2015年3月17日火曜日

アーニー・ガンダーセン「フクシマ: 二度と繰り返してはならない人災」

エコロジスト ECOLOGIST
フクシマ: 二度と繰り返してはならない人災
Fukushima: an unnatural disaster that must never be repeated
アーニー・ガンダーセン Arnie Gundersen 2015311
4年前の今日、フクシマで勃発した破局的惨事は天災でなかった、とアーニー・ガンダーセンは書く。東京電力と規制当局は津波の危険性に気づいていたが、安全よりもお金を優先した。核の力は、いまだに一夜にして一国を破壊しかねない唯一のエネルギーである――いまこそ、廃絶のとき!
2011年3月16日、福島第一原発の被災状況。左:3号機、右:4号機
Photo: deedavee easyflow via Flickr (CC BY-SA 2.0).
福島第一原子力発電所で311日の悲劇的な三重メルトダウンがはじまってから、4年たちました。収束のときは、視野に入ってきません。
福島第一原発の惨事は人災だった、これをはっきりさせておきましょう。東京電力と実に世界の核産業全体は、あたかも自分たちが天災の被害者であるかのように振舞っていますが、実のところ、核産業はこの茶番劇の真犯人なのです。
アメリカの核企業、ゼネラル・エレクトリックとエバスコが福島第一原発を建造したとき、彼らには巨大津波が現実のリスクであることがわかっていました。
想定しうる最悪の事態に備えて設計すれば、原子力の採算が合わなくなるので、核産業は資金を節約し、経済性を安全性に優先させたのです。これまで4年間にわたる福島第一原発のゴタゴタ続きは、このような歪んだ優先順位の結果です。
東京電力、日本政府の規制当局、世界の核産業ははなはだしく、放射能の初期放出量を過小評価し、惨事の規模を過小評価し、不作為の影響を過小評価しました。日本国民は、これからの数十年にわたって、その代価を支払うことになるでしょう。
人々を守るのか? あるいは、核産業を守るのか?
東京電力、あるいは日本政府が無能なのでしょうか? わたしは、そうは思いません。わたしはこの4年間を振り返って、東京電力、日本の規制当局者、世界の規制当局が切に原子力の存続を願うあまり、東京電力の救済に全力をあげ、公僕として奉仕するはずの国民を忘れてしまったのだと考えます。
スリーマイル・アイランド、チェルノブイリ、そしてまたもや福島第一原発――破局的事故が起こるたびに、事故対応に当たる企業、諸国政府、当局機関は、人びとを守るために働くのではなく、原子力の稼働継続と未来の可能性を守るために働きました。
この事故処理の不手際は、原子力、融資機関、業界収益の継続に利害関係のある当局でなく、人びとの安全を最優先する組織が緊急対応の指揮をとらねばならないことをわたしたちに見せつけました。
世界の核産業、規制当局、諸国政府が核の安全神話の明白な崩壊による惨状を最小化しようと企てたのは、なぜでしょう? 答は、お金にあります。
世界中どこでも、銀行と政府は原子力発電所の稼働継続による金銭的成功に莫大な投資をしており、自国民に押し付けられる健康への影響や個人的損失は眼中にありません。
一夜にして一国を滅ぼしかねないのは核の力だけ
世界の諸国政府は福島第一原発の三重メルトダウンを受けて、将来の世代の健康と福利を顧慮することなく、金がかかり、リスクのある原子力を押し付けることによって、自国民との社会契約を破棄しました。日本国民と日本政府の社会契約は、おそらく今後の数十年間、間違いなく無効になりました。
1965年の福島第一原発構想時に津波リスクを無視したことにつながったのと同じ、歪んだ意思決定過程が、いまだに新しい原発の建設と旧い原発の稼働に適用されています。核の安全神話に対する反証となった5度のメルトダウンが過去35年間に起こっているにもかかわらず、古いパラダイムは変わらず、これからも変わらないようです。
あらゆる発電方式のうちで、核テクノロジーは一夜にして一国の枠組みを破壊しかねない唯一の方式です。ミハイル・ゴルバチョフはその回顧録で、ソ連邦を崩壊させたのはペレストロイカ[改革]ではなく、チェルノブイリ事故だったと述べています。
菅直人、小泉純一郎、中曽根康弘、野田佳彦、鳩山由紀夫といった、リベラルから保守まで網羅した5名の元日本国首相が原子力に反対しています。また最近、ヨーロッパで、ドイツの元物理学者であるアンゲラ・メルケル首相が国を率いて、2022年の原発稼働ゼロをめざしています。
政治意思さえあれば、諸国はいま一度の核惨事の勃発を待たずに原子力から自国を解き放つことができます。
福島第一原発の悲劇的事故勃発のさい、日本国首相だった菅直人は(2011年ニューヨーク医学アカデミー『終わりなき危機』シンポジウムで)次のように述べています――
「わが国の国土の半分を失い、国民の半分を非難させるリスクを考慮した結果、わたしの結論は、原子力発電所を保有しないことが最も安全なエネルギー政策であるということです」
[訳注:本文中のリンクは割愛しました。原文を参照してください――http://www.theecologist.org/blogs_and_comments/commentators/2787281/fukushima_an_unnatural_disaster_that_must_never_be_repeated.html
【筆者】 

アーニー・ガンダーセン(Arnie Gundersenは、米国の著名な核エンジニアであり、内部告発者。ウェブサイトFairewinds.comによって、数百万の人びとに知られる。今週、2011311日、日本の福島第一原子力発電所で勃発した悲劇的な三重メルトダウンを記念して、庶民院[英国下院]の集い、その他の災害に関する催しで講演するために英国に滞在している。

Event tonight:  Arnie Gundersen and Dr Ian Fairlie, international expert on radiation and health, are both speaking in Keswick, Cumbria, at the Skiddaw Hotel - 7:30 - 9.30pm. Event organised by Radiation-Free Lakelands.
Reference links, books, articles
Crisis Without End, From the Symposium at the New York Academy of Medicine, The New Press, ISBN 978-1-59558-960-6, 2014
The Ecologist: 'Fukushima and the institutional invisibility of nuclear disaster', Dr. John Downer, December 20, 2014.
The Ecologist: 'All fouled up - Fukushima four years after the catastrophe', Dr Jim Green, 11th March 2015.

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