原爆で被爆した人ががんで死亡するリスクは、被爆した時の年齢が10歳若くなるごとに29%増えることが分かりました。 これは、広島・長崎の被爆者などおよそ12万人の死因を追跡調査している放影研放射線影響研究所が発表したものです。 それによりますと、30歳で1シーベルト被爆した人が70歳になった時にがんで死亡するリスクは、被爆していない場合よりも42%増えます。 また、こうしたリスクは、被爆した時の年齢が10歳若くなるごとに29%増加します。 例えば、20歳で被爆した人は54%、10歳で被爆した人は70%、被爆していない場合よりもがんで死亡するリスクが増えることになります。 今回の発表は、2003年までのデータを解析した結果だということで・・・
【ニコニコ動画】「被爆年齢若いとリスク高い」放影研放射線影響研究所
米国放射線影響学会の公式月刊学術誌 Radiation Research 177号(2012年3月)が放射線影響研究所の報告「原爆被爆者の死亡率に関する研究 第14報 1950–2003年:がんおよびがん以外の疾患の概要」を掲載しました。この報告は「死亡のリスクは、放射線量と関連して有意に増加し…閾値は認められない。すなわち、ゼロ線量が最良の閾値推定値であった」と明言しています。
「100ミリシーベルト未満の放射線量を受けた場合の癌などの晩発性障害の発生確率に対する影響については,実証的に確認されていない」…昨年12月16日、福島地方裁判所郡山支部はこのように断定し、郡山市の小中学生たちの申立を棄却しましたが、
清水裁判長をはじめ判事たちはとのように申開きするのでしょうか?
福島県放射線健康リスク管理アドバイザーとして放射線安全神話を垂れ流し、福島県立医学大学副学長として県内の子どもたちの甲状腺検査と判定を主導する山下俊一、神谷研二は、それでもなお99.5%の子どもたちの甲状腺は大丈夫といえるのでしょうか?
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武田邦彦 (中部大学)
日本人が「大規模」に被爆し、その健康に関するデータが「長期間」にわたって得られるのは、不幸なことですが広島・長崎のものです。そして、その総合論文が今年(2012年)、放射線影響研究所からでました。被爆と健康に関する研究ではもっとも権威のある機関でもあります。
福島原発で多くの人が被爆している最中ですから、本来ならこの論文は毎日のようにテレビ、新聞で報道され、解説されているはずですが、論文内容が「政府に都合が悪い」ということで、ほとんど報道されていません。
なぜ、この論文が政府に都合が悪いかというと、
1)「これ以下なら安全」という「閾値(しきいち)」がないことを明確に示していること
2)低線量被爆でも「被曝量と病気の発生」には比例関係が認められること
(直線近似が成立すること)
3)福島の小学生が被爆した、20ミリシーベルトで子供がガンになる可能性は100人に2
人程度と高率になること
が明らかになったからです。現時点で専門家でこの論文の結論と異なることをいうことはできないでしょう。科学者や医師は事実に忠実ですから。
1)「これ以下なら安全」という「閾値(しきいち)」がないことを明確に示していること
2)低線量被爆でも「被曝量と病気の発生」には比例関係が認められること
(直線近似が成立すること)
3)福島の小学生が被爆した、20ミリシーベルトで子供がガンになる可能性は100人に2
人程度と高率になること
が明らかになったからです。現時点で専門家でこの論文の結論と異なることをいうことはできないでしょう。科学者や医師は事実に忠実ですから。
もともと、日本の法律で「被曝限度は1年1ミリ」と決まっていたり、チェルノブイリの時に1年5ミリ以上の地域が強制退去地域になっているのは、断片的ですが、この論文と同じ知見がかなり多かったことによります。もちろん「1年100ミリ以下はデータがない」などは完全なウソです。子供の健康のことですから、これまで間違っていた専門家はすぐにでもこの論文を読んで、訂正と謝罪をしてください。
政府機関、自治体、御用学者、ご用専門家、テレビ、新聞はあまりあてになりませんが、国民の健康を守り、子供を守るという見地から、大学、医師会などに所属する良心的な方は、積極的にこの論文の結果(おそらくもっとも総合的で、現時点で正確なデータと考えられます)を尊重し、政府に対して被曝の防止(福島の除染、拡散防止、汚染食材や瓦礫の搬出防止など)をするように力を発揮してください。
