2018年8月30日木曜日

英紙ガーディアン【この大地は君の大地】ロッキーフラッツ国定野生生物保護区に☢プルトニウム汚染の恐れ





学校はプルトニウムを恐れるあまり、新設のコロラド野生生物保護区への訪問を禁止

近隣の町は、かつて核兵器施設が配置されていた土地が脅威をいまでも孕んでいると提訴している

ロッキーフラッツ工場の労働者を讃えて創作された記念碑、冷戦馬が現地の近くに立っている。Photograph: Chet Strange for the Guardian

全米で最も新しい国定野生生物保護区は、一面プレィリーグラス[訳注:イネ科の高草]で覆われ、エルクの一群が生息しており、来月、コロラド州の最大都市のすぐ外側で一般公開される予定になっている。

だが、デンヴァー州首都圏の7校区がすでに、保護区で野外学習をするのを学校が公認することを禁止している。地元保健当局のトップは、自分がそこに行くようなことはおそらくないだろうという。それに町は、土壌含有物の成分を巡って提訴している。

デンヴァー公立学校教育委員会のリサ・フローレス委員は、「ロッキーフラッツの汚染がもたらす脅威、それに野外学習に出かける子どもたちに対するその影響は、専門家たちの議論の争点になるようです。子どもの安全の保証が決定的にならないかぎり、わたしたちは万全な警戒を怠らないでしょう」とガーディアン紙に語った。

21.19平方キロを占めるロッキーフラッツ国定野生生物保護区は、今年の秋に一般公開される予定になっており、かつて核兵器生産施設だった場所を取り巻く地域に位置している。ロッキーフラッツ工場は1951年から1989年にかけて、プルトニウム起爆物――爆薬の炸裂によって圧縮されると、核反応を起こすグレープフルーツ大の球体――を製造していた。

地所内の平原を横切って歩くロッキーフラッツ国定野生生物保護区の管理人、デイヴィッド・ルーカスPhotograph: Chet Strange for the Guardian

デンヴァーから北西に20マイルばかり、このエリアは除染済みであり、政府が安全を宣言しているものの、かつて施設が建っていた場所の地中にはプルトニウムが残存している。


――保護区管理人
デイヴィッド・ルーカス
保護区の見学者は廃工場の敷地に立ち入ることが許されていない。5.26平方キロの区画がフェンスで囲い込まれ、立入禁止になっていて、合衆国エネルギー省が監視し、管理している。合衆国魚類野生生物局(USFWS)が来月の一般公開を予定している区画は、かつての緩衝地帯、工場周辺の土地である。保護区管理人、デイヴィッド・ルーカスは、「わたしどもは科学と責任ある当局を信頼しております。一般市民とわたしどもがお迎えする皆さま全員にとって、安全だと信じております」と語った。

緩衝地帯は過去50年間、おおむね手付かずのままであり、最小限の徒歩通行者しかいなかったので、動植物が思う存分に繁栄繁茂してきた。保護区は、植物630種あまりの植生地であり、絶滅危惧種のプレブル牧草地トビネズミ、100頭あまりのエルクの群れを含め、動物230種あまりの生息地である。USFWS監視レンジャー、シンシア・サウダースは、「この地域の生息環境と野生生物は、デンヴァー地域全体のなかでもユニークです」といった。

それでも、除染の徹底ぶりを疑う人たちがいる。

2017年、ロッキーフラッツ国定野生生物保護区に遊歩道とビジターセンターを開設する計画に対するデンヴァー抗議集会に参加したアーロン・ウイナー。Photograph: David Zalubowski/AP
工場は1989年、飲用水に毒性廃棄物を投棄するなど、環境犯罪容疑で連邦捜査局と環境保護庁の強制捜査を受けたあと、環境保護庁のスーパーファンド法[汚染浄化信託基金法]にもとづく国家優先リストに記載された。エネルギー省は当初、除染作業に60年の期間と300億ドルの経費がかかると見積もっていた。だが、自営の請負業者が実施した作業工程は、10年間の工期と70億ドルの費用がかかっただけである。その間に800棟あまりの建築物が除染され、解体された。その結果、保護区指定地域は復旧の必要性ゼロと査定された。

