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再生可能エネルギーVS核エネルギー:神話を一掃する
大規模な風力・ソーラー発電所は(核の場合の10ないし15年に比べて)2ないし3年で計画・建設できるし、今では化石燃料火力・核電力を肩代わりする準備ができている。Photo:
Brookhaven National Laboratory via Flickr (CC BY-NC-ND)
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マーク・ディーゼンドルフ
2016年4月19日
核産業のサクラは再生可能エネルギーをけなしてばかり、ウソ話を信じてはいけないとマーク・ディーゼンドルフは書く。クリーンで安全な再生可能エネルギー技術には、世界の電力必要量の100%を供給する潜在力があるが、第一関門は、政治的に有力だが、退場する定めにある核産業の推進を意図して、世論を欺くために考えだされた神話を一掃することである。
核エネルギーと再生可能エネルギー(RE)とは、多くの国で低炭素電力競争の主役になっている。
RE技術の発電容量と投資額が成長し、格安になると、核推進派と気候学否定論者はRE否定論者になった。
RE否定論者の戦略と戦術は、気候学否定論者の手練手管ととてもよく似ている。
彼らは産業社会の電源としてのREの能力に対する不安感を演出するために、政策立案者たちとメディアを狙い撃ちにRE否定神話と核エネルギー肯定神話を吹きこんで、神話の社会通念化を企んでいる。
気候危機対処策として、核とREの両方に投資を大幅に拡大できるほどの経済力に恵まれている国は少ない。英国が2016年になって、REに対する既存の短期助成金を厳しく削減しながら、核に巨額の長期助成金を付けており、このことの実例になった。
本稿は、核や石炭のようなベースロード電源が必要だという神話を打破する記事(Dispelling
the nuclear ‘baseload’ myth: nothing renewables can’t do better!)の続編であり、核エネルギーとREの神話をいくつか検証する。こうした神話を問題にしたいと思う読者のみなさんに役立つ資料を提供したい。本稿で論じる神話は、メディア、論説や論文、ブログ、オンライン論評で見つけた核推進派とRE排斥派の評言を引用させていただいた。
神話1:基底負荷電力需要*を賄うためにベースロード発電所が必要である
*[訳注:上下に変動する電力需要のうち、常時存在する一定量の基底部分]
変種:上下に変動しやすいRE・システムを補完するために、ベースロード発電所を常時稼働する必要がある。
変種:REはあまりにも変動しやすく、大規模電力供給の主要電源にするには、信頼性に欠ける。
筆者は前回の記事'Dispelling the nuclear
'baseload' myth: nothing renewables can't do better!'[核「ベースロード」神話を一掃する:REがもっとうまくできないことはない!]で、この神話に反論しておいた。ここでは、その記事の導入部の3節を引用しておこう――
この主張の底に3つの鍵となる仮定が潜んでいる。第一に、ベースロード電力は実によいもので、必要である。ところが事実を言えば、これは、必要でないときに、電力が過剰になり、必要なときに、不足することを意味する。われわれに必要なのは、瞬間ごとに供給と需要のバランスが取れるような、臨機応変に対応できる柔軟な電力である(そして、柔軟な需要も)。
第二の仮定として、原子力は信頼できるベースロード電力供給源である。事実を言えば、原子力はそんなものではない。あらゆる核発電所は、安全上の理由や機器の故障で脱落するかもしれないという不安を抱えている。つまり、3.2GW核発電所を抱えた電力システムは、瞬間的な告知で即時に起動できる、少なくとも3.2GWの高価な「控え電源」を用意しなければならないことになる。
第三に、ベースロード電力の唯一の供給源は、核、石炭、ガスといったベースロード発電所であるというわけだが、これは、電力が実際に必要であるか否かにかかわらず、常時一定量の出力で運転されるように設計されている。こんなものも、やはり間違っている。
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神話2:核エネルギーのルネッサンスが進行している
