昨日、47番目の遺体が見つかり、御嶽火山の噴火1は日本の過去88年間で死者数が最大の事態にいたった。さらに大きな火山、東京からほんの145キロ先に横たわる富士山の脅威すら心配しないわけにはいかない。このため、地震学者らと反核活動家たちが揃って、先進国世界で随一の地震多発国において、2011年3月の記録的な地震がフクシマ危機2を招いて以来、停止されてきた原子炉48基を再稼働すべきなのかと改めて問うている。
筆者は陣営“無所属”であり、日陰者になった核産業に対する安倍晋三首相の贔屓を社会が是認していないせいだけでもない。筆者の主張――以前に論じたもの――は、筆者が共に暮らしている1億2600万の日本人一人ひとりの安全と同じほど、日本経済の将来に関わっている。
御嶽山の悲劇的な爆発は、いわゆるリング・オブ・ファイアー、環太平洋火山帯沿いであるという日本の地理的位置の暗い側面をあらわにした。だが、それはまた、日本が天然資源という点で呪われているというより恵まれていることを思い出させる時宜を得た告知になる。日本は中国やインドが化石燃料で窒息しているときに、水力、風力、そしてもっとも重要なものとして地熱という、羨むに足る資源ミックスを所有し、エネルギー需要を充足できるのである。
今週、日本の原子力依存を終わらせるキャンペーンにさらに踏み込んだ、安部氏のかつての相談相手、小泉純一郎氏に耳を傾けるといい。元首相は9月29日、「御嶽山の噴火は専門家でも想定外といっている。地震、津波、噴火も各地で起こる。日本は原発をやっちゃいけない国だ」と記者団に語った4。
御嶽山は、地震検知器とGPS(全地球測位システム)技術によって、原子炉の脅威になる噴火を予測できるという原子力ロビーの主張を打ち砕いた。この噴火は前触れもなく――巨大な稲妻のように――突如起こった、と被災者らはいう。日本に100余りある他の火山のどれかが爆発するとわかっていたとしても、東京電力や九州電力は原子炉を移動したり、巨大な防護ドームでひょいと覆うわけにはいかない。日本の当局にできるのは、周辺地域の住民を避難させ、死亡者数をゼロ人ないし2人ほど減らすことだけである。
日本はいま、デイヴィッド・スズキ5氏のような環境論者らの地熱に転換すべきという助言に留意しはじめている。カナダ人遺伝学者であり、著述家でもあるスズキ氏は2012年、(再生可能エネルギーに多額の投資をしてきた)ソフトバンク創業者、孫正義氏に乞われて、日本自然エネルギー財団の理事に就任した。スズキ氏はそれ以来、原子炉を解体すべきだと日本政府に働きかけ、恥ずかしい思いをさせる機会を滅多なことでは逃さない。
スズキ氏は2013年3月、福島原発メルトダウン2周年の日、「地熱は巨大なエネルギー源になりえますし、非常に迅速に開発できます。原発再稼働の動きのなかで、この機会は無駄にされています」とブルームバーグに語った。
かつて2012年、日本では再生可能エネルギー開発推進について大いに論じられはじめた。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス5は同年の記事で、日本で稼働中の地熱発電容量は539メガワットであり、風力発電のたかだか4分の1、ソーラー発電のほぼ14分の1であると伝えた。ワシントンDCの地熱エネルギー協会は2012年5月、日本の地熱発電開発可能容量が23,000メガワットであると報告した。そして2012年12月、安部氏の自民党が政権に復帰した。日本の単細胞的な原発中心主義もやはり復活した。
地熱は比較的に安定したエネルギー源であり、風力やソーラーのようには変動せず、しかも捕捉手段はすでに確立している。障害は資金と時間である。防衛関連の請負業者とアメリカ政府の腐れ縁に相当するものが、日本の原発ムラである。日本の原発および関連業界に対する途方もない投資が強力な利権集団を生み出し、同国の企業ロビーを異様なものにしている。この制度的な再生可能エネルギー忌避をさらに増長させているものが、アベノミクス6の主柱のひとつ――原発技術の海外セールスによる安価な国内電力と税収である。
それでも小泉氏が論じるように、環境適合エネルギー革命は、円安と財政的な呼び水のできないこと、雇用、富、グローバルな評価を創出し、量的なゆとりを日本にもたらすだろう。それなのに、地下に眠る膨大なエネルギー7を活用して電力を生産する努力はほとんど払われず、ごくまれである。
安倍総裁の自民党が東京オリンピック2020のために散財する巨額の資金の一部を再生可能エネルギー開発躍進のために投資するなら、日本の将来はもっと輝かしくなり、活況を呈することになるだろう。首相はそれに反して、旧時代経済の原子炉に倍賭けしており、ますます自然の怒りを呼ぶリスクを招こうとしている。御嶽山の噴火は、日本が進路を変えるチャンスなのだ。**********
To contact the author of this article: William Pesek at wpesek@bloomberg.net
To contact the editor responsible for this article: Nisid Hajari at nhajari@bloomberg.net
ウィリアム・ペセクはブルームバーグ・ヴューの東京駐在コラムニストであり、アジア太平洋地域全般の経済、市場、政治について執筆。ジャーナリズム関連の受賞歴は、全米ビジネス編集者・記者協会の2010年論説賞など。Read more.
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3.
Asahi -- Sep 30:
Koizumi points to Mt. Ontakesan eruption as another reason to end nuclear dependence
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7.
Potential
Geothermal Energy in Japan
5/12/2013 3 Comments by Masato Nakazawa
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