またまた朝日新聞デジタルさんお得意の安全・安心キャンペーン記事です――
福島県は26日、東京電力福島第一原発事故に伴う放射線の健康影響を見守る県民健康調査で、子ども約3万8千人の甲状腺検査の結果を発表した。しこりがないなど問題ないとされた子どもが99.5%を占め、残りも良性の可能性が高いと判定。県の検討委員会は「通常と変わりない状況で安心できる」としている。
避難区域を含む13市町村に当時いた18歳以下の約4万7千人が対象で、約8割の3万8114人の検査を終えた。約0.5%の186人に良性の可能性が高いしこりなどが見つかり、念のため再度の超音波検査や血液検査が必要としている。
県は、すべての子ども約36万人を対象に、生涯にわたって甲状腺に影響が出ないか追跡していく。
平成24年4月26日
開いてみると、PDFドキュメントになっていて、その表紙は――
2 議題
(1) 基本調査について
(2) 詳細調査について
① 甲状腺検査
② 健康診査
③ こころの健康度・生活習慣に関する調査
④ 妊産婦に関する調査
(3) アドバイザリーグループについて
(4) 県民健康管理ファイルについて
(5) その他
(1) 基本調査について
(2) 詳細調査について
① 甲状腺検査
② 健康診査
③ こころの健康度・生活習慣に関する調査
④ 妊産婦に関する調査
(3) アドバイザリーグループについて
(4) 県民健康管理ファイルについて
(5) その他
3 閉会
探しているデータは14ページにありました――
データの共有と活用のために、これをテキストにしました――
平成23年度 甲状腺検査の結果概要(平成24年3月末日現在)
検査実施総数 38,114人
判定結果 判定内容 人数(人) 割合(%)
A判定
(A1) 結節や嚢胞を認めなかったもの 24,468人 64.2%
(A2)5.0㎜以下の結節や20.0㎜以下の嚢胞を認めたもの 13,460人 35.3% 99.5%
(A2)5.0㎜以下の結節や20.0㎜以下の嚢胞を認めたもの 13,460人 35.3% 99.5%
B判定
5.1㎜以上の結節や20.1㎜以上の嚢胞を認めたもの 186人 0.5%
C判定
甲状腺の状態等から判断して、直ちに二次検査を要するもの 0人 0.0%
甲状腺の状態等から判断して、直ちに二次検査を要するもの 0人 0.0%
〔判定結果の説明〕
・ A1、A2判定は次回(平成26年度以降)の検査まで経過観察
・ B、C判定は二次検査(二次検査対象者に対しては、二次検査日時、場所を改めて通知して実施)
※ A2判定であっても、甲状腺の状態等から二次検査を要すると判断した方については、B判定としています
・ A1、A2判定は次回(平成26年度以降)の検査まで経過観察
・ B、C判定は二次検査(二次検査対象者に対しては、二次検査日時、場所を改めて通知して実施)
※ A2判定であっても、甲状腺の状態等から二次検査を要すると判断した方については、B判定としています
(参考)
判定結果 人数(人) 割合(%) 計
結節を認めたもの 5.1㎜以上 184人 0.48%
判定結果 人数(人) 割合(%) 計
結節を認めたもの 5.1㎜以上 184人 0.48%
5.0㎜以下 202人 0.53% 386人(1.0%)
嚢胞を認めたもの 20.1㎜以上 1人 0.003%
20.0㎜以下 13,379人 35.10% 13,380人(35.1%)
※ 結節、嚢胞両方の所見に該当しているケースも存在
嚢胞を認めたもの 20.1㎜以上 1人 0.003%
20.0㎜以下 13,379人 35.10% 13,380人(35.1%)
※ 結節、嚢胞両方の所見に該当しているケースも存在
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この文書の2ページに検討委員会委員名簿が掲載されています――
福島県「県民健康管理調査」検討委員会委員名簿
平成24年4月26日
○ 委 員 (敬称略)
氏 名 現 職
明 石 真 言 独立行政法人放射線医学総合研究所理事
児 玉 和 紀 公益財団法人放射線影響研究所主席研究員
神 谷 研 二 国立大学法人広島大学原爆放射線医科学研究所所長・教授
(公立大学法人福島県立医科大学副学長)
(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)
(公立大学法人福島県立医科大学副学長)
(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)
山 下 俊 一 公立大学法人福島県立医科大学副学長
(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)
(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)
