2015年11月26日木曜日

ハーヴィー・ワッサーマン【評論】核反応炉の存在がイスラム国を終末的な脅威に

 EcoWatch

核反応炉の存在がイスラム国を終末的な脅威に

ハーヴィー・ワッサーマンHarvey Wasserman
20151125 

あなたがこの記事を読んでいる今、テロ攻撃がウクライナの原子炉を新たなチェルノブイリ規模の破局的事故の瀬戸際に陥れたばかりである。

送電線が爆破されたのだ。このため、少なくとも2か所の大規模な核発電所が電源遮断「危機」に陥った。緊急予備電源がなければ、これらの核反応炉は放射能の塊である炉心と使用済み燃料プールの冷却材を喪失するところだった。そうなれば、フクシマのように溶融したり、爆発したりしかねなかった。

それにしても、果てしない「常態的な恐怖そのもの」のイスラム国報道のさなか、この破局一歩手前の事態に対して、商業メディアは不気味なまでに沈黙を守っている。

ウクライナ北西部のリウネ核発電所。Photo credit: Wikimedia commons

企業メディアはまた、テロの時代にわたしたちの惑星を守るために不可欠な措置、すなわちすべての原子炉を閉鎖する必要性に向き合ってもいない。

世界に430基あまりある認可済み商業用反応炉は、数百万人を殺害し、地球の膨大な部分を破壊し、世界経済を壊滅させかねない放射能の黙示録的な破局を好きなときに勃発させる力をイスラム国のようなテロ集団に与えている。

チェルノブイリの1986年惨事は100万人以上の人びとを殺した。

フクシマ近辺の成人や子どもたちの発症率が急上昇している。

スリーマイル・アイランドの風下に住んでいるアメリカ人が大量に死んだ

ドイツ、その他の国ぐにの重要な科学研究は、事故がないとしても、近隣の反応炉からの放射能放出を、癌などの病気による人間の死亡率と関連付けている。

デトロイト近郊に所在するフェルミ1反応炉の1966年メルトダウン事故は、少なくとも1億ドルの損害になった。スリーマイル・アイランドの1979年メルトダウン事故は、9億ドルの資産を200億ドルの負債に変えてしまった。チェルノブイリは、ウクライナ、ベラルーシ、旧ソ連に少なくとも5000億ドルの損害をもたらした。フクシマは600億ドルの資産を帳消しにし、日本に数兆ドル規模の損害を与えるかもしれず、恒久的に日本経済をむしばむことになる。

上記のすべてが世界経済に見積もり不可能な規模の損害を与えている。放射性炭素と反応炉廃熱のむやみな放出が、わたしたちの気候の均衡を乱し、海を放射能で汚染し、管理するすべのない廃棄物を生みだしている。

そのような破局的事態をさらに引き起こす、イスラム国、その他のテロ集団の能力は、問題にされることもなく、拡大している。

パリにおけるイスラム国の流血の警告にもかかわらず、すべての商業用反応炉は危険にさらされたままである。

反応炉はそれ自体が崩壊しようとしている。オハイオ州はデイヴィス・ベッセの遮蔽建屋は実質的に解体している。

ディアブロ・キャニオンは12本のカリフォルニア断層線に取り囲まれている。

ネブラスカ州のフォート・カルフーンは洪水で水浸しになった。

地震が、オハイオ州のペリーとヴァージニア州のノース・アンナに被害を与えた。

それにまた、ニューヨークの世界貿易センターに対する911攻撃に関する公式報告は、アルカイダが原子炉を標的にすることを考慮していたと確認している。

双子ビルの45マイル北方、インディアン・ポイントを攻撃していれば、数百万のアメリカ人が死んでいただろう。数兆ドルの物的損害が国家経済を滅ぼしていただろう。数十億エーカーの土地、それにまた無数の湖沼や河川、大西洋の大部分が汚染されていただろう。

CNNやフォックス・ニュースなどのヘッドラインは、この種の破局的事態がまさしくイスラム国の狙いであると叫んでいる。だが、世界でますます脆弱になっていく反応炉との明白な関連を避けている。

ウクライナの電力会社、ユクレナーゴのユーリー・カティチ副社長は、ウクライナ南部のザポローズスカヤ核施設が、遠く離れた送電線に対するテロ攻撃によって「緊急停止」を余儀なくされる事態になれば、「非常に危険」であると語った。反応炉そのものに対する直接攻撃による被害となれば、わたしたちは想像できるだけである。

2011年の地震と津波はフクシマの予備用発電機を破壊し、反応炉3基のメルトダウンと4度の爆発を招いた。

少なくとも米国の反応炉36基の上流にあるダムの破壊による津波に匹敵する洪水は、フクシマで勃発した事態を再現しかねない。

フランスに58基、米国に99基の反応炉がある。イスラム国が見かけと同じほどに無謀であり、無慈悲であれば、そのどれひとつとして、安全は保証されない。

だから、わたしたちの政府、政治家たち、メディアが安全保障を叫ぶなら、わたしたちはわが身を核の呪いから解放しなければならない。

イスラム国が、わが国の企業の化石燃料に対する耽溺におおむねもとづいた米国のイラク侵攻によって成長したということも忘れてはならない。

この地球規模の悪夢の明白な解消策は、再生可能エネルギー化された世界への移行を加速することである。

テロ集団が太陽電池パネルを爆破しても、破局的事態を勃発させることはできない。

【筆者】

ハーヴィー・ワッサーマン(Harvey Wasserman)は、“SOLARTOPIA! OUR GREEN-POWERED EARTH”“[『ソーラートピア!わたしたちのグリーン電力化された地球』]の著者。来年には、“AMERICA AT THE BRINK OF REBIRTH: THE ORGANIC SPIRAL OF U.S. HISTORY”[『再生間際のアメリカ~米国史の有機スパイラル』]を出版予定。

【クレジット】

EcoWatch, “Nuclear Reactors Make ISIS an Apocalyptic Threat,” by Harvey Wasserman;

【ワッサーマン記事】

2013923

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