2016年4月25日月曜日

ロシア・ツデー【#チェルノブイリ30周年】原発所長の訴え「核の安全問題は政治駆け引きの場ではない」


「核の安全問題は政治駆け引きの場ではない」
チェルノブイリの所長がウクライナとロシアの協力を訴え

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2016422日、ウクライナにて、チェルノブイリ核発電所の損壊した4号炉を覆う石棺。© Gleb Garanich / Reuters

チェルノブイリ核発電所の最高幹部がロシアとウクライナに対し、今年、30周年の節目にあたる史上最悪の核惨事の影響に対処するための協力を再開し、関係を修復してほしいと呼びかけた。

チェルノブイリ原発のイゴル・グラモトキン所長は、金曜日に発行されたウクライナ紙『ゼルカロ・ネデリ』の面接取材で、同原発の今後について、彼の考えを明かした。

「ロシアとウクライナは困難な時期を乗り切れないでいますが、わたしたちは今、今後の関係を築くためにどうすればよいか、考えなければなりませんし、両国共通の問題の解決策、つまりチェルノブイリの破局的事故の影響を払拭する方策を共同で探ることで関係の修復を始められないはずがありません」と、グラモトキン氏は語った。


彼は、「放射能にかかわる安全問題は、政治駆け引きを超越した領域です」と語気を強めた。


ロシア政府とウクライナ政府の関係は、2014年、ウクライナの政権クーデターがその後、ロシアによるクリミア再統合、そして新たに設置された当局と東部のドンバス地域叛乱住民の衝突を招き、歴史的な最低水準に落ち込んでいる。

グラモトキン氏によれば、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領はロシア人専門技術者たちの現場離脱に遺憾の意を表明したという。

二国間の政治的関係は残念な状態のままであり、かつては核の安全問題の分野で協力する見込みが現状よりはるかにあったものの、ウクライナはその一定の可能性を探り続けていると原発の最高運営責任者は述べたうえ、次のようにいった――

「多数のロスアトム(ロシアの国営原子力企業)の傘下企業が長年、チェルノブイリでわたしたちと一緒に活動していました。わたしたちは今、核施設の適切な閉鎖に関する情報を受け取り、使用済み核燃料と放射性廃棄物に対処するために、ロスアトムの東ヨーロッパ支部と一緒に働いているだけです」

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 グラモトキン氏は、「クルチャトフ研究所、NIKIETN.A.ドレザール記念動力工学研究開発機関]、VNIPIET[全ロシア動力工学科学研究設計院]など、ロシアの研究機関は最も重要であり、チェルノブイリに直に関わっており、歴史的にわたしたちの現場で活動していました」ので、ロシアを代表する研究機関がチェルノブイリの現場に戻ってくるのを見たいものだと付言した。

ウクライナがまだソヴィエト連邦の一部だった1986426日、チェルノブイリ核発電所の4号炉がメルトダウンを起こして、完全に崩壊した。大量の放射能が漏出し、ノルウェーをはじめ、ヨーロッパ各地の遥かに遠い地域まで被害が広がった。事故を起こした反応炉はそれ以来、さらなる放射能の漏出を防ぐコンクリートと鉛の石棺で覆われている。しかし、封じ込め構造物はいま老朽化が進み、徐々に崩れている。

目下のところ、技術不足のため、完全に破壊された反応炉を解体するのは不可能だが、グラモトキン氏は、現場を再び安全にすることが彼の「生涯をかけた任務」であるという。彼は、201611月に完成する予定である、新シェルター、または新規安全封印構造物(NSC)の呼び名で知られる新築の防護遮蔽構造物を使って、損壊反応炉が覆われるといい、次のようにつづけた――

「新規安全封印構造物、またの名でアーチは建設の最終局面に入っています…わたしたちはシェルターの内部で両端の壁を建造しており、シェルターが反応炉の上に引かれて移動した時、その壁がせりだし、NSCを封印することになります。

「わたしたちはまた、NSCそのものの内部で――生命維持システム管理のための基盤構造と工学装置の設置といった――作業の最後の仕上げをしています。わたしたちの計画では、201611月までに第4反応炉をNSCで覆うことになっています」

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NSCの設置で、災害地帯を生態学的に安全なシステムに転換することを目的にした事業の第2段階が完結することになる。第3段階は、不安定な構造物の解体と燃料溶融物の塊の除去ということになる。

グラモトキン氏は、「わたしたちはチェルノブイリ核発電所の負け戦を克服し、勝利まであと一歩です」といって、楽観論を披露した。

1986426日のチェルノブイリ核メルトダウンは、史上最悪の核発電所事故と考えられている。ウクライナ、チェルノブイリ核発電所の近くのソ連の町、プリピャチから300,000人以上が核汚染に追われて避難した41名の人たちが事故の直接的な結果として死亡し、そのうち32名は、悲劇後数か月以内に急性放射線症候群で亡くなった。事故が原因であると考えられる疾患で死亡した人数はいまだにわかっていない。国際原子力機関(IAEA)によれば、推定死亡者数は4,000人に達するという。グローバル・リサーチ誌記事が紹介する研究**によれば、推定死亡者数はほぼ985,000人であり、そのすべてが放射線による癌で死んだとされている。
          事故直前におけるプリピャチのじっさいの人口は、約49,400人。
**      アレクセイ・A・ヤブロコフほか『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店)

危険な発電所周辺地域は、放射能汚染の拡散を防止するために出入りが規制され、監視活動が実施されるチェルノブイリ立入禁止区域が設定されている。この区域は今でも地球上屈指に放射能汚染された場所である。

【クレジット】

RT, “’Nuclear safety is no-politics zone’: Chernobyl plant head urges Russia-Ukraine cooperation,” posted on April 23, 2016 at;



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