テラワット時/年で見た世界核発電総量は、2006年に頂点に達した。世界発電総量に占める核エネルギーの割合は1993年に17.5%で頂点に達し、2014年には11%以下に低下している。今日、核に対する世界投資総額は、風力とソーラーのそれぞれに対する投資額を下回っている。
これまでの10年間、新規核発電炉の世界起動件数は、既存炉の廃止件数とほぼ同じである。ヨーロッパの数か国で核エネルギーが段階的に廃止されている一方で、中国、ロシア、インド、韓国では、核反応炉建設件数の伸びが世界屈指に顕著である。
ジム・グリーン博士の詳細な記事'Nuclear
renaissance? Failing industry is running flat out to stand still'[核ルネッサンス?斜陽産業は突っ走りながら、足踏みしている]がこの神話に大鉈を振るっているので、これも参照のこと。
神話3:REは化石燃料の役割を肩代わりする準備が整っておらず、核エネルギーであれば、低炭素エネルギー供給の(いわゆる)不足分を埋められるのではなかろうか
既存核反応炉の大多数は第2世代型に分類されており、時代遅れと一般的にみなされている。新規核発電所の現世代炉は第3および第3+世代型に分類されている。第3世代型炉は、目下のところ、日本で3基だけ稼働中であり、その運転実績は貧弱である。第3+世代型炉の場合、ヨーロッパで2基、米国で4基、中国で数基が建造中であるものの、稼働中のものはない。
すべて工期が遅れ、予算が超過しており、ヨーロッパの未完成なままの反応炉は、すでに見積もりコストの3倍の金を使っている。商業的に割に合う第4世代型炉――たとえば、高速増殖炉、統合高速炉(IFR)、小型モジュラー炉――は存在しない(World Nuclear Industry Status:世界核産業の現況)。だから、現代の核エネルギーは準備が整っていないと言ってもいいだろう。
新型炉とは対照的に、風力とソーラーは急速に成長しており、安上がりになりつづけている。風力とソーラーの場合、大型発電所の計画と建設は、(核の場合、10ないし15年かかるが)2ないし3年で済み、化石燃料と核の電力を肩代わりする準備が整っている。
神話4:核兵器の拡散は民生用核エネルギーと無関係である
変種:核兵器用の爆発物は、従来型の核発電炉で生成されるタイプのプルトニウムから、あるいはトリウム燃料サイクルで、またあるいはIFRで製造することができない。
6か国(フランス、インド、北朝鮮、パキスタン、南アフリカ、英国)が秘密裏に民生用核エネルギーを利用して、核兵器開発の一助にしてきた。それに加えて、少なくとも7か国(アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、イラン、リビア、韓国、台湾)が民生用核エネルギーを使って、秘密裏に核兵器開発に着手したが、その後、計画を打ち切った(本稿末尾の参照文献Diesendorf
2014に関連記述)。
このように、核エネルギーは核拡散を促進しており、核戦争の恐れをふくらませている。核戦争の蓋然性が低いとしても(これとても、議論の余地があるが)、潜在的な影響力は甚大である。したがって、核拡散リスクを無視するのは不当であり、この潜在的な影響力によって、このリスクの恐れが何倍にも膨れあがる。
トリウム炉は、インドで開発中である。トリウムは核分裂性の物質ではないので、まず中性子を衝突させて、核分裂性であるウラニウム233に変換しなければならない。ウラニウム233は、他のいかなる核分裂性元素とも同じように、熱を発生させ、発電に使うことも、核爆発物として使うこともできる(Thorium
fuel has risks)。爆発物の一部にウラニウム233を用いた核兵器は、米国(Teapot
MET test)、ソ連、インドで実験されている。
核擁護派の一部は、予想されるIFRは核拡散に不向きなものになるはずだと見当違いの主張をしている。IFRは、これまでに原型炉1基が米国で稼働しただけである。この事業は、1994年にアメリカ連邦議会で、予算手当て、必要性の疑問、核拡散の可能性にまつわる懸念などの理由により差し止められた。
IFRは、核拡散に向かう少なくとも二通りの道筋を開く。乾式再処理という実験的な工程を使って、低レベル放射性の超ウラン元素から高レベル放射性の核分裂生成物の大半を分離することができるようになれば、従来の化学再処理法によって超ウラン元素からプルトニウム239を抽出し、それを使って、核兵器を製造することがさらに容易になる。
