トリシティ・ヘラルド紙
[訳注]トリシティズ(Tri-Cities)とは、米国ワシントン州ハンフォード核保留区の後背地に位置する3自治体、ケニウィック、パスコ、リッチランドを中心とする広域都市圏。人口は2010年国勢調査で253,540人。
プルトニウム・ウラニウム分離処理施設の2号トンネル安定化作業が始まる
ワシントン州ハンフォード、プルトニウム・ウラニウム抽出(PUREX)施設の2号トンネルの内部を固定化する作業工程は、ほぼ14パーセント完了している。作業班は2018年10月1日時点で、長さ508メートルのトンネルに詰め込む充填剤4100立方メートルを注入し終えた。By Hanford Site
ハンフォード作業員500名余りが10月26日、退避を余儀なくされたわけ
アネッテ・キャリー ANNETTE
CARY acary@tricityherald.com
2018年10月26日
【ワシントン州リッチランド発】ハンフォード核保留区の放射性廃棄物保管トンネルで10月26日金曜日の朝、蒸気が噴き出しているのが目撃され、保留区中心部にいた500名を超える作業員が屋内退避を命じられた。
屋内退避は午前6時3分に発令され、その後4時間以上たって、ハンフォード職員らが放射性物質の空中放出がなかったことを確認したあと、解除された。
通常の作業日の場合、200東部区域に約3,300人の作業員がいる。だが、10月26日は、22日から26日まで通して就労した多くの従業員らの休日に当たっていた。
10月26日に出勤する予定だった作業員の一部は、避難の発令時、現場に到着していなかった。
フォームの始まり
そのトンネルは、劣化したり故障したりし、しかも放射性廃棄物でひどく汚染された装置類を積載した鉄道貨車28両を格納している。
蒸気が目撃された10月26日の早朝、最後に追加されたコンクリート層が養生中であり、次の層の充填剤をポンプでトンネルの内部に注入することになっていた。
特殊な呼吸器を装備したハンフォード作業員らが10月26日、廃棄物保管トンネルに接続する小さな建屋から蒸気が立ち上っているのを目撃されたあと、トンネル沿いの放射線を検査している。背景に元PUREX施設が見える。Courtesy
Department of Energy
エネルギー省広報官、マーク・ヒーターによれば、退避は敷地中心部の200東部区域にいた作業員らのための予防措置として発令されたという。
非常事態が宣言されることなく、リッチランド連邦ビルの応急対策センターは動かなかった。
当日朝の後ほど、防護服を着用し、外気濾過呼吸器を装備した作業班がトンネル周辺の作業区域に送り込まれ、放射能汚染の調査と検査を実施した。
職員らによれば、放射能漏れの兆候は見つからなかったという。
作業員らはまた、トンネル内の照明器具やカメラ、空気試料採取装置に電力を供給する発電機を起動した。
カメラは、トンネル内の充填剤養生に伴う蒸気を見せた。養生期間には熱と湿気が発生するので、トンネル内の水蒸気は予想されたことだった。
だが、トンネルの一端に接続した建屋の見逃されている穴から水蒸気が大気中に漏れ出すのは予想外のことだった。トンネルから漏れた暖気が朝の冷気に触れて、水蒸気が目に見えた。
その建屋は密封されていて、トンネルのPUREX処理施設に最も近い末端の鋼鉄製ドアを動かす装置を格納しており、廃棄物を積載した鉄道貨車はそのドアからトンネル内に押し入れられた。ドアの諸元は、厚さ2.1 m、高さ7.3 m、幅6.7 mである。
貨車が押し入れられて、保管されることになったのは、おおむね1964年から96年にかけてのことである。
退避警報の発令中、作業員らは屋内に留まっており、窓やドアは閉じられ、換気装置も止められていた。4時間の大半、飲食も禁じられていた。
金曜日の異常事態で退避を余儀なくされた作業員の数は、530名ないし580名だったと推測されている。
上空から見たPUREX処理施設の景観のうち、黄色の円で囲った建屋で金曜日の朝、水蒸気が目撃された。その建屋が、長さ518メートルのトンネルの入口になっている。その横の短い方のトンネルは2017年5月に部分的な崩落事故を起こした。Courtesy
Department of Energy
200東部区域における170億ドル[約2兆円]をかけたガラス化施設の建設現場に350名ないし400名ほどの作業員がいた。
さらにまた除染請負業者――ワシントン川保護ソリューションズ、CH2Mヒル高原修復社、ミッション・サポート・アライアンス――作業員180名が200東部区域にいた。
非常事態が宣言され、数千名の作業員が数時間にわたる屋内退避を命じられた。トンネルから放射性粒子が漏出していないことをハンフォード職員らが確認するまでの数時間、近隣自治体の住民らは不安のうちに過ごした。
1964年、ハンフォード中心部のPUREX処理施設で建造中の第2放射性廃棄物保管トンネル。Courtesy Department of Ecology.
