この記事はメーリング・リストに送信されたものを投稿者KIさん(長崎)の許可をいただいて転載したものです。
Yuima21c
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チェルノブイリ原発事故(1986年)から4年後の1990年に、広河隆一氏と、朝日新聞取材班の両者が、ベラルーシの同一人物をそれぞれ取材しています。ベラルーシではこうだったけれども、福島では、こうではないことを祈るような気持ちで、いつもメールを書いています。
KI(長崎)
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(広河隆一著、岩波新書、1991年)より
美しいミンスクの町で、私はエフゲニー・ペトリャエフに会った。彼は白ロシア(ベラルーシ)・エコロジー同盟の副会長で、ミンスク大学の教授である。彼は私の目の前に、白い点が幾つも写しこまれた写真を並べた。これは主としてプルトニウムからなる放射能の微粒子で「ホット・パーティクル」といい、死んだ人の肺を切りとってフィルムに感光させたのだという。
彼は白ロシア全域を調査して、特にゴメリ地方からブレスト地方にわたってこのホット・パーティクルが多いことを発見した。細かい粒子は空気中に長く留まり、人びとは汚染された土地に住んでいるうちに、このホット・パーティクルを肺に吸い込むわけだ。
「私たちは、亡くなった人の肺の組織を調べました。そして、恐ろしいことがわかってきたのです。これは10-15グラムの肺の組織の写真です。こんなに白い点が写り込んだのです。おそらく人の肺の中には、数千のホット・パーティクルがあるということになります。200人のサンプル調査をしましたが、そのうちの70%の人からホット・パーティクルが見つかったのです。調査対象はゴメリ地方だけでなくミンスクの人も入っていましたから、白ロシアのほとんどの人がホット・パーティクルを持っている可能性があるのです。
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(朝日新聞「原発問題」取材班著、朝日新聞社、1990年)より
(プルトニウムの汚染の実態について)最近、意外なところから手がかりとなるデータが出た。ミンスクにある白ロシア大学放射線化学研究室のエフゲニー・ペトリャエフ教授の研究成果である。大学の実験棟で白衣を着たペトリャエフ教授に会った。
「これが何かわかりますか」突然、焼けこげた木片のようなものを見せられた。研究室の机の上に並んだ2、30個のシャーレの中にも同じようなものがある。答えにつまっていると、教授は自分の胸をたたきながら教えてくれた。「人間の肺の一部です。白ロシア共和国の住民の肺の中からプルトニウムの微粒子がたくさん見つかったのです」
ペトリャエフ教授が共和国内の知り合いの医師にたのんで入手した肺のサンプルはおよそ200人分。チェルノブイリ原発の北に位置し、放射能汚染地区がたくさんあるゴメル州の住民がほとんどで、交通事故や一般的な病気で死んだ11歳から70歳までの男女。このうち7割のサンプルからホット・パーティクルが検出された。
肺の中にあった粒子の直径は0.01ミクロンから4ミクロン。こまかなものは肺の深部、大きなものは気管支の周辺に付着していた。1人の肺の中にあったホット・パーティクルの数は、数百から2万前後まで。1つの粒子の放射能量はさまざまだ。セシウムのように尿から排出されることはなく、死ぬまで肺の中にとどまり放射線を出し続ける。
(中略)この結果が出るまで、多くの学者は「大気中のホット・パーティクルはわずかで、住民の健康に悪影響はない」と推測していた。ペトリャエフ教授の研究成果はこの予測を完全に覆した。
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