神話5:チェルノブイリ事故の死亡者数は28人ないし64人である
これほど過小評価した笑止千万な見積もりは、急性放射線被曝症候群による短期の死亡のみを考え、死亡者数に寄与する主因、すなわち数十年にわたって発症する癌を無視することから得られる。
チェルノブイリに関して、癌死亡の本格的な最低将来予想値は、国際原子力機関(IAEA)が主導した国連の諸機関の代表者らが参加したチェルノブイリ・フォーラム(2006年)が結論した「最大4,000人」である。
IAEAは、核エネルギーの推進と同時に、とりわけ事故および核拡散に対する防止措置の設定という互いに相容れない目標を掲げている。明白な利益相反のない論文著者らによる推計値は、国際癌研究機関による16,000人(Elisabeth
Cardis, et al, 2006)から、ウクライナ、ロシア、その他の国ぐにの医学研究チーム(Greenpeace
2006)による93,000人までにわたっている*。
神話6:高レベル放射性廃棄物を恒久的に保管する問題は解決済みである。
高レベル核廃棄物は目下、すべてプールや乾式キャスクで暫定的に保管されている。恒久的な保管施設は世界に1か所も供用されていない。
ユッカ・マウンテンで提案されていた米国の保管施設の開発は、135億ドルの経費をつぎこんだ果てに打ち切られてしまった。地下保管施設がフィンランドとスウェーデンで建造中である。仮に技術的・経済的な課題を克服できるとしても、100,000年にわたり保管施設を管理したり隔離したりするという社会的問題は残る。
神話7:IFRで世界の核廃棄物を「燃やし尽くす」ことができる可能性がある
IFR、つまり統合高速炉は設計図のなかに存在しているだけである。仮に開発されるとすれば、さらなる核拡散の方途になる(神話4を参照のこと)。せいぜい言って、たいがいの超ウラン元素を核分裂生成物に転換するだけなので、やはり地下の長期保管施設が必要だったということになる。
IFR、その他の「新型」反応炉設計にまつわる問題の詳細な解説について、先ほどエコロジスト誌サイトに掲載されたエイモリー・ロヴィンスの古典的な2009年評論記事‘'New'
nuclear reactors? Same old story’[「新型」核反応炉だって? いつもの謳い文句]をご参照のこと。
神話8:核エネルギーは温室効果ガスを、まったく、または無視できるほどしか出さない
核エネルギー技術も、RE技術も、稼働中のCO2排出はない。しかし、意味のある比較を求めるなら、原材料採掘から廃棄物管理までの工程サイクル全体の比較をしなければならない。
核物理学者であり核擁護派、マンフレッド・レンゼンは、高品質ウラニウム鉱にもとづく核エネルギー工程サイクル全体のキロワット時あたりCO2排出量の平均値を60グラム、天然ガス火力のそれを500ないし600グラムとはじきだした。
では、おおかたの核推進派が無視したり事実を曲げて伝えたりしている部分はどうだろう。高品質ウラニウム鉱の世界採掘可能鉱量は、数十年分が残っているだけである。鉱石の品質が低下するのは避けられず、ウラニウム鉱採掘・精錬に使う化石燃料(ディーゼル油)が増えていき、そうなればもちろん温室効果ガス排出量が増大する。
レンゼンは、低品質ウラニウム鉱を使う場合、工程サイクル全体の温室効果ガス排出量をキロワット時あたり131グラムと計算している。他のものは、これより高いレベルの計算結果になっている。これは、気候学の観点から受け入れられない。再生可能燃料を使って低品質鉱を採掘する場合だけ、あるいは高速増殖炉が燃焼炉に置き換わった場合だけ、核エネルギーの温室効果ガス排出量を許容レベルで維持できるかもしれないが、これらの条件のどちらも少なくとも数十年間は実現しそうにない。
この論点に関して、さらに学びたい読者のみなさんは、キース・バーナム教授の優れた記事'False
solution: Nuclear power is not 'low carbon''[紛いものの解決策:原子力は「低炭素」ではない]をもご参照のこと。
神話9:核エネルギーは送配電網でREと共存できる維持可能電力源である
核賛成派は開きなおって、同じ送配電網のなかで(新型)核反応炉とREの共存を図ることが可能だと主張している。しかしながら、次にあげる4つの理由により、電力供給網において、核エネルギーは変動するREの多大な寄与分を補完する電力源として役立たずの共存相手である――
