような「環境放射線モニタリングに基づく教育活動について」と標題された文書がPDFでありましたが、使用制限解除についての通知文書は見あたりません。

*** 以下、引用 ***
平成23年4月26日
保護者 様
                                              郡山市教育委員会
              環境放射線モニタリングに基づく教育活動について
各小中学校の保護者の皆様方には、本市教育に対し日頃より温かいご理解とご支援を賜り、厚く御礼を申し上げます。
さて、過日、文部科学省より環境放射線モニタリングの結果に基づく、学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安が公表されました。
○ 年間の暫定的な許容放射線量 1~20mSv/y
1 時間あたり 3.8μSv/h以上の学校は、屋外活動を 1 日あたり 1 時間以内に制限
1 時間あたり 3.8μSv/h未満の学校は、特段の制約なし

つきましては、その目安を一つの指針にしながらも本市小中学校においては、できるだけ年間の許容できる放射線量を少なくできるよう、5 月より下記の通り教育活動を行ってまいりますので、ご理解をいただきますようお願い申し上げます。
3.8μSv/h以上で国の制限下にある学校は、国の基準に従い屋外活動は 1 時間以内となりますが、屋内での活動を極力実施してまいります。
なお、校庭の表土の除去と合わせ校舎及び校舎周辺の除染を行い、制限解除を目指します。
2 その他の学校は、国の目安では制約はありませんが、本市においては、制限下の学校周辺及び比較的モニタリング数値が高い学校(教育委員会指定15校)は、校庭の表土の除去と合わせ校舎及び校舎周辺の除染を行い、数値が下がるまで校庭での活動を自粛します。部活動など外での活動は、他の施設などを使う場合は3に準ずることとします。
3 1,2以外の学校においても、国の目安では制約はありませんが、児童生徒の1日の学校生活を具体的にシュミレーションし、体育など屋外での活動を1時間以内、部活動を2時間以内とします。ただし、体育の時間はできるだけ屋内の使用に努めます。
4 3の学校においても、部活動など外での活動については、次の点に留意して行います。
① 雨天時や風が強く砂ぼこりなどがひどい場合は行いません。また、活動後のうがい、手洗い、洗顔などを励行するようにします。
② 放射線による健康被害を心配し、活動を自粛させたい場合はその旨を学校に伝えてください。決して強制するものではなく、そのことにより不当な扱いを受けたりすることはありません。
5 登下校の際は、マスクや帽子の着用に心がけ、雨天時には傘をさすなどできるだけ濡れないようにするとともに、外出後の手洗い・うがいの励行や水たまりや砂場等で遊ばないよう指導します。
6 学校においては、今後、放射線測定機を整備し、環境放射線モニタリングを行いながら児童生徒の安全安心に配慮した活動に努めてまいります。
*** 引用、終わり ***
この文書はもちろん、昨年419日、文部科学省が福島県教育委員会に通知した文書「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」にもとづいています。
*** 以下、引用 ***
福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について
標記の件について、福島県教育委員会等に発出しましたので、お知らせします。
23文科ス第134
平成23419
  福島県教育委員会
  
福島県知事
  
福島県内に附属学校を置く国立大学法人の長              殿
  
福島県内に小中高等学校を設置する学校設置会社を
  
所轄する構造改革特別区域法第12条第1
  
の認定を受けた地方公共団体の長
                                 文部科学省生涯学習政策局長   板東久美子
                                                 
初等中等教育局長  山中伸一
                                      
     科学技術・学術政策局長   合田隆史
                                                 
    スポーツ・青少年局長  布村幸彦
福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について(通知)
 去る48日に結果が取りまとめられた福島県による環境放射線モニタリングの結果及び414日に文部科学省が実施した再調査の結果について,原子力安全委員会の助言を踏まえた原子力災害対策本部の見解を受け,校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方(以下,「暫定的考え方」という。)を下記のとおり取りまとめました。
 ついては,学校(幼稚園,小学校,中学校,特別支援学校を指す。以下同じ。)の校舎・校庭等の利用に当たり,下記の点に御留意いただくとともに,所管の学校及び域内の市町村教育委員会並びに所轄の私立学校に対し,本通知の趣旨について十分御周知いただき,必要な指導・支援をお願いします。
                                     