またテレビ、新聞もうっかり政府の誘導に乗った1年でしたが、本来の報道の目的である、「やや政府に批判的で、事実を伝え、視聴者や読者を危険から守る」ということに戻り、この論文を多くの人が知るようにしてください。
その時、論文を書いた研究者ではなく(研究者は社会に対して倫理的責任を負わない)、科学者、啓蒙家が解説をするのが適切です。
(平成24年4月28日)
(注)本記事の内容の一部は読者からの情報によっています。
武田邦彦
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Studies of the Mortality of Atomic Bomb Survivors,
Report 14, 1950–2003: An Overview of Cancer and Noncancer Diseases
小笹晃太郎 清水由紀子 陶山昭彦 笠置文善 早田みどり Eric J Grant 坂田律 杉山裕美 児玉和紀
【要約】
本報は、放射線影響研究所が原爆放射線の健康後影響を明らかにするために行ってきた、原爆被爆者の集団である寿命調査集団(LSS コホート)での死亡状況に関して定期的に行ってきた総合的報告の第14 報である。LSS コホート構成者でDS02 での線量推定が行われている86,611人のうち58%が、1950–2003 年の期間に死亡した。
追跡期間を前報から6 年間延長したことにより、放射線被曝後の長期間の死亡状況に関する実質的に多くの情報が得られ(がん死亡の17%増加)、特に被爆時年齢10 歳未満の群で増加した(58%増加)。放射線関連リスク、線量反応関係の形、および性、被爆時年齢、到達年齢による効果修飾作用の大きさを明らかにするために、ポアソン回帰を用いた。
全死亡のリスクは、放射線量と関連して有意に増加した。重要な点は、固形がんに関する付加的な放射線リスク(すなわち、104人年/Gy 当たりの過剰がん症例数)は、線形の線量反応関係を示し、生涯を通して増加を続けていることである。
全固形がんについて、線形モデルに基づく男女平均の1 Gy 当たりの過剰相対危険度は、30 歳で被爆した人が70 歳になった時点で0.42(95%信頼区間[CI]:0.32,
0.53)であった。
そのリスクは、被爆時年齢が10 歳若くなると約29%増加した(95% CI:17%, 41%)。
全固形がんについて過剰相対危険度が有意となる最小推定線量範囲は0–0.2 Gy であり、定型的な線量閾値解析では閾値は認められなかった。すなわち、ゼロ線量が最良の閾値推定値であった。
主要部位のがん死亡リスクは、胃、肺、肝臓、結腸、乳房、胆嚢、食道、膀胱、および卵巣で有意に増加した一方、直腸、膵臓、子宮、前立腺、および腎実質では有意な増加は認められなかった。
非腫瘍性疾患では、循環器、呼吸器、および消化器系疾患でリスクの増加が示されたが、因果関係については今後の研究が必要である。
感染症および外因死には放射線の影響を示す根拠は見られなかった。
§本報告書はRadiat Res 2012 (March); 177(3):229–43 に掲載されたものであり、その正文は同掲載論文のテキスト(英文)である。この日本語要約は、日本の読者の便宜のために放影研が作成したが、本報告書を引用し、またはその他の方法で使用するときは、同掲載論文のテキスト(英文)によるべきである。
Radiation Research* 掲載論文
【今回の調査で明らかになったこと】
1950 年に追跡を開始した寿命調査(LSS)集団を2003 年まで追跡して、死亡および死因に対する原爆放射線の影響を、DS02 線量体系を用いて明らかにした。
総固形がん死亡の過剰相対リスクは被曝放射線量に対して全線量域で直線の線量反応関係を示し、閾値は認められず、リスクが有意となる最低線量域は0-0.20 Gy であった。
30 歳で1 Gy被曝して70 歳になった時の総固形がん死亡リスクは、被曝していない場合に比べて42%増加し、また、被爆時年齢が10 歳若くなると29%増加した。