星 北 斗 社団法人福島県医師会常任理事
阿 部 正 文 公立大学法人福島県立医科大学理事兼副学長
(医学部病理病態診断学講座主任(教授))
(医学部病理病態診断学講座主任(教授))
安 村 誠 司 公立大学法人福島県立医科大学医学部
公衆衛生学講座主任(教授)
菅 野 裕 之 福島県保健福祉部長
○ オブザーバー (敬称略)
氏 名 現 職
福 島 靖 正 内閣府原子力災害対策本部
原子力被災者生活支援チーム医療班 班長
原子力被災者生活支援チーム医療班 班長
伊 藤 宗太郎 文部科学省科学技術政策研究所総務研究官
(EOC 医療班 班長)
(EOC 医療班 班長)
塚 原 太 郎 厚生労働省大臣官房厚生科学課長
佐 藤 敏 信 環境省総合環境政策局環境保健部長
細 矢 光 亮 公立大学法人福島県立医科大学医学部
小児科学講座主任(教授)
小児科学講座主任(教授)
藤 森 敬 也 公立大学法人福島県立医科大学医学部
産科婦人科学講座主任(教授)
産科婦人科学講座主任(教授)
鈴 木 眞 一 公立大学法人福島県立医科大学医学部
器官制御外科学講座教授
器官制御外科学講座教授
大津留 晶 公立大学法人福島県立医科大学医学部
放射線健康管理学講座教授
放射線健康管理学講座教授
坂 井 晃 公立大学法人福島県立医科大学医学部
放射線生命科学講座教授
放射線生命科学講座教授
矢 部 博 興 公立大学法人福島県立医科大学医学部
神経精神医学講座准教授
神経精神医学講座准教授
第6回福島県「県民健康管理調査」検討委員会 資料
錚々たるお歴々の一人ひとりについて調査すれば興味深いでしょうが、ざっと一覧するだけでも、主力が放医研や放影研であり、福島県立医大が全学あげて手足になっていることが見て取れますね。
さて、山下俊一氏は甲状腺学会の理事長をも務めていますが、次の文書を学会員に配布したことは、すでにツイッターやブログなどで評判になっています――
読みにくいので赤のアンダーライン部分だけを文字おこししてみます――
「異常所見を認めなかった方だけでなく、5mm以下の結節や20mm以下の嚢胞を有する所見者は、細胞診などの精査や治療の対象とならないものと判定しています。先生方にも、この結果に対して、保護者の皆様から問い合わせやご相談が少なからずあろうかと存じます。どうか、次回の検査を受けるまでの間に自覚症状等が出現しない限り、追加検査は必要がないことをご理解いただき、十分にご説明いただきたく存じます」
いかがでしょうか? 朝日新聞記事、福島県の公表文書、山下氏の学会通達の3点セットを精査し、診断を下せば、すさまじい病巣が見えてくるのではないでしょうか。この病の犠牲になるのは、福島の子どもたちの健康と命なのです。
それにしても解せないのは、朝日新聞の報道姿勢です。朝日新聞はみずからの戦争報道責任を真摯に検証したはずです。あの努力はいったいなんだったのでしょうか?
実弾飛び交う戦争と同じく、原発事故にからむ情報戦争も人を殺すのです。
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日本が、満州事変から日中戦争、太平洋戦争、そして敗戦へと向かうなか、新聞はなぜ戦争を止められなかったのか。なぜ逆に、戦争協力の深みに入っていったのか――。朝日新聞が自身の「暗部」を、元記者や関係者への聞き取りをはじめ、国内外の総力取材によって検証、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞した多角的ノンフィクション。当時の紙面や貴重な戦争写真資料もふんだんに掲載。
【ふろく】
福島県の公表文書だけでは片手落ちの感がありますので、大本営の奥の院、野田首相の官邸を覗いてみましょう――
平成24年3月14日
あの原発事故発生から、1年が経ちました。福島県では、この事故による放射線の影響を踏まえ、将来にわたってしっかりと県民の健康管理をしてゆくために、「県民健康管理調査」検討会を事故3ヶ月後から立ち上げています。福島県からの委託を受けて、福島県立医科大学(以下、医大)が中心となって、事業の推進に最大限の努力を続けているところです。
この調査は、《県民一人一人の健康見守り》事業として位置づけられ、保健医療サービス全般の向上を目指して、「基本調査」と4つの「詳細調査」を進めています。先日(平成24年2月20日)公開された最新情報に基づいて、検討会の座長(山下)と委員(神谷)が連名で、ここに事業概要をご紹介します。
●「基本調査」=全県民の“健康基本台帳”作り
