2016年2月27日土曜日

☢#フクシマ5周年☢【海外論調】グリーンピース・インターナショナル「5年後のフクシマ危機は収束からほど遠い」


5年後のいま、フクシマの危機は収束からほど遠い

ショーン・バーニー Shaun Burnie - 2016222

虹の戦士号は5年前、フクシマ沿海を航行し、放射能資料採取を実施した。いま同船はフクシマを再訪し、今回は日本の元首相が乗船した。

破壊された福島第一核発電所の沖合を航行するグリーンピース船、虹の戦士号。

スコットランドは日本から9,000キロあまり離れているが、両地には共通項がある。スコットランドの沿岸域で、世界の反対側から運ばれてきた相当量の放射性汚染物質が川床に埋もれたり、アイリッシュ海に混じり込んだりしているのを認めることができる。そのとおり、放射性汚染物質だ。はるばる日本から運ばれてきたのだ。

イングランド北西部の核燃料再処理施設、セラフィールドは1970以来、日本の核反応炉から取り出された高レベル核廃棄物である使用済み核燃料の再処理を請け負ってきた。福島第一核発電所のオーナー企業、東京電力株式会社が船積みした廃棄物を含め、4000トンあまりの使用済み核燃料が日本からセラフィールドに海上輸送された。セラフィールドにおける再処理事業の結果、連日800万リットルあまりの低レベル核廃棄物が海に排出された。セラフィールドは「ヨーロッパで一番危険な場所」とラベル貼りされており、平野、土壌、河口域の汚染レベルは、核災害ゾーンとしか言いようのない域に達している。現実として、アイリッシュ海は、ほぼ間違いなく世界随一に放射能汚染された海域である。

セラフィールド核発電所(2002年)

わたしたちはまもなく福島第一核発電所惨事5周年を迎えようとしており、否が応でも、どこにいようが、どれほど離れていようが、核エネルギーが地域的および世界的な影響をおよぼすことに気づかずにはおれない。

筆者は2011311日のニュースに気づいて、目が覚めたのを思い出す。スコットランドの自宅にいたが、あれほど日本の人びとに繋がっていると感じたことはなかった。筆者は数十年来、日本における核エネルギーに反対する運動を活発に展開していたグリーンピースに関わってすごしており、破局事故は時間の問題であると心底から知っていた。メディアの依頼が次々と飛びこんできて、BBCワールド・ニュースに出演したのを思い出す。インタビューのさなか、フクシマの具体的な脅威について話していると、3号反応炉が爆発したとの日本発ニュースがかぶさって、遮られた。

2011311日の沖合地震による福島第一核発電所の被災状況を示す衛星画像

グリーンピース・ジャパンはフクシマ避難区域にスタッフを派遣し、独自の放射能検査を実施した。また、虹の戦士号に乗り組んでいた研究者らは全身化学防護服を着こみ、資料として用いるために、周辺海域に浮遊している海藻を採取した。わたしたちの検査結果は残念ながら、大方の予想通り――高レベルの汚染――だった。わたしたちはその後、いまだに放射能が非常に広く分布しており、フクシマ各地の大半で、人びとの帰還が安全でないことを確認した。

フクシマ沿岸で海藻の検査を実施するグリーンピースの放射能検査スタッフ。

筆者は5年近くたったいま、虹の戦士号に――今回は、反核の日本国元首相として有名な菅直人氏とともに――乗船している。菅氏が20113月の事故当時の時々刻々と日々を語るのに傾聴し、そしてわたしたちが実施している調査を彼に見せるのは、まことに名誉であり、晴れがましいことだった。わたしたちの船が核施設から2キロ以内の海域を航行しているときの感覚は、奥深いものでもあり、非現実的でもあった。わたしたちは甲板から、何千トンもの汚染水を蓄えた鋼鉄製のタンクを見た。4基の反応炉はいま、大気中に放出される放射性物質の一部なりとも封じこめる手立てとして、暫定構築物の背後に隠されている。そして、反応炉そのものの内部には、数百トンの溶融燃料が堆積しており、それに対処するための確かなプランは策定されていない。

グリーンピース船、虹の戦士号から見た福島第一核発電所。

だが、虹の戦士号がこの海域に逗留しているのには、もうひとつの理由がある。グリーンピース・ジャパンの調査船が福島第一核発電所から20キロ圏内の海水中放射能調査を実施しており、虹の戦士号はキャンペーン船として行動している。グリーンピースは、スコットランドは筆者の自宅近辺の場合と同じように、核エネルギー、特に福島第一核発電所の核事故による影響および将来の脅威に関する理解の促進をめざしている。


災害勃発のときに日本の指導者だった菅直人氏にとって、今回の航海は、政治的であるのと同時に、個人的なものでもあった。彼は2011年以降の歳月――危機の渦中にある核産業を救済しようとして躍起になっている「鈍感な」安倍氏の現政権とは大違いであり――核エネルギーに反対する何百万人もの日本の人びとの側に立って、核産業反対論を公言してきた。安倍政権の目論見は、国民の過半数に反対され、途方もない技術的・財務的・法的な障害に悩んでいることから、失敗を運命づけられていると筆者は信じている。

虹の戦士号に乗船している日本の元首相、菅直人氏

希望はある。

菅氏は、革新的な再生可能エネルギー発電事業に転換している全国各地の地域社会と同じように、核は過去の世界に埋葬されるべきであると知っている。日本の再生可能エネルギーは興隆している。2015年度において、推定13テラワット時相当の――同年度に再稼働した川内核発電所2分の発電可能量より大きい――発電容量のソーラー発電施設が設置された。

日本が電力の100%を再生可能エネルギーで賄うためには、緊急に現状以上に野心的な目標を設定しなければならない。新規石炭火力発電所に投資するプランをすべて取りやめ、老朽化した核反応炉を再稼働する計画を放棄して、再生可能エネルギーの成長を阻害する制度的・財務的障害を除去しなければならない。

核のない未来は、可能であるだけでなく、必然である。再生可能エネルギーは、日本国民だけでなく、世界の人びとにとって、唯一の安全で確実なエネルギーなのだ。

【筆者】

Shaun Burnie
ショーン・バーニーは、グリーンピース・ドイツにおける核の上席専門家

Categories nuclear

【クレジット】

Greenpeace International, “Five years on and the Fukushima crisis is far from over.” Blogpost by Shaun Burnie, posted on 24 February, 2016 at;

【外部サイト記事】

グリーンピース・ジャパン/2016226
【佐藤潤一の事務局長ブログ】
紙一重で、5000万もの人が福島第一原発の250km圏内から逃げなければいけなくなるような、重大な危機に直面したのです。

【フクシマ5周年シリーズ】

2016224日水曜日


2016221日日曜日


2016221日日曜日

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