がんの部位別には胃、肺、肝、結腸、乳房、胆嚢、食道、膀胱、卵巣で有意なリスクの増加が見られたが、直腸、膵、子宮、前立腺、腎(実質)では有意なリスク増加は見られなかった。
がん以外の疾患では、循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患でのリスクが増加したが、放射線との因果関係については更なる検討を要する。
【解説】
1) 本報告は、2003 年のLSS 第13 報より追跡期間が6 年間延長された。DS02 に基づく個人線量を使用して死因別の放射線リスクを総括的に解析した初めての報告である。解析対象としたのは、寿命調査集団約12 万人のうち直接被爆者で個人線量の推定されている86,611 人である。追跡期間中に50,620 人(58%)が死亡し、そのうち総固形がん死亡は10,929 人であった。
2) 30 歳被曝70 歳時の過剰相対リスクは0.42/Gy(95%信頼区間:
0.32, 0.53)、過剰絶対リスクは1 万人年当たり26.4 人/Gy であった。
*過剰相対リスクとは、相対リスク(被曝していない場合に比べて、被曝している場合のリスクが何倍になっているかを表す)から1 を差し引いた数値に等しく、被曝による相対的なリスクの増加分を表す
*過剰絶対リスクとは、ここでは、被曝した場合の死亡率から被曝していない場合の死亡率を差し引いた数値で、被曝による絶対的なリスクの増加分を表す。
3) 放射線被曝に関連して増加したと思われるがんは、2 Gy 以上の被曝では総固形がん死亡の約半数以上、0.5-1 Gy では約1/4、0.1-0.2 Gy では約1/20 と推定された。
4) 過剰相対リスクに関する線量反応関係は全線量域では直線であったが、2 Gy 未満に限ると凹型の曲線が最もよく適合した。これは、0.5 Gy 付近のリスク推定値が直線モデルより低いためであった。
放射線影響研究所は、広島・長崎の原爆被爆者を 60 年以上にわたり調査してきた。その研究成果は、国連原子放射線影響科学委員会(UNSCEAR)の放射線リスク評価や国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護基準に関する勧告の主要な科学的根拠とされている。
* Radiation
Research 誌は、米国放射線影響学会の公式月刊学術誌であり、物理学、化学、生物学、および医学の領域における放射線影響および関連する課題の原著および総説を掲載している。(2010 年のインパクト・ファクター: 2.578)
a 過剰相対リスク(ERR)は線形モデルに基づき、市、性、被爆時年齢、到達年齢で調整してある。
b グラフの横線は95%信頼区間を示す。
c プロットの点の大きさは死亡数に比例する。
d 白血病のERR は線形二次モデルで、1Gy で3.1(95%CI:
1.8, 4.3)、0.1Gy で0.15(-0.01, 0.31)。e 95%信頼区間の下限は0 未満であるが、特定の値は算出不能。
被爆時年齢および到達年齢が総固形がん死亡の放射線リスクに与える修飾効果
ERR/Gy:1Gy 被曝した場合の過剰相対リスク
EAR/104person-year/Gy: 1Gy 被曝した場合の過剰絶対リスク(10,000 人あたりの増加数)
・ 被爆時年齢が若い人ほどリスクが大きい(10 歳若いとERR が約30%増加)
・ 被爆後年数がたつほど(本人が高齢になるほど)、相対的なリスクは小さくなる(10 歳の加齢でERR が10~15%の減少)
・ 一方、本人が高齢になるほど、がんによる死亡率は大きくなるので、過剰ながん死亡(EAR)は多くなる。
図4.
総固形がん死亡に対する放射線による過剰相対リスク(ERR)の線量反応関係
ERR の線量反応関係は全線量域では直線モデル(L)が最もよく適合したが、2Gy 未満に限ると線形二次モデル(LQ)が最もよく適合した。これは、0.5Gy 付近のリスク推定値が直線モデルより低いためであった。
図中の点と縦線は線量カテゴリーごとの点推定値と95%信頼区間である。点線は、全線量域で最適であった線型モデル(L)の95%信頼区間である。
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