まず「基本調査」とは、事故後、空間線量が最も高かった時期における外部被ばく線量の推計等を行うためのものです。全県民を対象にして、震災後4か月間の行動記録を中心に、問診票で調査しています。原子力災害においては、その後の健康状態と放射線との因果関係などを正しく知るために、「いつ」「どこに」「どのくらい居たか」「どのように移動したか」など、皆さんの行動記録に基づく、《個々人の外部被ばく線量》が最も重要な情報になります。この調査から得られた情報が、将来にわたって県民の健康の維持、増進につなげていくための基本台帳となりますから、多くの方の参加が望まれています。
今年1月31日現在で205万7千人に対して基本調査問診票を発送し、43万1千人(回収率21%)の回答を得ています。比較的線量が高いことが予想された先行実施地区(川俣町山木屋地区、浪江町、飯舘村)の2万9千名からは、1万5千人(52.1%)の回答を得ました。このうち、すでに1,727人分の「4か月間の外部被ばく線量推定値」を、昨年の12月に公表しました。そして今年2月20日には、さらに10,468人のデータを解析公表しました。
この解析によると、放射線業務従事経験者以外の方9,747人については、全体の99.3%が10mSv(ミリシーベルト)未満の被ばくでした。最高値は23.0mSv でしたが、昨年12月にまとめられた「低線量被ばくリスク管理ワーキンググループ報告書」※1にもあるとおり、「これによって、放射線による健康被害が出ることは考えにくい」と評価しています。
そのように評価しつつも念のため、この調査で線量が比較的高いと評価された方々は、後述の「(2)健康診査」によって、さらに詳細に健康状態を見守って行きます。今後も、この基本調査から得られた線量推定値を健康管理に活かすと共に、問診票記入の支援などをさらに充実させて、検診による健康管理を推進し、多くの方々の不安解消に努めていきたいと考えています。
次に、「詳細調査」では、(1)甲状腺検査、(2)健康診査、(3)こころの健康度・生活習慣に関する調査、(4)妊産婦に関する調査を行っています。
●(1)「甲状腺検査」=2年半で対象者一巡へ
今回の原発事故発生当日時点で概ね18歳以下だった福島県民を対象に、甲状腺(超音波)検査を実施しています。現時点での放射線量等の状況から考えて、健康への影響は極めて少ないと考えられています。
ただ、チェルノブイリ原発事故後に明らかになった健康被害として、放射性ヨウ素の内部被ばくによる小児の甲状腺がんが報告されています。これは、事故から数ヶ月の間に、放射性ヨウ素で汚染された牛乳を摂取したことによる内部被ばくが原因だとされています。今回の事故では、発生後の3月17日に食品の規制が行われ、その時点での(特に放射線に感受性の高い)小児への被ばく線量を把握するために、同月24日から30日まで、県内の小児1,080人を対象に甲状腺被ばく検査が行われました。
検査結果は、99%の小児が0.04μSv(マイクロシーベルト)以下と、低いレベルの甲状腺内部被ばくでした。最も高かった1人が毎時0.1μSvで、原子力安全委員会が設定したスクリーニングレベル(被ばく医療対応が必要とされる指標)である「0.2μSv」を超える子どもはいませんでした。
さらに、現時点での甲状腺の状況を把握し、よりきめ細やかに児童の健康を生涯にわたって見守るため、昨年10月から約36万人に対象を広げて、甲状腺検査を順次実施しています。既に、先行実施地域では本年2月末までに8割を超す児童(3万人以上)が検査を受けており、大部分の児童に異常は見られていません※2。
ただ、言うまでもなく(事故とは関係なく普段から)、どこであろうと多数の人の健康検査を行えば、「全員異常なし」とはなりません。それと同様にこの検査でも、現在までに3765人中26人の児童の甲状腺に、しこり(結節性病変)等が認められています。これらのしこりは、事故以前から存在していた可能性が高いと考えられますが、今回の26人に限らず今後とも、こうした児童には念のため、さらに詳細な二次検査(詳細な超音波検査、採血、尿検査、必要に応じて細胞診等)を実施して、万全を期します。
今後は、(被ばくの有無にかかわらず)一定の頻度で必ず発見される甲状腺がんに備えて、詳細な対応を行なってゆく予定です。平成24年度からは、福島市から順次県内全域に検診エリアを拡大し、2年半で対象者全員の1回目の甲状腺検診を終了し、同時に県外の受診機関との協力体制も構築していく予定です。
●(2)「健康診査」=放射線の影響チェックを超えて
避難区域等※3の住民と、「基本調査」の結果から必要と認められた方を対象に、「健康診査」を実施しています。全ての年齢区分について、放射線の影響のみならず、健康状態を把握して生活習慣病の予防やがんなどの疾病の早期発見・早期治療につなげていくことを主眼に、検査項目を設定しています。検査内容は、年齢区分によって異なりますが、身長や体重の測定、血液検査などの項目が主な内容です。
これまでのところ、この健康診査は避難区域等の住民の皆さんを中心に進めており、今後は県外でも受診していただけるように、準備を進めています。
●(3)「こころの健康度・生活習慣に関する調査」=チーム連携で対応