1.核エネルギーは、(バイオ燃料を使える)解放サイクル・ガス・タービン、ダムによる水力、蓄熱装置を備えた濃縮太陽熱に比べて、稼働の臨機応変性に劣る(神話10を参照のこと)。風力とソーラーPV(光起電力)は以前に論じたように、臨機応変性に富み、起動が素早いREを使って調整すれば、大量電力を供給できる。
2.核発電所が停止すれば、通常の場合、再起動に数週間か数か月かかる。それに比べて、風力の場合、一時的な停止は数時間か数日で済むので、高くつくベースロード発電所による補完体制が不必要であり、柔軟で即応的なREで十分だ。
3.風力やソーラーを使う発電所は、核エネルギー(および化石燃料)よりも運転コストが安上がりである。したがって、風力とソーラーは低価格を売りにして電力市場に参入でき、巨額の資本コストを回収する必要のある核エネルギーによるベースロード運転に取って代わることができる。
4.REと核エネルギーは、財源の乏しい融資と助成金など、政府による支援政策をめぐって相争っている。たとえば、英国政府がヒンクリーC核発電所を巨額の助成金で優遇した結果、陸上風力とソーラー電力に対する助成金が剥奪された。
神話10:核発電炉は一般的に需要/負荷に応じて柔軟に運転することができる。
技術と経済の両面における限界が、発電量の77%を核エネルギーが占めているフランスで実証された。
核発電所の現行の発電方式は負荷に対応するように設計されていないので、フランスが負荷対応方式で運転できるのは保有反応炉の一部だけであり、一時だけ――つまり核燃料が新規に装填され、反応性の余地が大きい、燃料サイクルの初期だけ――負荷対応方式で動かすことが可能であり、サイクルの晩期にある反応炉は負荷対応を継続できない。このことは、世界原子力協会が認めている。
ベースロード発電所にとって、負荷対応運転には次のような2つの代償がともなう――
効率損失および反応炉温度の上下変動にともなう膨張・収縮サイクルのため、維持費の大幅な増大、
ピーク外れ時間帯における減収。それに反して、反応炉は高上りの資本費を回収するために、可能なかぎり定格出力で運転しなければならない。
フランスは送電線経由で核エネルギー電力を近隣諸国に売却することで、二番目の経済的代償を削減しており、オーストラリアはピーク外れ時間帯に安価な熱水を生産することで、ベースロード石炭電力の過剰分を消化している。
神話11:REは核エネルギーよりも高上りである
変種:核エネルギーはREよりも低額の助成金を受けている。
上記の神話の両方とも、嘘である。均等化発電コストは、敷地内に設置された発電装置の数、立地場所、資本費、利率、設備利用率(じっさいの平均出力を定格出力で割った率)で決まる。均等化発電コストは、2014年以前のデータにもとづくとメガワット時あたり108ドルであり、2015年以前のデータにもとづくと97ドルないし132ドルである(Lazard
2015)。
IPCC[気候変動に関する政府間パネル(2014年以前のデータ)]見積もりは助成金を計算に入れていないが、ラザード(Lazard)の推計単価は融資保証と廃炉費を除外しているが、米国政府助成金を盛り込んでいる。これら2件の米国分の見積もりのどちらも、建造中のヨーロッパ型加圧水型反応炉(EPR)2基(神話3で既述)の超大幅なコスト膨張分を計算に入れていない。
英国で提案されたEPR、ヒンクリーCは、2012年の通貨でメガワット時あたり92.5ポンド(144ドル)から始まって、35年間のインフレ連動単価保証が付与されている。その保証単価が今日の貨幣価値で100ポンドに迫るほど押し上げられており、英国における現在の卸価格のほとんど3倍になっている。包括的な助成には、当初期100億ポンド(153億ドル)の英国財政委員会融資保証もまた盛り込まれている。上限が設定されたヒンクリーCの事故責任と満額保証のない保険のツケは英国の納税者に回されそうである。
多国籍財務コンサルタントであるラザードは2015年、全米における助成金の付かない陸上風力のメガワット時あたりコストを32ドルないし77ドルと見積もった。米国エネルギー省が独自に実施した現場研究は、米国における2014年時点のメガワット時あたり均等化電力購入約款価格を、(風速が最高の)内陸部で22ドル、(風速が最低の)西部で約60ドルであることを明らかにした。
