2015年3月22日日曜日

オーストラリアン紙「わが国仕込みの日本人スパイ」


わが国仕込みのスパイ
~オーストラリア保安情報庁が日本人を訓練

オーストラリアン紙 THE AUSTRALIAN 2015321
ポールマレイ Paul Maley, 在シドニー・国家安全保障通信員
Source: AFP
日本政府が第二次世界大戦後初の対外スパイ機関を設立しようと動いているいま、オーストラリアの海外諜報機関[ASIA=オーストラリア保安情報庁]は日本人スパイに諜報ノウハウ訓練を施している。
日本政府が、北朝鮮の動き、中国の台頭、イスラム・テロなど、切迫してくる安全保障問題に関する情報を収集するために海外諜報機関の設置を決定して以来、ASISが日本人スパイ候補要員の訓練で中心的な役割を担っているとウィークエンド・オーストラリアン誌が明らかにした。
日本のスパイ機関設置の意向は、ウィキリークスが2011年に公表した電文で注意を引いた。
ウィークエンド・オーストラリアンによれば、公式訓練プログラムの一環として、複数の日本人諜報部員がオーストラリアに派遣されている。
日本はこのような海外諜報機関を備えていないが、日本の安倍晋三首相は積極的で外向き志向の対外・安全保障政策の一環として、海外機密情報収集能力を構築する欲求を表明してきた。
2008年から日本の国家安全保障部局の要員たちがオーストラリアに入国して、日本が諜報能力を徐々にでも構築するために、ASISの訓練を受けてきた。
日本の憲法と外交政策は平和主義に依拠しているので、日本政府が独自にスパイ機関を保有すべきであるとする考えは論争を招く。
安部首相はこの提案を支持しているが、日本の国会と日本国民を彼に同調させる必要性を意識している。
このプログラムは日豪間で緊密化している安全保障・通商関係の一端であり、部分的には台頭する中国に対向する両国共有の欲求にもとづいている。
ウィークエンド・オーストラリアンは、このプログラムで20名以上の士官がすでに訓練されたと推測している。
その全員が、いわゆる「認定済み」、すなわち各人の所属および身分が前もってオーストラリア政府に情報開示されている士官だった。
ジュリー・ビショップ外相は、「諜報機関にかかわる特定の関係の本質」についてコメントしないと述べた。
「しかしながら、オーストラリアの安全保障部局は諸外国のそれと相応する機関の多くと関係を維持しております」と、外相はウィークエンド・オーストラリアンに語った。
「安全保障部局間の協力と協調は、平和と安全保障を維持するための世界的な取り組みに欠かせない要素です」
ウィークエンド・オーストラリアンは、オーストラリアに派遣された日本人士官のうち、数名が、ヴィクトリア州海岸沖のスワン島にあるASIS訓練施設に送られなかったものの、ヴィクトリア州内で訓練を受けたことを把握している。
オーストラリア国防軍(ADF)は150ヘクタールの特殊空挺部隊(SAS)訓練演習用地を使用しており、ASISと合同で作戦を実施していると伝えられている。
ASIS施設のさまざまな装備のなかに、模造のホテル客室と大使館事務所があり、オーストラリアの諜報部員がスパイ技術の習得に使っている。
ウィークエンド・オーストラリアンは、スパイ訓練の提案がASISのニック・ワーナー長官によって提出され、旧労働官庁によって認可されたことを突き止めている。
ボブ・カー前外相は、諜報や安全保障の問題を論じないといって、コメントを拒んだ。
訓練は2008年あたりから数年のあいだに実施されたと推測され、ウィークエンド・オーストラリアンのいう「出来高払い」制で実行された。ウィキリークスが2011年にオンライン公開した電文が、北朝鮮、および日本の地域における立場に直接的な脅威となるほど急速に台頭する中国に対する日本政府の諜報を改善するために、対外スパイ機関を設置する日本の意図を詳細に明かしている。
日本はまた、潜在的なテロの脅威、イスラム国に処刑された二人の日本人捕虜、湯川陽菜と後藤健二の死によって、ますます切迫している野心に関する情報を収集したいと切望している。
ウィキリークス公開電文によれば、2008年におこなわれた当時のランドール・フォート米・国務省情報研究局長と内閣情報調査研究室の三谷英史・内閣情報官の会話を駐日米国大使館が米国政府に伝えており、三谷氏は「人的情報収集能力」が日本政府にとって優先事項になっていると述べている。
「日本側は知識、経験、スパイ/要員が不足していると理解しているので、この手順が非常に時間をかけて進められるという決定がなされた。新たな要員の訓練過程がすぐにでもスタートする」と、電文に書かれている。
日本は第二次世界大戦後、対外スパイ機関を保持してこなかった。しかし、近年になって、地域における優位な立場が色あせたことから、対外政策と安全保障に対する同国の姿勢がますます前のめりになっている。
安部首相は昨年、日本国憲法第9条、すなわち日本の軍隊が自衛以外の能力を超えて行動することを禁じる、いわゆる「平和条項」の解釈を改訂した。
安部首相は、日本が米国などの同盟国を支援するために軍隊を運用できるようになるべきだと主張した。
日豪間協力も近年になって、やはり強化されている。
1月には、締結まで7年間を要した自由貿易協定が発効しており、それをトニー・アボット首相は、50年来で「もっとも重要な二国間経済協定」であると称した。
またアボット政権は昨年、老朽化したコリンズ級潜水艦に2020年代中ごろから代替するオーストラリアの新規潜水艦を建造するのに、日本が好ましい供給国であると示唆している。
近年になって、台頭する中国への対抗策を日本が追求するにともない、日豪両政府間の防衛協力もまた強化されている。

【クレジット】

原文:http://www.theaustralian.com.au/national-affairs/foreign-affairs/spies-like-us-asis-training-japanese/story-fn59nm2j-1227272245838
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【付録】


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