構造分析が実施された2017年6月末、第2トンネルが現行の構造基準に適合していないと結論づけされた。
2018年の春、トンネルの内部に吊り下げられたヴィデオカメラによって、トンネルのコンクリート製アーチに鋼鉄製梁材を固定するボルトに腐食が見つかり、トンネルの一端の梁材に腐食が見つかるにおよんで、懸念が膨れあがった。
腐食はトンネルが崩落するリスクを高める。
事業の規制にあたるワシントン州政府エコロジー省がパブリック・コメント期間を終了し、事業を認可するや否や、トンネルの充填作業が開始された。
充填作業が始まった月の初め以来、作業員らはトンネルの内部に約6,900立方メートルの充填材を注入し、薄い層にして重ねた。この量は、崩落の可能性を潰すために必要になる充填材の量のほぼ25パーセントにあたると見積もられている。
充填作業は、作業員らが建屋の蒸気が漏れた箇所の評価に当たる2日間にわたって停止すると予想されている。この建屋はトンネル独自の付属施設であり、トンネルの建設は1964年に完工した。
このトンネルは1956年に木材を使って建造され、屋根が平らであり、厚さ約2.4メートルの土砂で覆われている。
ハンフォードPUREX処理施設近くの第1トンネルにおける2017年の崩落は当初、放射性汚染物質が空中に漏れ出すのを防ぐために砂と土壌の混合物で埋められた。その後、穴をさらに安定化するためにセメント様の充填材が注入された。Department of
Energy
2017年の春に先立つ、湿度が異常に高く、雪の多い冬のせいで、トンネルの上の土砂が重くなり、そのことが屋根に6メートルx6メートルの広さの陥没が起こったことにつながったのかも知れない。
トンネルの上を覆う土砂が内部の廃棄物の上に落ち込んだので、それが空中浮遊汚染物質の漏出防止に役立った。
ハンフォード職員らは、第2トンネルの鋼鉄製梁材のひとつが崩落すれば、隣の梁材に無理な圧力がかかり、ドミノ倒し作用を起こすのではないかと懸念している。
第2トンネルも、やはり厚さ2.4メートルの土砂で覆われている。
充填工事は、トンネルを安定化し、内部の廃棄物を封じ込めるための一時的な措置と考えられており、トンネルの最終除染決定案はまだ策定されていない。
2本のトンネルで保管されている廃棄物の出処は、PUREX処理施設である。
この施設は、国家の核兵器計画のためにハンフォードで生産されたプルトニウムの約75パーセントを処理した。
Annette
Cary; 509-582-1533; @HanfordNews
【クレジット】
The Tri-City Herald, “Here’s
why over 500 Hanford workers had to take cover Friday,” by Annette Cary, posted
on October 26, 2018 at https://www.tri-cityherald.com/news/local/hanford/article220696030.html.
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