 1. 学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安について
  学校の校舎,校庭,園舎及び園庭(以下,「校舎・校庭等」という。)の利用の判断について,現在,避難区域と設定されている区域,これから計画的避難区域や緊急時避難準備区域に設定される区域を除く地域の環境においては,次のように国際的基準を考慮した対応をすることが適当である。
  国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication109(緊急時被ばくの状況における公衆の防護のための助言)によれば,事故継続等の緊急時の状況における基準である20100mSv/年を適用する地域と,事故収束後の基準である120mSv/年を適用する地域の併存を認めている。また,ICRPは,2007年勧告を踏まえ,本年321日に改めて「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベル(※1)として,120mSv/年の範囲で考えることも可能」とする内容の声明を出している。
  このようなことから,幼児,児童及び生徒(以下,「児童生徒等」という。)が学校に通える地域においては,非常事態収束後の参考レベルの120mSv/年を学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし,今後できる限り,児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切であると考えられる。
1 「参考レベル」: これを上回る線量を受けることは不適切と判断されるが,合理的に達成できる範囲で,線量の低減を図ることとされているレベル。
  また,児童生徒等の受ける線量を考慮する上で,16時間の屋内(木造),8時間の屋外活動の生活パターンを想定すると,20mSv/年に到達する空間線量率は,屋外38μSv/時間,屋内(木造)152μSv/時間である。したがって,これを下回る学校では,児童生徒等が平常どおりの活動によって受ける線量が20mSv/年を超えることはないと考えられる。さらに,学校での生活は校舎・園舎内で過ごす割合が相当を占めるため,学校の校庭・園庭において38μSv/時間以上を示した場合においても,校舎・園舎内での活動を中心とする生活を確保することなどにより,児童生徒等の受ける線量が20mSv/年を超えることはないと考えられる。
2. 福島県における学校を対象とした環境放射線モニタリングの結果について
1)文部科学省による再調査により,校庭・園庭で38μSv/時間(幼稚園,小学校,特別支援学校については50cm高さ,中学校については1m高さの数値:以下同じ)以上の空間線量率が測定された学校については,別添に示す生活上の留意事項に配慮するとともに,当面,校庭・園庭での活動を1日あたり1時間程度にするなど,学校内外での屋外活動をなるべく制限することが適当である。
  なお,これらの学校については,414日に実施した再調査と同じ条件で国により再度の調査をおおむね1週間毎に行い,空間線量率が38μSv/時間を下回り,また,翌日以降,再度調査して38μSv/時間を下回る値が測定された場合には,空間線量率の十分な低下が確認されたものとして,(2)と同様に扱うこととする。さらに,校庭・園庭の空間線量率の低下の傾向が見られない学校については,国により校庭・園庭の土壌について調査を実施することも検討する。
2)文部科学省による再調査により校庭・園庭で38μSv/時間未満の空間線量率が測定された学校については,校舎・校庭等を平常どおり利用して差し支えない。
3)(1)及び(2)の学校については,児童生徒等の受ける線量が継続的に低く抑えられているかを確認するため,今後,国において福島県と連携し,継続的なモニタリングを実施する。
3.留意点
1)この「暫定的考え方」は,平成233月に発生した福島第一原子力発電所の事故を受け,平成234月以降,夏季休業終了(おおむね8月下旬)までの期間を対象とした暫定的なものとする。
  今後,事態の変化により,本「暫定的考え方」の内容の変更や措置の追加を行うことがある。
2)避難区域並びに今後設定される予定の計画的避難区域及び緊急時避難準備区域に所在する学校については,校舎・校庭等の利用は行わないこととされている。
3)高等学校及び専修学校・各種学校についても,この「暫定的考え方」の2.(1),(2)を参考に配慮されることが望ましい。
4)原子力安全委員会の助言を踏まえた原子力災害対策本部の見解は文部科学省のウェブサイトで確認できる。


 別添
        児童生徒等が受ける線量をできるだけ低く抑えるために取り得る学校における生活上の留意事項
 以下の事項は,これらが遵守されないと健康が守られないということではなく,可能な範囲で児童生徒等が受ける線量をできるだけ低く抑えるためのものである。
1校庭・園庭等の屋外での活動後等には,手や顔を洗い,うがいをする。
2土や砂を口に入れないように注意する(特に乳幼児は,保育所や幼稚園において砂場の利用を控えるなど注意が必要。)。
3土や砂が口に入った場合には,よくうがいをする。
4登校・登園時,帰宅時に靴の泥をできるだけ落とす。
5土ぼこりや砂ぼこりが多いときには窓を閉める。
お問い合わせ先
原子力災害対策支援本部(放射線の影響に関すること)
電話番号:03-5253-4111(内線4605
スポーツ・青少年局学校健康教育課保健管理係(学校に関すること)
電話番号:03-5253-4111(内線2976