保護区の所在地、ジェファーソン郡の公衆衛生局長は、公園の安全性に彼なりの疑惑を抱いている。マーク・ジョンソンは、「あの土地のリスクは、非常に、非常に低いとデータが示していると、こころから感じていたなら、あの人たちがオープンしても、わたしは戦ったりはしません。元の(除染の)見積もりだった70年工期と数百億ドルが、あれほど短く、あれほど安く切り詰められるなんて、あまりにもお手軽だと思います」と語った。

人口13,000人、保護区の北東端に接する町、シュペリアの住民たちは、ハイカーやバイカー[自転車乗り]が保護区からプルトニウムが紛れ込んだ土埃を運び込みかねないと危惧し、提訴している。シュペリア町民を代理する弁護士、ティモシー・ゲイブルハウスは、「プルトニウムに関するリスク評価のすべては、非常に限定的なハイキング利用、それに保護区従業員の区域内作業にもとづいており、わたしたちとしては、粉塵のいう点で、大量に発生しなかったはずの代物は、大規模な土壌や地下水層にトラブルを持ち込んだりしなかったはずだと言っているのです。事情はすっかり変わってしまいました」と述べた。

合衆国司法省は係争中の訴訟に関するコメントを拒否した。だが、州の環境保護専門官、リンゼイ・マスターズは、心配は度を越していたと述べた。「これは地球上最良の優秀さで調査された土地のひとつなのです。この土地は、州と連邦の法律および規制に則って除染されました。(観光客の)リスクは考えられないほど低いです」と、彼はいう。

一般人には、かつて汚染されていた核関連施設の現地を訪れる旅行需要が明らかにある。約30マイル西方のロッキーマウンテン兵器庫・国定野生生物保護区は、第二次世界大戦および冷戦のさなか、兵器の製造のために使われていた。ラスヴェガスから北方に約65マイル、かつて核実験場だったネヴァダ国家安全保障用地の月例公開ツアーに参加することができる。また旅行者は年に2回、世界最初の原子爆弾が炸裂した場所、ニューメキシコ州の国定歴史遺跡であるトリニティ実験場を訪問することができる。

ロッキーフラッツ国定野生生物保護区に佇む納屋。Photograph: Chet Strange for the Guardian

環境分析の改善を求める訴訟2件の連邦裁判所審理が目下、進行中なので、ロッキーフラッツが上記の国家優先リストに加えられるべきか否かは、たぶん裁判官が決めるだろう。

最近の訪問のさい、数十頭のエルクが暗渠のくぼみを登って現れ、幼獣たちは親のあとにピッタリ付いていた。エルクの鳴き交わす声が風に運ばれ、まるでカモメの鳴き声のようだった。ウチワサボテンとタマサボテンが地表に点在し、上空には、ツバメ、カオグロアメリカムシクイ[ホオジロ亜科の鳥]、マキバドリ[ムクドリモドキ科の鳥]が飛びまわっていた。オオカバマダラ[タテハチョウ科の蝶]が、ピンク色に花咲いたトウワタ[唐綿、キョウチクトウ科の多年草]の腰高ほどの茂みのあいだで羽ばたいていた。

そして、静かだった――三方を幹線道路で囲われ、核兵器にかかわる紛争の渦中にある土地にしては――思いのほか静かだった。

【付記】本稿は822日付けで訂正された。旧版はプレブロ草原トビネズミを絶滅危惧種としていた。実際には、このネズミは「絶滅寸前」項目に記載されている。

【クレジット】

The Guardian, “Amid plutonium fears, schools ban visits to new Colorado wildlife refuge,” by Daliah Singer in Denver, posted on 22 August, 2018 at https://www.theguardian.com/environment/2018/aug/22/new-us-refuge-rocky-flats-plutonium-toxic?CMP=share_btn_tw.







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