2016年4月13日水曜日

エコロジスト誌【海外論調】チェルノブイリ☢被害を否認する核擁護派の環境問題専門家の面々








Home | News | News

放射線被害否認論?核擁護派の環境問題専門家とチェルノブイリによる死亡例数

ジム・グリーン博士 Dr. Jim Green
201647
死人に口なし。チェルノブイリ近隣都市、プリピャチで見かけた人形。Photo: Ben Fairless via Flickr (CC BY-NC-SA).

気候変動の否定論者たちが温室効果ガスの詳細な影響にまつわる科学的な不確定要素をあげつらって、影響はほとんどない、あるいはまったくないことが確実であると飛躍した主張をするのと同じように、「核擁護派の環境問題専門家たち」は、チェルノブイリ、その他の核惨事による死者数の不確定要素をあげつらって、死者が出るとしても、ほんのわずかであることが確実だという主張に結びつけているとジム・グリーン博士は書いている。両者の姿勢は、同じように度しがたい。

核擁護派の自称環境問題専門家たちは、少数の例外があるとしても、ほぼ間違いなく、チェルノブイリの死亡者数について、デタラメとたわごとを売り物にしている。

彼らのデマ情報を検討する前に、チェルノブイリの癌死亡者数に関する信頼できる見解と科学研究を簡単におさらいしておこう(詳しくは、以前のThe Ecologist記事を参照のこと)。

疫学研究はもちろんのこと重要ではあるが、全般的なチェルノブイリ死者数を見積もるさい、限定的にしか使われていない。チェルノブイリの影響は、大きいにしても、小さいにしても、夥しく蔓延している癌症例と癌死亡例の統計データ・ノイズに紛れて、おおむね見失われている。

科学的検証の最新版として、放射線生物学者、イアン・フェアリー博士が執筆したTORCH2016年報告 がある。フェアリー博士は膨大な数の科学論文を取捨選択し、次のようなチェルノブイリの影響を示唆する研究を提示している――

·         オーストリアにおける放射線を病原とする甲状腺癌症例の増加
·         旧ソヴィエト諸国の亜母集団における白血病症例の増加(他の諸国でも増加している可能性があり、さらなる研究が必要)
·         事故処理労働者における固形癌、白血病、甲状腺癌症例の増加
  • チェルノブイリに関連している可能性のある心臓血管系疾患罹患率および脳卒中の増加(さらなる研究が必要)
  • 大規模な研究によって、ロシアの高度汚染地域における神経系先天性欠損症の有意な増加が明らかにされており、ウクライナの汚染地域においても同様な発現率の上昇が認められる、などなど。 

他に、どんなことが?

さらなる研究が重要であるのはもちろんのこと、疫学記録の重要性を一瞬たりとも看過することなく、既存の研究全体をもってしても、チェルノブイリによる死亡例総数の見積もりに着手することさえできないでいると指摘しておけば、じゅうぶんだろう。

集団放射線被曝量の推計値は入手可能であり、たとえば、国際原子力機関(IAEA)はチェルノブイリ放射性降下物による50年間の集団総線量の推計値600,000人・シーベルトと見積もっている。そして、集団総線量は線形閾値なし(LNT)モデルを用いて死亡数を推計するのに使える。

IAEAによる集団放射線量推計値、ならびにLNTモデルによって算出するリスク推計値(人・シーベルトあたり0.1癌死亡例)を用いると、60,000癌死亡例の推計値が得られる。低線量および/または低線量率の領域においてリスクが低減する可能性を説明するために、0.05のリスク推計値が用いられることがあり、これを言い換えると、「線量・線量率効果係数」、すなわち2DDREFを適用する場合、0.05がリスク推計値ということになる。この場合、推計値は30,000死亡例になる。

あらゆる研究が(審査済みの科学文献で公開される研究を含め)、チェルノブイリによる死亡例数の推計にLNT――またはDDREFを併用するLNTモデル――を用いている。これらの研究は、(旧ソ連の最高レベル汚染地域における)9,000癌死亡例から(ヨーロッパ全域における)93,000癌死亡例に達する推計値を算出している。

これらの研究はチェルノブイリによる癌死亡例数の信頼しうる推計である。そのどれひとつとして断定的ではない――断定的からほど遠い――が、断定できないことこそが、われわれの扱っている問題の本質なのだ。

