2013年1月9日水曜日

『#チェルノブイリの長い影』 ④照射によって生じる病変



【資料】
衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書
7.
        調査の概要
(1)ウクライナ
③チェルノブイリ博物館視察
   表示(29.6MB)
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2.照射によって生じる病変
従来より、電離放射線による犠牲者の健康結果は、確実に起こる可能性か高いが未だ症状として現れていない確率的影響と、一定の被曝線量により確実に症状が現れる非確率的影響とに分類されている。
照射の確率的影響
l         発癌(さまざまな部位での悪性腫瘍の発生)
l         奇形形成(胎児照射による胎児の欠損症)
l         遺伝学的異常(突然変異、染色体異常)など
チェルノブイリ事故後の照射の非確率的影響をさらに3グループに分類する。
以下を組み合わせた第1グループの非確率的影響
l         (全生物に対して線量が1グレイを上回ると)最も感受性の高い組織および臓器で速やかに分裂する(ため放射線感受性である)細胞損傷を受けた集団。
l         急性放射線宿酔を来した男性の線量依存性精子形成障害。最大5グレイの被曝線量により短期間の不妊が生じ、5グレイを超えると永久不妊が生じる。
l         急性放射線宿酔を来した人に起こる皮膚疾患。これには、色素沈着、表皮萎縮、汗腺機能および皮脂機能の異常、毛嚢異常、弾性消失および皮膚線維化、慢性潰瘍、皮膚損傷過敏症などが挙げられる。
l         照射が起きてから最初の24年間に`急性放射線宿酔を来していた人に生じる水晶体の特異的変化および放射線誘発性白内障。
非確率的影響の第2グループ以降をまとめる。まず、自律神経失調症の症状が現れるなどの、複雑性および系統的特徴によって異なるいわゆる身体的影響。身体にみられるこのような放射能症候群は、神経症、心気症またはうつ病の病像を有する臨床型の自律神経失調症候群または無力症候群に紛れ込んでいて、発見されにくい。これにより、照射により損傷を受けた臓器の内科疾患の臨床経過というものがある。このような身体的損傷にみる最も独特の特徴には、その抵抗力、遅鈍、再発性慢性経過などがある。身体的放射能症候群の形成をもたらす明確な臨床型と同値線量は、(外部被曝か、内部被曝かまたは両方であるかなどの)特有の照射特徴によって異なり、場合によっては放射性核種とその関連物質との組み合わせによっても異なる。
非確率的影響の第2グループには、出生前の状態や子宮内で照射を受けた子供の健康および発育の病的変化などが含まれる。このグループの子供は、過度の放射線に曝露しなかった子供より、知的障害、情緒障害、自律神経調整の機能不全、循環器系、呼吸器および消化器系の臓器の機能障害を来す傾向がきわめて強い。
非確率的影響の第3のグループには、ヨウ素の照射線量によって程度は異なるが、放射線による原発性甲状腺機能低下症(甲状腺の不活発)や、甲状腺の線維化および萎縮などを合わせた甲状腺病変が含まれる。
性質や範囲の点できわめて独特なチェルノブイリ災害によって、科学界は今もなお、健康影響全体に対する理解を大きく是正または修正することを余儀なくされている。たとば、第2世代の犠牲者(照射を受けた両親から生まれた子供)を臨床観察したところ、健康や成熟度に何らかの異常があることが明らかにされている。この異常は、両親が受けた放射線線量に応じて異なるため、非確率的であるとされることもある。また、このような異常は、子宮内で照射を受けた者に認められた異常と一致しており、臨床所見の形態によっては第2グループの非確率的影響に属する。ただ、これらは遺伝子の観点からみて明らかにされたものである。遺伝体質を考慮すれば、非確率的影響の第4グループに入ると考えられる特徴について語ることができる。事故処理作業者の両親の間に生まれた子供は、両親の被曝線量によっては、放射線の確率的影響が、確実に症状が現れる非確率的影響となる境界グループまたは重複グループであると定義づけることができる。照射を受けた子供や青少年だけでなく、事故処理作業者の間に生まれた子供の甲状腺癌の発生率も高まったことにより、このことが証明された(後述)。このため、第2世代には、身体的疾患の発症を引き起こす原因となる遺伝子学的に安定した病態生理学的機序がある。これは、遺伝的不安定性という現象が、チェルノブイリ災害の最も深刻な影響のひとつとなり得ることを示すものとなっている(注4)。

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(資料)
『チェルノブイリの長い影~チェルノブイリ核事故の健康被害』<研究結果の要約:2006年最新版>
 

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