チェルノブイリ原発事故による健康への長期的影響として、心身における変調が指摘されています。福島県でも、放射線への不安や避難生活等により、多くの方々が精神的な苦痛を受けています。また、大震災によって、近親者を亡くしたり、家屋などの財産を喪失したり、恐怖感を体験することにより、心的外傷(トラウマ)を負った県民も多いと見られます。そこで、県民のこころの健康度や生活習慣を把握し、適切なケアを提供するため、「こころの健康度・生活習慣に関する調査」を実施しています。
避難区域等の住民と、「基本調査」の結果から必要と認められた方(約21万人)を対象に、「現在のこころとからだの健康状態について」「生活習慣について(食生活、睡眠、喫煙、飲酒、運動)」「最近半年の行動について」「東日本大震災の体験について」などの質問に答えていただく、アンケート形式の調査を行っています。
この調査の結果、相談・支援の必要があると判断された方には、臨床心理士等による「こころの健康支援チーム」が電話相談などを行います。また、このチームが放射線に関する相談を受けて当該専門医師等の対応が必要と判断した場合には、医科大学の教員による「放射線健康相談チーム」に紹介し、対応しています。更に、そうした放射線の影響による健康相談等のうち、直接診察が必要なケースでは、専門医師等による対応を検討することにしています。
現在は、講習会でこの取組みを説明し、ほぼ調査票の発送は終了しています。2月末現在で、55の医療機関の医師93名が登録し、4月以降、常駐の医師が電話相談などに対応する予定です。また、小児科対応の県内医療機関は、102施設が登録しています。
●(4)「妊産婦に関する調査」=県外からの里帰り出産者も含め
放射線への不安が特に大きい妊産婦の方を対象にした調査も、実施しています。健康状態等を把握して今後の健康管理に役立てていただくとともに、福島県内で分娩を考えている方々へ安心を提供し、更には今後の福島県内の産科・周産期医療の充実へつなげることをも目的にした取組です。
県内各市町村で母子健康手帳を交付された方々(約1万6千人)と、県外市区町村で母子健康手帳を交付されたのちに県内に転入または滞在して、3月11日以降に県内で妊婦健診の受診や分娩(いわゆる里帰り出産)をした方々が対象です。「震災後の妊娠健康診査の受診状況について」「妊娠経過中の健康状態について」「出産状況について」「妊産婦のこころの健康度について」
などの質問に答えていただく、アンケート形式の調査を行っています。
回答内容により、支援が必要と判断された方には、医大の助産師・看護師が電話をかけ、相談に応じることにしています。さらに、医師の対応が必要と判断された場合は、かかりつけの産婦人科の医師が対応し、必要に応じ医大の医師等が対応します。県外避難者に対しても、医大の医師等が対応することにしています。また、助産師・保健師が、育児相談をはじめとした心配ごと、その他のご相談に電話やメールで応じるようにしています。
●大切なのは、「自分で知る」安心
以上のような県民の健康の見守り事業を、福島県と福島県立医科大学が中心となって、多岐にわたって展開しています。放射線による健康影響に関する情報が氾濫している現在、県民の方々一人一人が《自らの状況を自分で把握できる》体制が、非常に重要です。今後も、多くの方々の不安や不満に可能な限りこたえるため、健康相談と身近な受診ができる医療支援体制を構築・維持してまいります。そして、県内・県外在住の別なく対応ができるように、日本全国の医師や専門家の方々の協力を得て、説明会や講習会を繰り返していきます。
《どのくらい被ばくしたか》を、知ること。《定期的な健康状態の確認》を、行うこと。―――それが、復興と再生の一助となることを願います。
福島県立医科大学副学長 山下俊一
福島県立医科大学副学長 神谷研二
福島県立医科大学副学長 神谷研二
(参考)
注1 低線量被ばくリスク管理ワーキンググループ報告書
国際的な合意に基づく科学的知見によれば、放射線による発がんリスクの増加は、100 ミリシーベルト以下の低線量被ばくでは、他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さく、放射線による発がんのリスクの明らかな増加を証明することは難しい。
注1 低線量被ばくリスク管理ワーキンググループ報告書
国際的な合意に基づく科学的知見によれば、放射線による発がんリスクの増加は、100 ミリシーベルト以下の低線量被ばくでは、他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さく、放射線による発がんのリスクの明らかな増加を証明することは難しい。
首相官邸 原子力災害専門家グループ
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