さらに言えば、LNTモデルがリスクを過小評価している可能性がある。電離放射線による生物学的影響(BEIR)に関する全米科学アカデミー委員会の2006報告は、次のように記している――

「当委員会は、非常に低い線量の場合、リスク推計が一層のこと不確実になると認める。しかしながら、低線量の場合に線形モデルを放棄すれば、単位線量あたりのリスクを増減しかねない」

したがって、チェルノブイリによる癌死亡例の実数は、LNTモデルで計算した推計値である60,000死亡例より低くなるかもしれないし、高くなるかもしれないが、核産業とその支援者たちが長期的死亡例数の不確実性を長期的死亡例ゼロと頻繁に混同するので、これは、強調しておく必要があるし、常に再検証しなければならない要点である。

もうひとつの擁護的な立場は、科学にともなう不確実性のために、チェルノブイリによる長期的な癌死亡例数は未知であるし、知りえないという見解である。原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR報告は、次のように記している(p.64)――

「予断の不確実性が容認できないほどなので、当委員会は、チェルノブイリ事故による低線量放射線に被曝した集団における影響の絶対数を推定するようなモデルを使わないと決定した。慎重な手法が慣例的かつ意識的に適用される場合、その概説された手法が、放射線防護の目的にかなうLNTモデルを採用する場合と決して矛盾しないことを強調しておくべきである」

核擁護派の環境問題専門家たち

したがって、チェルノブイリによる癌死亡例数に関して、容認できる見解が二通り――集団線量推計にもとづく(DDREFを加味した、または加味せず、正負両方向の誤差をともなう)見積もり、および死亡例数は不確実であるとするUNSCEARの見解――があることになる。

第三の見解――チェルノブイリによる死亡例数が、緊急事態対応作業員や後に甲状腺癌になった少数者など、ほんの50例ほどに留まるとする承服しがたい主張――は、核産業および科学的に無学な核擁護派たちの、不誠実であるか、あるいは実情を知らない独善論として排斥するべきである。

彼ら無知な擁護者らは、自称・核擁護派環境問題専門家(PNE)を一人残らず網羅している。われわれとしては、一部のPNEはまっとうな環境問題専門家の資格を有しているが、その他のPNE――パトリック・ムーア(Patrick Moore)、オーストラリアのベン・ハード(Ben Heard)など――は、核産業のお雇いであると指摘しておくべきである。

ジェイムズ・ハンセン(JamesHansen)とジョージ・モンビオト(GeorgeMonbiot )は、チェルノブイリによる死亡例数を43人とする見解を正当化するためにUNSCEAR報告を引用しているが、UNSCEAR報告が長期的な死亡例数を計算しようとしていなかったことを注記していない。ジェイムズ・ラヴロック(JamesLovelock)は、チェルノブイリ災害によって「事実上、42名の人びとだけが死亡した」と主張している。

パトリック・ムーア(Patrick Moore)は、(IAEAUNSCEARWHOなど、国連機関で構成する)国連チェルノブイリ・フォーラムの報告を引用し、チェルノブイリの結果、56名が死亡したと述べている。事実としては、チェルノブイリ・フォーラムの2005年報告(p.16)は、高レベルに被曝したチェルノブイリ近隣住民集団における長期的な癌死亡例を4,000例に達すると見積もっており、それに加えて、世界保健機関が2006年に実施した追加研究は、ベラルーシ、ロシア連邦、ウクライナにおいて、低線量に被曝した住民の死亡例数は5,000例であると推計している。

オーストラリアの「エコモダニスト」学者、バリー・ブルック(Barry Brook)は、チェルノブイリによる死亡例数は60例より少ないと述べている。もうひとりのオーストラリア人「エコモダニスト」(正体は、ウラニウム採掘・核産業コンサルタント)、ベン・ハード(Ben Heard)は、死亡例数は43例だったと主張している。

マーク・ライナス(Mark Lynas)は2010年、チェルノブイリによる死亡例数を「たぶん65例程度だけだろう」と発言した。そのライナスが2年前には、WHOが「数千の死亡例」(じっさいには9,000死亡例)と推計していると発言していたが、死亡総数に埋没して「判別不能」という言い方で、被災死を過小評価している。そうなのか、チェルノブイリによる死亡例は判別不能なのか……911テロ攻撃では、2001年の全米死亡総数のうち、判別不能な0.1%が死亡した。