米国政府は、風力にメガワット時あたり23ドルの生産税控除を付ける形で10年間の助成を付与しているので、じっさいのコストを得るには、これをエネルギー省の数値に加算しなければならない。ブラジル政府は2014年、助成金を付けずにメガワット時あたり129.3リアル(41ドル)の平均需給均衡化価格の逆オークションを実施して、契約を奨励した。
ラザードは、米国内の高日射量地域における助成金抜きの大規模ソーラー発電コストを、メガワット時あたり50ドルないし70ドルと見積もった。米国ニューメキシコ州において、マッチョ・スプリングス50メガワット・ソーラー発電所の電力購入契約がメガワット時あたり57.9ドルで署名された。連邦と州の助成金を入れると、じっさいのコストは立地箇所に応じて80ドルないし90ドル程度になる。
チリ、ブラジル、ウルグアイにおける逆オークションの助成金抜き価格は同程度になる(Diesendorf
2016)。「配電網に連結した」屋上ソーラー発電は固定価格買い取り制度がない場所でも、世界の中・高日射量地域の多くで小売配電価格と張り合うことができる
蓄熱装置付きの太陽熱発電所の場合、ラザードはメガワット時あたり119ドルないし181ドルと見積もっている。
核エネルギーとREの助成金を比較することは、国ごとに規模とタイプが大幅に異なっているので困難だが、核エネルギー助成には下記の項目の全部か一部が含まれている(Diesendorf
2014)――
·
研究・開発、ウラニウム濃縮、廃炉、廃棄物管理に対する政府資金の供与、
·
融資保証、
·
焦げつき資産の納税者負担と電気料金上乗せ、
·
限定付き事故責任による被災者と納税者へのツケ回し、
·
気前のよい差額決済契約。
核エネルギーの助成金はこれまで50年にわたり一定のまま維持されているか、増額されてきたが、REの助成金、特に固定買い取り価格はこれまでの10年間、大幅に(一部の場所ではゼロになるまで)減額されてきた。
神話12:REは分布が非常に希薄なので、膨大な土地面積が必要である
水力発電ダムとバイオ燃料特化作物は広大な面積を占めるかもしれないが、数少ない地域のRE構想はこれらの収入源によって多大な余分の稼ぎをもたらしてくれる。
地上設置型のソーラー発電所は大面積の土地を占めるが、多くの場合、耕作限界地であり、放牧地など、他の用途を妨げる必要はない。ドイツとオーストラリアで広く普及した屋上ソーラー、そして作物屑を原料にするバイオエネルギーは余分な土地を必要としない。
陸上風力発電所は一般的に農地に設置されており、農業との共存性が高い。典型的な占有面積は設置する土地の1ないし2%だが、否定論者たちはこの点を無視したり、設置場所の総面積を引用して誤解を招いたりすることが多い。
オーストラリア全国電力市場のために100%再生可能電力技術の経済的に最適な組み合わせの解を求めた結果、必要な土地の総面積の年間テラワット時あたりkm2は、福島第一核発電所で事後設定された立入禁止区域のような仮定上の20キロ圏緩衝地帯を含めた核エネルギーの場合のそれの約半分になった(Diesendorf
2016)。
神話13:RE技術の(投資額ではなく、投入エネルギー量に着目した)エネルギー回収期間は、その耐用年限と同程度である。
現時点で典型的なエネルギー回収期間は――
ソーラー起電力モジュールが0.5ないし1.8年、
風力発電機が0.25ないし0.75年、
太陽熱発電所(パラボラ集熱器)が2年、
核発電所(高品質ウラニウム鉱)が6.5年、
核発電所(低品質ウラニウム鉱)が14年である。
(出処:Diesendorf
2014, Table 5.2)
年数のばらつきは、エネルギー回収期間、およびそれに関連する投入エネルギー量に対する利得エネルギー量の概念が、技術のタイプとその立地場所によって決まるという事実を反映している。RE批判派はしばしば、REには化石燃料火力発電所による常時バックアップが必要であるという間違った想定をして、すこぶる大幅に上増しされたRE技術のエネルギー回収期間を引用する。
神話14:デンマークは、風力発電の寄与分が大きいので、ヨーロッパ屈指に電気料金が高い
デンマークの小売電気料金は、重い税金が課せられているので、ヨーロッパで屈指に高い。この税金は連結収益に加算されるのであって、風力発電助成金になるわけではない。税抜きで比較すれば、デンマークの電気料金はヨーロッパの平均程度になる。