*** 引用、終わり ***
ところが、この通知について、1年後の418日付け東京新聞は次のように報道しています。
記事 
画像 
*** 以下、引用 *** 

校庭線量 非公開で緩和 文科省 昨年4月

2012418 0701

 目安は、文科省が昨年四月十九日、年間の被ばく線量二〇ミリシーベルト(一ミリシーベルトは一〇〇〇マイクロシーベルト)から逆算し、毎時三・八マイクロシーベルトにすると発表。数字は国際放射線防護委員会(ICRP)が示した「事故からの復興時は年一~二〇ミリシーベルト」との基準を踏まえた値だったが、保護者たちから「子どもには高すぎる」と批判が噴出した。
 東京電力福島第一原発事故を受け、文部科学省が昨年四月、福島県で校庭利用を制限する放射線量の目安を、当初は計器の誤差があっても安全が守れるよう毎時三マイクロシーベルト以上にする方針だったのに、後に三・八マイクロシーベルトに緩くしていたことが分かった。本紙が情報公開請求で原子力安全委員会から得た文科省の内部文書で判明した。どのように目安が決まったのか、具体的な経過が分かったのは初めて。 (榊原智康)
 内部文書によると文科省と安全委は昨年四月九日から十六日にかけて四回、非公開で協議。文科省は十日までは、三・八マイクロシーベルトを軸としながらも「測定誤差を考慮」「安全性に配慮」などの理由を挙げ、小数点以下は切り捨て、三マイクロシーベルトを目安に設定する方針を示していた。
 さらに一・九~三マイクロシーベルトと比較的線量の高い校庭では、制限対象にはしないものの、子どもたちにマスクをさせるなど内部被ばく対策を追加することも盛り込まれた。
 しかし、十二日に一転、三・八マイクロシーベルトに緩める案を提示。安全委の担当者によると、この際、文科省の担当者は「三マイクロシーベルトでは、対象の学校が多くなり、(対応が)大変だ」と説明した。また別の理由として、半減期が八日と短い放射性ヨウ素が減って放射線量が次第に低下するため、目安を緩くしても年間被ばく量を年二〇ミリシーベルト以下に抑えられると説明したという。
 協議とほぼ同時期に福島県が実施した校庭の放射線量調査では目安を三・八マイクロシーベルトにすると、校庭利用の制限がかかるのは四十三校だったのに対し三マイクロシーベルトと厳しくすると百三十七校と三倍以上に膨れあがる、との結果だった。
 文科省の担当者は取材に「安全委と議論を積み重ねながら、同時に省内でも議論を続けた」と説明し、当初案の三マイクロシーベルトは議論途中の数字だったと強調した。
(東京新聞)


*** 引用、終わり ***
いかがでしょうか?
文科省の担当者は「三マイクロシーベルトでは、対象の学校が多くなり、(対応が)大変だ」と説明したという内幕が暴露されるような不誠実な態度で策定された通知にもとづく郡山市教育委員会の文書が子どもたちの健康に留意したものでないことは、あまりにも明らかです。
ちなみに、健康や安全に関して、前者では「以下の事項は,これらが遵守されないと健康が守られないということではなく」という安請け合い、後者では「児童生徒の安全安心に配慮した活動に努めてまいります」というリップサービスが見受けられるだけです。
さて、ミューカルがくと館は、これまで震災を受けて被災者支援の総合拠点として使用されてきたのですが、422日(日)に一部開館することになり、今日の交渉会場に指定された大ホールでは、楽器の搬入など式典の準備で落ち着かず、しかも交渉時間を30分に制限されては、実のある話し合いにはとてもなりません。
たとえば小生としては、東京新聞の記事を示し、文部科学省の不誠実さを指摘し、また小生の居住する校区では高線量のなかを小学生たちがマスクも着用せずに集団登下校していると訴え、教育委員会による安全指導さえも機能していないと指摘することができただけです。
とても欲求不満の残る交渉でした。ほかのみなさんも同じ思いでしょう。
せめて落ち着いた場所で、納得ができるまで話し合いたいものです。


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