チェルノブイリによる死亡例数に関して、信頼しうる説明をしているPNE――または、それに相当する組織――は、皆無なようである。UNSCEARの先例にならい、長期的死亡例は不確実と論じるのが、どこから見ても彼らの定石である。長期的死亡例を不確実であり、ゼロであるとするのは、混同していること、あるいは紛らわしいこと甚だしく、擁護できないことが明らかな手法である。

ブレイクスルー研究会(BreakthroughInstitute)は、「国連当局者らは死亡例数が4,000例に達するかもしれないと言っている」と述べており、(多くを語らないものの)チェルノブイリによる死亡例数に関して、信頼しうる説明に最も近い立場を示している。だが、そのブレイクスルー研究会は、次の諸点を無視している――

·         旧ソヴィエト諸国における追加分の死亡例数を5,000例と推計する国連・WHOの補足研究
·         旧ソヴィエト諸国の領域外における死亡例数に関する科学的な推計(チェルノブイリによるフォールアウトの半分あまりが最も汚染された旧ソヴィエト3か国以外の諸国に堆積した)
·         放射線被曝に関連する非癌疾患に関する科学文献
·         および、チェルノブイリ惨事後における350,000人あまりの恒久的移住にともなう間接的な死亡例
つまみ食い

チェルノブイリによる死亡例に関するPNEの説明には、つまみ食いがしばしば目立つ。憂慮する科学者同盟の物理学者、エド・ライマン博士は、ロバート・ストーンのプロパガンダ映画Pandora's Promise(パンドラの約束)』の批評に次のように書いている――

「映画で面接取材される人たちは次から次へと、チェルノブイリ・フォーラム――国際原子力機関およびロシア、ベラルーシ、ウクライナ各国政府に援助された国連機関に所属する当局者たちの会議――の2005年報告を読んで衝撃を受けた様相を語り、『チェルノブイリによる健康への影響は、予想外の事態以外のなにものでもなかった』とわかったと述べる。映画は、安心させるような文章に下線を引いた報告書のページを次々と見せる。

「しかし、チェルノブイリ・フォーラムがウクライナ、ベラルーシ、ロシアにおける最高レベルに汚染された母集団に予測される癌死亡例数を推計しているのみであり、高レベルのフォールアウトをこうむった他のヨーロッパ各地において発生すると公開論文が予測している夥しい数の死亡例を見積もっていないという事実には言及しない。

「また、事故時に幼児か未成年だった個人が2005年までに発症した6,000症例あまりの甲状腺癌など、チェルノブイリによる県境への影響に関する言及もない。この映画はそれに加えて、他の癌、ならびに心臓血管系疾患の過剰発症が浮上しはじめているという事実を示す証拠を報告している最近に公開された研究の結果について沈黙している。

「次にライナス[映画に登場する英国の『環境保護論者』Mark Lynas]が、反核運動がみずからの主張を支えるために『科学データのつまみ食い』をしていると糾弾するにおよんで、傷害に侮辱をさらに加えている。それにしても、映画それ自体が極めて欺瞞的なある種のつまみ食いに勤しんでいるのである。ライナスはさらに続けて、おそらくフクシマ事故は放射線によって誰も殺さないだろうと主張し、またもや癌死亡例数を数百例ないし数千例と推計する研究を無視するのである」

あやふやな理解

PNEの無知を示す証拠はふんだんにある。PNEはたいがい、核擁護派クラブに加盟する前から放射線・健康(および他の核問題)論争に関する理解があやふやだったし、今もあやふやである。エド・ライマン博士はこう書いている――

「ライナスが、前歴の核反対派環境保護論者だったころ、自然バックグラウンド放射線のようなものがあるとは知らなかったと言ったり、あるいは(ブレイクスルー研究会の)マイケル・シェレンバーガーが、かつてチェルノブイリが百万人の死亡の原因になったという主張を信奉していたと打ち明けたりすれば、彼らが自分は核擁護派であると信じているということをなぜ受け容れるべきなのかと、観客は理のある疑問を抱くかもしれない」

放射線・健康論争に関するジェイムズ・ハンセンの理解は、せいぜいのところ、あやふやである。彼は、「致死性疾患の発症には、一般に100ミリシーベルトと認められた閾値」があると偽って主張している。だが、閾値はないというのが、認められた科学の見解なのだ。だから、2010年のUNSCEAR報告は、「低線量および低線量率における放射線関連癌誘発性の突然変異成分に関して、現在の入手可能な証拠のバランスは、閾値なし反応に有利な側に傾いている」と記している。