神話15:RE電力を80ないし100%と想定した送配電網運営のコンピュータ・シミュレーション・モデルは、現実システムを過剰に単純化した無意味なものである
モデルが現実の単純化版であるのはほんとうのことだが、さまざまなシナリオを探求するためには、モデルは強力で安上がりなツールになる。たいがいのモデル策定者は単純なモデルからはじめて、基本的な変数相互間関係を理解する。そのうえで、段階的に理解を深め、モデルを現実に近づけていくものなのだ。
たとえば、UNSW(ニュー・サウス・ウェールズ大学)のオーストラリア人グループは当初のモデルで、再生可能電力100%を想定したオーストラリア全国電力市場の運用を1年間の1時間刻みでシミュレート計算した。単に風力発電所だけが立地箇所に規模データを示して入力されていた。次のモデルは、経済データを組み込み、RE技術の経済的に最適な組み合わせを計算し、その後、低炭素化石燃料火力発電シナリオとの価格比較をおこなった。
シミュレーションは最近、1時間刻みデータの6年間分に拡張され、RE供給地帯が43小区域に分割され、非同期的な供給に限度が設定されている。一方、スタンフォード大学の研究チームは、米国において、輸送と暖房を含むエネルギー需要全体を再生可能電力で賄うことができることを示した。
スタンフォード大学のコンピュータ・シミュレーションは、電力需要、風力、日射量の6年間にわたる30秒刻みの同期データを使っている。同期データを用いることによって、モデル策定者は気象の大規模な変動想定値を組み込むことができる。このような感度の高い解析によって、モデルの能力と信頼性を強化できる。
専門分野である電力システム・シミュレーション・モデル策定を最も声高に批判する人たちの一部は奇妙なことに、物理科学、コンピュータ科学、工学、あるいは応用数学を語る資格を持ち合わせていないようである。オーストラリアでは、生物学者2名、社会事業学者1名、職業療法士1名がこのたぐいである。
REは核エネルギーよりずっと前に規模拡大を図れるはず
コンピュータ・シミュレーション・モデルによって、また実地経験の積み上げによって、多くの地域で、またたぶん世界全体で、電力供給源を100%REに転換できることがわかる。
たいがいのRE技術は、商業的に手頃な経費で入手可能であり、環境面で健全である。転換を遅らせるだけの、基本技術面、または経済面の理由はない。
核推進派とその他の既得権擁護派がばらまく、核擁護・RE対抗神話は検証に耐えるものでない。政治意志があれば、REは、第3および第4世代核発電所が電力供給に相等な寄与をするよりずっと前に規模拡大を図れるはずである。
Mark Diesendorf
マーク・ディーゼンドルフは、ニュー・サウス・ウェールズ大学、生物・地球・環境科学部、学際環境研究の准教授。
References
Diesendorf
M (2014) Sustainable Energy Solutions for Climate Change. London: Routledgeand
Sydney: NewSouth Publishing.
Diesendorf
M (2016) 'Subjective judgments in the nuclear energy debate'. Conservation
Biology doi:10.1111/cobi.12692. (See the Supporting Information as
well as the short article.)
Wymer RG
et al. (1992) An Assessment of the Proliferation Potential and
International Implications of the Integral Fast Reactor. Martin Marietta
K/IPT-511 (May); prepared for the Departments of State and Energy.
【クレジット】
The
Ecologist, “Renewable energy versus nuclear: dispelling the myths,” by Mark
Diesendorf, posted on April 19, 2016 at;
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