バリー・ブルックは、PNEクラブ加盟の前にも後にも理解があやふやな御仁のもうひとりの例である。ブルックは、2009年までの彼が、「ウラニウム産出ピーク」論のせいで原子力に大した考えがおよんでいなかったと発言している。ブルックは2010年になると、LNTモデルは「信頼されておらず」、「現実世界になんの関係もない」と主張し、総力戦に突進している。事実としては、LNTは科学界の支持の大ヒットを享受している。たとえば、全米科学アカデミーのBEIR報告は、「癌リスクは、低線量域において、閾値なしに線形に増大し……最小線量であっても、ヒトに対するリスクを小幅に増大させる原因になる潜在力を有している」と記している。

『全米科学アカデミー紀要』誌の報告も同様に次のように記す――

「中間ないし低線量域における癌リスクを説明する線形外挿法は、それが実験にもとづき、数値化された生物物理学的な議論で支えられていることに鑑み、現在のところ、最も妥当な手法であると考えられる」

陰謀説

ブルックはチェルノブイリに関して、次のように述べた――

「信頼しうる(WHOIAEAの)文献は、チェルノブイリによる総死亡例数を60例足らずとしている。これら権威ある機関に反対する警鐘を鳴らした『陰謀説』は、気候学におけるIPCC[気候変動に関する政府間パネル]、NASAWMO[世界気象機関]に対する偏執的な攻撃と戸惑うほどに同様な音色をわたしの胸中に鳴りひびかせている」

だが、WHOIAEA、その他の国連機関は2005年と2006年の両報告で、旧ソヴィエト諸国における死亡例数を9,000と推計しており、さらに最近のUNSCEAR報告は、長期的死亡例数は不明確であるという見解を採用している。

ブルックは、『放射線・科学・健康』のテッド・ロックウェル記事を繰り返し推奨しているが、これは、次の記述のように危険な陰謀説を売り物にする団体である――

「政府機関は、放射線ホルミシスなどのデータを抑圧し、放射線恐怖を掻き立てている。彼らは極端で費用が高くつく放射線防護政策を支えており、(多額の利益が見込まれる)薬物療法の採用を有利にするために、ホルミシスの適用によって得られる、低線量放射線による健康増進と医療便益の活用を排除しているのである」

ブルックは、低線量放射線がヒトの健康に有益であると謳う、信憑性のない「ホルミシス」理論を推奨している(科学的アセスメントに関して、BEIR報告の補足文書Dを参照のこと)。ライナスはホルミシス理論を支持しており、一般人の年間放射線量限度を1ミリシーベルトから1,200ミリシーベルト(!)に引き上げるべきだと宣う、科学に逆行する御仁の説を無批判に引用している。

ブルックはお笑い草にも、彼が引用する人物を「21世紀屈指の大科学者」と持ち上げている。だが、じっさいには、引用の出処は国際要人センター(International Biographical Centre)であり、これは、カモや自惚れ屋からお金を剥奪することを存在理由にしている団体である。ブルックの学者仲間のひとりが「鳴きロブスター」玩具を推薦し、ロブスター教授は大科学者リスト入りを認められた。

野生生物の楽園?

ブルック、ライナスら、逆行科学者が正しいなら、チェルノブイリ(およびフクシマ)は、健康を増進し、命を保証する電離放射線を遠く広範に拡散することによって、有益であったことになる。そして、一部のPNEによれば、チェルノブイリは野生生物と生物種多様性の楽園であってきたという。

スチュワート・ブランド(Stewart Brand)によれば、チェルノブイリ周辺領域はヨーロッパ有数の「最良の自然保全区」であるという。ライナスは、チェルノブイリの「爆発は野生生物にとって善であると言ってもよく、30キロ圏内立入禁止区域では、野生が繁栄している」と発言し、フクシマ周辺海域における漁業規制が「同海域における海洋環境を改善する」とも宣言している。

ジェイムズ・ラヴロックは、チェルノブイリ周辺の土地は「いま野生生物が豊潤である」と発言し――聖なる恵みか――この浅知恵論から次のような論理的結論を導き出す――

「われわれは原子力の灰を核廃棄物と呼んでおり、その安全な処分について心配している。わたしとしては、それを処分などしないで、地上の楽園の不朽なる守護神として使えばどうかと思う。核の灰の保管場所である森林を、誰があえて伐採するだろう?」

たいがいのPNEによれば、チェルノブイリによる放射線被曝が(極めて高線量の被曝を除いて)無害であるというし、その一部によれば、被曝はヒトの健康に有益であるという。また(突然変異は別にして)チェルノブイリは野生生物と生物種多様性にとってよかったという。PNEの後を追って、ウサギの巣穴に潜り込むと、核産業の安全記録は「他の主要産業のどの記録よりも優秀である」というハンセンの主張や、原子力は「抜群に安全」というライナスの主張、あるいは「原子力は一番安全なエネルギー選択肢」というブルックの主張に巡り会える。

原子力が一番安全なエネルギー選択肢? 風力やソーラーよりも安全? ブルック、その他はこの結論に達するために、チェルノブイリ(およびフクシマ)による死亡例数を桁違いに過小評価している。彼らはチェルノブイリによる死亡例数の不確実さを死亡例数ゼロと混同している。

彼らはまた、原子力にともなう最大の危険――繰り返し実証されてきた大量破壊兵器の拡散との関連――を矮小化し、あるいは無視しており、核施設に対する従来型兵器による攻撃、核テロおよび破壊行為、核窃盗および密輸など、関連問題を矮小化し、あるいは無視している。

精神的トラウマ

PNEはまた最後に、放射線被曝の生物学的影響よりも精神的トラウマのほうが重大であるという戯言〔たわごと〕を売り物にして、チェルノブイリを矮小化している。WHO記すように、チェルノブイリ惨事の余波による350,000人あまりの移住が「社会共同体の混乱と自宅への帰還の可能性の消失のために、深甚なトラウマ体験になった」ことには議論の余地がない。

精神的トラウマをどのようにして、旧ソ連諸国の癌死亡例数を9,000例とする国連・WHO推計など、死亡例数推計値と比較するのだろう? あなたの考えは、わたしの考えと等しくよい。

長期的死亡例数に関して容認できる二通りの見解の二番目――死亡例数は不明確であるというUNSCEARの見解――を考える場合、おそらく生物学的損傷を精神的トラウマと比較して、優劣を決めることができるだろう。精神的トラウマが、既知の50人程度の死亡例、6,000症例程度の非致死性甲状腺癌(および今後の16,000症例)、不明確な長期的死亡例数に勝るだろうか?

死亡例数に関する二通りの容認できる見解以外に、第三の見解――緊急対応要員および少数の甲状腺癌死亡例を除き、死亡例はないとする見方――を容認して初めて、この議論は意味を持つ。だから、マーク・ライナスは、「チェルノブイリが示したように、放射線恐怖は、被災集団が経験した低線量域における放射線そのものよりはるかに重大なリスクであると主張し、さらに反核運動が恐怖を煽っているとして活動家たちに非難を浴びせている。

だが、トラウマは単に放射線恐怖の結果ではない。とりわけ350,000人の避難民にとって、無数の要因が複合した結果なのだ。また、放射線被曝が無害になる閾値はないというのが科学界で主流の見解であることを考えると、放射線恐怖は必ずしも見当違いでもない。

最も重要なこととして、誰かさんがチェルノブイリによる生物学的損傷と精神的トラウマのあいだに優劣を付けたいと思うのは、一体全体どうしてだろう? チェルノブイリは疑いの余地なく、生物学的損傷および精神的トラウマの両方をもたらしたのである。

精神的侮辱が生物学的損傷に付け加えられたのである。人間は他人をないがしろにしてはならない。




Dr. Jim Green
ジム・グリーン博士は地球の友オーストラリアの全国核問題活動家にして、ニュースレター『ニュークリア・モニター(Nuclear Monitor)』の編集者であり、本稿の初出はこのニュースレター。年20回発行のニュークリア・モニターは、1978年創刊であり、核サイクルの全側面に関して、批判的であることが多い深層調査記事を掲載している。この問題について活動しているすべての人にとって、必読!

【クレジット】

The Ecologist, “Radiation harm deniers? Pro-nuclear environmentalists and the Chernobyl death toll,” by Dr. Jim Green, posted on April 7, 2016 at;


0 件のコメント:

コメントを投稿